「誘拐」11i2/横浜市TD大

「わーい、絵美ちゃんすごい。本当に迷わず来れたね。大学生の小学生だー」
「えへへ」
「こーんないっぱい電車乗ったの初めて。絵美ちゃんはいつもこんなに乗ってるの?」
「うん」
「電車代に千円、帰りもいるから二千円も使うけど、楽しいからいいや。でも絵美ちゃんはいつもだから大変だね」
「うん」
「それじゃあ、大学生の小学生が通っているTD大の中に入るぞー」
「うーん、小学校より全然広いね。建物も大きいし」
「うちの小学校の方がきれいだけどね」
「銅像があるのはうちの小学校と一緒だ」
「運動場は小学校と違ってなんにもないね」
「あんまり人がいないね」
「大学も夏休みなのかな?」
「校庭歩いてるだけじゃつまんないなー。建物の中に入ろうよ」
「いいの?いいのかな?」
「いいんじゃないの?ドア開いてるし。大学生の小学生も通ってるんだしー」
「本当にいいのかなー?私達、大学生の小学生じゃないしー。どうしよー」
「ねえねえ君達、もしかしてどちらかが佐藤透くん?」
「違いますー」
「えっと、じゃあTD大の学生?」
「違いますー」
「えっ……なんだ野次馬か。君達小学生?」
「はい。大学生に見えましたか?」
「いや、小学生に見えるけど、小学生に見える大学生もいるみたいだし」
「ここの大学って大学生の小学生が通ってるんですよね?」
「私はともかく、絵美ちゃんも通えるんですか?」
「いやまあ、小学生に見える大学生がいるだけなんだけど」
「お姉さんは大学生なんですか?」
「私は週刊誌の記者。ここの卒業生だけどね」
「大学生はいないんですか?」
「夏休みだからね。ここに8人いるけど」
「わーい、大学生の大学生だ。大きいなー」
「夏休みじゃなかったらもっといっぱいいるんですか?」
「そりゃあもうぞろぞろぞろぞろと」
「見たいなー、残念」
「私もネタ集まらなくて残念なんだけど……ねえ、一緒に建物の中に入ってみない?」
「いいんですか?」
「いいよいいよ、夏休みで誰もいないんだし」
「わーい」
「と、と、と、中は暗いですねー」
「この机結構狭い」
「あ、お姉さん写真撮ってるー。ぴーすぴーす」
「ぴーすなんかするんじゃないっ。大学生の小学生になりたいんなら、 おすましして勉強してるフリでもしてなさい」
「でも本もノートもないし〜」
「おい、おまえ、持ってるの貸してやれ。この子達の周りに座って」
「わーい。カリカリ」
「じゃあこっち来て。この掲示板でも読んでなさい」
「はーい。でもこの漢字読めなーい」
「じゃあ大学生の小学生は無理だー。次は上の階に上がる」
「わーい、機械だ」
「ちっ、こっちは研究室か。さっさと写真を撮ってしまおう。 学生実験室は開いてないか。次は図書館だ」
「わーい、小学校の図書館の何倍もあるー」
「ほら、図書館は静かにね。よし、次は学食だ。飯おごってやるから来なさい」
「わーい、ご飯だ〜」
「……とりあえずヤラセ写真はこんな所でいいか」
「写真出来たらくださーい」
「はいはい、送ってあげるから、住所教えてね」
「なんか楽しかったね」
「もう帰らないといけないね」
「じゃあ気をつけて帰りなさいね。知らない人についていっちゃダメだよ〜」


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