「誘拐」11h1/国道沿いのファミレス

「すみません、売売新聞のものです」
「三京テレビのものです」
「東京7chのものです」
「なんだい、警察の次はマスコミかい」
「誘拐犯をご覧になられたのですか?」
「私は見てない。接客したアルバイトの子二人が見たんで、彼らが人相とかを聞かれていたけど」
「じゃあそのアルバイトの方々に話をお聞きしたいんですが」
「どうする?早く帰って寝たい?そういう事らしいから手短に頼むよ」
「えー、犯人をご覧になられたんですか?」
「ええ」
「どのような感じでしたか?」
「んー、髪染めて派手な服着た若い女二人が、 割と大きな小学生の女の子連れて入ってきたんですよ。 姉妹なのかな、と思ったんですけど、女の子は大きな割に地味でおどおどした雰囲気で、 派手な女二人とは不釣合いでしたね。誘拐だったんですね」
「顔は良く見られましたか?」
「その女の子がお子様ランチを注文したんです。 で、その隣に座った家族の子が、小学6年で『お子様ランチがいい』って駄々こねて両親に叱られてたんですよ。 その隣にお子様ランチを持っていって、さらに駄々をこねて、 母親がたまらず隣に声をかけて学年を確認したんです。 そんな事があったから、一部始終を見ていました。」
「平然と隣と会話をして、食事もしたんですか、犯人は」
「そうですねぇ。女の子はほとんどしゃべらなかったですね。 無口な子だなと思ってましたけど、おびえてたのかもしれませんね」
「なるほど。どうもありがとうございました。………え?何?あ、もうちょっと待ってください」
「はぁ」
「今入った情報によりますと、誘拐されていたのは、 24歳の男子大学生だったという事らしいのですが…」
「へぇ………えーー?うそでしょー。 だってピンクのカーディガンに赤いスカートにふりふりの靴下に ……あなたもさっきのテレビ見たんでしょ?」
「ええ、見ました。でもあれは犯人に着せられたとの事で」
「確かに背はちょっと高くて体は大きかったし、ちょっと色黒だったし、 髪は短かったけど、下向いてうじうじと……恥ずかしがってたのかな ……でもお子様ランチを食べてたんですよ。 男子大学生があんな女二人に誘拐されるなんて…あれ男だったの?24歳の?」
「おれだって男子大学生だぜ、おれ21だぜ。……おれあんな服着れねーよ」
「見たくないって。やだ、そんなおっさんだったの?あれ。 ちょっとー、どういう事よー、新聞記者さん〜」
「いや、私達に聞かれましても」
「もう疲れて眠いのに、これで寝たら夢に出てきちゃうじゃないのー」


[11h2へ]
[11目次に戻る]