「誘拐」11g2/神奈川県警山田警察署
「失礼します…」
「あ、これは佐藤さんの奥さんで」
「昨晩はどうもお騒がせいたしました」
「いえいえ、すぐに見つかって良かったですねぇ」
「ところで、実際に誘拐された子の事なんですけど、
やはりご挨拶に行かないといけないと思いまして。ご住所を教えて頂けないものでしょうか？」
「あ、なるほど、それではこちらに書きましょう」
「ありがとうございます。で、着ていた服を犯人に捨てられてしまったそうで？」
「ええ、服だけではなく持っていたもの全部捨てられたそうで」
「あらまあ。やはり服くらいは買って持っていってさしあげないと、と家族で話し合いまして。
体格はどのくらいでしたのでしょうか」
「あ、それは洋子ちゃんとほとんど同じでした。間違われただけのことはありますね」
「やはりそうでしたか。それでは行ってまいります。お仕事中お邪魔しました」
「いえいえ、どういたしまして」
「あ、今の、佐藤さんとこの奥さん」
「そうです。間違われて誘拐された子に挨拶に行くんだそうで住所を聞きにこられました」
「ほう」
「それと、犯人に服を捨てられたという話を聞いて、服を買ってもっていくんだそうで、間違われた子の体格も」
「ほう……間違われた『子』？」
「………あ。」
「知ってるのかな……２４歳の男子大学生だってこと」
「自分より一回り年下なんだから『子』でもおかしくはないですが…」
「どんな服買って行くんだろう…」
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