「誘拐」09/山田警察署の入口付近

少女が到着してから署内は随分慌ただしくなったが、なかなか情報がつかめない。 事件の概要は既に署長から発表されてるし、犯人に関する情報はまだしばらくかかるだろう。 しかし少女に関する情報はもう出てきてもいい頃だが。
警察官に付き添われた若い男性二人が玄関から入ろうとしている。そこに記者達が群がる。
「誘拐された少女のご家族ですか?」
「君達邪魔だ、あっち行って」
警察官が人ばらいをする。
「そのくらいいいじゃないですか、ご家族ですか?」
「いや、まあ友人というか、会ってみないとなんとも言えませんが」
「それはまあ…ん?」
みんな考え込んでいるうちに奥に入ってしまった。
奥の方から、少女に付き添っていた婦人警察官が出てきた。
「女の子の様子はいかがですか?体調とか、気持ちは落ち着いているかとか」
その婦人警官はなぜか怒っている様子だった。
「えー元気ですよ。時々泣いてるみたいですけど」
「やっぱりショックが大きかったんでしょうね」
「さあ。私の担当じゃないみたいですから」
????各社記者が顔を見合わせているうちに、婦警さんはどこかに行ってしまった。
しばらくして、さきほど入った男性二人が出てきた。
「ご確認されたんでしょうか?」
「ええ、まあ」
「そういう事は後で記者会見発表してあげるから、あっち行って」
「えー、報道各社のみなさん、15分ほどしてから、 署長より記者会見にて事件の概要に関して補足説明をいたします。会議室にお入り願います」
とりあえずそっちの方に行ってみるか…


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