「誘拐」03/郊外のファミレス

ようやく大きな道に出てしばらく飛ばした後、
「もういいだろう、どこかでご飯食べようよ」
「そうねぇ、どこかにファミレスでもあったら」
さらに二十分ほど走ると、何もないところに突然ファミレスが現れた。
「あそこにしよう」
二人に手をつながれて車を降りた。
「こいつ大丈夫かな?」
「可愛い服を着て、物静かにレディになったものね。大丈夫よ」
ファミレスの入口に近づくと明るさが増して、さっき着せられたカーディガンが淡いピンクだというのが分かった。 裾も袖も長く、ガラスにかすかに写る自分を見るのが恥ずかしくて下の方を見て歩いた。 入口を入ると女性店員がにこやかに笑いかけてきた。あまりの恥ずかしさに顔が赤くなった。
「いらっしゃいませ、喫煙席、禁煙席どちらがよろしいでしょうか」
「喫煙。」
「こちらへどうぞ」
「さ、恥ずかしがってないで早く座りなさい」
その席は窓際で、外が真っ暗なせいで鏡のように自分が写る。 僕の顔の下にひらひらの襟に裾の長いピンクのカーディガン、その下から見える赤いスカート。
「ほーら可愛いじゃない、2学期からはTシャツにジーンズなんてやめて、 そういうの着て小学校に通ったら?髪ももうちょっと伸ばして」
男子大学生がこんな恰好で学校に行けるわけないじゃないか、 でも9月になるまでに僕が大学生だと証明できなかったら、小学校に行かされるんだろうか…
「さて、なに食べる?」
「…あんまり食べたくない」
「でも、車でまだ何時間も走るんだよ。ちょっとは食べておかないと。 量が少なめのはないのかな……あっ、これくらいならちょうどいいか。うん」
と言って指差したのはお子様ランチだった。
「とんかつ定食とお子様ランチと…」
「私もとんかつ定食」
注文し終わった後、隣の席に家族連れがやってきた。 店内は人が少ないけど、店員を含めれば十人以上いるはず。ここで大声を出せば……

[今すぐに大声を出す]
[店員さんが近くに来るのを待つ]

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