エッセイ
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『ガンジス河でバタフライ』たかのてるこ(幻冬舎文庫) |
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笑い4.5点 涙2.0点 恐怖0点 総合4.5点 |
50歳を過ぎて腹話術師デビューした母を見て、”自分もやりたいことをやろう”と決心したてるこは、
一人旅をすることにした。行き先は香港とシンガポール。不安と緊張のなか旅人デビューしたてるこは、
恐れ知らずの行動力と関西人パワーで様々な人と出会い、仲良くなっていく。そして海外一人旅に魅せられた
てるこは、神秘の国インドに旅立った。
間抜けなタイトルとインパクトある表紙にひかれて書店で衝動買いしてしまった。
まるで小説のようなエッセイだ。個性的な登場人物との出会い別れ、笑えるエピソード、
泣けるエピソード、スリリングなエピソードの連続、そして何より著者である「たかのてるこ」のキャラクターの面白さが
際立っている。
一人旅は憧れるが、人見知りの激しい僕には、ここまで面白い旅はできないだろう。というより、
ほとんどの人はこんなハチャメチャな旅できないのではないか。それにしても、旅に出たいという
気持ちをかきたてられるエッセイだ。
これから読もうと思っている人は、電車では読まないほうがいい。立ち読みもやめたほうがいい。
爆笑してしまって、周囲の冷たい視線を浴びること間違いなしだから。
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『サンダルの国』高橋敦史(連合出版) |
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笑い0.5点 涙1.0点 恐怖0点 総合3.5点 |
旅行雑誌の出版社を辞めて、アジア各国を旅した著者による写真+旅行記。
≪珍道中でもなくセンチメンタルな自分探しでもなく、もっと人々の声に耳を傾ける旅があっていい≫、そう言う著者は、
積極的に現地の人と交流をはかり、一国民として、一民族として彼らが日々何を考え、現状をどう思って暮らしているのかなどを、
取材者というより、友達として聞いている。
パキスタン、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、中国、インド、ネパールとアジア各国をカメラ片手に旅した著者の旅行記。
珍道中でもセンチメンタルでもない旅行記の本書には、たしかに笑いや感動はさほどないが、新聞やテレビでは知ることのできない
地元の人の本心、不満、考えていることなどを知ることができる。また、アジアにこれから行く人には、旅人心得的な使い道も
あるかもしれない。というのも著者は≪誰もができるふつうの旅を描きたい≫という信念で旅をしていたそうなのだ。だから、
旅の参考にすべきところがたくさんあると思う。
それにしてもアジアはパワフルだなぁ。平和ボケした僕みたいな旅行者が、ボーっと歩いていようものなら
あっという間に餌食にされてしまいそうだ。アジアには、旅人に油断を許さないようなパワーがある。
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『悪の枢軸を訪ねて』雨宮処凛(幻冬舎) |
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笑い2.5点 涙1.5点 恐怖1.5点 総合4.0点 |
愛国パンクバンド”維新赤誠塾”のボーカリストで、”ミニスカ右翼”の異名をとる著者は、ブッシュが「悪の枢軸」と
名指しで批判する前に、北朝鮮とイラクを訪れていた。北朝鮮ではよど号グループの招待所に宿泊し、北の指導員に
連れられ思想教育のような観光ツアーをさせられる。歌手として招待されたイラクでは、公賓の待遇を受け、
フセインの長男と会見までした。そんな彼女が北朝鮮とイラクを訪ねて、目で見て、肌で感じたことを記した見聞録。
9.11の同時多発テロでアメリカ人は団結し、世界もテロ撲滅に向かって動いた。その勢いに乗って、ブッシュは
大量破壊兵器を保有しているテロ支援国家として、イラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と名指し批判した。先日、
『戦争広告代理店』を読んだばかりだったため、この「悪の枢軸」というキーワードは、一体誰が考えたのだろうかとか、
あっという間に浸透したこのキーワードには、どんな意図が込められているのだろうかとか、非常に気になってしまう。
僕は本に影響されやすい単純な性格なので、何としてでもイラクを攻撃したがっているアメリカが、
いまいち信用できなくなってしまっているのだ。
さて、本書の内容だが、かなりスゴイ。ゴスロリ(ゴシック&ロリータ)という日本でも目立つような服装で
悪の枢軸に乗り込んでいく著者もスゴイのだが、北朝鮮の様子はもっとスゴイ。貧富の差が尋常ではなく、飢餓に苦しんでいる
人がたくさんいるのは深刻だ。しかし、まるで張りぼてのような、劇場のような北朝鮮の様子はかなり滑稽だ。
生まれたときから洗脳のような教育を受けている国民たちは、部外者から見れば「変」としか思えないことも、
当たり前のこととして受け入れ、反抗心を抱くこともなく生活しているようだ。一方、イラクの様子は、あまり笑えない。
経済制裁や劣化ウラン弾による被爆などにより、子供を中心にして罪のない国民が大勢亡くなっているのだ。
これを読むと、ますますイラクに戦争を仕掛けようとしているアメリカには疑問を感じてしまう。世界で一番、
大量破壊兵器を持っているであろうアメリカは、何のためにイラクを攻撃しようとしているのだろう。
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『幻獣ムベンベを追え』 高野秀行(集英社文庫)
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笑い3.0点 涙0.5点 恐怖0.5点 総合4.0点 |
コンゴ奥地のテレ湖で目撃された謎の怪獣モケーレ・ムベンベ。そのムベンベを探すべく、早稲田大学探検部の11人は
「コンゴ・ドラゴン・プロジェクト」を発足。語学、メカ、岩登り、洞窟など得意分野も様々な個性豊かなメンバーは、
いくつもの困難を乗り越え、ようやくテレ湖にたどり着く。見渡す限りジャングルが続くコンゴ奥地での、彼らのサバイバル生活が
幕を開ける。
ネッシー、ビッグフット、ツチノコ、モケーレ・ムベンベ・・・興味のない人には、「馬鹿らしい。そんなのいるわけないだろ。」と
一笑に付されてしまうこれらの未確認生物たち。しかし、ひょっとしたらいるかもしれないというロマンを感じる人たちもいる。
ただ、普通は、テレビで見たり、”いるかもしれない”と想像を膨らませる程度でおわる。僕もその程度だ。しかし、高野さん
をはじめとする11人は、日本と国交もないコンゴへ調査に行ってしまうのだ。仕事ではなく、大学の部活動でだ。君たちが
不思議生物だよ、と言いたくなってしまう。
現地のリンガラ語を覚え、様々な企業を回ってスポンサーを募り、コンゴ政府に手紙を送り、と準備の段階から前途多難。
コンゴに入ってからは、現地の村人とトラブルになったり、メンバーがマラリアにかかったり、ムベンベを追うどころでは
なくなっているのではないかという気がした。
巻末のメンバー紹介を見ると、皆、眼鏡をかけた真面目な大学生といった人ばかりだったのには驚いた。それと、
彼らの「何でも食べる勢い」にも驚いた。まさか、ゴリラまで食べるとは・・・。高野さんも作中で書いていたが、
食人の一歩手前まで行っちゃっている。
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『巨流アマゾンを遡れ』 高野秀行(集英社文庫)
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笑い3.0点 涙0点 恐怖0.5点 総合4.0点 |
人食いピラニア、未開の原住民、危険なジャングルなどなど、書物や人から話を聞いて得た知識だけでは、アマゾンの
イメージはボヤけるばかり。やはり行ってみるしかない。
ということで、アマゾン河の河口の街・ベレンから、地元の船を乗り継ぎ、ひたすら本流をさかのぼる旅が始まった。
アマゾンというと秘境の中の秘境という感じがする。しかし、本書を読み、秘境というイメージは薄れた。
原住民は銃を狩りをし、観光客がイメージするような原住民を演じるプロの原住民(?)がいたり、
インチキくさい高額なジャングルツアーがあったり…。ただ、著者は、語学の才能を発揮し、やたらと地元に溶け込み、
奇妙で個性的な人々と出会い、ディープで笑える波乱万丈の旅を見せてくれる。
『幻獣ムベンベを追え』のとき同様、今回も笑いが満載なのだが、固定のメンバーでジャングルサバイバルをした『ムベンベ』
のときと異なり、今回は旅の中で個性が爆発しているような様々な人たちと出会うことで笑いが生まれている。
とにかく笑いに飢えている人はぜひ読んでみてください。
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『ジェットコースターにもほどがある』
宮田珠己(小学館) |
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笑い3.0点 涙0点 恐怖0.5点 総合4.5点 |
無類のジェットコースター好きの著者が、ジェットコースターに乗るためだけにアメリカや台湾を訪れ、
そこでジェットコースターに乗りまくって、その魅力を分析し、考察するジェットコースターレポート。
そのほかにも、新しいジェットコースターを考えてみたり、ジェットコースターと高所恐怖症について考えてみたり、
バンジージャンプに挑戦してみたり、お化け屋敷に入ってみたり。そして、巻末には、ジェットコースターの
各種ランキング(速さ、高度、距離、傾斜、落差)とオススメコースター、そして日本のコースターのレビューが
載っている。
黄緑色一色のその表紙と、思わずクスッと笑ってしまったそのタイトルに惹かれて借りてみた。
1ページに1度の笑いを狙っているかのような笑えるエッセイ。全体として、肩の力が抜けるような
笑いが多く、ときどき受けを狙いすぎて逆に笑えないところもあったりする。
ジェットコースターに乗るために、アメリカに旅行に行くなんて、贅沢というか物好きというか。
と思っていたら、作中には、著者に勝るとも劣らないコースターマニアが出てくる。そのうちの一人は、
受験を控えた高校生で、彼は何とジェットコースターにいつでも乗れるようにと、就職せずに
フリーターの道を選んだそうだから、驚くというか呆れるというか変わっているというか。
ジェットコースターに乗りすぎるとそんな副作用があるのかなとも思ってしまう。だいたい
同じジェットコースターに何度も乗るっていう心理が分からない。2、3回ならまだ分かるけど、
6回7回と乗るのだ。僕は、ジェットコースターは嫌いではないけど、1回乗れば十分かなと思う。
でも、本書のレポートや、途中にある「ジェットコースター豆知識」などを読んでいると、
無性に乗りたくなってしまう。ただ、遊園地って休日は混むから嫌なんだよなぁ。
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