- “夕凪の時代”はたぶんこんな感じです。 -
  

  

 タイトルから見える景色。 
第1巻 ヨコハマ買い出し紀行/鋼の香る夜/入江のミサゴ/
しましまのごろごろ/雨とその後/
エンドレス町内会/プレ寝正月/午前2/2
  
左記が各話のタイトルです。
中には普通の言葉もありますが、
一瞬首をひねりたくなるような物も見られると思います
(「午前2/2」とか)。
これらがまず読者を少し不思議な
「ヨコハマ買い出し紀行」に案内してくれる
素敵なガイドさんとしての役割を果たしてます。
それから、先ほど「普通」と言った言葉も、
独特なバランスを持っています。
すでに「普通」が「普通」でなく
かといって素人が単純に狙うと
このバランスは出ません。
ここらへんは例えば「ヨコハマ」の小説を
お書きになられてるHPメーカさん達も
苦労なさっているのではないでしょうか。
第2巻 午後1/1/ひと粒300枚/カマスのアヤセ/
プロテイン/ナビ/鎌倉花火/砂の浜/砂の道
第3巻 エプロン/波/古都ムサシノ/北の大崩れ/
鵬(HOH)/水神さま/ヨコスカ巡航/今の人
第4巻 日々のお子達/遠い夏休み/青のM1/朝比奈峠/
縁(ゆかり)/ひなた/カフェ アルファ/赤い水/
<Short Essay> 即興曲
第5巻 富士山/横浜買い出し/お客様/夜のにおい/
町のにおい/朝早く/海の河/午後の麦茶/
月夜見(つくよみ)/一眼/ハルトンボ
第6巻 ひとりおどり/星の目 人の目/みんなの船/
レコード/レコード・U/レコード・V/あついすな/
水の時計/やまのあな/NIGHTBIRD/
先生のマーク/武蔵野通信
第7巻 中空の白/白い朝/白ペンキ/藍の粒二つ/
藍色の瞳/青い服/紅−べに−の山/颱風/
私の場所/手紙/岸
第8巻 柿/港/飛行機/焚火/水/谷の道/
ササゲ/チョコレート・ケーキ/網膜/野火/栗
第9巻 塩/むらさきの瞳/風見魚/一年空間/
クロマツ通り/青い音/海抜70/かえる/
おつかれのイエー/入江の者たち/ミナミトビカマス
第10巻 冬の前/冬の中/冬のおわり/マルコ茶/
人の花/echo/緑/眠る人/目にしみる黄/
飛ぶ者/地表
第11巻 ふたり/開店の二杯/A7M3丸子マルコ/崖の水/
渡り/「超黒」/道と町と住人/常連さん/しずく/
潮端の子/ふたりの船
第12巻 プラグ/武蔵野原/さかな/はこにわ/
初日の出/松の木の下/高度1m/町で/
ソバゼンザイ/R&P/声
第13巻 50km、6時/スイカの日/夏の終わりに/鼓動/
顔にあたる空気/おねえさん/滴/視線の星/
solo/月の輪

 

 行きたくて、さみしくて

一見するとヨコハマの舞台はとてものどかで穏やかで暖かそうに見えます。
でもところどころで少し残酷とも思える「ヨコハマ」内の現実が見え隠れします。
そんなところで「人が生きていくってことは大変なことなんだなあ」と感じることもあったり。
なんだかちょっと目をそらしたくなったり。
 

「住めば都」って言葉がありますよね。
馴染んでしまえばどんな状況もそれなりのものに感じられる。
ちょっとあったかそうでちょっとさみしそうなヨコハマの世界は、なんとなく行ってみたい気になるんだけど、
今の現実の方がいいかもって思えることもあるんです。
人付き合い、文化、季節の変化、そういったものはあきらかにヨコハマの方が感じられる。
優しい気持ちになれる世界。僕らが忘れかけてるサウダージ。
 
でも、そういったものは今この現実で感じれないからそう感じるだけかもしれないですよね。
無い物ねだり、というと少し行き過ぎかな。
ただ、そう思うんです。
もし今現実にそれらのものがあったとしたら、もしかしたらうるさいくらいの喧騒や交通網、希薄な人間関係も
「欲しくなる」かもしれないです。
人間の欲は尽きません。
  

文化/習慣/大気。
どんなに欲しくても一朝一夕では手に入らないもの。
それが見えるから、それらが優しく見るものを包むから、「夕凪の時代」という言葉が優しく見るものを包むから、
僕らはそこに逃げ込みたいだけなのかもしれない。
 

「後に夕凪の時代と呼ばれるてろってろな時代」というフレーズは、
このあとに来るさみしい時代の人々が、懐かしんで言った言葉なのかもしれないです。
風が凪いでいる時間は、何もかもが穏やかで優しくて、ゆっくりと世界が水の底に沈んでいることにも
なかなか気付かない、もしくはそんなことも忘れちゃうような静けさが感じられるから。
もちろん、その逆で、今の現実の世界のようなうるさくて煩わしい世界が来たからなのかもしれませんね。
 

サウダージを感じてその気分に浸るのは悪くないことではありますけど。
 

 

 時間は踊る
アルファさん

アルファさん by まーちさん

時は進んでいく。
止まることなく、戻ることなく、前へ、前へ。
彼女もロボットだから、
もしかしたら止まることはないのかもしれない。
僕たちが生きていたことを後々まで覚えていてくれて、
次世代、次々世代に語り継いでくれる。
もしかしたら月琴の音色と共に歌ってくれるかもしれない。
確認する術はないけども、想像は出来る。
ただ、彼女は日々進化していく。
今の彼女だけを見てこの先の彼女もまた同じなのだと
思うことは早合点だろう。

彼女にも思い出はある。
それを彼女は懐かしむことは出来る
だけどはたして彼女は思い出を哀しく思うことはあるだろうか。
いつの日かおじさんがガソリンスタンドからいなくなり、
治療してくれた先生が病院からいなくなり、
そしてタカヒロがいなくなったとして、
それらの人物を「会えない哀しさ」を伴って
思い出すことはないのだろうか。
ただ、懐かしむだけだろうか。


ウソでもいいからそばにいてね一人はソロソロ飽きたみたい


きっと、いつの日か、彼女にもつらい日が来る。
そんなとき、誰がそばにいられるのだろうか。

people-go-round.
彼女の周りには素敵な人がその時代時代にたくさんいる。
だから彼女は哀しまなくてもすむかもしれない。

time-go-round.
だから、ヨコハマ買い出し「紀行」。

   


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