第六話「桜の花の咲く下で!?」




ウッソも無事戻った2日後の朝。1−Aには、アスカのやたら嬉しそうな声が響いていた。
「そこで、アタシはそいつらをちぎっては投げ、ちぎっては投げ・・・・・。」
「アスカは、蹴りしか使ってなかったじゃないか。」
「うるさいわね!表現ってヤツよ!」
「とにかくアタシは、悪党からそこに座ってるウッソ少年を助けるために大奮戦したって訳よ!」
いきなり指をさされたウッソは、愛想笑いだけを浮かべてアスカ達に顔を向ける。もちろん内心は不愉快きわまりない。
『はぁ・・・一体、何回同じ話をすれば気が済むんだろう?』
アスカは、ウッソが戻ってからこっち、その話ばかりしているのだ。もう学校中がその話を知っていることだろう。
本当に助けに来てくれたカテジナに、なんだか申し訳がないような気がしてくる。
『っていうか・・・・人質だった、ボクのことを見捨てようとしてたそうじゃないか!』
カテジナから、あとで聞いた話だ。
だが、しかし、そんなこと思っていても口には出さない。出せない。
相手は、口も達者なら、手も達者なのだ。わざわざ痛い目になどあいたくない。
「まあ、自分で言うのもなんだけど、アタシって・・・・正義感が強いのねぇ〜。囚われのクラスメートを助けるために、単身悪の巣窟に乗り込むんだもん!」
目を輝かせながら、言うアスカ。もちろん本気だ。
「なに言ってるのさ。ボクが、何も言わなきゃ、見捨ててたくせに・・・。」
「あんたバカァ!?あれは・・・・そう、あんたの正義感を試したのよ!」
「えーっ!?とてもそうは・・・思え・・・・ます・・・・。」
アスカの一睨みで、口をついて出そうになった、文句を飲み込んでしまう。
騒いでいる二人と、それを見る野次馬を、しり目に
『はぁ・・・あの二人見てるときが滅入ってきた。別のことでも考えよう・・・・。
そういえば、明後日の日曜日は歓迎会を兼ねた撮影会だっけ・・・。』
ウッソは、気分転換にはにはちょうどいいイベントだな、と思う。さすがに、写真部のイベントにはアスカとシンジは来ないだろうと思ったからだ。
しかし、その一方で、なぜか、一抹の不安を拭えないでいた。
『まさか・・・とは思うんだけどね・・・・・。ボクのこういう予感って当たるんだよなぁ・・・・。』
連続で起こったトラブルに、ことごとくあの二人が絡んでしまっているため、どうしてもあの二人に対しての警戒心が湧いてきてしまう。
あの二人って、ボクにとっての疫病神なのか・・・・・・?
そんなことを考えていたため、ウッソはアスカが言った、致命的なことを聞き逃してしまうことになった。
「・・・・・わかったわね!みんな!」
『ん?まぁ・・・・ボクには関係ないや。』
ウッソは、もうトラブルに巻き込まれるのはゴメンだ。あの二人には絶対関わるもんか。そう考えていた。




「さて、いよいよ明後日には撮影会ってことになってるんだけど、これは、新入生の歓迎会でもあるから・・・・お花見ができる場所にしましょうか。」
部長のレコアの口から、予定が発表になった。
部室には、2年生のビーチャ・オーレグ、チャック・キース。ウッソと同じ新入部員である、モンド・アガケが揃っていた。
他にも部員はいるらしいのだが、今日来ているのはこのメンバーだけだった。どうやら幽霊部員も何人かいるらしい。
レコアの話によると、学園から少し離れたところに、花見の穴場があるという。
春らしく、桜を撮りながらの歓迎会。写真部のイベントとしては妥当なところだろうと、ウッソも思う。
「で・・・その穴場ってどこなんだい?レコア部長。」
ビーチャの問いかけに、レコアはにっこりと笑うと、
「実は、私も詳しいことは知らないのよ。当日にカイ先輩が来て教えてくれるそうよ。」
カイの名前を口に出したところで、少しだけレコアは、イヤそうな表情を見せる。
「あの人が見つけてきた場所だから少し不安だけど、まぁ・・・・今回は、これで妥協しましょう。」
『はぁ・・・・相変わらず仲悪そうだなぁ・・・。』
今日の所は、当日の予定を立てるだけになるらしい。
食べ物や飲み物を持ってくる担当などが決められていく。
「カイ先輩にも釘を差して置いたけど・・・・・・あなた達も、アルコールの類は持ってこないように!解った?特に、ビーチャ。」
「えぇっ!?なんでオレだけ名指しなんだよぉ!?」
「前科があるからに決まってるだろ?ね、部長。」
キースがレコアの尻馬に乗る格好で、ビーチャをからかった。
『ちっ・・・・てめぇだって去年持ってきてたじゃねぇか。』
ビーチャが恨めしそうに、キースを睨む。
二人は去年のこの会にアルコール類を持ってきていたのだが、
なぜかビーチャだけが見つかり、当時まだ二年だったレコアにこっぴどく怒られた過去がある。
もちろんビーチャは、キースも持ってきていたと主張したのだが、
問題を起こしておいて、この上まだ人に責任をなすりつける気かと、さらに、絞られたのだ。
「とりあえず、そう言うわけだから。じゃあ、日曜の11時に校門の前に集合。いいわね。」
「ボク達以外の部員は来ないんですか?ここにいる以外の人達は。」
ウッソは、ふと気になった疑問を口にする。
「ウチは幽霊部員も多いのよ。一応、電話で連絡はするけど・・・まず来ないでしょうね。」
この学園では、クラブの掛け持ちは、比較的当たり前のように行われている。
そして、それと同じくらい、複数の部に入部するだけで、活動はほとんどしない生徒もまた多いのだ。
「へぇ・・・そうだったんですか。じゃぁ、ここにいるメンバーだけで行くと思って間違いないんですね?」
「そうよ。でも、なんでそんなこと聞くの?」
「いえ、持ってくる食べ物とかの量を、考えなきゃいけないなぁって思っただけですから。」




そして日曜日・・・・。
集合時間よりも、ほんの少しだけ、早く着いたウッソを待っていたのは、レコアと・・・・・カテジナだった。
「あれぇ?カテジナさん!?どうして?」
「昨日、ウッソと、電話で話したでしょ?そのあと、私も行きたくなったからレコアに頼んでみたのよ。」
微笑みながら、話すカテジナ。
「でも・・・いいんですか、レコアさん?その・・・カテジナさんは、部員じゃないのに、部の行事に参加なんて。」
「あら?ウッソは私が一緒だとイヤなのかしら?」
「い・・・いえ!?そんなこと・・・嬉しいです。」
レコアとカテジナは実は仲がいい。
以前に、カテジナがシュラク隊を壊滅させたとき(5話より以前)に、仲良くなったのだ。
レコアは、ジャーナリストになるのが夢だ。だからなのだろう、街で起こる様々な事件に首を突っ込みすぎる傾向にあった。
そのせいで、トラブルに巻き込まれることも多々ある。
そんな数あるトラブルの中の一つで、どうやら仲良くなったらしいのだが、レコアが当時のことを公表せず、
また、カテジナも、黙したままなので、真相を知る者は少ない。
そんな事情をウッソが知るわけもなく、ただ、
『なんだかよく解らないけど、カテジナさんも一緒に来るんだ!ラッキー♪
今日は、なんだか、いい1日になりそうだ♪』
などと少しにやけた顔で考えていた。
パシャッ
不意に聞こえた、シャッター音に驚くと、そこには、カイが立っている。
「へへへ・・・にやけちゃってるねぇ、ウッソ。まぁ、いい顔、撮らせてもらったぜ。」
『自分の方がよっぽど、にやけてるじゃないか!』
ムッとして、思わず口を開こうとしたウッソだが、それよりも一瞬早く、カテジナが、カイに手を振り上げていた。
「わわっ!?」
カイは思わず頭を抱え、ひっくり返る。が、振り上げられた手は、カイにあたる直前で止められた。
「次はないと思うことね。」
氷のような目で睨まれたカイは、後にこう語ったという。
「オレもジャーナリストとして、いろいろ修羅場をくぐったつもりだったんだが・・・・・あの時ほどビビッた事は無かったぜ。」
冷ややかな目でカイを見おろしながら
「ウッソのことをどうこう言うより前に、自分の顔を鏡でよく見る事ね。」
どうやら、カテジナも、ウッソと同じ事を考えたようだ。
パシャッ
二度目のシャッター音。しかし、今度はカイのカメラからではない。
「こちらこそ、いい顔を撮らせてもらいましたよ、カイ先輩。」
レコアがカメラを手に、ニヤリと、笑う。
「ちっ、勘弁してくれよな・・・・。」
カイは苦笑を禁じ得なかった。
「あれ?カイ先輩、何やってるんです?」
ビーチャ、モンド、キース達も到着する。ちなみに、約束の時間は少しオーバーしていた。
まだ、地面に、しりもちをついたままになっていた状態のカイは、少し顔を赤らめながら、立ち上がり、
「うるせぇな、なんでもないっての。それよりお前ら!遅刻だぞ!」
スーツについた土を払いながら、ビーチャ達に当たり散らす。
「へへへっ、いろいろと準備ってモノもあることですしね・・・・。」
ビーチャ達は少しも悪びれた様子もない。
「さ、全員揃った事だし・・・・・・その穴場とやらに、案内してもらいましょうか?カイ先輩。」
「あ・・・あぁ、んじゃ、行くとしますかね。」
「で・・・・どこに向かうんです?」
ウッソの問いに、カイは黙って、学園から見える山を指さした。
「「「えぇっ!?山に登るのっ!?」」」
まさか、花見で、山に登ると思っていなかった部員達は一斉に声を上げたのだった。




「へぇ・・・こんなとこに、こんな場所があるなんて・・・・・ちょっとビックリですね。」
ウッソは少々つかれた表情を浮かべながらも、感嘆の声を漏らした。
目の前に広がる、たくさんの満開に咲いた桜の木・・・・・しかも、なぜか、人が一人もいないのだ。
「へぇ・・・この山にこんなとこがあるなんてねぇ・・・・私も全然知らなかったわ。一体、どこからこんな情報仕入れたんです?」
「まぁ、細かいことは抜きにしようや。まずは、桜の前で、記念撮影といこうぜ。」
「・・・・・そうね。そうしましょうか。」
レコアは、カイが話をはぐらかしたようにも感じ、少しいぶかしく思ったのだが、
早くも桜の下に集まる一同を待たせても悪いので、問いただすのは後回しにすることにする。
「じゃ、撮るぜ〜。」
カイがシャッターを押そうとしたその時・・・・・。
「あら?なんで、あんた達がここにいんのよ?」
ウッソが振り向くと、そこには・・・・・疫病神が立っていた。
『あぁ・・・なんでここに、こいつらが・・・・・ここは穴場じゃなかったのか?』
ウッソは、トラブルがけたたましい足音を立てて、近づいてきた錯覚にとらわれていた。



Bパートに続く・・・・・。アイキャッチ作るのやめるかも・・・・。(謎)

Bパート〜♪
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