第五話「鮮烈?シュラク隊!?」




廃墟と化した教室で、ゆうゆうと食事をとるアスカ。大暴れしたあとでお腹も空いていたのであろう。
実に、上手そうに弁当を平らげている。
逃げ遅れた生徒達の屍が転がり、地獄絵図のようだ。もちろん、レイと爆発のきっかけを作った豹馬は特に念入りにやられたようだ。
シンジはというと、顔に大きな紅葉が付いただけで、許してもらえたようだ。
その分、レイと豹馬に対する攻撃が増していたことは言うまでもない。
「ふう・・・一汗かいた後の食事はおいしいわね・・・。シンジもそう思うでしょ?」
「そ・・・・そうだね・・・。ハハ・・・・。」
痛む頬をさすりながら、なるべく教室の惨状を見ないように窓の外に目を向けた。
「あれ?あの人は・・・昨日の人じゃないかな?」
シンジが見たモノは、校門を出ていくカテジナの姿だった。
「ねぇ、アスカ。アレって、昨日の人・・・・・・・うわあっ!?」
アスカは箸をへし折り、薄ら笑いを浮かべていた。
「ふ・・・そういえば、あの女にも借りがあったわね・・・。」
「借りって・・・アスカ・・・。あの人には、勝った!って言ってたじゃないか!?」
これ以上まだ暴れる気なのか!?シンジは、危うく言葉を飲み込む。これ以上ぶたれるのはゴメンだ。
「こうも言ったでしょ?勝ったんだけど、何者かに後ろから殴られたのよ!
あの女の差し金に決まってるわ!見るからに、卑怯者の顔をしてるじゃない!」
少し興奮気味にまくし立てるアスカ。
「ひ・・卑怯者の顔って・・・。それはアスカの偏見じゃないかな?後ろから殴られたって言っても、ホントにあの人の差し金かわからないじゃないか。
「なによ?あんた、アタシよりもあの女の肩を持つって言うわけ?幼なじみのアタシよりも・・・あんなどこの馬の骨ともわからないような女の肩を?
・・・・・アタシが嘘を言ってるって言うのね・・・・。」
シンジはアスカと出会ってから、何度この失敗を繰り返したのだろうか?
シンジは、最低でも手形をもうひとつもらう羽目になることを覚悟した。
シンジは、目をつぶり、歯を食いしばる。
しかし、アスカの行動はシンジの予測とは大きく違っていた。
「シンジ!あの女を追うわよ!あの女がいかに卑劣な女であるかを、証明してあげるわ!」
「えぇぇぇぇっ!?午後の授業はどうするのさ!?」
「アタシが嘘を言っていないって事を証明する方が、百万倍も大事に決まってるでしょ!」
もう、何を言っても無駄のようだ。
『ああ・・・教室はこの有様だし・・・・その上さぼり・・・きっと、凄く怒られるんだろうなぁ・・・。』
なにやら異常に燃えているアスカを、少し恨めしい目で見てしまうシンジであった。




「ここか・・・・いかにもって場所ね・・・・。」
今は使われていないらしい倉庫だ。シャッターには、「引越公社」と書いてある。
カテジナが口に出したように、いかにもいわゆる「不良」や「チンピラ」がたまり場にしてそうなところではある。
「さて・・・ウッソが心配ね・・・。とりあえず、中に・・・。」
意を決して、シャッターに手をかける。
さすがに、人質を取られてることが気がかりなのであろう。緊張の色がはっきりと見て取れる。
シャッターを開け、薄暗い倉庫の中へと踏み込む。
シャッターが閉まる音が後ろから聞こえる。まわりの物陰からも人の気配がする。
どうやら、囲まれてるらしい。
「ウッソは無事なんだろうね?」
カテジナは、臨戦態勢を取った。
「ふふん・・・人の心配よりも、自分の心配をするんだね。」
リーダーらしき女が、すっと物陰から出てくる。長い髪の、なかなかの美人だ。ウッソ好みとも言えるだろう。
「あんたの大事な坊やは、無事だよ。今のところはね。」
女は自分の隠れていたところから、ウッソを引っ張ってくる。
ウッソは意識を失っているらしく、何の反応もない。
抵抗するなら、ウッソは無事ではすまない。そう言いたいらしい。
リーダー格の女・・・・ジュンコ・ジェンコが手で合図すると、物陰から一人、また一人と人影が姿を現す。
かつて、カテジナが壊滅させたはずのシュラク隊、そのメンバーである。
「さぁ、覚悟はできてるね?」
じわり、とシュラク隊は包囲を縮めてくる。
カテジナは、かつて無いピンチを実感していた。
後ろに二人、左右に二人づつ、正面に三人といったところか?カテジナの知っている限りシュラク隊は、これで全員である。
少なくとも、完全に予期せぬ所から、ガツンとやられることはない。
しかし、そのことが判ったところで、人質を取られている以上、こちらが抵抗できないことには、変わりはないのだ。
『ウッソさえ・・・・ウッソさえ、人質に取られていなければ・・・。一瞬でいい、ヤツらの気がそれる何かがあれば・・・・。』
カテジナにできるのは、そのチャンスを待つことだけだった。
「姉さん!最初はアタシから行かせてもらうよ!」
九人の中で、最も血の気の多いヘレン・ジャクソンが、叫ぶやいなや、襲いかかってくる。
それを合図に、ウッソを見張っているジュンコを除いた全員が、動き出した。
シュラク隊の復讐劇が幕を開けたのだった。



カテジナの追跡は思ったよりも容易であった。
追跡と言うよりも、アスカの
「あの女、絶対に悪いコトしてるに決まってるわ!そういう輩が行きそうな場所。そこを探すのよ!」
という、偏見に満ちた意見により自ずと探す場所が限定されたからだ。
結果論から言うと、その判断は正しかった。
「シンジィ、この倉庫なんて、いかにもって感じじゃない?」
「そうかなぁ?ボクそういうのわからないから。さっきから、もう3度も同じ様なこと言ってるけど、全部はずれじゃないか。
「今度こそ間違いないわ!アタシの正義の直感がここを悪の巣だと告げているのよ!」
『アスカの言う正義って何なんだろうな?』
疑問に思ったが、聞かないことにする。答えはきっと、こうだからだ。
「なによ!アタシが正義じゃないとでも言いたいわけ?」
そして、また殴られることになる。いくらシンジが迂闊な人間でも、一日にそう何度も失言をするわけではない。
第一そんなことばかりしていたら、身が持たないではないか。
「ほら、あそこに窓があるわ!覗いてみるわよ!」
シンジが、心の中で呟いている間に、アスカは窓に向かって走り始める。
「あ、待ってよぉ、アスカ!」
シンジも慌ててアスカのあとを追った。
もう、使われていないらしい倉庫の持ち主のことを、なんとなく考えながら。
『引越屋さんって、案外儲からないのかな?それとも、他の会社との競争に負けたとか・・・。はは・・・どうでもいいか、そんなこと。』
倉庫のシャッターには「引越公社」と書かれていた。
二人は倉庫の中を覗き込んだ。そこには・・・・。




Bパートに続く・・・・・。(早くアイキャッチ作りたい・・・。って言うか、作れるのかな?)
Bパート〜♪
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