「ああ!?シンジ!」
派手な音を立てて、壁に激突するシンジを見て、悲鳴にも近い声を上げるアスカ。
もちろんシンジは気を失っている。
キッとレイをにらみつけるアスカ。
「この女・・・一度ならず二度までもシンジを・・・・・。」
もちろんレイが100%悪い。・・・・・・アスカの中では。
「・・・・・・あなたが突き飛ばしたように見えたけど。」
冷静なツッコミは、この場合逆効果だ。
「あんた、まだ懲りてないようねぇ・・・・。」
昨日とまさしく同じパターンで、立ち上る殺気。
表情こそ変わっていないが、レイの頬をたらりと、汗が伝う。
「・・・・・・・じゃ、さよなら。」
レイは脱兎のごとく逃げ出した。昨日のシンジと同じように。
「逃がすモンですか!」
アスカは、猛烈な勢いでレイを追い始めた。
「う・・・・うーん・・・あれ、アスカ?」
思ったより早く復活したシンジが見たモノは、
ものすごい勢いで、遠ざかっていく二人の少女の後ろ姿だった。
「へぇ・・・ココが、霊研ねぇ・・・。何で、カーテン閉めきってんだろ?」
ウッソは、新聞部の手伝いで霊研に来ていた。
写真部と新聞部は元々協力関係にある。もっとも、今年のように部長が同じ人物がやるというのは異例のことだが。
「ゴメンね。ホントは2,3年がやる仕事なんだけど・・・。新聞部も写真部もろくなのがいないから。」
レコアの話によると新聞部でまともに活動してるのは、実質二人(レコアを合わせて)。
写真部に至ってはレコアだけだという。
「まったく、あいつらときたら・・・・余計な活動には熱心なんだから・・・。」
昨日カテジナに聞いたことは、本当らしい。
『ハハハ・・・実はちょっと、その活動にも興味がある、何て知れたらまずいだろうなぁ・・・。』
ウッソにとっては、
『隠し撮りで小遣いまで稼げるのなら、悪くないか。』
などと、昨日の時点で少し考えていたのだ。
「うふふ・・・・閉めきってるのは、この方が雰囲気が出るから・・・うふふ・・・。」
「うわぁっ!?シャクティ!・・・・・いつからそこに?」
シャクティはウッソの質問には答えずなおも続ける。
「それに・・・・・見られたら困ることもあるでしょ?・・・・・・うふ・・うふふふふ」
なぜか、あさっての方向を見ているシャクティ。
「あ・・・あのさ、シャクティ。ボク達、新聞部の企画でクラブ活動の特集をやるんだけど・・その・・・。」
自分の知っているよりも、ずっと怪しさを増したシャクティに少々気圧されながらもウッソは自分の役割を果たそうとする。
「ふふふ・・・・知ってるわ・・・取材、でしょ?・・・・。」
そもそもこの企画は、まだ部活を決めかねてる人などのために恒例として行われてるモノで、
取材により、各クラブのことを細かく知ってもらい、できるだけ、多くの人にクラブ活動をしてもらおうという狙いで、
現在の教頭、ギレンが始めたモノである。
本当は
「優良種たる、我が校の生徒はあらゆる分野で頂点に立たねばならん。そのためには一人でも多くの生徒が
何らかの活動を行い、己の向上に努めねばならんのです!」
と言う理屈のもと、全校生徒を強制的にどこかに入部させるはずだったが、
「強制はよくないな。」
という、ビアン理事長の一言であっさり却下され、現在のように、「強く入部を推奨する。」程度に収まっている。
『それにしてもシャクティ、前から怪しかったけど、何かココに入部が決まってから、水を得た魚みたいになってるな・・・。
それにしたって、まだ入部から三日も立ってないのに、この怪しさのパワーアップぶりは一体・・・。』
『朱に交われば赤くなる』と言う言葉があるが、元々赤いモノが、赤いところに入るとどうなるのか?
シャクティはその答えを示しているかのようだった。
「あら?あなたウッソ君の彼女?」
少しからかう口調で、レコアが割って入ってくる。
「ち・・・違いますよ!からかわないで下さい!」
シャクティとの二人きりの会話に、いや、シャクティの雰囲気に耐えられなくなったウッソは内心ほっとしながらも、
『な・・・なんてコト言うんだよ!そんなうわさが立ったら、ボク学校に来れなくなるじゃないか!』
と、かなりひどいことを考えていた。
「さ、冗談はコレくらいにして、部長はまだかしら?」
「さっきからいるんですけど・・・。」
急に後ろから、声をかけられ思わず血の気が引くレコア。
「何であなた達は、みんな気配を断って近づいてくるのよ!」
レコアの後ろから声をかけたのは、心霊研部長のララァ・スンだ。
「別に気配を断ったつもりは・・・・・・。」
「ま・・・まぁ、いいわ。とりあえず、部員はあなた達二人だけ?集合写真撮っておきたいんだけど。」
「あと・・・一人・・・私と同じ新入部員が・・・ふふふ・・」
『うげ・・・・まだ、この手のタイプがいるのか・・・・。』
ウッソは少し、げんなりとしてきていた。
シンジは、思わずアスカ達を追いかけていた。
自分が行ったところで、アスカを止めることができないことは解っているのだが、なぜか走っていた。
別に、正義感だとかそういうことで走っていたわけではない。なんとなくあの少女が、他人に思えなかったからである。
『見えた!』
前には、レイがどこかの教室に入り、素早く扉を閉めている場面が見える。
間一髪、アスカから、逃げ切ったようだ。
中から鍵をかけたらしく、アスカはガタガタと扉を開けようとしている。
いったん扉からはなれ、憎々しげに扉をにらみつけているところへ、ようやくシンジが追いついてくる。
「もういいじゃないか、アスカ。」
息を整えながらシンジはアスカをなだめようとする。
「もうあの子も懲りただろうから。」
シンジは気を失っていたため、アスカがレイを追いかけることになった顛末は知らない。
しかし、長年のつきあいからアスカが悪いと言ってしまえば怒りの矛先が全て自分に向くことを体で知っているシンジは、
事の次第はともかくとりあえず、アスカのご機嫌を取ろうとしたのだ。
だが、今回はそれがかえってアスカの癇に障ったようだ。
「誰のために、あの女を追いかけてたと思ってんのよ!」
シンジは当然解っていない。
「え?」
シンジが気が付いたときには、アスカの足が目の前に迫っていた。
がっしゃぁぁぁぁぁん!!!
派手な音を立てて、シンジは扉に突っ込む。
当然、扉は破壊されている。
にやり、と笑いながら
「はんっ!コレで、あの女にも天誅を与えることができるってモノよね!」
青い目の破壊神は、レイの隠れた薄暗い教室へと足を踏み入れたのだった。
「はぁっはぁっはぁっ・・・・・。」
息を切らし、汗だくになってはいるが、なぜかレイは無表情のままだ。
「うふふふ・・・・どうしたんです・・・・綾波さん・・・ふふ・・・ふふふ・・・。」
「鬼よ。」
あまり抑揚のない声で短くそういうと、素早く鍵をかけ部屋の奥にある掃除道具入れを開けると、
「私はここにいないから。」
そう言うと中に隠れてしまう。
「あの・・・・あの人が・・・・その・・・新入部員?」
呆然と成り行きを見守っていたウッソがようやく口を開く。
「そのようね。」
もう、これくらいで驚きはしないのか、冷静な口調でレコアが応じる。
「そうです。あの子が綾波レイ。ウチの新入部員です・・・。」
こちらもさほど動じた様子はない。
「それじゃ、綾波さんにあそこから出てきてもらって部員の集合写真を・・・。」
レコアが口を開いたその時。
がっしゃぁぁぁぁぁん!!!
扉を破壊して何か大きなものが飛び込んでくる。
「な・・・なに?」
さすがにこれにはレコアも、驚きを隠せない。
『今度は何だってんだよ!?』
『うふ・・・・うふふふふ・・・・・ふふ・・・。』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』
掃除道具入れの中のレイだけが解っていた。
この部屋に破壊神が降臨したことを。
「・・・あなたも新聞部?それとも、占いに来たのかしら?」
心霊研では、占いも行っている。
だが、目の前にいる「ソレ」は、とてもではないが占いなどと悠長なことを考えている風には見えなかった。
ララァを無視し、ぐるりと室内を見回すと、「目標」がいないことを確認する。そして、最も手近にいたウッソに向かい、
「あんた・・・・あの女をどこに隠したのよ!」
胸ぐらを掴み、穏やかとはとても言えないたずね方をする。
『あ・・・この子、確か入学式の時に遅刻しそうになってた子だ・・・。近くで見るとやっぱり綺麗だなぁ・・・。』
ウッソは全然別のことを考えていた。当然アスカの質問など聞こえてはいない。
「ちょっと、あんた聞いてんの!」
ぼーっとして、反応のないウッソに腹を立て平手を振り上げる。
と、その時。
ビュッと何か大きいものが風を切る音をアスカの耳はとらえた。
とっさにウッソを離し、身をかわす。
「これは・・・・タイヤ!?誰よ!こんなもの投げて!危ないじゃない!」
怒りの声を上げながら振り返るアスカ。
「何か、騒がしいと思って見に来てみれば・・・。あなた・・・ウッソになにしてるの・・。」
「カ・・・・カテジナさん!?」
「ウッソ、もう大丈夫よ。あなたは私が守って上げるから。」
にっこりとウッソに微笑むと、先ほどの微笑みが嘘のような、冷たい表情に変わり、
「誰だか知らないけど、覚悟はいいわね。」
聞くものがぞっとするような声で、アスカに言い放つ。
一触即発のその気配に誰もが息をのんでいた・・・・。
「あなたも占いを?」
たった一人を除いて。
第三話 完
NEXT EPISODE
あとがきぃ♪
はう!?時間が・・・・。実はコレ仕事に行く直前に書いてたり。(・・;
なんとか、かんとか第三話です〜♪
次回はいよいよ、この物語の二大ヒロイン大激突。(爆)
この戦いが終わればしばらくは、いろんなキャラにも
スポット当ててみようかなぁ〜何て思ってます。
ではでは〜♪
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