「カ・・・カテジナさん!?」
「え!?・・・ウッソなの?」
二人は、しばし無言のままだ。
カテジナは、ウッソがこの学校にいることに、
ウッソは、捜していた「あの人」が助けてくれたことに驚いて。
「ウッソ、あなた、この学校に入ってたのね。」
にっこりと微笑みながら、どこへともなくタイヤをしまい込む。
「はい、カテジナさんからこの学校の話を聞いてるウチに、ボクも入りたくなっちゃって。」
嘘は付いていない。ただ、この学校が気に入ったわけではなく、カテジナがいるから選んだだけの話だ。
「私、学校のこと結構書いてたものね。」
メールでのやりとりを思い出し、ウッソにとって都合のいい勘違いをしてくれる。
まさか、こんな素直そうな笑顔を浮かべる少年が、一歩間違えると、
ストーカーまがいの事をしていたとは、夢にも思っていないようだ。
「あの・・・・カテジナさん・・・もしよかったら、一緒に帰りませんか?」
少し照れながら、ウッソは言う。この照れはどうやら演技ではないようだ。
「そうね・・・・じゃ、一緒に行きましょうか。方向が違うから、駅までになっちゃうけれど。」
「はい!」
ウッソは、心の中でガッツ・ポーズを取った。
ウッソ達は、駅前の喫茶店にいた。
せっかくだから、ゆっくり喋ろうということになったのだ。
実を言うとこの二人が会ったのは、これが初めてだった。
写真はお互いに送ったことがあるので、顔だけは知っていた、と言うわけである。
ただし、ウッソはカテジナを直接見たことがあった。
写真の隠し撮りに行ったことがあるのだ。
少年の秘めたる想い・・・と、言うと聞こえはいいが、単なるストーカーまがいである。
もちろんそんなことはカテジナは知るよしもない。
ただ、目の前で照れくさそうに語りかけてくる少年に、好感を覚えるばかりだ。
「で、ウッソは何かクラブには入ったの?」
「はい。写真部と電脳部に入りました。」
写真部、と聞いて、カテジナは眉をひそめる。
「あれ?どうかしたんですか、カテジナさん」
カテジナの態度に、少し不安を覚えたウッソは、コーヒーを飲む手を休めてたずねた。
「ええ、実はウチの写真部ってあんまり評判がよくないのよ・・・。」
「あまり実績がないって意味ですか?」
カイのことを思い浮かべ、内心『違う意味だろうな』と思ってしまう。
カテジナは大きく首を振り、
「違うわ・・・・素行が悪いのよ。」
カテジナの説明はこうだった。
実績はそれなりにあるらしいが、OBのカイが、在学中のあたりから少しおかしくなってきたらしい
なにやら、女生徒の隠し撮りなどで収益を上げているというのだ。
証拠がないので、処分などはされていないがほぼ、公然の秘密だという。
ウッソは隠し撮りのくだりで、ドキッとしてしまう。
自分のことではないと解ってはいるのだが。やはり少し後ろめたいらしい。
「今の部長はがんばってるんだけど・・・。部員がねぇ・・・・。」
怒ってると言うより、呆れた感じである。
「ウッソは、あの連中に染まらないでね。」
「ハハハ・・・部長にも似たようなこと言われましたよ。」
『そうか、カイさんが、元凶なんだな。適当に距離を持ってつきあわないと、ボクの評判も悪くなっちゃいそう。』
ウッソは、これからの先輩に対する接し方を考えつつ、話を変えることにする。
「ところで、カテジナさんはクラブに入ってないんですか?クラブの話はメールに書いてたコト無かったですけど。」
「うーん・・・そうねぇ・・・。今年はどこかに入ってもいいかしらね。」
「って、コトはやっぱり入ってないんですね。(ちぇっ、どこかに入ってればそれを撮るのに。)」
カテジナはクスリ、と笑うと
「そうねぇ、何かクラブに入ってウッソに部活してる所の写真でも撮ってもらおうかしら?」
「え!?」
冗談めかして言ったカテジナの言葉にウッソは一瞬見透かされたような気になって、
顔を真っ赤にしてしまう。
「でも、Hな隠し撮りとかされたらイヤだし・・・ねぇ?写真部のウッソ君。」
「ひ・・ひどいですよ、カテジナさん!」
冗談であることは、カテジナの表情で解ったが、やはり隠し撮り小僧ウッソとしては穏やかではない。
それも、あこがれのカテジナにそんなことを言われたら尚更だ。
真っ赤になって、そのままうつむいてしまう。
「ふふ・・・冗談よ。」
カテジナは、ウッソを可愛いと思い始めていた。
「う・・・うぅ・・・・。」
「あ、気がついたのね、シンジ!」
シンジが目を覚ますと、そこは自分の部屋だった。
「・・・・・何で、ボク、自分の部屋にいるんだっけ?」
少し記憶が混乱しているようだ。
「あんた、覚えてないの!?廊下で、変な女にぶつかって気を失ったのよ!」
「ん・・・そうだっけ?」
「それで、ノビてるシンジを担いでココまでアタシが運んで上げたんだからね!」
『はしょってるけど嘘は付いてないわね。』
アスカは一人で納得する。
「ふーん・・・そうなんだ・・・。・・・・ゴメン。」
シンジは申し訳なさそうに、頭を下げる。
「バカね、そういうときはお礼を言うモンでしょうが!大体あんたは、謝りゃいいと思い・・・。」
「それもそうだね。・・・ありがとう、アスカ。」
今度は照れくさそうに言うシンジに、なんとなくアスカまで、照れてしまう。
「じゃ・・・じゃあ、アタシは帰るからね。」
「うん。じゃあ、そこまで送るよ。飲み物も買いに行きたいし。」
そういって、財布をとるために、ハンガーに掛けてあった上着のポケットを探る。
「あれ?・・・おかしいな?」
「なによ?まさか財布落としたなんて言うんじゃないでしょうね?」
「財布はあるんだけど・・・・生徒手帳がないんだ。」
「あんたって、ほんっっっっとにドジね!」
自分が引きずってるときに落ちたかも知れないなどとはこれっぽっちも思わない、アスカ。
「そんなこと言っても・・・。困ったな・・・。」
「別に困るほどの物でもないでしょ。再発行してもらえばすむんだし。誰かが拾ってるかも知れないじゃない。」
少しイライラし始めている。これ以上アスカを待たすのもまずい。
「そうだね。じゃ、行こうか。」
『でも・・・どこで落としたんだろう・・・。』
『うーん、結局生徒手帳は見つからなかったなぁ・・・。』
シンジは、窓の外を見ながら無くなった生徒手帳のことを気にしていた。
『再発行してもらうかな・・・・。はぁ・・・入学早々なのに、カッコ悪いなぁ・・。』
「それでは、これでHRを終わります。みんな気を付けて帰るのよ。」
HRの終わりをマーベットが告げる。号令のあと、クラスメート達は、クラブに帰宅にと、思い思いに散っていく。
「シ〜ンジ。何ぼーっとしてるのよ。」
「アスカか・・・何?」
「何?じゃないわよ。今日もクラブ見に行くんでしょ?昨日は見れなかったんだし。」
『昨日か・・・・そう言えば、昨日ぶつかった子が拾ってくれてるかも知れないじゃないか!』
急に立ち上がったシンジにちょっと驚いた、アスカは、ちょっと不機嫌そうな声を上げた。
「な・・なによ!ぼーっとしてたと思ったら、急に立ち上がったりして!」
「ゴ・・ゴメン。でも、ちょっと手帳のことで心当たりを思いついたんだ。ちょっと行ってくる!」
鞄を持って、教室を走って出ていくシンジ。
「ちょ・・・ちょっと待ちなさいよ!バカシンジ!」
アスカも慌てて後を追った。
「あ・・・・・ボク、あの子のクラス知らないや・・・。」
急に立ち止まったため、後ろから来たアスカはシンジにぶつかりそうになる。
慌てて立ち止まると、
「あのねぇ・・・そんなことも気づかないで飛び出しってったわけ?」
「あはは・・・そうみたい。だって今日ずっと気になってたから。」
照れた笑いを浮かべながら、シンジが振り返る。
「ふふん、やっぱりあんたにはアタシが付いてなきゃダメみたいね!」
何がやっぱりなのかは知らないが、腰に手を当てて大いばりである。
「アスカ・・・あの子のクラス知ってるの?」
「そんなの、知ってるわけ無いじゃない。
いい?あんな変な女そうそう、いなんだから片っ端から聞けばいいのよ!」
「・・・・・・・・そんなの誰だって、思いつく方法じゃないか。」
「ん?何か言った?」
「い・・・・いや、いい考えだね、早く行こう!」
またアスカの機嫌を損ねてはたまらないと、シンジはとりあえず、昨日ぶつかった場所へと向かった。
「どこ行く気なの?」
走りながら、アスカがたずねる。
「昨日と同じ場所。もしかしたら、いるかもしれないでしょ?」
「ふーん・・・あんたにしては、いい考えね・・・。現場百回って言う言葉もあるし。」
それはちょっと違うんじゃないか?と思ったが、口に出すのをやめるシンジであった。
「あ・・・シンジ!危ない!」
ふと前に気づくと、レイが角から出てきたところだった。
昨日と同じパターンで、レイとぶつかりそうになるシンジ。
ごっちぃぃぃんっ!
一つ昨日と違ったことはレイとぶつからないように、アスカが思いっきり突き飛ばしたため
シンジが頭をぶつけた場所が、レイの頭ではなく、壁だったということである・・・・。
CM(?)をはさんで、Bパートに続く・・・・・。←CMやめて、アイキャッチ入れようかな。オレ、描けないけど。(爆)
Bパート〜♪
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