第二話「あなたに会うために!?」Bパート




シンジは、声も出せず、頭を抱えてうずくまってしまう。
一方の少女・・・・綾波レイは、何故か平然としていた。
「・・・・大丈夫?」
もちろんシンジは声も出ない。
「・・・・・・・・じゃ、さよなら。」
しばらく、うずくまるシンジを見ていたのだが、コクン、と首を傾げると、
そのまま立ち去ろうとする。
「さよなら、と違うわぁぁぁぁっ!」
ごずっ、と鈍い音とともにレイの頭頂部にアスカのかかとがめり込む。
さすがに、今度は平然という訳にはいかず、無言で前にばったりと倒れてしまう。
「シンジ、大丈夫?この女に何をされたのよ!」
今さっきまで、自分が殺そうとしていたことも棚に上げレイを悪者に仕立て上げる。
それにしても、殺そうとしたり心配したり結構忙しい。
「あ・・・なに・・・ボク、どうなった・・・・・あーっ!
「な・・・なによ!?急に大きい声出して!?」
「ボク、アスカから逃げてたんだ!」
「そぉんなこと誰も聞いてないでしょおが!」
シンジの首を絞めながら、ガクンガクンと、揺さぶりをかける。
「やめて・・・・彼、死んじゃうから。」
いつの間に復活したのか、赤い目がじっと、アスカを見据える。
「なによ、あんた?」
じろりと、レイをにらみつけるアスカ。気の弱いシンジなら、それだけで失禁物の眼光だ。
もっとも、どんなに怒っていたとしても、シンジには使わない目つきではあるが。
「私は、綾波レイ・・・・・・。」
自分に殺意が向けられているのを解っているのか、いないのか?さして動じた様子もなく、淡々と答える。
「誰もそんなことは、聞いてないわよ!あんたが、シンジに何をしたのかって聞いてんのよ!」
「知らないわ。私が歩いてたら彼がぶつかってきただけ・・・・。」
「ふーん・・・・何で、あんたは無事なのよ?」
どうやら、こうなった原因は全てレイにあると決めたようだ。
だんだんと声に冷たい物が混ざり始める。
もはや、アスカには話をする気はなくなっており、会話は襲いかかるタイミングを計るために行っている物でしかなかった。
「・・・・・・・・知らない。」
レイの方もアスカと会話を続ける気はないらしく、アスカの方を見ようともしない。
床に、まるでタコのようにぐにゃり、と横たわるシンジを凝視しているだけだ。
『殺す!』
レイの視線の先にある物を理解した瞬間。アスカは殺意をより明確に、激しくしていた。
本人は気づいていないようだが、シンジは中学時代なかなか、人気が高かったのだ。
幼い頃から、アスカのリンチに耐え、逃げ回るウチに、人よりも運動能力が発達しており、
加えて、繊細な顔立ちも手伝って、もてる・・・・・・はずだった。アスカさえいなければ。
アスカは、シンジに興味を示す人間をもう何人も闇に葬っていたのだ。
だから表だって、シンジに気がある素振りを見せる者は、いつしかいなくなっていたのだ。
「こんなにぐったりして・・・・・かわいそう・・・」
アスカを一切無視し、シンジの顔にそっと手を当てるレイ。
その行為が引き金になり、アスカはレイに襲いかかっていった。




『キレイなおねぇさんだなぁ・・・・』
それが、ウッソのレコアに対する第一印象だった。
レコア・ロンド。写真部の現部長だ。気が強そうだが、ショートカットのよく似合うなかなかの美人だ。
年上に弱いウッソにしてみれば、ぼおっと見とれても無理はないのかも知れない。
ちなみに彼女は、新聞部の部長も務めているらしい。
「・・・・・というわけなの。わかった?ウッソ君。」
「はいっ!」
反射的に返事をしたものの、実は半分ほどしか聞いていない。
まさか、
「部長に見とれてましたぁ。」
などと言えるはずもなく、とりあえず解ったフリをすることにする。
『あとでさりげなく確認を取るフリをして聞き直しておこう。
確か、部活のある日取りとか、年間の予定とか話してたよな・・・・・。』
ウッソは、素早く考えをまとめる。
「ウッソ君はどうして写真部に入ったのかしら?」
「え?」
「写真部に入った動機よ。」
軽く微笑みながらたずねるレコア。
「もちろん写真が好きっていうのは解ってるんだけど・・・・。」
「あの・・・・ボクは・・・そう!自然を撮るのが好きなんです!
山とか河とか・・・そういうところで育ったからかも知れないけどああいう風景を見るとほっとするから・・・。
そういう風景の一瞬をカメラでとらえられたらなぁって、そう思ってるんです。」
半分は本当だ。写真を始めた動機は確かにそうだったのだから。
もっとも今の被写体は、始めた動機とずいぶん違うのだが。
レコアはにっこりと笑うと、
「よかった、まじめそうな子で。ここの写真部には、女の子を撮ることしか頭にないバカが多くて困ってるのよ。」
最後の方は、ため息混じりに言う。
「悲しいですよね、そういうのって。」
ウッソは内心ひやりとしながら調子のいいことを言う。
『実は、ボクも女の子撮るの大好きです・・・なんて、口が裂けても言えないな、コレは。』
「女の子を撮るのも悪くはないと思うけど・・・それだけってのはねぇ・・・・ねぇ?カイ先輩。」
いつの間に暗室から出ていたのか、カイが肩をすくめて立っている。
「手厳しいねぇ。でも、別に女の子ばっかりおいかけてる訳じゃないんだぜ?
今じゃ、こうしてジャーナリストの端くれ・・・・」
「ウッソ君。こういう先輩を見習っちゃダメよ。」
カイを完全に無視して、ウッソに肩を掴んで語りかける。
「おいおい、後輩に変なこと吹き込んでもらいたくないねぇ。誤解しないでくれよ、ウッソ少年。」
カイもウッソに視線を向ける。
「この二人って、もしかして・・・・・仲悪い?」
ウッソはどっちの味方をしたモノかと、思わず両者の顔を見比べてしまうのだった。




ごすっ!
アスカは肩で息をしながら、今度こそ動かなくなったレイを見おろしていた。
「ハアハアハア・・・・・今度こそ立ち上がってこないでしょうね・・・・・・
このアスカ様をここまで手こずらせるなんて・・・・・・」
一撃必殺が座右の銘と言ってはばからないアスカにとって、何度殴っても起きあがってくる
レイは、不快感をあおる存在だった。
ちなみに、レイは強いのではなく単にしぶとかっただけというのをここに追記しておく。
「ほら、帰るわよ!シンジ!」
まだ気を失ったままのシンジに襟首を掴むとそのまま引きずり、足早に立ち去ろうとする。
どうやら、今日のクラブ見学は中止になるようだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・むくり。
アスカ達が立ち去ってしばらくすると、不意にレイが起きあがる。
無表情というか、とぼけていると言った方がいいのか迷うような表情を浮かべてはいるが、
かなりダメージはあるようで、顔は血だらけだし、ふらふらと足下はおぼつかない。
ふと、目線を落とす生徒手帳が落ちている。
普段のレイならそのまま気にもとめないが、殴られたショックで少しどうかしてたのだろうか。拾い上げて中の生徒証まで見る。
「碇・・・・・シンジ君・・・。そう、それが彼の名前なのね・・・・・。」
綾波レイは碇シンジに一方的に運命を感じていた。




ここは、どっちの味方をするのもよくないな・・・。ウッソはそう思い、
「あ・・あの、ボク電脳部の方も見てみたいんですけど・・・・・。(この場は逃げた方がいいな。どっちに味方するのもまずそうだもの。)」
とりあえずこの場を離れることに決定する。
「あらそう?それじゃ、さっきも言ったとおり来週には、新歓を兼ねた撮影会するから、予定開けといてね。」
「オレも、気が向いたら、参加するからよ。」
「先輩は、来なくても結構です。」
きつい口調でレコアがカイに応じる。喧嘩するほど仲がいいという雰囲気ではないようだ。
「あ、それが世話になった先輩に対する態度かねぇ。」
本格的に揉め始めそうな気配。
「じゃ、失礼しまーすっ!」
ウッソは巻き込まれる前に、写真部の部室を後にした。
『まず電脳部にも入部して、それから、学校の中をぶらつきながら「あの人」を捜そう・・・・。』
ウッソはそう決めると電脳部へと向かった。




電脳部に入部届けを出した後、ウッソは「あの人」を捜していた。
ウッソがこの学校に入る最も大きな動機になった人物だ。
このことは、誰にも話していない。(シャクティは何故か知っていたが。)
ふと、別の学校に進学したオデロやトマーシュはどうしてるかな?と、いったことを思う。
この二人とは、中学時代いつも一緒だったなぁ、と思ったところで、
何故かずいぶん前のことのように感じている自分に思わず苦笑を漏らしてしまう。
「でもよく考えたらボク、あの人のクラスとか部活やってるのかとか知らなかったんだっけ。」
ぶらつきながら捜すにしても、情報が少なすぎる。ウッソは自分の迂闊さを呪った。
「・・・・・・・・・・今日はもう帰ろっと」
バカバカしくなってきたウッソは、校庭を横切って一直線に校門に向かう。
校庭では、野球部やサッカー部が練習をしていたが、その間を抜けるようにしてウッソは歩いていく。
『明日から、休み時間にでも2年の校舎をまわってみるか・・・。』
考えながら、歩いているのであまり周りはよく見ていなかった。
カキーン!
「うわっ!?どこ打ってんだ、弁慶!?」
「すまねぇサンシロー・・・・って、危ないぞぉっ!」
『え?』
ウッソが気づいたときには、もうボールはよけられないところまで迫っていた。
『ぶつかる!?』
思わず目をつぶるウッソ。
だがいつまで待っても、ボールはぶつからない。
ゆっくりと目を開けると、目の前にはボールと、どこから飛んできたのかタイヤが転がっていた。
どうやら、このタイヤがボールをたたき落としてくれたらしい。
「ぼーっとしてると危ないわよ?」
優しくかけられた声。どうやら、タイヤの主らしい。
『女の人か・・・・お礼言っとこう。』
ウッソが振り返るとそこには・・・・・・・「あの人」がいた。
「カ・・・カテジナさん!?」



第二話  完  
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あとがきぃ♪


第二話だったり・・・・・。
ちなみに、淡々と変にしたいんで、「(笑)」とか、顔文字は
本文中には書かないでおこうとか思ってたりしてます。
しばらくはストーリー無しのショートエピソードでやろうかなっと、思ったりしてます。
名前だけ出てる人なんかもその辺で出そうかなっ、とか・・・・。
一応本筋みたいなのはぼんやりと頭の中にあるんですが・・・・・。
うーん・・・・この先ちゃんと収集付けられるかな?(爆)
ガンバレ、オレ!(爆死)

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