第二話「あなたに会うために!?」Aパート




「んーと・・・・ここかな?うん、間違いない。」
ウッソは、今、写真部の部室の前に来ていた。
電脳部とどっちにするか迷ったのだが、掛け持ちもOKだということなので、両方に入ることにしたのだ。
「すいませーん、入部希望なんですけどー・・・・。」
ウッソは、ノックをしてから扉を開ける。
「あれ?誰もいないじゃないか・・・。」
一瞬、『もしかして今日は部活がないのかな?』とも思ったが、入学式からしばらくは新入部員受付のために、
どのクラブも休まないとクラブ紹介の時に言っていたのを思い出し、しばらく部屋の中でも見ながら待つ事にする。
「思ったより片づいてるなぁ・・・・・」
埃などが溜まっていないことから、別に活動していないから散らかっていないだけ、というわけでもないようだ。
暇に任せて、あれこれ物色するうちに、ふと奥の暗室が目に留まる。
「へえ・・・カーテンで仕切ってるヤツじゃ無くってちゃんとした暗室があるんだ・・・。」
興味をひかれ、中に入ってみようとするが扉のノブに手をかけたところで、鍵がかかっていることに気づく。
しかも、よく見れば二重三重にかけてあり、学校の部室にしては不自然ほど厳重だ。
「う・・・胡散臭いなぁ・・・。何か悪いことでもやってんじゃないか?」
高い機材が置いてあるから盗難防止のため、という発想は出ないらしい。
「おい!そこでなにをやってる!」
ビクッとして振り返ると、そこには、少しタレ目でにやけた感じのする男が立っていた。どう見ても、学園の生徒には見えない。
「お前・・・見ない顔だな?新入生か?」
じろじろと値踏みをするような視線を少し不快に感じながらも
とりあえず、用件だけは伝える。
「は・・・はい。1−Aのウッソ・エヴィンです。入部希望なんですけども・・・・顧問の先生ですか?」
「へーっ、そうか・・・・入部希望ねぇ・・・。だけど、残念ながら、オレは顧問じゃねぇんだよな。」
『顧問じゃないだってぇ!?ちぇっ、脅かしてくれるよ、まったく。そういや、こんなヤツ、入学式の時も始業式の時も見なかったぞ。』
驚かされたことや、じろじろと値踏みされた不快感で少し語感が荒くなる。
関係者ではないらしいというのも手伝い、あからさまに不審な表情だ。
「でも・・・・ここの生徒じゃないですよね?高校生には見えないし。」
男は、いかにも不快そうな顔を隠そうともしないウッソに苦笑しながら自己紹介を始めた。
「オレの名前はカイ・シデン、この学校のOBで、今はフリーのジャーナリストをやってる者だ。別に怪しいモン、って訳じゃあない。」
「あ、そうだったんですか。写真部のOBだったんですか?(OBがうろうろすんなって、充分怪しいんだよ!)」
どうやら、関係者らしいと解ると、とたんに手のひらを返すウッソ。
もちろん、心の中で思ってることとは裏腹に笑顔になっている。
「ああ。しかも、卒業してからもこうやってちょくちょく後輩の様子を見に来る優しい先輩って訳ね。」
「そうだったんですか!よろしくお願いしますね!(単に暇なんじゃないのか?それに、自分で優しいとか言うなよ。)」
「・・・・・・・ウッソ・・・お前さん、裏表激しいとか言われないか?」
さすがに、フリー(暇人)でもジャーナリスト。人を見る目はあるようだ。
いや、あれだけ露骨に変われば誰でも解るというものだろう。
「え・・・あ・・・あれは、急に声をかけられたから驚いただけで・・・。(ちっ、鋭い)」
「ふーん・・・・ま、そういうことにしといてやるよ。」
ニヤニヤと笑いながら、カイは暗室に向かう。
「あの・・・カイさん、暗室にはいるなら、ボクも何かお手伝いしますけど。」
別に親切心で言ってるわけではない。
さっきのことがあるから、できるだけポイントを稼いで置こうという打算が働いただけだ。
「ん?ああ・・・別に助手はいらねぇよ。もう少ししたら、今の部長が来るはずだから
入部するんならそいつに言いな。」
そう言うとカイは手早く鍵を開けて中にこもってしまう。
「OBがいちいち母校に現像しにくんなよ・・・。」
ウッソは、思わず口に出してしまっていた。




シンジは、アスカと一緒に放課後の校内をぶらついていた。
もちろん、クラブの見学をするためなのだが、実のところまだ一つも見て回れずにいた。
「シンジィ・・・あんたってほんっっっっっっとに優柔不断ね!
入るんじゃなくって、タダの見学すら決められない訳ぇ!?」
「な・・何言ってんだよ、アスカがボクが見たいところを、片っ端からだめだって言うんじゃないか!」
そう、理由はアスカだ。
「あんたが、アタシの見たいところ選ばないからでしょう!?」
「そんなムチャクチャな・・・・。それなら、一人で見て回ればいいだろ?
別にボクについてくる必要なんて無いじゃないか!」
シンジの言い分は至極もっともだ。
だが、アスカに正論など通じるわけがない。
「あんた、どっかで強引に勧誘されたら、ちゃんと断れるわけぇ?
意に添わぬクラブに、入部させられるかも知れない、幼なじみを救って上げようっていうあたしの気持ちが解らないようねぇ?」
「ボクのためだって言うんなら、好きに見させてくれよ・・・・・。自分勝手なんだから、アスカは。」
シンジはアスカに聞こえないように、小さな声で呟く。
ピクッ
一瞬アスカの耳が、聞きとがめるように動いた。
「もういっぺん言ってご覧なさい
・・・・・・今度は!はっきりと!聞こえるように!」
シンジは、脱兎のごとく逃げ出した。振り返りもせずに。




『逃げなきゃダメだ、逃げなきゃダメだ、逃げなきゃダメだ、逃げなきゃダメだ・・・・
でも、逃げたら後でもっとひどい目にあうかも・・・引き返して謝っちゃおうかな?』
チラッと後ろを振り返ってみる。
アスカはもうすぐそこまで迫っていた。
何故か、口元に笑みが浮かんでいる。
もちろん、目は笑ってなどいない。
『あのバカッ!人の心配も知らないで、勝手なことばかり言うんだからっ!
一度きっちり、解らせる必要があるわね!』
その考えでもはや、頭がいっぱいだった。
アスカ的には、シンジのためを思ってやったことを自分勝手と言われたのだから、怒って当然なのである。
もちろんアスカは、自分がシンジの意見など、ちっとも聞いていないと言うことには気づいていない。
「だめだ、捕まったら殺られる・・・・・・・。」
アスカの表情を見て、和解は不可能と悟る。かといって、このままでは逃げ切れるわけではない。
『あぁ・・・ボクにいったいどうしろと?』
シンジは、泣きながら走っていた。
廊下の曲がり角を、全力疾走で曲がろうとしたその時。
ごっちぃぃぃんっ!
向こうから、歩いて来た少女と思いっきり、頭と頭がぶつかっていた。
どちらにも怪我がなかったのが不思議なぐらいだ。
これが、碇シンジと綾波レイの初めての出会いだった。



CM(?)をはさんで、Bパートに続く・・・・・。←どうでもいいけど、何かCMネタも考えておこうっと(苦笑)
Bパート〜♪
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