入学式のために体育館に移動する直前に1−Aに駆け込んできた一組の男女をウッソ・エヴィンは、冷ややかなまなざしで見ていた。
『何だ、あの二人?』
何故かウッソには、その二人を好意的に見ることができなかった。いや、正確には男の方を、だ。
『特にあの男の方。どっかオドオドしててやな感じだよな・・・。好きなれないや・・・ああいうタイプは・・・。』
いわゆる、虫が好かないタイプ・・・・というよりも
『こいつ!なんかよくわかんないけど、可愛い女の子と入学早々仲良くしやがって!』
と言うのが思いっきり本音である。
どうやら、自分だけがもてていたいと気持ちがあるらしい。
「うふ・・・・うふふふ・・・・・・」
不気味な含み笑いに少々うんざりしながらウッソは振り返る。
「何だよ、シャクティ?」
「ふふふ・・・・ふふふ・・・・この学校・・・おもしろそうだわ・・・・。」
シャクティは、どこか焦点の合わない目でウッソの方を見ようともせずそう言った。
『ふう・・・・またいっちゃってるよ・・・いやだなぁ・・・シャクティと一緒にいるとボクまで、変な目で見られるじゃないか・・・
でも、冷たく当たって入学早々嫌なヤツって、まわりに思われたくないしなぁ・・・・。』
などと素早く計算すると、できるだけ自然な笑顔になるよう心がけながら
「何がおもしろそうなんだい、シャクティ?」
「だめよ・・・・ウッソ・・・あなたのその笑顔は私には通じないわ・・・・・・くすくす。」
「な・・・・何言ってるんだよ、シャクティ。(別にお前のために笑ってんじゃないって。ボクは、ここでは、さわやかな少年でいたいんだよ!)」
「ふふふ・・・・・まあ、いいわ・・・・せいぜいがんばってね・・・・」
まるでウッソの心を見透かすかのようなこの発言。だから、ウッソはシャクティが苦手だった。
「ウッソは、目的があってこの学校に入ったんですものねぇ・・・・ふふふ・・・・」
ウッソは顔色が変わった。シャクティには話してないはずなのになんで知ってるんだ!?
「なんのことだい?それよりシャクティの興味深いコトって何?」
ウッソは話をそらそうとする。
「隠してもいずれ解るのに・・・・・まあ・・・いいわ・・・・予感がするのよ・・・・。」
「(また、イッちゃった言い方を・・・・)へぇ・・・。」
「そう・・・・何か波乱が起きそうな・・・そんな気がするの・・・。」
「(イヤなこと言うなぁ・・・・・。)楽しくなるといいね、シャクティ」
「ふふ・・・ふふふふ・・・・ふふふふふふふふ」
もうシャクティはウッソのことなど見ていなかった。なにやら、その「波乱」とやらに思いを馳せているらしい。
「はい、とりあえず体育館に行くわよ〜」
担任の教師の声が聞こえてくる。
『女の先生かぁ・・・・よかった、むさ苦しい男じゃなくて。鼻がでかい男とかだったらもう最悪だもんな。』
ふと、中学時代の担任であるオリファー・ノイエを思い出しイヤな気持ちになってしまう。
『確か・・・・マーベット先生って言ったかな・・・。学校に来る楽しみが一つ増えた気がする。』
こいつは、何を楽しみに学校に来るつもりなんだろう・・・。ある意味わかりやすいヤツである。
「・・・・・と言うわけで、諸君らは選ばれた優性生徒であるという自覚を持って・・・・・」
『変わった学校だなぁ・・・・こういう時って普通校長が挨拶するモノなのに・・・』
ウッソは、壇上で熱弁を振るっているギレンとか言う、教頭の話を聞き流しながら襲ってくる退屈と必死に闘っていた。
『この後は、クラブの紹介だっけ?ちょっとは今よりも退屈しないですむかな?』
などと考えてる間にどうやら、教頭の話は終わったらしい。
よく聞いていなかったが、学校を何かと勘違いしてそうな、演説・・・というよりアジテーションに近いモノだったような気がする。
『ああいうタイプが、犯罪を犯して、新聞とかに「ここまで来た、教育現場の荒廃」と書かれるんだろうなぁ。』
「・・・・それではクラブの紹介をしたいと思います。強制というわけではありませんが有意義な学園生活を送るためにも・・・」
ウッソが勝手なことを考えてる間に、壇上は教頭に代わり女性の教師らしき人物がなにやら言っている。
どうやら、クラブの紹介が始まるらしい。
「それでは、まずは定番の野球部から・・・・・」
「ねぇ、シンジは何にするか決めた?」
「まだ決めてないよ。っていうか、まだクラブ紹介の途中だろ?最後まで見てその後ゆっくり考えるよ。」
本来決められた席を無視してシンジの隣に陣取ったアスカは早くも退屈してきたのかシンジに先ほどから何度も話しかけている。
「・・・・以上、サッカー部でした。入部希望者は、2−Bのひびき洸まで!」
「では、次はフェンシング部の・・・・」
「ちょぉっとまてぇいっ!!!!!!」
やたらとばかでかい声が響きわたる。
「この次は、拳法部主将による演武と書いてあるじゃないか!なぜ飛ばすッ!」
ふと、見るとなぜかマントを羽織った新入生らしき男子生徒が、進行プログラムを片手に立ち上がり文句を付けていた。
「ちょっと、ドモンやめなさいよ。みんなこっち見てるじゃない!」
「うるさい!レインは黙ってろ!・・・・・俺はなぁ、ここの拳法部の主将が腕が立つと聞いて楽しみにしていたんだ・・・・それを・・その俺の楽しみをなぜ奪うッ!説明してもらおうっ!」
「ドモン・・・楽しみって・・あなた、何を考えてたの?」
怒鳴りつけられたことでムッとしたらしく、レインは少し不機嫌そうな声だ。
「知れたこと!今!この場で!ファイトを申し込む!!!」
シーン・・・・・・
その場にいるドモン以外の全員が『・・・何もこの場でなくても、後で拳法部に行けばよいのでは?』と思ったのだが、
あまりにもイッてしまった、ドモンの雰囲気にだれも口が出せず、辺りは水を打ったように静まり返ってしまった。
「さあ!答えてもらおう!なぜヤツはここにいないんだぁぁぁぁぁぁっ!!!」
そのドモンの変な迫力に誰もが引き気味になったとき
「ドモン・・・・いい加減にしないと、絶交よ。」
レインが、静かな、しかしはっきりとした口調で言い放った。
ドモンの顔色が青くなる。
「わ・・・・・わかったよ・・・レイン・・・俺が・・・・悪かった・・・。」
さっきの迫力はどこへやら、借りてきたネコのようになったドモン。
クスクス・・・・・
そんなドモンの様子を見て思わず失笑を漏らしてしまった者がいた。
その瞬間ドモンの青ざめた顔は見る見るうちに怒りで真っ赤になる。
「そこだぁっ!」
亮の不在。レインに怒られる。二重のストレスを一気に解消する絶好の機会だ。
怒りの鉄拳。パンチキックの乱れ打ち。手加減などは、かけらもなかった。
一瞬のうちに生徒Aはぼろ雑巾になっていた。
「さ、もういいでしょ?あとは、拳法部に行ってから、ね?」
ぼろ雑巾には目もくれずドモンをなだめるレイン。
「あ・・・・ああ、そうだな。俺としたことがついカッとなってしまって・・・・。まだまだ修行が足りんと言うことか。」
あたりは、静寂に包まれていた。
「あー・・・・続き・・・いいかしら?」
いち早く我に返った女教師が、なぜか申し訳なさそうにたずねる。
「もちろんだ、続けてくれ。」
何事もなかったかのようにドモンが促す。
「え・・・えー、それでは次は・・・」
「ねぇ、アスカ、なんで演武って中止になったんだろうね?」
「あ・・・なんか、さっきチラッと聞いたんだけど、司馬亮・・・だっけ?そんな名前の人が病院に運ばれていったんだって。」
シンジは、進行プログラムを見ながら
「ああ、拳法部の主将だね、その司馬さんって人。」
「みたいね。だからじゃない?中止になったのって。何でも暴漢に襲われたそうよ。」
「へぇ、司馬さんって強いんでしょ?そんな人を病院送りかぁ・・・怖いなぁ・・・・・。」
「ほーんと、物騒よねぇ。」
アスカは肩をすくめてみせる。
もちろん、自分がその暴漢であることには気づいていない。
「ま、そんなことどうでもいいわね。それよりクラブどうする?」
「ボクは、やっぱり後日クラブ見学してから決めることにするよ。アスカは?」
「んー・・・・どうしよっかなぁ・・・・。」
クラブ紹介はアクシデントのせいで演武が中止になり、紹介のみとなった拳法部を最後に
クラブ紹介も無事(?)終了した。
「ウッソは・・・・何にするか決めたの・・・?ふ・・ふふふ。」
なぜか含み笑いをしながら聞いてくるシャクティ。
「そ、そういうシャクティは?」
引きつった笑みを浮かべ聞き返すと、
「心霊研究会・・・いいと思わない?・・・・・ふふふふふ・・・」
「ふ・・・ふーん・・・そうなんだ。」
君のイッちゃった雰囲気にお似合いだね。と危うく出そうになるのを何とか飲み込む。
「ボクは・・・写真部か、電脳部にはいることにするよ。そういうの好きだしね。」
そう、言いながら
『この学校って、変なヤツが多そう・・・確かにシャクティの言うとうり、何かおもしろいこと・・・あるかもね?』
ウッソは軽い期待を覚えずにはいられなかった。
第一話 完
NEXT EPISODE
あとがきぃ♪
とりあえず第一話です〜♪
シンジとウッソ二人主役状態で始まった、
この「私立ロンド・ベル学園」どうでっしゃろか?(^^;
年齢や肩書き、性格の設定の基準は作者のイメージです。
キャラは全て高校生もしくは教師等の学園職員にしてしまってます。
だから、その辺のツッコミは勘弁してね。(^^;
やっぱ、ガンダム学園のノリは、活字じゃ難しいかも?
少なくともオレの力じゃ。(苦笑)
うーみゅ・・・・なんかダメね・・・。
そのうちに改訂版だそうかな・・・・。
って言うか、出す。決定。
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