第一話「入学式は嵐の予感!?」




ジリリリリリリリリリリ・・・・・・・
けたたましく目覚まし時計が鳴り響く。
「う・・・うぅん・・・うるさいなぁ・・・・」
体を起こさず手を伸ばし、目覚ましを止めると碇シンジはまた頭から布団をかぶって眠りにつこうとする。
・・・・・・・・・・一時間経過・・・・・・・・・・
ドスゥっと鈍い衝撃が腹部に走る。
「げふぅ!」
シンジは思わずうめき声を上げ、目を覚ましてしまう。
「いつまで、寝てんのよ!バカシンジ!」
怒鳴り声に驚いて、ふと顔を上げるとそこには見慣れた顔があった。
どうやら、寝ているところに思いっきりエルボーを落とされたらしい。
「何だ・・・・アスカか・・・・お休み・・・。」
また布団に潜り込もうとする。
「あんたねぇ、今日から学校始まんのよ?いつまでも寝ぼけるんじゃ・・・・・ない!
言うと同時に、布団をガバッ!とはぎ取る。
「きゃああああああああああっ!H、痴漢、バカ、変態!」
パッシーンと小気味のいい音が、朝の碇家に鳴り響く。
「あ・・・朝なんだからしょうがないだろぉ。それにまだ、春休みじゃないかぁ・・・。」
後ろを向いているアスカに向かって頬をさすりながら小さな声で文句をたれる。
振り返りながら、アスカはシンジの言葉を遮るように、畳みかける。
「あんた今日が入学式だっての忘れてるんじゃないでしょうねっ!
文句言ってる暇があるなら着替えなさいよ!」
「へ?・・・・・・あーっ!忘れてた!」
慌てて飛び起きると、パジャマを脱ぎ出すシンジ。見る見るうちにアスカの顔が真っ赤になる。
「!・・・・レディの前で何考えてんのよ!変態!」
この日二度目のびんたが、シンジの頬を襲ったのだった・・・・・。
・・・・・・・・・・数分後・・・・・・・・・・
「「いってきまーす!」」
見事にシンクロした声が碇家の玄関に響きわたる。ちなみにシンジの頬は両方とも真っ赤だ。
「はい、いってらっしゃい。・・・・・ふぅ、全く朝から慌ただしいわねぇ。
アスカちゃんが迎えに来るのが解ってるんだからシンジももうちょっと早く起きればいいのに・・・。」
二人を見送ったあと、ため息をつきながら、シンジの母・碇ユイはつぶやくのであった。
『シンジ・・・・私のようになるなよ・・・・』
すっかり、ユイに頭の上がらない父ゲンドウは無理だと感じながらもそう思わずに入られなかった。





シンジの家を出てからこっち、二人は少しも休まずに走り続けていた。
もちろんその間もアスカの口撃も休んではいない。
「全く!あんたがもたもたしてるから、入学式早々こっちまで遅刻しそうじゃない!」
「そんなこというなら先に行ったらいいじゃないか・・・・・・(ぼそっ)」
「あんたねぇ、ソレが毎朝起こしに行ってあげてる幼なじみに言うセリフ!?」
アスカの目がほんの一瞬細められる。普通なら、見逃しそうなくらいの一瞬だ。
だが、シンジはその一瞬の変化を見逃さなかった。さすが、幼なじみ。
『まずい、第一段階だ・・・。話をそらそう・・・。』
少し、うわずりながらも
「ね・・ねえ、アスカ、今日から僕たちが通う学校って、どんなトコかな?」
と、不自然にならないような話題をチョイスして話しかける。
「はあ?あんた、ばかぁ?どんな学校も何も一緒に見学に行ったでしょう!?」
「だ・・だからさぁ、どんな先輩がいるのかなぁっとか、
仲良くなれそうな人は、一年生の中にいるかなぁっとか・・・・そういう意味だよ」
シンジは上手く話をそらせたと思い、内心ガッツポーズを取る。
これで、晴れの入学式の日に「砂」にされずに済む。そう思った瞬間だった。
アスカの足がぴたっと止まる。
「そう・・・・あんた、そぉんなに楽しみなの・・・。どーせ、”他の中学から、可愛い子が来てないかなぁ”とか、
”きれーな、先輩がいると嬉しぃなぁ”とか思ってるんでしょう・・・・。」
徐々に殺気がこもっていくのが解る。先ほどとは違い誰の目にも明らかなぐらい、ヤバいオーラを放っている。
ちょっと待て!今の会話をどう聞いたら、そういう風に聞こえるんだ!・・・・そりゃぁちょっとは思ったけど・・。
「ちょ・・・ちょっと待ってよ・・・。ボクは何もそんなつもりじゃあ・・。」
シンジは、じりっ、じりっと間合いを詰めてくるアスカに対し恐怖の表情を浮かべながら、後ずさることしか術を持たなかった。
「ほら、アスカ早くしないと遅刻じゃないかな?ボク達遅刻寸前なんだよ?」
やっとの思いで考えついた、ナイスないいわけも
「問答無用!!」
の一言で片づけられ、シンジはいよいよ、錯乱していった。
『父にありがとう。母にさようなら。そして全てのチルドレンに・・・ってチルドレンって何だよ・・。』
・・・・・・・・・・自分に突っ込む余裕はあるらしい。
「ひゅっ!」
短く息を吐くとアスカは、神速の上段回し蹴りをシンジのこめかみに叩き込む・・・・はずだった。
ガシィッ!と、しっかりブロックされていたのだ。もちろんシンジではない。
シンジは、恐怖で一歩も動けなかったのだから。(恐怖で固まっていなくても、反応などできないのだが)
頭にバンダナを巻いた、ちょっとニヒルな感じの男だ。シンジと同じ制服を着ているため、同じ学校の生徒だと解る。
「フッ・・・・元気のいいお嬢さんだ・・・・。でも女の子が往来の真ん中で彼氏を蹴っ飛ばすなんてこ・・・げぶうっ!?
言い終わらないうちに、水月(みぞおちのコト)に見事な膝蹴りがぶち込まれ、頭が下がったところで、問答無用の肘打ちが後頭部に炸裂する。
「シンジィ、誰よ?こいつ。」
「し・・知らないよ。」
「ふーん・・・ま、いいわ。さ、遅刻するわよ?急ぎましょ!」
とりあえず、見知らぬ人を殴り倒したおかげで、一旦怒りは収まったらしい。
シンジに一声かけるとまた走り出す。
シンジは、心の中で、
『ありがとう、知らない人。でも、きっと病院直行だろうな・・・。』
などと思いつつ、容赦なくそのバンダナ兄ちゃんをほっぽっていくのだった・・・。



CM(!?)をはさんで、Bパートに続く・・・・・。
Bパート〜♪
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