福田昌範の吹奏楽講座

第25章 「音楽の多様性」について

 

 この章では、福田昌範が考える「音楽の多様性」の一部分について述べてみたいと思います。

 


 この章では「音楽の多様性」の一部を述べてみたいと思います。、
次の吹奏楽講座第26章の「宙(そら)の下で」の演奏上のヒントにもつながりますので、
併せてご覧ください。

 

音楽は基礎からから始まる。

 

 みなさんは、新しい楽譜をもらったときに、まず何を考えますか?
恐らく、楽譜に描かれていることを正確に表現しようとすると思います。
これは、大変大切なことです!!

 この「楽譜を正確に表現する」という「基礎基本」は音楽を表現する第一歩です。
その為に、演奏者はメトロノームなどのトレーニング機器を用いたりして、
また、楽譜の中の、強弱記号や発想記号を読み取ったりして、
作曲者が楽譜に書いたことを再現しようとします。

 

音楽の落とし穴

 

 しかし、上記の「楽譜を正確に再現する。」という事だけで音楽は成立するのでしょうか?

答えは、YES or NOではなく、「成立するかもしれないし、成立しないかもしれない。」が
正確な答えだと思いますが、ほとんどの曲の場合「NO」という答えが返ってくると思います。

 ここに「音楽の秘密」であり「音楽の原点」が隠されているのです。

 

音楽は自由な発想から生まれる

 

 もしもコンピューターなどに音符を打ち込んでフレーズを作成し、
フレーズの冒頭に「f(フォルテ)」とうちこめば、フレーズの最初から最後まで
すべての音符を「f」でプレイバックすることができます。
しかし、その作成したフレーズは本当にそのように表現するのが適切なのか?
そうでないのか?ここが、コンピューターと人間の分かれ目になります。

 あるフレーズの冒頭に「f」と記載されていたら、そのフレーズすべてを「f」で表現したほうがよいのか?
そうでないのか?の答えは、すべて演奏者の「心の中」にあります。
フレーズによっても違うので何とも言えないのですが、「f」と書かれていても最初から最後まで「f」の場合
もありますし、そうではなく途中を音量を落として・・・・、など表現することはよくある事です。
 また、「f」の定義も「強く」だけでなく「豊かに」「明るく」「はっきりと」「柔らかく」などの言葉を付け加えると
(「音色」が変わるように)「音量」も当然変化していきます。

 音の扱いにしてもそうです。アクセントやスタッカート、テヌートなどが書かれていなくとも
「はっきり」「短めに」「音を十分に保って」演奏することも良くあることで、
何も書かれていないから何もしないのではなく、発想を豊かにして
その音やフレーズをどのように表現しようとするのか?という事に考えをめぐらせることは
とても重要なことです。

 また、音符に書かれている記号についてもそうです。例えば、スタッカート(短く)についても、
どのくらい短いのか?アクセント(はっきり)についても、どのくらいはっきりさせるのか?
クレッシェンドは、どのようなタイミングでだんだん大きくして、デクレッシェンドはどのようなタイミングで
だんだん小さくするのか?また、そうではなく「膨らませるように」という風に考えてもよい場合もありますね。

 一例を述べてみましたが、これらの答えは、すべて「演奏者の心の中」にあります。
発想を豊かにして、フレーズを表現することにこそ音楽の原点があります。
僕はその表現の定義を「音楽は歌である。」と定義しています。
ぜひ、音符やフレーズをしっかり歌って素晴らしい音楽を創りあげてみてください。

 

 

(C)2017 Masanori Fukuda

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