福田昌範の吹奏楽講座

第22章 「これだけは知ろうユーフォニアム」

 

 この章では、2004年のバンドジャーナル7月号に掲載された、
「これだけは知ろうユーフォニアム」をご紹介します。

 



 
皆さんは、ユーフォニアムという楽器をご存知ですか?「UFO?」「ユニフォーム?」、
などなど見当違いの方もまだまだ多いのではないかと思いますが、この、ユーフォニアムは、
吹奏楽や金管バンド(ブラスバンド)の中では、無くてはならない重要なポジションを担う楽器なのです。
(ちなみに、このユーフォニアムの名前はギリシャ語でeu(良い) phone(響き)に由来しており、
英語の発音では、<フォ>の部分にアクセントがつきます。)

■ユーフォニアムの歴史
 歴史をさかのぼること約160年前。
ベルギー南東部アルデンヌ地方にある小さな都市ディナンで、11人兄弟の長男として生まれた
「アドルフ・サックス」(1814年〜94年)が、1842年から45年にかけてパリで製作した
(サクソルン属と呼ばれるソプラノからコントラバスまでの)7種類の円錐形金管楽器の中の、
バリトンやバスがイギリスで改良され完成された、と、されています。
(ところで、この製作者の「サックス」という名前はどこかで聞いたことがありませんか?そうです!
ユーフォニアムは木管楽器のサキソフォンと親戚の(発明者が同じ)楽器なのです。)

■ユーフォニアム(楽器)の特徴
 1874年イギリスのブージー商会(現在のブージー・アンド・ホークス社)の設計責任者であったD.ブレイクリーが
「音程補正システム」(コンペンセイティングシステム)を考案しました。(特許)
これは、低音域の音程を正確にするためのシステムで、現在、主にユーフォニアムやテューバにおいて使用されています。
 また、最近では、4番ピストンが1〜3番ピストンと並列に設計されている(マウスピースのレシーバーが細管の)ものと、
4番ピストンのみが左下に設計されている楽器(マウスピースのレシーバーが中細又は太管の)の2種類の楽器があります。

■まるでビロードのような深く美しい音色
 ユーフォニアムの魅力は何と言っても、cantabile(歌うような)なパッセージで発揮されます。
まるでテナーやバリトンのオペラ歌手のような美しく幅広い音色で、聴衆を魅了することのできる楽器です。
(故に、ビブラート奏法はユーフォニアムのソロの演奏にとって重要な技術の一つなのです。)
 また、通常よく使われる音域は約2オクターヴ半ですが、最近のソロ曲では4オクターブ使用する難曲も登場しており、
吹奏楽はもとより、金管バンド(ブラスバンド)の中ではコルネットとともに主にメロディを担当し、
オーケストラに例えるとチェロパートの役割を担うことが多い楽器です。

■ユーフォニアムはどんな楽器とも大の仲良し!
☆ユーフォニアムは金管楽器だけでなく木管楽器とも仲良く響きを共有できたり、
違う楽器同士のブレンドを助けたり出来ることができる楽器です。
 
■故に、困った問題がしばしば・・・・・・・。 
☆木管楽器がやるような、難しく細かい連符がまわってくる。(指回しが大変!)
☆音域が広く響きが豊かな故に、いろいろなパートのオプションがまわってくる。(休符が無くなる?)
☆ダブル、トリプルタンギングは必需品(これができないと演奏できない曲がたくさんある!)
☆音質が柔らかいのでバンドの中で埋もれないように、他の楽器以上に余分な気を使わなくてはならない事がある。

■これだけは聴こう、吹こう「ユーフォニアムソロ名曲集」
・イントロダクションとダンス(バラ作曲) Introduction et Dance/J.Ed.Barat
・アンダンテとアレグロ(バラ作曲) Andante et Allegro/J.Ed.Barat
・アンダンテとロンド(カプッチィ作曲)Andante and Rondo/A.Capuzzi
・コンサートピース(デ・ラ・ヌー作曲)Concert Piece/P.V.DE LA NUX
・小品「ヘ短調」(モレル作曲)Piece en Fa mineur/F.Morel

 以上紹介した曲は、すべて「Peace☆Piece」(ピースアンドピース:SBPCD5017)に録音されています。
これらの曲は、ユーフォニアムソロを演奏する際に、一度は演奏する機会を持つ事をお薦めする曲です。
もちろん、他にも素晴らしい曲はたくさんありますし、(クラシカルなものからジャズに至るまで)
様々なジャンルのユーフォニアムの演奏のCDがたくさん発売されています。
いろいろな演奏を聴いて、ユーフォニアムの音や音楽の深さに触れてみてくださいね。

 

(C)2004 Masanori Fukuda

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