福田昌範の吹奏楽講座

第12章 バンドの最終チェック(その1)

 

 吹奏楽やコンサートでは、演奏するに当たって様様な観点から
バンドをチェックする必要があります。

 ここでは、その一例を挙げて見たいと思います。

 


1  音質

 音質は、日々団員(部員)の鍛錬(ロングトーンなど)によって作られるものです。
個々の音質が向上すれば、バンドの音質は当然アップします。
また、打楽器などの楽器選び(シンバルのサイズやマレットの選択など)にも
配慮を配りたいものです。
 また、同じパート内ではやはり、音質をそろえたいものです。 
(例えば、ある和音を吹いた時に、Aさんは良い音、Bさんは普通、Cさんはいまいち、では良い響きは生まれませんね。)
ここで、音質をそろえる方法をご紹介します。

「音のイメージ作り」(パートリーダーの音をよく聴き、同じ音質になるように練習します。)

               ○(パートリーダー)
         ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓         
         ○ ○ ○ ○ ○ ○(ひとりづつが効果的です。)

「音のリレー」(パートリーダーから音をリレーしていき、同じ音質になるように練習します。
         この際ピッチも併せて合わせると効果的です。)

         ○(パートリーダー)←←←
         ↓             ↑
         ○→○→○→○→○→○

2  音色

 音色は、場面場面に応じて、演奏者の考え方(意思統一)によって大きく変わってきます。
例えば、メロディーについて言えば、合奏の場合はほとんど、一つのメロディーはいろいろな楽器で
構成されています。その、いろいろな楽器の奏者たちが、「はっきり吹こう。」「やわらかく吹こう。」
などと、意識を統一することによりメロディーの音色は大きく変化してきます。
 また、ブレンド(「どの楽器を中心にしてメロディーを組み立てるのか?」)の仕方によっても、音色は変わってきます。

3  音量

 音量は、あるフレーズでの音量が、その楽曲の中に適した音量かどうかチェックしなくてはいけません。
例えば、メロディーよりも伴奏のほうが大きい事は、あまり望ましくない事が多いようです。
 また、これは、狭い音楽室などでの音量とコンサートホールなどでの音量が異なる事が多くあります。 
コンサートやコンクール前では、広い会場(できれば、本番の会場)で一度チェックしておくと安心です。

4  ピッチ

 ピッチは室温によって変化します。24〜26度くらいがだいたい442Hzと考えておいた方が良いでしょう。
また、個々のピッチも自分の癖を個人個人できちんと把握しておく必要があります。
その上で、様様なフレーズを構成するパートや楽器群で練習の段階でいつもあわせておく必要があります。
コンクールやコンサートの最中でも自分のピッチを周りの音を聴いてステージの上で合わせる余裕ができると最高ですね。

5  バランス

「メロディーのバランス」・・・
 一つの旋律は多くの楽器で構成されている事が多く、いろいろな音質の楽器が混ざり合ってメロディーを形成しています。
それらの楽器の中で、どの楽器を中心にメロディーを組み立てるのかによって、バランスや音色も変わってきます。
 また、例えば、HrnとSaxが同じメロディーを吹いている時に、、Hrnに合わせる、と仮になった場合でも、
「では、Hrnの中の誰に合わせるのか?」という風に考える事も、アンサンブルの重要な手がかりになります。
パートリーダーなどは、スコアなどを事前に持ち歩き、自分のパートと他のパートの結びつきをしっかりとチェックする
事も、たいへん重要な手がかりになります。

メロディーと伴奏とのバランス・・・
 メロディと伴奏のバランスはたいへん重要です。このバランスも上記のように「誰に合わせるのか?」という手段を
講じた上で、バランス調整を行った方が良いのですが、音楽室などの狭い場所と広いコンサートホールでは、
得てして違ったバランスが生じる事が多々あります。時間はかかるかもしれませんが、できるだけ、
広い場所でバランス調整する事をお薦めします。
 また、例えば、伴奏の中で、打楽器と管楽器が同じフレーズを演奏している場合は細心の注意を払って、
バランス調整をする必要があります。

6  ハーモニー

 ハーモニーは、楽曲を完成させる上で、たいへん重要な役割を担っています。
ただ単に、あるフレーズの和音を合わせるだけでなく、その和音の性格(何の和音で)や構成(どのようなバランスで)を
しっかりと把握した上で、演奏する必要があります。
 例えば、長三和音の第三音は低めに(−14cent)、短三和音の第三音は高めに(+16cent)演奏すると、より協和した
響きを得る事ができます。(根音が±0cent、第5音が+2centの場合。)
 また、根音がフォルテの場合、第5音もそれに順ずる大きさで演奏し(ただし、根音をよく聞いて)、
第三音はそれらの2つの音に溶け込む大きさ(2つの音をよく聞いて)で、演奏することにより、
より響きのあるハーモニーを生み出す事が出来ます。 

7  リズム

 様様なリズムが、最近の楽曲では使用されています。それらのリズムを「のり」だけで乗り切るのではなく、
アカデミックに分析して演奏できるように工夫してみてください。
 「練習方法」・・・
 テンポを少し落とし、4分音符の楽曲でしたら、8分音符刻みにし、ゆっくりと練習します。
その際、音符の音の長さや休符の扱い方には細心の注意を払ってください。
 また、タイ等によって複数のリズムがコネクトされている場合は、一度タイを取って練習し、その後、タイを取った感覚を
忘れずに、楽譜どおりに演奏する事をお薦めします。
(これは、様様なアーティキュレーションがリズムにつけられている場合も同様に、一度、アーティキュレーションを取って
 練習してみてください。)

8  テンポ

 テンポは音楽の流れを決める意味で、たいへん重要な課題です。楽曲によっては、作曲者の意図するテンポと
演奏者の意図するテンポが違ってくる事も多々あるようですが、いずれにしても、楽曲の自然な流れをそこなわない
テンポ設定が大切になってきます。
 アマチュアのバンドが練習する上で、メトロノームを有効に利用して、部員(団員)のテンポ感を養う事も大切な練習
方法の一つです。全員のテンポ感(指揮者も含めて)が一体となったところに、素晴らしい音楽が生まれることも
多々あるようです。

 

(C)2017 Masanori Fukuda

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