「ラブひな」とは


知ってる?
アイしあう二人が トーダイってとこに はいるとね
「シアワセ」に なれるんだって
大きくなったら ふたりで いっしょに トーダイ行こーね ♥


 浦島景太郎は、 勉強もスポーツもダメで、見た目もパッとしない19歳の青年。 彼は15年前に、今では顔も名前も覚えていない女の子と「一緒に東大へ行く」という約束をした。 だが、東大にはなかなか合格できず、現在2浪中である。 そんな彼が、両親と喧嘩して、祖母が経営する「ひなた旅館」にやって来た。 ところが、旅館は女子専用寮の「ひなた荘」になっており、 祖母は世界一周旅行の真っ最中でいつ帰るかわからない状態だった。 失意のうちに家に帰ろうとする景太郎だったが、 祖母から「ひなた荘」の権利をすべて譲るという連絡が入り、 女子寮の管理人として「ひなた荘」に留まることになってしまう。 「ひなた荘」には、 全国模試トップの現役受験生 成瀬川なる、 家事万能の内気な少女 前原しのぶ、 元気な謎の外国人 カオラ・スゥ、 剣の達人 青山素子、 酒とギャンブル好きのフリーター 紺野みつね、 そして、喫茶店経営の傍ら寮長をやってる景太郎のおば 浦島はるか と、 ひと癖もふた癖もある美女揃い! 住人たちに歓迎されない空気が漂う中、 受験勉強と女子寮管理人の仕事に挟まれた景太郎の新生活が始まった。

 景太郎は、様々なトラブルを起こしながらも、徐々に住人たちと打ち解けていく。 特に、同じ東大を目指す受験生のなるとは、チョッピリいい感じの仲になる。 やがて、東大受験を迎えるのだが、なんと二人とも不合格になってしまう。 ショックのあまり、二人は別々に傷心旅行に出るのだが、旅先で偶然に一緒になり、 そこに同じく東大に落ちて傷心旅行中の 乙姫むつみ が加わり、奇妙な三人旅をすることになる。 この旅の中で、景太郎はなるを好きになっている自分に気づき、 なるも景太郎の気持ちを知る。 ところが、ひなた荘に戻ると、なるの東大受験のきっかけになった憧れの 瀬田記康サラ・マクドゥガル という少女を連れて現れ、恋の行方は複雑模様になってしまう。

 景太郎もなるも、東大受験や本当に好きな相手について、自分の気持ちを真剣に考えるようになる。 やがて二人は恋を意識する仲になり、今度こそ一緒に東大に合格することを約束するのだった。 そんなとき、むつみが受験のために上京して、 ひなた荘の住人たちと親しく付き合うようになる。 なんと彼女は、昔ひなた荘にいて、過去の約束のために東大を受け続けていることが判明する。 これを知ったなるは、むつみこそが景太郎の約束の相手であると確信して身を引こうとし、景太郎は二人の選択に悩む。 ところが、むつみから語られたのは、 景太郎と自分の約束の相手はなるであることを匂わせる発言だった。 困惑の中、三人は東大受験を迎える。 今年の三人は順調に試験科目をクリアしていくのだが、 最終日の最終科目で、景太郎が終了5分前まで居眠りをしてしまうという大失敗を犯してしまう。

 景太郎は、絶望のあまり海外へ逃亡し、太平洋上の孤島パララケルス島に流れ着く。 それを知ったなるは、合格発表を放って、景太郎を連れ戻しに行く。 一方、残ったひなたガールズは、代理で合格発表を見に行く。 三人とも東大に合格していた! しかし、5日以内に手続きをしないと無効になることを知り、景太郎の元に知らせに走る。 知らせを受けた景太郎は、現地の少女 ニャモ・ナーモ の助けも借りて、必死で帰国を試みるが、締め切りギリギリの飛行機に乗り遅れてしまう。 だが土壇場で、当日消印の郵送でも有効であることがわかり、無事、東大入学の手続きを完了する。 みんなで三人の東大合格を祝った後、一行は日本に帰国する。

 東大入学式の当日、景太郎は会場に向かう途中、足にケガを負い入院してしまう。 その入院先の病院で、見舞いに来たなるに、ついに「好きだ」と告白する。 なるは、その返事に躊躇し、長い時間考えた末、「今までのような友達のままでいたい」と答える。 景太郎は、ゆっくり関係を深めることに応じる。 9月に入り、ケガのせいで前期の授業をすべて欠席してしまった景太郎は留年が決定してしまう。 そこで景太郎は、アメリカの大学へ半年間の留学に旅立つ。

 翌年の4月、景太郎の帰りを待っていたひなたガールズの前に、 ひなた荘の新管理人を名乗る景太郎の妹・ 浦島可奈子が現れる。 彼女は、女子寮を閉鎖し、ひなた荘を元の旅館に戻してしまう。 実は、可奈子は浦島家の養女で、血のつながらない兄・景太郎のことを密かに想い、 子供の頃に彼とした「一緒に旅館をやる」という約束を守ろうとしていたのだった。 行き場を失ったひなたガールズは、仕方なく旅館の住み込み従業員になるが、 可奈子の景太郎至上主義の厳しい管理体制の下、過酷な労働を強いられる羽目に遭う。 彼女たちは、ついには怒りを爆発させ、景太郎を含めたひなた荘の争奪戦を始めてしまう。 そんな騒ぎの中、景太郎が帰国した。 当然、景太郎に迫る可奈子に、なるは気が気でない。 だが、景太郎への気持ちをみんなに問い詰められたなるは、返答に困り、北へ逃避行してしまう。 景太郎とひなたガールズは追いかける。 この追跡劇の中、可奈子は景太郎の気持ちを知り、身を引くことを決意する。 そして景太郎は、なるを宗谷岬にまで追い詰め、ついに彼女の「好き」という熱い告白を受けるのであった。

 ひなた荘に戻った景太郎となるは、一緒に東大に出かけ、過去の約束を果たそうとした。 だが、そこに瀬田が現れ、景太郎をモルモル王国への冒険旅行に強制的に連れて行ってしまった。 その頃、ひなた婆ちゃんから一週間後に帰国する旨の連絡が入る。 ひなた荘を正式に景太郎に譲渡する条件として、帰国までに結婚相手を見つけることを提示してきたのだった。 景太郎を諦め切れないひなたガールズたちは、モルモル王国に飛ぶ! ところが、この国の王女はなんとスゥだった。 彼女は景太郎を国王にするために結婚を迫る。 そしてそれは、国中を巻き込んだ大騒動へと発展する。 モルモル王国には、愛し合う二人が行くと幸せになれるというトーダイ遺跡があった。 ひなたガールズは、なんとか景太郎と一緒にこの地へ行こうとするのだが、 各人の様々な葛藤の後、結局、景太郎となるを遺跡に見送ることになる。 しかし、遺跡には瀬田とはるかが先に到着していた。 瀬田の目的は、サラの母親の遺言である400年前に遺跡から盗まれた土器を返すことであった。 約束を果たした瀬田は、景太郎となるに誘われて、その場ではるかと結婚式を挙げる。 そして、景太郎となるはひなた婆ちゃんの待つ日本に戻る。

 ところが婆ちゃんは約束を忘れて、まだ海外にいたため、景太郎の結婚相手については一時保留になる。 すべてが一段落して、景太郎となるは約束の地・東大に行き、二人で幸せを噛み締めるのだった。 そんなとき、ニャモが景太郎を訪ねて来日する。 景太郎をパララケルスの遺跡研究所に迎える用意がある旨を伝える使者として来たのだった。 喜ぶ景太郎だったが、時を同じくして、ひなたガールズがひなた荘を次々と出て行ってしまう。 なるは、ひなた荘に人がいなくなっていくのは、自分が約束の相手ではないせいではないかと考え、景太郎から身を引こうとする。 だが、景太郎は約束のことを気にせずに、なるを引き止め、愛を告白する。 いつの間にか来日していたひなた婆ちゃんは、 そんな二人の様子を見て安心し、景太郎の約束の相手はなるであることを告げて去って行くのであった。

 そして3年後の春、東大生になったしのぶ・スゥ・素子は、むつみ・みつねとともに、 ひなた荘で挙げる景太郎となるの結婚式の準備をしていた。 ところが挙式前日、「そこに住めば誰でも東大に合格できる奇跡の女子寮」という噂を聞きつけて、 真枝絵馬 がやって来る。 自分自身にコンプレックスを持つ彼女は、東大に入って世間を見返してやろうと、ひなた荘への入寮を希望したのだった。 しかし、美人東大生ばかりの住人たちを見て、絵馬は自信を失いかける。 だが、結婚式当日、美しい花嫁となったなるの姿を見て、 夢は自分の手でつかみに行かなくてはいけないことに気づき、その第一歩を踏み始めるのだった。 景太郎となるは、大勢の人々が見送る中、相変わらずのドタバタを続けながら、新婚旅行へと旅立って行った。


2000(平成12)年度 第45回 「小学館漫画賞」少年向け部門 ノミネート作品
※ 受賞作品「モンキーターン」(河合克敏)、「ヒカルの碁」(ほったゆみ・小畑健)
2001(平成13)年度 第25回 「講談社漫画賞」少年部門 受賞作品
   受賞のことばと選評

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