2001(平成13)年度 「講談社漫画賞」少年部門 受賞


2001(平成13)年度「講談社漫画賞」少年部門 候補作
 ■ 王ドロボウJING (熊倉 裕一)
 ■ 海皇紀 (川原 正敏)
 ■ かってに改蔵 (久米田 康治)
 ■ テニスの王子様 (許斐 剛)
 ■ ラブひな (赤松 健)
2001(平成13)年度「講談社漫画賞」選考委員
 内館牧子 庄司陽子 弘兼憲史 きうちかずひろ 鈴木由美子 さだやす圭 七三太朗 (敬称略)
贈呈式および祝賀会
 2001年6月21日 赤坂プリンスホテル

● 内館牧子氏 選評
私は何よりも「登場人物のキャラクター」を魅力的に、かつ息切れせずに描くことを貫いているかにポイントを置いた。 正直なところ、キャラクターがあいまいな作品もあった。それらは作家の腕力で強引にストーリーを転がしていたものの、 登場人物に魅力がないので読んでいるうちに飽きてしまった。 私は「テニスの王子様」を推した。ステレオタイプのキャラクターが多いが、読後のカタルシスは段トツだ。
● きうちかずひろ氏 選評
「ラブひな」を推した。「海皇紀」も好きな作品で、毎月連載を愛読しているのだが、今回は「ラブひな」の無邪気な”楽しさ”に魅かれた。
● さだやす圭氏 選評
「海皇紀」はスケールも大きく、人物もいきいきしていて、雑誌ではなく、劇場で観るような壮大な雰囲気があります。 ただ、物語は中核が未だ見えず、もう少し先が見たいと思います。 「テニスの王子様」は専門的知識と少年誌の王道をゆく作り方で、ぐんぐん読ませてくれるんですが、若干粗さが引っかかりました。 そして、「ラブひな」です。マニュアルどおりのラブコメの王道だと思うのですが、これで正解なのでしょうね。
● 庄司陽子氏 選評
ジャンルの闘いのようでもありました。王道の少年ラブコメが評価されたというところでしょうか。 絵は確かにうまいのですが、特に登場人物の多さ、アニメに近い絵、描き分け等、気になる所はありました。
● 鈴木由美子氏 選評
「ラブひな」は、キャラ一人一人に対する作者の思い入れがよく伝わってきます。楽しげに描かれている漫画らしい漫画だと思いました。 私的には「テニスの王子様」も捨てがたいものがありましたが。
● 七三太朗氏 選評
「ラブひな」。おじさんの顔を紅くさせるか、と一巻目で置いてしまう、 するとある人から一杯ひっかけ、リラックスしてから読むことをすすめられそれに従うと、まんまとハマる。
● 弘兼憲史氏 選評
選考会に出席すると、いつも思うことだが、受賞は実力と運とタイミングだということをつくづく感じさせられる。 「ラブひな」と「海皇紀」が最後まで争ったが僅差で「ラブひな」が受賞した。私個人としては「かってに改蔵」が特に印象に残った。


赤松先生の受賞のことば

雑誌の掲載文より
 「ラブひな」は、雑誌のメインディッシュではなく、「デザート」的な位置付けの漫画だ…… と自分では勝手に理解していたものですから、 このたびの漫画賞受賞につきましては、喜びよりも驚きの方が大きかったというのが正直な感想です。
 何しろ、アニメ系・グッズ系・ネット系・コミケ同人誌系のノリが強い作品ですので、 特に硬派な週刊少年マガジンでは浮いた存在でした。
 しかし、逆に言えば、正統派の作品群が本誌で主流を占めていたからこそ、 「ラブひな」だけは非常に自由に、オタク的なノリで暴走することが許されていたとも言えます。
 この点では、編集部や他の作家先生方にも密かに感謝している次第です。
 私自身、筋金入りのオタクですので、「ラブひな」に関しましては、 声優さんのライブイベントやキャラクターグッズイベントなど、アニメ化以外にも非常に楽しい体験をさせていただきました。
 作者というか……もはやただのファンみたいな感じかもしれません。

公式ホームページの日記より
 今回の講談社漫画賞の選考者評が、各雑誌に載り始めましたね。 「ラブひな」の評は、大方「ラブコメの王道」という感じでまとまっており、 これは私にとって非常にありがたいと言うか、助かる表現方法だと言えます。(^^;)
 新聞や一般雑誌など、あまり漫画に詳しくない取材陣の場合、「ラブひな」は 「東大を頂点とした、学歴社会への風刺」などといった観点から評される場合が 多いのです。しかし、やっぱりそれは相当事実と違ってて。(笑)
 漫画に詳しい評者ですと、「ラブひな」が過去のラブコメのパターンを踏襲し、 超高速で反復している点にはすぐ気が付きますので、「王道」と表現してくれるわけです。 恥ずかしいお約束をそのまんまやるトコとかね。
 しかし実際の購買層になると、「ギャルゲー的要素」だとか「キャラ萌え」だとか、 はたまた「いもうと属性」だとか、そういう観点から「ラブひな」をとらえている局面も多いわけで、 特定のキャラ(例えばしのぶ)を愛好するだけのファンも多いし、イラスト集としてしか見ていない読者もいるし、 「王道」という観点以外のファクターがずいぶん存在するのであります。
 我々(この日記を見ているような人々?(^^;))のような、コミケやアニメや ネットやHゲーをある程度押さえている「現場の人間」にしか分からないテイストって、必ずありますよね。 それは、漫画賞にはおよそ馴染まないテイストですので、 だからその点に触れないでいただいて、良かった助かった、と評を見てまず最初に思ったと。(笑)
 ・・・それにしても、きうちかずひろ先生が「ラブひなを推した」と書かれていて、大感激。 (ジャンル的に、普通考えられないと思うのですが。)授賞式でサインもらってこよう!


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