北海道ツーリング・プロローグ
東京〜釧路('99.8.19〜21)

ここでそうくるか!?
フェリー埠頭まで
時間がね、あまってあまって
船上生活


フェリー埠頭まで

 8月19日。大方の人はすでにお盆休みも終わって、「ち、また仕事かよ〜、たりぃなぁ、けっ」とか言いながら日常に戻りつつある頃です。ちんたは今年は人様より少し遅めに夏休みを設定し、20日から29日までの10日間というロングラン(当社比)夏休みにいたしました。例年だと設定した後にぼろぼろと虫食いのように休みが出勤に化けたりするのですが、今年はさすがに不況のためか、お仕事もあまりありません。おかげさまでちんたの夏休みはコンプリートなままです。不況ありがとう(^^;)

 で、今年の夏休みは北海道と決めたのです。そうなった発端はいまやなんだったのか思い出せないけど、この一ヶ月、現地情報の収集、乗り物の予約等いろいろ楽しみながら進めていました。 > とりあえず、渡道はフェリーにしよう。これは早い段階で決まり。一つはやっぱ飛行機は高いよ〜(高度じゃなく値段ね)ということ、さらに飛行機輪行はいまいち不安(たま〜に「飛行機輪行で自転車壊された」とゆう話も目にする)なことももう一つ。実際迷ったんだけどね〜。フェリーは輪行袋に詰め込む手間さえ要らないから良いんだけれども、とにかく時間がかかる。今回乗る東京〜釧路の近海郵船なんか乗ってる時間が30時間である。どおゆうことかというと、往復で比べれば飛行機とフェリーでは道内を走れる日が二日は違うということなのである。これはちんた結構迷った。・・・が、迷った割には財布と預金通帳があっさりケリをつけてくれた。安い方優先。

 ちなみに今回の北海道旅行、ホントに金が無い。道内ではとにかく宿泊費込みで1日4000円以内で過ごさなくてはならない・・・ということが大命題になっている。・・・一日4000円・・・できるのか?そんなこと?(^^;)北海道といえばウニ丼3000円とか三色丼2500円とかやたらに調子こいた値段の食べ物が多い土地柄である。これは相当に耐え難きを耐え、しのび難きをしのびな旅にしなくてはいけない。

 で、8月19日。とりあえず、休暇は20日からだけどフェリーは19日深夜に出航なのである。東京フェリーターミナル発。なので19日は自転車にもキャリアを付けて、シュラフを載せて・・・と完全に旅仕様で出勤だ。旅仕様といえば今回、ちんた、北海道ツーリングとしては異様に軽装備である。シュラフと小型リュック一個分の荷物、それだけ。これで北海道を回ろうとは嘗めているといえば嘗めている。で、もう、ちんた、お仕事中も遠足の前の小学生モードでさっぱり仕事せず〜(^^;)。もうフェリーに乗っちゃうことしか考えていないである。

 夜8時頃になって職場を出る。職場から東京フェリーターミナルまでは10kmそこそこなので、1時間もかからずにさくっと行けるだろうとの目論見。フェリーは23時55分発、1時間半前にチェックインしてくれとのこと。

 もう10kmの走行なので、てれてれと走る。歌舞伎座の前を通り晴海通りへ。そしてフェリーターミナルまであと3kmの東雲(←しののめって読む)を通り過ぎるあたりで異変に気が付いた。

 パンク!

 前輪がもうボクはダメです〜と言わんばかりにしおしおになっている。あちゃー。とりあえず、スローパンクチャーなようだし、どうせならフェリーターミナルできっちりとタイヤ交換をしたいので、空気を入れつつ入れつつだましだまし残りを走ってしまうことにする。空気入れるのって結構疲れるんだよ、これが。それをまた500mおきにしおしおになったタイヤに空気を入れることをくりかえさなければいけない。夕涼みがてらてれてれ走れば良かったモノがいきなり体育会系インターバルトレーニングになってしまった。ちんた、すでに汗だくである。しかし、こんなところでパンクしてどうする?(^^;)。ただでさえ今回の北海道旅行の懸念材料はパンクとそのために必要なスペアタイヤである。スペアはとにかく積めるだけ積んで3本あったのだけれども、2本になってしまった。北海道なだけにタイヤがどこででも手に入るというわけではない、場合によってはスペア切れでタイヤのつぶれた自転車を引きずってドナドナを歌いながら北海道の原野をさまようちんた・・・にもなりかねない。そのためにも多めに積んだスペアなのにそれがフェリーに乗る前に一本消費である。どうなるんだ、この旅行!?ちんた、かなり暗澹としたキモチ。フェリーターミナルで乗船を待ちながらタイヤ交換なんてやってんの俺だけだろな(^^;)。

 とりあえず、カウンターでチェックイン。乗船を待つ。どうやらチャリダーはちんたの他にも10人弱ほどいるようだ。今までフェリーというと自転車はいの一番に載せてもらえたのだけど、どうも今回は勝手が違う。ひたすらに待たされる。目の前でトレーラーが甲板に乗り込んでいくのをぼーっと眺める自転車軍団。しかし、トレーラーの運転手ってのはうまいね、フェリーへの積み込みをバックでやるとは思わなんだ。船に対して斜めに突き出たタラップをバックで突っ込んで身を乗り出しながらひょいひょいっとハンドルをいじって両側20cmも隙間があろうかという空間にトレーラーを押し込んでいく。ほえ〜、うまいもんだなぁ〜。それと、最近はトレーラーは積み込んだら後ろの荷物だけ切り離して頭の運転席の部分は船から下りて来ちゃうのね。荷物だけ運んで、下ろすときには向こうで待ってるトレーラーが頭だけで船に潜り込み、荷物を下ろしていくという寸法らしい。ふーむーうまくできてるもんだ。そんなことをぼーっと眺めているうちにやっと自転車軍団に乗船OKの合図が出る。・・・って最後じゃん(^^;)。やたら下の方の甲板まで自転車で下りていき、係の人に壁にくくりつけてもらったのでした。



  船上生活

 なにせ30時間である。どうしてくれようかってなもんである。

 ちんたは当然のように二等船室。ちんたが指定された船室はすでに満員の活況。そりゃそうだよね、自転車積み込んだの最後なんだモノ。ところがよく見てみると、活況なのはそのブロックだけで、となりのブロックは一人もいないというありさま。・・・それじゃあ、というわけでちんたを含めて数人がそちらへ大移動。

 外を見るといつのまにか出航していた。なんかこの船やたらに静かである。揺れないのは湾の中にいるせいもあるけど。

 そんなわけで出航してからあらためて、見回すと、ちんたと同じブロックにいるのは二人。その片方、やたらにガタイのいい、兄ちゃんが話しかけてくる。

 「あのお、自転車で乗った方ですよね」

 ああ、そうだけど・・・よくわかったね。

 「いや、自分も自転車なんですよ」

 ありゃ、そうだっけ?(^^;)忘れているのはちんたの方。

 「いや〜、今回、北海道初めてなんすよ〜、それも自転車じゃないすか〜、もうなんかどうなるのか予想もつかないっすよ〜」

 彼はMTBで北海道を回るのだそうだ。予定を聞くと、大まかには帯広、池田、網走、釧路などを回るのだとか。ふーむふむ。で、彼は主にキャンプツーリングでテントやらいろいろ満載らしい、はや〜頑張ってね〜。

 「いや、もう、なんていうか、ツーリングとかも今までまともにやったことないんで、そもそも自分に行けるのかどうかが不安っすよ〜」

 む〜何となくわかるよ、そのキモチ。ちょっとした冒険だもんね、自転車はさ。期待半分不安半分という彼の心情はとてもよくわかる。ちんたも不安だ。不安の8割はタイヤである。で、いつまで北海道にいるの?

 「え〜と、9月の中頃までいるとは思うんですけど、夏休みは9月末まであるんで、あとは気分次第で・・・」

 うひゃ〜学生の休みはダイナミックでいいねぇ。でも9月に入るとさむそおだよぉ。ま、心配するでもなく彼は寒さ対策の装備はばっちり、というか自転車としてはやたら大量の荷物である。なんたってバスタオルまで持参しているのだから、余裕あるねぇ(^^;)。

 「トレーナーも2枚ありますよ」

 うひ〜。とりあえず同じチャリダーとしてひとしきり話しも弾む。いつのまにかもう一人の人も加わって、フェリーの夜はそこそこに楽しく更けていったのでした。

 翌朝、5時頃。起きると陽は昇っていた。ちんたのいる方の船室からは日の出は見えないけど。そもそも曇り気味。とりあえず船室でぼーっとしているよりは〜ということで甲板に出てみたりロビーに行ってみたりとうろうろする。

 今回、行きの船旅で一番困ったのは時間のつぶし方よりも、食事ではないだろうか?いちおう、船内にレストランはあるのだけど、これがまたべらぼうに高い。たぬきうどんが580円とか書いてあって、これが唯一のぎりぎり許容範囲内の食べ物か(^^;)。が、高い。ので、結局売店に行ってカップラーメンを購入。これが朝食となる。が、カップラーメンにしても250円なのである。猛烈な物価高。結局、ちんた、この朝食をはじめとして、昼、夜と三食続けてカップラーメンとなった。ちなみに赤いきつねやきそば弁当緑のたぬきの順である。おまけに昼と夜に至っては湯がぬるく・・・うう、これ以上はもう言うまい(泣)。ここらへん、食事対策にしても旅慣れている人はどうも違うようである。フェリーターミナル近くのコンビニで二泊分のカップラーメンやらおにぎりやらビールを買い込んできているようだ。これはさすがにやられた。・・・うらやましい(^^;)。  ま、食事を除けば、船旅というのもそれはそれで贅沢だ。時間が余りまくる・・・というのも考えてみればものすごい非日常なわけで、これはこれで贅沢なことかとも思う。とりあえず、暇なので朝っぱらから風呂に行くことにする。この船自慢の展望風呂とやらに行ってみる。展望といってもそこはそれ、船なので、まぁ外が見える、そんな程度。それでも朝から太平洋を見ながら風呂に入るというのも贅沢なモノである。ちんた、この風呂が気に入ったことと、やはり時間が余りまくっていることもあって、この後、何度となく風呂を訪れることになる。

 で、だいたい、風呂から出るとそのまま甲板に出て風に吹かれるのがお約束。もう、宮城県は金華山沖にいるらしいけど、どっちを向いてもなんにも見えない。そうそう金華山沖では自衛隊のブルーインパルス(←基地近い)の訓練に遭遇した。白いスモークを吐いて宙返りとかしていた。

 自分の部屋に戻ると例の兄ちゃんも起きていた。

 「やっぱ不安ですよ〜、ドキドキしますよ〜」

 まだ言ってる(^^;)。俺もそうだってばさ。だいたい俺だって1週間も走り続ける長丁場はやったこと無いんだからさ(^^;)。細かいこと言えば、少ないとはいえそれでもこんなに荷物を積んで走ることとか、ライダーハウスで泊まることとか、ちょっと寒そうな時期に渡道することとか、さらには翌々日にはレースに出ちゃったりもすることとか、それと後はやっぱりタイヤ・・・。不安要素はどっちゃりあるのである。が、そんなことおくびにも出さない見栄っ張りなちんた。調子こいてちょっとアドバイスなんかもしちゃうちんた。いい気なもんだ(^^;)。

 結局、船の旅は寝る〜読書〜風呂〜甲板〜寝る〜・・・のサイクルを何度も何度もくりかえすコトで過ぎていった。窓から見えるのはひたすら茫漠と広がる太平洋。ま、そんな一日も、まぁ、いいか。


  =20日のお小遣い帳=
項目
金額
ビール(500ml缶)
柿ピー
ミネラルウォーター
赤いきつね
やきそば弁当
緑のたぬき
400円
400円
250円
250円
250円
250円
本日の合計
1800円


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