9月5日
サンタ・クルズ − サンノゼ

 朝。海辺の朝はやっぱり曇り。今にも降ってきそうな曇り。今日もかい。 これでもやっぱり降らないのでしょう。なかなか素直でないカリフォルニア の空。もう、そういうものなのです。

 サンタ・クルズはサンフランシスコまで地図上では約85マイルまで迫って いて、うまく行くと本日中に狙える射程圏内?とも思ったりするような場所 に位置しています。

 さて、そのサンフランシスコへ行くにはどうするか
。  単純なのは、海沿いに通っているCA−1号線でそのまま北上することで す。これなら、ほぼ最短距離でサンフランシスコへ向かうことができます。 それを思い止まらせるのは、前日に味わった猛烈な向かい風。どうせ、今日 も吹いてるんでしょ?あの向かい風の中を80マイルは漕げないなぁ。途中で 挫折してもそこにモーテルがあるかどうかも怪しいものです。
 そうするともう一方は、少し迂回する形になりますが、いったんサンノゼ に出てそこからサンフランシスコへ向かうルートです。北を上にした地図で いうと、いったん右の方に向かい、改めて左上を目指すような感じになりま す。多少迂回するのでサンフランシスコへは100マイルくらい(のはず)。
途中サンノゼを通るわけですから、サンノゼなら宿くらいある(んじゃない かな?)。

 結局、考えた末に後者を選択しました。もう自分の体力は1mmも信じて いません。向かい風の中を行くなんてとてもとても。

 目論見としては、サンタ・クルズからサンノゼまで一直線に伸びている17 号線を使っていけばとりあえず、行けるよな、と。17号線への道は前日にも 通りかかっているので確認済みです。

 だが、しかし。

 17号線に入り、500mも進まないうちに、この道は自転車通行禁止である ことが発覚。フ、フリーウェイなのか、この道。  早くも暗雲たれ込めた本日、たまたま見かけた警官に「サンノゼに行きた いんだけど?」と聞くと、「17号線は通れないよ、自転車の奴は9号線”グ レアム・ヒル・ロード”を行きな。」とのこと。地図を見ると、一直線に結 ぶ17号線から少し離れた所に微妙にくねくねしている道があります。くねく ねしてるってのは山道なんだよなぁ・・・やっぱり。どうしようか迷ったの ですが、あの海辺の向かい風の中を進むよりはマシかなぁ、と思い、グレア ム・ヒル・ロードに行くことにしました。手持ちの地図には等高線の類は一 切書かれていないので、どれくらいの坂なのかはわかりません。ま、何とか なるんじゃないの?と自転車を進めました。等高線どうこうよりも、ちょう ど地図の切れ目に当たってて、どんな道があるのかさっぱりわかってなかっ たのが本当の所。致命的。とりあえず、警官がそう言うんだからサンノゼに は行けるんでしょ、みたいな感覚です。

 偉大なF1ドライバーの名前をなぜか冠している9号線。やはり上り坂で す。しかし、斜度はそれほどきつくなく、だらだらと緩やかで長い登りが続 きます。ま、これくらいならね、よわぞうのちんたでも行けますよ、とばか りに少々余裕もかましちゃったりしながらうんこらしょ、と進みます。考え てみればこれほど山深いところに自転車で乗り入れるのは今回の旅では初め てです。道が狭く、車が通る時は緊張を強いられますが、そうでなければ、 閑かな閑かな森の中。聞こえるのは自分が踏むギアの音、そして自分の呼吸 の息づかい。だけ。無理矢理日本の道に例えると道志みちに似ているかもし れません。延々と上り続ける道志みち、といった感じ。
 そんな森の中を20マイルほど上りました。標識によればサンノゼまでは残 り20マイルほどのはず。「今まで走った分をもう一回走れば良いだけだろ? 楽勝。」
 そんなことを考えるとそうは問屋が卸しません。グレアム・ヒルの道はそ んなに生やさしいものではありませんでした。
 サンノゼまで残り20マイルのガソリンスタンドで休憩を取った後、進むと さらに森は深くなり、坂道の斜度が増してきました。ここまで登り切ったと は言え、よわぞうはやはりよわぞう、少しでも斜度がきつくなれば伝家の宝 刀28Tです。うんこらしょ、うんこらしょ、書くのもはばかられるような猛 烈な低スピードで登ります。でも、「足だけはついてなるものか」という思 いもちょっとはあったりして。ていうかそれくらいしか漕ぎ続ける理由が無 いのですが、漕ぎ続けます。

 日本でもたいていの峠がそうですが、「あ、たぶんあのコーナーを曲がれ ば峠のピークだ・・・」と思って頑張ってみるとその先には次のコーナー が・・・ということの繰り返し。どう見てもこれ以上高いところに登りそう に無いのになぁ、と思って曲がっても、視界の先には次のコーナーが。しか し、ここで苦しいからといってこんな人里離れたところでリタイアする事も できません。ひたすら、うんこらしょうんこらしょ。あ〜地図に等高線さえ 入っていればなぁ、絶対こんな所走らないのに(^^;)。
 たまに木々の切れ目から下界が見えるのですが、上から見下ろすとなんと まぁえらい高いところまで登らされてしまっています。どこを見渡しても、 山、山、山・・・という感じで、ええ?こんな山々を越えて来ちゃったの? とか、朝方に出発したサンタ・クルズの海はどこ?とか目を凝らしても海は かけらも見えません。

 えらいとこきちゃったなぁ・・・。

 登坂を始めた辺りから、曇り空はどこへやら。どピーカンで、猛烈に強い 日差しが照りつけています。峠のピークにたどり着いたのはちょうどお昼。 後で買った地図で確かめてみると、峠の高さは2,800フィート・・・だいた い箱根と同じくらいか?登っちゃったみたいです。

 さて、あとは下り坂。

 いや、下りも下手っぴぃなんですけどね。通る車や自転車がいないので へっぴり腰で下り続けてもまぁ恥ずかしくはありません。しかし、もうただ でさえ苦手なヒルクライムで、もうサンフランシスコまで行こうなどという 考えはすっかり飛んでしまいました。

 はぁ、もう、サンノゼ泊でいいや。

 もう4日目ともなると弱い方へ妥協するのも慣れっこ。本日は目論見より 40マイルの削減。心の中の抵抗勢力は何一つ残っておらず、さぞかし改革も スムーズに進むでしょうという感じです。

 サンノゼはさすがシリコンバレーと言うべきかなんというか、日本食のレ ストランは多いわ、バス停では日本人(に見える人)がバス待ちしてるわ、 信号で止まれば横に止まる車の運転手は日本人だわで、アメリカ入国以来の 日本人濃度の濃さに、ああ、サンノゼなのねぇと納得。留学しに来るとかお 仕事で来るとか以外に何か見所みたいなところは見あたらないのですが、何 はともあれシリコンバレーに着きました。
 成金の多いシリコンバレーなせいか、モーテルもさほど安くありません。 こうなるのなら、もっと日本にいるうちに真剣にモーテルを検索しておけば 良かったと後悔しきり。なんかで、「モーテルの中には他のモーテルの地図 やクーポンを置いてあるから、それを頼りに次の宿を探せばよい」とか読ん だのですが、

 あらへんやんけ、そんなもん。

 そんなわけで、進んでしまうとその先にはモーテルがあるのかないのか、 さっぱりわからないので、毎日弱気の方に流れてしまっているのです。この 道を行けばモーテルはあるのか?迷うなかれ、迷えば先に道は無し、迷わず 行けよ、行けば迷うよ、ありがとー!!(T_T)・・・という感もありや無し やで、どうもちんたさんの後には道はできそうにありません。

 で、本日の宿は日本円にして約9,300円。・・・良いお値段だねぇ。さす がにめっちゃ広くて快適ではあるのですが。夕食もパスタにサラダにビール で約2,140円・・・・・・。泣きたくなるようなお値段ですが、生活レベル としてはその時々で選択しうる最もチープな選択肢を選んでいてもこうなっ ちゃうのですから、アメリカの物価高(特にシリコンバレーの物価高)は混 じりっ気無しマジ100%の物価高です。やっぱりデフレの日本はラブリーだ なぁとか思ったり。

 ちなみに、意味無く毎日の出費を書き出してみるとこんな感じです。

1日目:20732円、2日目:12098円、3日目:17122円
4日目:11703円、5日目:14148円、6日目:7158円
7日目:8850円、8日目:16062円
(1$=125円換算)

 意味無しついでに本日のお小遣い帳を書いてみるとこんな感じ。

コーラとスニッカーズ $1.5
お昼のパスタ     $14.58
コーラと地図(GSで)$5.01
モーテル宿泊費    $74.98
夕食         $17.12

 だいたい毎日、こんな感じで最小限の出費に抑えているつもりなのです が、これだけで、14,000円いってしまうので、ホントに貧乏旅行者としては もうこれ以上、叩いても塵一つ出てきません。

 本日の走行距離は55マイルでした。明日はサンフランシスコのはず・・・ です。

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