9月3日
サンタ・バーバラ 〜(アムトラック) 〜 サリナス

 何故か部屋の中に蟻の大軍が入り込んできて落ち着かなく、夜の2時 になっても寝付けません。蟻だけではありません。思ったほど距離が進 んでいないこと、それによって旅程の目論見が狂いっぱなしなこと、さ らに予想外に出費がかさんでいること。この先、はしょるためにアムト ラックにするかグレイハウンドにするかうだうだと悩んでいたこと。い ろいろなものが絡まりあって、それがまた気になりはじめるとさっぱり 寝付けず結局まったく眠れないまま朝を迎えてしまいました。やっぱり 小心者というか、過ぎたことをぐだぐだ悩みすぎるんですね、やっぱ。 変に倹約して財政支出を抑えて夜にアルコールを一滴も入れなかったの が悪かったのかもしれません。どうも何かだめだめでこの旅はどうにも 失敗か?という思いが頭に浮かびます。ま、一人旅の序盤なんてこんな もんだ、北海道でもそうだった、ドイツでもそうだった、と無理矢理に 前向きに考えることにしました。

 一睡もしないまま迎えた朝。今日はもう400kmほどアムトラック に乗ってそれで終わりにしようと一夜かけた逡巡に結論を出しました。 今日はもう漕ぐことはない・・・のももったいないので、チェックアウ ト(11時)までの間、軽く朝のサイクリングとしゃれこむことにしま した。

 天気はどんよりと曇り。日本であれば「この雲は雨だな」と読むよう な雲が空一面を覆っているのですが、カリフォルニアの曇り空は降りそ うで降ってこない。雲といっしょに霧が立ち込めていて霧雨模様、じっ としているとじわっと濡れてくるくらいなのですが、走ろうと思えば余 裕で走れます。朝のエクササイズに走っている人もちらほら。サンタ・ バーバラの砂浜沿いのバイクレーンをちんたらちんたらと走ります。こ のバイク・レーンは全長3マイル。砂浜あり、ヨットハーバーあり、 バード・サンクチュアリありの変化に富んだ3マイル。霧雨とは言え ど、涼しい朝の気候もあいまって、走っていてとても気持ちいいコース です。ロードレーサーはやっぱ空荷でなんぼ。たまには宿に荷物を置 きっぱなしにして走るのもいいですね。気持ちいいついでに海辺を2往 復12マイルほど走って朝のサイクリングを終えました。やっぱちょっ とでも走ると気持ちいい。走らないで宿でうだうだしてるから余計なこ とばかり考えてしまうのかなぁ、と。

アムトラックの駅は実は泊まっていたホテルの真裏。夜はやたらに長い 貨物列車の通過する音に悩まされたのですが、いざ利用するとなれば便 利なことこの上ありません。昨日出札窓口で尋ねた時には、サンタ・ バーバラからサリナスまでの運賃は97ドルだということだったのです が、念のためもう一度聞いてみると$48+バイクボックス代$12と なりました。おそらくは昨日聞いた方が自分のミスアンダスタンだった のだろうとは思うのですが(たぶんそれは往復料金だったはず)、予想 外に安くなったのでちんたちょっと機嫌を直す。金の心配が少しでも和 らぐととたんに機嫌が良くなるところが文字通り現金なちんた。

 発車1時間半ほど前に駅に行ってバイクボックスをもらい、自転車を 箱に入れます。上下と全長方向は大きく余裕があるのですが奥行きが2 0cmほどしかなく、単なる直方体の段ボール箱なのでハンドルを回し て少し幅を狭めないと入れられません。前輪を外して何とか収めます。 本来はペダルも外さないと入らないのでしょうが、めんどくさくてその まま突っ込んでしまったため箱が微妙に膨らんでしまいました。これで 梱包完了。あとはこのまま預けておけば列車が来れば載せてくれて、到 着駅で降ろしてくれます。梱包作業にかかった時間は10分ほど。輪行 に比べたらはるかに楽。自転車を預けて身軽になったので駅近くのピザ ハウスでお昼。

 アムトラックが最近売り出し中だというコースト・スターライト号、 噂に違わずいい旅でした。景色が抜群です。いわゆる西部というか西部 劇のような風景がずーっと続きます。ずっと漂う荒野の雰囲気。本来は このコースを自転車で走るはずだったんだよなぁという思いも頭に浮か ぶのですが、目を凝らして見ても、モーテルらしきものが何十マイル進 んでも見えないところからしても、このルートを自転車で走破するのは ちんたには無理だったようです(と自分を無理矢理納得させる)。実は 乗車6時間のうち5時間を寝倒してしまったので説得力無いのですがホ ントにスケールの大きな風景がどこまでも続き、これはちょっとどこに も例えようの無い車窓でした。しかしこの列車やたらに揺れます。
こー、なんというか右フックをもらって返す刀で左をワン・ツーでも らってしまったような強烈な揺り戻し。よくこれで脱線しないものだと 思うのですが、どちらかというと脱線より荷物室の自転車の方が心配で す。

 サリナスに着いたのは夕方7時。自転車は無事でした。バイクボック スから出すときは梱包の時より簡単で2分かかりませんでした。問題 は、宿。駅前を見てもそれらしき建物はありません。あまり大きな駅で はないので駅にはインフォメーションもありません。しょうがなく駅待 ちしているタクシーの運ちゃんに聞いてみると、モーテルの多い地区は 駅から2マイル離れているのだとか。行って行けない距離ではありませ んが、もう暗くなっていること、さらにそもそもどっちへ2マイル行け ばいいのかさっぱりわからないこともあり、結局、自転車ごとタクシー に乗り案内してもらう事にしました。タクシー輪行。へたれここに極ま れり。行き先はもちろん「運ちゃん、この辺で一番安いモーテルにつれ てってくれ。」
 変な所に連れていかれるでもなく、ぼられるわけでもなく、運ちゃん はモーテルにつれてってくれました。最も安いかどうかは別として確か に安いです。日本円にすれば5000円程度。ま、こんなもんでしょう。今 日は走っていませんがおおむね思い通りにいったということでまぁよし としましょう。

 本日の走行距離は17マイルでした。

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