9月1日
成田−(空路)−ロサンゼルス国際空港〜サンタモニカ海岸〜オックスナード

 どうやら景気が悪いのも悪いことばかりではないらしく、以前ではまず取れなかったような長めの休暇も割と楽に取れちゃったりします。そんなこともあって、ちんたは今年もバット大振り。見習うは新庄。目的地はアメリカ西海岸としました。西海岸は各社のフライトが多いせいか、エアチケットが異様に安いです。東京〜福岡の普通運賃くらいの価格の航空券(5.5万円)を握りしめて、いざロサンゼルス。

 今回も自転車はロード、さらにチューブラー仕様とツー車のセオリーに真っ向勝負。アメリカって自転車屋は多いのかなぁ?スペアのチューブラは売ってるのかなぁ?相変わらず自転車海外ツーリングの指南書は少なく、そこらへんの勝手はさっぱりわかりません。ま、スペアが無くなったらバスに乗ってツーリングは店じまいでいいでしょう。(ということを行きのフライト中にお気楽に書きましたが、結論から言うと大都市以外はまったく自転車屋を見かけることがありませんでした。少なくともドイツやオランダのように30分もうろうろしていれば苦も無く自転車屋が見つかるような環境ではありませんでした。)

 そんないいかげんな準備を整えつつ9月1日。成田から大韓航空でGOです。職場の同僚や家族に大韓航空で行くと言う度に「大丈夫なのか」とか「引き継ぎはちゃんとしていけ」とか言うのはやめれ〜と言いたい。
 今回も大変なのはやはりパッキングでした。保護金具付けて、エアシート巻いてとかやっていると1時間は軽くかかってしまいます。これは荷解きの時も同じでロサンゼルス空港の片隅で自転車を走れる状態まで組み上げるまでやはり1時間かかりました。ロスの空港なんて物騒な感じするし、そんなところでどこでどうやって組もうかはかなり不安だったのですが、売店のおばちゃんに断ってその脇で自転車を組み立てさせてもらい、緩衝材のダンボール等も売店のゴミ置き場に捨てさせてもらいました。とりあえず無事に終了。

 走り始めてもしばらくはというか少なくとも初日の間は心細さが常に付きまといます。昨年もそうでしたし、一昨年の北海道でもそうでした。それに抗って、旅を完遂し、後から思い出せば良い思い出にはなるのですが、リアルタイムで走っている最中はいろんなことが気が気で無くちんたの小心者メーターはレッドゾーンに入りっぱなしです。こういう時はもっと身の丈に合った旅にしておけばよかったと後悔してしまいます。

 そもそもロサンゼルス空港の敷地から自転車ではどうやって脱出すれば良いのだ?自転車がいったいどのレーンを走っていいのか?みたいな初歩の初歩からさっぱりわかりません(調べとけよ、と今にしては思いますが)。それもあってちんたらちんたらと歩道を押し歩き。30分ほど経って日本と同じで車道の端っこが自分の過ごす場所だということがわかりました。勝手がわからないのは走る方角も同じでどっちに行っていいのやらさっぱり。そこでやはりここは「道は人に聞け」早速実行。

「サンタバーバラへはどっちへ行ったらいいの?」
「サンタバーバラ!?」

えらいびっくりされてしまいました。後で調べると新宿のあたりで「三島に行くにはどっちに行ったらいいですか?」とか聞いていたようなものだと判明。
この手の間抜けな質問は以前もやってしまっているのですが、まるで成長の跡が見えません。それよりも有名なサンタモニカ海岸(こちらは空港から10マイルほど)に行こうとしておきながら、ぜんぜん明後日の場所を聞いているところが致命的。結局、初日に道を聞いた人の数は思い出せるだけで18人くらいに上りました。

 で、えらく苦労してたどり着いたサンタモニカ。もう夏も終わりかけなのかイメージしていたのよりは若干人が少ないような気もしますが決して人出が少ないわけではありません(湘南みたいなのをイメージしてた)。ビーチバレーをやっていたり、ただただ走りまわっていたりとよくTVや映画で見かけるあのシーンそのままに楽しんでいます。サンタモニカ海岸はブラボーなことに砂浜のど真ん中をサイクリングロードが突っ切っています。レンタサイクル屋さんも多く、すれちがったり追い抜いたり。さらに単純に歩いている人、インラインスケートの人まで様々な人がサイクリングロードで楽しんでいます。もともとくねくねと曲げて作られていることもあり、また適度に砂なんかも浮いちゃってて、高速走行には向かない(でも練習中?みたいな人は居た)サイクリングロードのようです。しかし、欧米人は太陽の下に出るとすぐ服を脱ぎたがる習性があるのかほとんどの人が上半身裸(女性はビキニ)。かっちょいいロードレーサーでもくもくと走りぬける人も裸。すれ違う女の人がぶるんぶるんナイスバディを揺らしてすれ違って行きます。う〜ん、これはぜひ多摩川サイクリングロードにも取りいれるべきだ。

 しかし噂に違わず日差しの強いこと強いこと。それもあってかやたらに消耗が激しいです(つーか、それ以前に今年に入ってから日本でもあまり漕いでいなかったのが・・・・いやいや言い訳としては向かい風がきつかったとかきつくなかったとか・・・)。空港から30マイルも走ると結構へとへと。
 サンタモニカ海岸を過ぎてからはずっと海沿いのな〜んにも無い道をひたすら向かい風と闘いながら進む。海沿いに道路があって、そのすぐ脇には山が迫っていて、その山々が草木がまばらというか、非常に西部劇風の山肌が迫っています。なんとなく北海道の苫前のあたりの山の木を全部刈っちゃうとこんな感じかねぇとか思ったりする。道は自転車道こそ無いものの、路肩が2m以上はあるので(たまに無くなるけど)、自転車で走るのも快適快適。ただし、ひっきりなしに車が脇をすり抜けていきます。さすが自動車王国アメリカ。胸いっぱいに排気ガスを吸い込んで漕ぎつづけます。

 消耗がさらに激しくなってもういいや、まだ2時だけど今日は適当に切り上げちゃえと思って目にとまったモーテルに入ろうとすると「満室なの。」とのこと。げ。地球の歩き方や車でドライブした人のサイトでも「モーテルはまず空いている、予約の必要なし。」と書いてあったのに。モーテルのおばあちゃん、「20分前に全部埋まっちゃったのよ。」とのこと。聞くとこの先モーテルがありそうなのは20マイル先だとか・・・って20マイルもかよ!あまりのちんたの消耗ぶりに同情したのか、「10号室はまだチェックインされてないからシャワーでも浴びていっていいわよ。」とありがたい申し出。軽くシャワーを 浴びて水を再補給。じゃあ、まぁ行きましょうかね、日没までにあと20〜30マイルは可能でしょう。ちなみに後で知ったのですが、9月1日土曜日、この週末はアメリカのレイバー・デイの祝日(毎年9月第一月曜日)の3連休の初日だったのですね。へろへろになって30マイルさらに漕ぎ倒して(おばあちゃん道案内が10マイルもずれてるよ!)たどり着いて見れば満室、満室の連続。うそだろぉ?4軒目くらいに訪ねたモーテルでやっと空きがありました。だがしかし、

「もうツインしか空きが無いんだ。一泊130ドルだぞ」

ひ、130ドル〜〜!?モーテルの相場って50〜70ドルって聞いてたのに〜。いきなり日本円にして2万円近くの金額に10秒ほど固まってしまったちんた。
しかし、ここを断って次を探してもその次がある保証が無い・・・結局、ここにチェックインすることにしました。昨年の欧州では1ヶ月いても宿代の最高額は1万円だったのですが、初日からいきなりバリー・ボンズもびっくりの記録更新。何が無いって知恵とお金の無いちんたさん、お金が無くなるのは身を切られるようにつらいのです(なら旅に出るなよ(^^;)。そんなわけでもうこの日はシャワーを浴びても、TVを見ても頭の中は「130ドル・・・130ドル・・・」がぐるぐる回りっぱなしです。夕食もサンタモニカ海岸で食べきれなかったポテトフライの残りをぽそぽそと食べるだけでおしまいに。毎度のことではあるけど、どうなっちゃうんだろう?この旅という不安を抱きながら無理やり寝ました。

 あ、この日モーテルで気がついたこと。1日走っただけなのですがあまりの日差しの強さにあっという間にレーパン焼け、サングラス跡のパンダができてしまいました。それはまだいいとして、ずっと西向きに走っていたせいで顔の右と左で焼け具合が違う!なんか初日ですでに顔の左側が焦げていてひりひり。

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