電動ガンレビュー・マルイ STEYR AUG



デザイン

デザインは後述するブルパップ式というタイプにあたります。
銃の機関部とマガジンがグリップより後方に位置するブルパップと言われるタイプのデザインです。
同種のものには、FA−MASやP−90、L85などがあります。
詳しくは後述。

左右対称デザイン。

AUGはチャージングレバーなどの例外を除けば、ほぼ左右対称のデザインとなります。
他の銃では右射手の使用を前提にデザインされ、左射手では使いづらい物も存在していますが、AUGに関しては左射手でも使いやすい物となっています。
セフティボタンなどは購入時のままだと左射手にはやや使いづらいのですが、ハズして左右反対につけなおすと左射手でも使いやすい物になります。

ブルパップ式の特徴

・バレルの長さのわりには、銃の全長を短くできる。
・サイトラインが短くなってしまい、アイアンサイトが使いづらい。よってダットサイトやスコープの使用を前提とした物が多い。
・マガジンチェンジがしづらい。
・エジェクトポートが顔の近くに位置しているため、左射手が撃つと顔面にカートが飛んでくる。(エアガンだと関係なし。また、AUGのように排莢方向を左右に切り替えられるものもある。)
・曲重賞の物が作れない。
・ストックの長さの調整ができない(仮にできても短くするには限界がある)。そのため、小柄な人間が使うのに無理が出やすい。

実銃ゆずりの優れたデザイン

個人的には実銃のデザイン自体が、かなり優れたものだと思います。
ブルパップ式は直銃床しか作ることができず、バレルとサイトとの視差が大きくなりがちです。
一般的に実銃のガスルート(発射ガスの一部を次弾装填に使うためのパイプ)はバレルの上を通すのが普通ですが、AUGはバレルの斜め下を通しています。
よって銃を真正面から見たときに、バレル周辺は菱形、つまり「◇」こんな形をしています。
菱形上部にバレル、右下にガスルートを通しているデザインです。
このため、菱形上部のナナメ部分に顔を乗せることができ、サイトを低く抑えることができています。
同じブルパップ式でも、FA−MASやL85は四角形に近いデザインです。

実射性能

パワー:標準的かやや低い

使う弾とホップのかけ方にもよりますが、500mmクラスのバレルなので、長すぎてパワーダウンしているようです。

命中精度:低い

分解機能のせいで、使い込むとアウターバレルの固定に難があるためです。

給弾信頼性:低い

個人的にはあまり遭遇したことがありませんが、聞く話によると給弾不良は多いようです。

取り回し:普通よりやや悪いか。慣れ次第

全長は標準的ながら、重量はサイト無しで3.4kgと電動ガンの平均よりかなり重いです。
ブルパップなので慣れないと使いづらさがあります。
逆に慣れると一般的なアサルトライフルより使いやすくなるかもしれません。

長所

消音性

P90と並んでかなりの消音性能を持ちます。
メカボックスがストックの内部にあるため、音が漏れづらいためです。
そのため、銃口からのエア放出音をサイレンサーで消すだけで、それなりに静かな銃になります。

発売当初は電動ガンで一番静かと言われましたが、その後にP90が発売されたことで消音性能単独トップの座は失われました。

分解が容易

銃の三分割(バレル、レシーバー、ストック)までは、工具無しですぐに分解できます。


メカボックスに至っても、ネジ2本を抜くだけで取り出せるという簡単さです。
しかし、新品では、これがなかなか抜けてこないので、人によってはかなり苦労します。
けっこうコツがいる感じです。

電気系統の抵抗の少なさ

AUGはマルイの電動ガンの中で、配線に以下の特徴があります。

・配線が太いため、抵抗が低い。
・配線が短いため、抵抗が低い。
・バッテリーを付ける場所以外にコネクタがない(たとえばAK47やMP5、G3はメカボックスの後ろ側、ストック付け根あたりにコネクタがあり、抵抗になっています)

よってAUGは多少連射速度が速めです。
ただしスイッチが焼けるのも早めです。

短所

破損しやすい箇所

・フォアグリップ
フォアグリップを立てた状態で使用していて、転倒するとよく折れます。


・セミオート機能

セミオートの信頼性

AUGのセミオートの構造は独特です。
他の多くの電動ガンが、セミオート、フルオートともに一つのスイッチを使い、セミオートの時は、一発発射後にそのスイッチを強制的にカットするのに対し、AUGはセミオート用、フルオート用の二つのスイッチを内蔵しています。
この構造に無理が出やすく、使い込むとセミオートのトラブルが出やすい銃です。
出やすい症状としては以下のようなものです。

1.セミオート位置までトリガーを引いてもセミオートが発射されない、さらに引き込むとセミオートで発射されたり、一気にフルオートになる。
2.とくにトリガーをゆっくり引いたときに、セミオート位置でトリガーを止めたにも関わらず、数発発射される、素早くトリガーを引いたときには正常に動作する。
3.セミオート位置までトリガーを引いたときに一瞬ギアが回りだして止まる。素早くトリガーを引いたときに発生しやすい。ゆっくりトリガーを引いたときにはセミオートが作動する。

1の場合、軽度な物だとメカボックスの位置ズレ(本来の場所よりわずかに後方に移動している)、重度な場合はセミオート用のスイッチ接点焼けの事が多いです。
AUGのメカボックスは、バレルユニットのチャンバー部についたスプリングにより、常に後方に押されています。また、トリガーを引いたときにも、トリガーを通して後方に押されます。
よって、後ろに行く力が常にかかっているため、メカボックスが後ろに行かないように抑えているパーツに負担がかかります。
メカボックスを後ろから押されているのは、ストックのバットプレートを外したときにバッテリー前部にあるプラスチック板のようなパーツです。このパーツはネジ2本でストックに固定されていますが、このパーツがメカボックスが後ろに押される力を受けて僅かに曲がってしまいます。
ここが曲がると、その分メカボックスが後方にズレるため、セミオート不調が発生してしまいます。

この症状が出ているかの判断、バットプレートをハズした時のバッテリー前方にあるプラ板の中央上部、写真の赤丸の位置を押し込みながらトリガーを引きます。これでセミオートが効くようであれば、ここが原因になっていることが多いです。
対処法としては、このプラ板パーツをハズし、指で押した部分の裏側。メカボックスと接触する部分にテープを張っていき、厚みを増してから組み込みます。

写真の物では銀色のテープを張っています。ビニールテープなどでも構いません。
貼ったテープの分、メカボックスが前に押されるようにします。
必要以上に押し込んでしまうとプラパーツが痛めてしまうので注意が必要です。

どこまでメカボックスが前進させる事ができるかは以下の手順により確認できます。
バットプレート、バッテリー、マガジンをハズし、レシーバーのロックボタンを解除状態にする。

この状態で銃を上に向け(下に向けるとレシーバーが落下するので注意)、メカボックスを後ろから抑えているプラパーツ(先ほどの写真の赤い丸部分)を押してみる。
この時に、以下の二枚の写真の赤い丸で示した隙間の量が広くなるようであれば、メカボックスはまだ前進できます。つまりメカボックス後ろのパラパーツにテープを張り付けて厚みを増やすことができるという意味。

逆に変化がないようであれば、もうそれ以上メカボックスは前に行けないので、テープを張って厚みを増やすことはできません。


メカボックス位置調整しても治らない物は、セミオートスイッチの接点焼けです。
こちらも発生すると、普段より奥までトリガーを引き込まないといけないため、セミオート不調になります。
他の銃では、こういった症状が出ても大した影響はないのですが、AUGの場合はトリガーの引き具合によりセミオート、フルオートを切り替えているため、通電位置が少しズレただけでも使い勝手に大きな影響がでて、セミオートが非常に使いづらくなります。
こちらはセミオートスイッチの接点交換、またはセミオートスイッチの位置調整が必要です。

2は、カットオフレバーとセクターギアの消耗です。
これは他の電動ガンでも起きやすい症状ですが、AUGはとくに顕著です。
他の電動ガンの場合、カットオフレバーとセクターギアの接触は、セミオート一発につき一回です。
また、フルオートに至っては、この接触はありません。
フルオートで何千発、何万発発射しても、セクターギアとカットオフレバーの接触はなく、この部分は全く摩耗しません。
しかしAUGはフルオートでも一発ごとに接触します。
フルオートでトリガー引きっぱなしで100発撃てば、セクターギア、カットオフレバーの接触回数は100回です。
ただし、セクターギア、カットオフレバーが大きく摩耗するのは、セミオートスイッチをカットする瞬間です。
これはフルオートでは最初の一発になり、フルオートのワントリガーで10発撃った場合は、一回分になります。
他の電動ガンの場合は、前述した通り、フルオートの場合はカットオフレバーとセクターギアの接触が無いので、この回数は0となります。

3の場合はスイッチがトリガーの動きによって前方に押し込まれますが、パーツ摩耗によるものです。
これも他の電動ガンでもかなり使い込めば発生するとは思いますが、AUGは特に発生しやすくなっています。
他の電動ガンでは、ここの部分の負担は、セミオート1回につき摩耗していきます。
AUGの場合は、セミオート、フルオート関係なく、一回トリガーを引けば摩耗していきます。

このような理由から、使い込んだAUGはセミオートが不調になりやすく、セミオート戦をしようとすると、なかなか大変な銃です。
購入当時は調子がよくても、使い込むとだんだんセミオートの調子が悪くなりがちです。
構造上仕方ないというか、このセミフル切り替え方式を採用しているのは、マルイではAUGとP90だけのため、改善されないようです。

トリガーの使い勝手の悪さ、トリガーの重さ

 AUGのトリガーは他の銃より重く、反応が鈍い感じがあります。
これは、トリガーのストロークによるセミフル切り替え機構のせいもありますが、そもそもトリガーと、メカボックスが離れている(ブルパップなので当然)ため、トリガーは長い棒のようなパーツを使ってメカボックス上のトリガースイッチを押し込みます。
 それとトリガーがフルオート段階まで引いたときに重くなり、そこから確実に戻すために、トリガーのリターンスプリングは強めの物が使われています。
 以上のことから、トリガーは重めで、セミオートで連射もやりづらく、フルオートの撃ち始めも他の銃より一瞬タイミングが遅れがちです。
また、トリガースプリングは「バイーン」という音がしやすく、トリガーを引くたびにバイーンバイーンと鳴ってしまいます。
対処策としては、トリガースプリングの換わりに強めの輪ゴムをいれたりすることで対処はできますが、トリガーの戻りが悪くなったりしやすい問題もでてきます。
 輪ゴムを使う場合、輪ゴムのねじり具合でテンションを調整できます。
また、輪ゴムは長い間経過すると劣化してしまうため、数年に一度の交換が必要です。

スペシャルレシーバーのレールサイズ問題

スペシャルレシーバーにはレールが標準装備されており、とても便利なものですが、このレールが少し曲者です。
レール幅は現在一般的な幅ではやく、少し広め。
またレールに彫ってある横溝も、なぜか等間隔ではなく、途中で間隔が変わっています。
また、サイドには、謎の突起があり、とくにダットサイトを付けるときには、つけたい位置につけられないなどの問題が出ることがあります。

分解機能のせいでバレルがガタつき、命中精度に問題がある

具を使わずに簡単に3分割のできるのがAUGの特徴ですが、これもまた悪い面をもっています。
アウターバレルごと、バレルがガタつきます。また、その部分にフォアグリップがついているため、フォアグリップへの力の入れ方で弾の飛ぶ向きが多少変化してしまいます。
基本的にAUGはアウターバレルの固定の関係で、中心よりやや右よりに着弾することが多いようです。
また、メカボックスの固定も甘く、ストックの内部でグラグラしやすいのが命中精度の低さに追い打ちをかけます。
もし全電動ガンで命中精度を測定した場合、AUGは下のほうに位置すると予想されます。

給弾不良問題

給弾不良の話もよく聞きます。
初期型AUGはマガジンキャッチのかかりが悪く、マガジンが浅めにしかかからないため、弾が上がってきづらい問題がありました。
現行の物は、まず改善されています。
ただ、AUGは分解機能のせいで、チャンバー構造が複雑で、マガジンからチャンバーに入り込むために弾が通るパーツが他の銃より多くなっています。
また分解機能のせいで、使い込むとメカボックスとチャンバーの位置がだんだんと後ろにズレてきて給弾不良が起きやすくなります。
この場合、主にチャンバーの入り口をわずかに削ることで解消されたりします。

マガジンサイズが独特

マガジンのサイズとデザインが独特で、一般的なマガジンよりわずかに大きいため、マガジンポーチを選びます。
M16やM4のマガジンがぎりぎり入るようなマガジンポーチだと、入らない場合があります。

重量バランスの悪さ

これは慣れでだいぶ解決できる問題でありますが、短所に加えておきます。
AUGのバランスは銃の中心より前と、後方に集中しています。
とくに銃の後部、メカボックス周辺の重量バランスは、他の銃に慣れていると非常に使いづらく、ストックの位置を動かしづらい感じがします。
また、ブルパップの都合上、グリップ位置が前方にあり、非利き腕(通常は左腕)が銃を保持する位置と近いため、銃を思い通りの方向に動かしづらい問題があります。

メカボックスや大き目の金属パーツがある重い場所を赤、右手左手の保持位置を青で表したのが下の図になります。

重い位置が金属レシーバーやスコープのある中央より前方と、メカボックスのある後方にハッキリと別れます。
右手と左手の保持位置もそれなりに近めです。また、フォアグリップが折れやすい銃なのでフォアグリップを倒したまま使用するとまた少し変わってきます。

対して、一般的(?)な銃だと思われるAK47

こちらは重いのはメカボックスを中心にフロントの金属パーツが多い部分あたりと、ストックの中に入っているバッテリーもまあまあの重さがあります。
また、右手と左手の保持位置が離れているため、銃の取り回しが楽に感じます。

右手と左手の保持位置の中間にある重さは、左右の腕で前後両側から動かせるため、比較的取り回しやすく感じます。
ただ右手と左手の両方の保持位置より前方、または後方の場合は、取り回しが悪く感じがちです。
射撃時などは、ストック後部は肩につけるので、肩が銃の保持のサポートはしてくれます。

こういった理由からAUGは重く感じます。
もともとサイト無しで3400gという重量級(他のスタンダード電動ガンは2000グラム台が多い)で、サイトを付けてさらに重くなりますが、それに拍車をかけるのがこの重量バランスとなります。

セミオートの問題点の対処

フルオートの配線の間にスイッチを入れ、任意のでON/OFFを切り替えられるようにするのが、もっとも確実な方法です。
この場合、トリガー上部にある、セミフルでのトリガープルを変化させるパーツ(小さいプラスチックとバネのパーツ)は取っておいた方が使いやすくなります。
これで接点焼けによるセミオートが効かなくなるトラブルは解決できます。
ただし、他の電動ガンよりもセクターギアやカットオフレバーがすり減りやすい問題と、スイッチ下部のトリガーと接触する部分が摩耗しやすい問題は回避できません。

この写真だとスイッチを付けるためのマジックテープしか写っていませんが、この位置にスイッチを張り付けます。
トリガーのみを引くとフルオート、スイッチを押しながらトリガーを引くことでフルオートになります。
この場所まで配線を通すスペースが銃の内部にはなかなか無いので、銃の外側を通したほうが楽です。
また、メカボックス付近から外に配線を出す場所で一番簡単な場所は、リアスリングフックを外した穴(右利きだと右側を使ったほうが使いやすい)となります。

ノーマルアウターバレルを使ってサイレンサー標準装備カスタム

このサイトの「自作サイレンサーの作り方」のコンテンツを参考にした標準装備サイレンサーの作り方です。
インナーバレルをフォアグリップの長さあたりでカット(長さにして350mmぐらい)
インナーバレルが達していないアウターバレル部分の前後にビニールテープを何重にも巻き付け、周りに太目のパイプをかぶせる。
パイプで隠れるところにドリルでいくつも穴をあけ(といっても亜鉛ダイキャストなので電動ドリルでも使わないと簡単には穴は開かない)、スポンジを巻き付けてパイプをかぶせる。
この方法を使うと、外すことはできませんがサイレンサーを作れます。
アウターバレルに穴をあけるのは、亜鉛ダイキャストに穴をあけるので、電動ドリルでもなかなか大変です。
AUGはアウターバレルが簡単に外せるので、アウターバレル、インナーバレル、チャンバーなどのセットの予備が手に入った場合は、この方法で通常のバレルとサイレンサーのバレルの二本を簡単に付け替えて使う事ができます。

総評・初心者の最初の一丁にお薦めできるか

デザインも個性的ですが、内容的にもかなり個性のある銃です。
長所もそれなりにあり、短所はもっと多く、好き嫌いがハッキリと別れます。

初心者の最初の一丁には、残念ながらお薦めできません。
マルイのスタンダード電動ガンの中だと、ワーストから数えたほうが早い感じです。
始めはよくても、使い込むとセミオート問題で主に泣かされます。
昔(AUG発売当初の1996年頃)はセミオート戦が少なかったと思うので、さほど問題がありませんでしたが、今はセミオート戦を行うゲームが増えているため、致命的な問題になります。
マルイは最近のロットではセレクターを使ってセミオートができるようにしていますが、これも根本的解決ではなく、たんにトリガーのストロークを制限しているだけなので、根本的解決にはなりません。

重量やストック後端からグリップまでの遠さから、小柄な人には特におすすめしません。

逆に容易に分解をしたい銃を探している方、消音性能の高い銃を探している方には向いています。

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