4 20

日曜日の夕方、Iがいる時にお客さんが来て「ここ、修理出来ます?」と聞いた。
お客さんは僕の返事を聞いて出て行きIが帰ったあとで再訪した。
これなんです。と僕に鞄を見せる。
鞄のファスナーが壊れていた。
これ、・・・の鞄です。と日本のあるメーカーの名前を言う。
・・・、修理出来ないって言うので・・・・・・・・・・・・・。
なんでだろうな?と僕は思う。
やっぱ、雑貨は雑貨で修理しなくていいというのがそのメーカーの姿勢なんだろうか?
ファスナー交換は面倒な作業だけど出来ない作業じゃない。

そんな会話のあと、ここって新しいお店ですか?とお客さんが僕に聞く。
もう、35年ここで営業してますよ。と僕。
近所に住んでるんですが知らなかった。とお客さん。
何年住まわれているんです?と僕。
15年です。とお客さん。

僕はしばらく絶句していた。
15年この辺りに住んでいても僕の工房を知らない人がいる。
確かに僕の工房は外見からどう印象されるかについては不明であるらしいと考えていたけれど、
やっぱりな。


4 16

昼を過ぎて大阪からお客さんが車で到着した。
僕の工房へ来るのが理由だったと聞いて恐縮した。
ご夫妻は30分ほど滞在していた。

お客さんが帰るとHさんが来た。
いつも彼はぶらりと寄っては遊んで帰る。
彼は時間を持て余しているらしく僕は慌ただしくしている。

夜になり、僕はTから貰ったビールを飲んだ。


4 15

Tが突然来たのはビールの配達だった。
イタリアに行った時に買ったビールと彼は言う
僕がビールを好きなことを覚えていたんだろう。
冷えていた。

二日前、東京にいる筈のKが来た。
これも突然で、驚いたな。
去年の夏から会ってなかったけど、相変わらずに可愛いままだった。
Kは遊びながら時計ベルトを作りさらに遊んで帰って行った。

いろいろと人は来る。


4 8

先に書いたことなんだけど、勘違いがない場合もある。
これはよく分かるし、この場合は、僕は熱心に相談に乗りサポートもする。
勘違いがある場合とない場合では、そんなふうに対応が180度違うのは仕方ない。

まあ、僕を標準と考えるかそうでないかってことで対応が変わるってことだな。

ところで、実際はどっちなんだろ?

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僕の教室は何を作ってもいいよ。という教室だけど、そういう教室って他にあるんだろうか?
あるかも知れないけど、僕は知らない。
ここに来る生徒さんって他の教室を知らないので僕の教室を標準と思うらしい。
ついでに書くと、僕は鞄屋をしてないけど鞄制作を教えてくれるところだと思う生徒もいる。
そんなふうに相当勘違いされているけど、完全に勘違いという訳でもないのが困るところかな。

実はその勘違いってすごいもので、僕の仕事を見て僕のようになりたいと思う人がまれにいて、
そういう人ってクラフトを職業にしたいようなことを言う。
はあー?と聞いてるしかない。
作家なんて自称してしまえばそれで作家なんだけど、
その作家になればそれで収入があるというのはものすごい勘違いだけど、ここに来る人って僕を標準と考えているらしいから仕方ないかな。

作家に限らず家という名の付く職業は貧乏と相場が決まっているんだよ。
仕事の依頼がなきゃ収入なんてないんだから。


4 5

花見したよ。
近所の桜木公園。煙草一本吸ってる時間だったけど。

帰省していた娘が昨日帰った。
土曜の午前に婿さんが東京から来て日曜に一緒に帰った。
静かな家になった。

昨日、法事だった。
義父の23回忌だ。
この法事に合わせて娘が9日間いて婿が来たって訳だ。
9日間もいると10年前の気分になるね。

最近、この工房をはじめた頃のことをよく思い出している。
30歳の若造がはじめた工房も今では前期高齢者の工房になっている。
35年はすごい時間で若造が爺さんになる時間だね。
あっという間だった。

今、相当慌ただしい。
先日、友人がぶらりと遊びに来て80歳まで生きていたらもっと慌ただしいだろうね。
などと言うので聞いていたら、大御所だろ。と言うよ。
想像したことがないことを言われたけど、確かにそうなってるかも知れないかな。
いいのか、悪いのか・・・・・・・・・・・。

土曜日に突然、僕の生徒だった男性が来たよ。
新妻を連れて挨拶に来た。
結婚式だったと言うよ。
幸福な顔をしていた。
先生にはお世話になって・・・・・、などと彼は言ってたな。
別に世話もしてないんだけど彼はそう感じているらしく、妻になった女性と一緒にお礼を言いに来た。
2次会の解散後だったので午後7時という時間だ。
工房にはふたりの生徒がいたけど、ふたりの生徒も喜んでいた。
結婚式後のふたりを眺めていると幸福というものは伝わるもんだと思うよ。