11 25
いつも酒を買う店は決まっているので、週に何回か足を運ぶ。
もう10年ぐらいになるんじゃないかと思う。
最近、このお店の店内ががらんとしている。
サッカーが出来そうな感じさえする。
先日、お酒を買いに行くと僕がいつも買うお酒がない。
酒さえないの?と僕が言えば、カウンターの男性が、実は来月お店を閉めるんです。と言う。
ちょっと返答に困った。
そう、閉めるの・・・・・・・・・・。
昔、100メートルほど歩けば酒屋があった。
そこが閉店したので200メートル先の酒屋まで歩いた。
そこも閉店した。
しょうがないと300メートルほど歩いてお酒を買いに行くことにしたのが今のお店だ。
ここが閉店となるともう酒屋はない。
近所に酒屋がないとはどういうことなんだ?
困る。
我が家から600メートルほど歩くと酒の量販店があるけれどお酒を量販店で買う気がなかなか起きない。
お酒と言うものはお店の人とおしゃべりしながら買ってちょうどいい。
コンビニにはビールが置いてあるのでビールを買う分には都合がいいけれどお酒となると都合が悪い。
コンビニの店員と世間話をしながらって光景のイメージが出来ないから。
そう言えば、今日、我が家の至近にカレーライス店がオープンした。
4年ほど空き家だった店舗を借りる人がいてそれがインドカレーだった。
我が家の周辺には喫茶店さえなく外食には苦労をしたけれどインドカレーとなると、あんまり意味がないような気もする。
週に何度も足を運びたいって気にはならないだろうからだけど、外食出来るお店が出来たのは悪くはないかな。
11 22
少し前の明け方、シャワーを浴びてからテレビのスイッチを入れた。
映画が流れてた。
そのまま観続けて1時間が過ぎた。
その1時間は後半部分になるけれど、ストーリーがあるようなないような映画だったので後半部分だけでも全編を観た気分になった。
観続けたのはとても面白かったから。
題名は「ニシノユキヒコの恋と冒険」
ルックス、仕事、セックス。すべてが完璧な男。
が、ニシノさんで「ニイシノさん」と映画の中では爽やかな声で何人もの女性が呼びかけるそんな映画。
でも、そのニシノさんが主役って映画ではなくて彼を好きになる7人の女性が主役のような女性の映画。
「死ぬほどモテる男のおかしみとかなしみ。」
が、映画のコピー。
ニシノさんってモテるけどぜんぶふられる。
「僕はどうしていつもうまくいかないんだろ?」
と、彼はぼんやりとつぶやく。
映画観たら、誰でも、そうつぶやくよ。きっと。
モテ過ぎるって、困ることでもあるよ。
11 15
カレンダーを眺めていたら日曜日に生徒の予約がないと気づいた。
そういう日曜日は滅多にないので何をしようかと悩んだけど生徒が来ないからといっても休業日ではないので外出は出来ない。
それで、結局は店内の整頓などをはじめた。
生徒がいないとものすごく静かだと思う。
工房のガラス越しに人が僕を眺めていると突然に気づく時がある。
あー、またいるなという感想しか出ないじいさんが僕を眺めていた。
帰ってよ。と僕はいつも言うけどそう言ったからといって帰る人でもなく、いつものことだけど外っておいた。
外っておくとたいていはいなくなる。
そうしていたら今度は年配の女性が来た。
よく分からないやり取りがあってその女性は帰った。
正直に書けば帰ってくれて良かったという感想が出た。
そのあと、若いカップルが来た。
ほっとした。
当然ながら人の気分というものはどういう人と接するかということでものすごく変わる。
11 12
11月も半ばになろうとしているのはどういうことなんだろう?
今年の残りは50日ほどに過ぎない。
木曜日から生徒が来るので、いつも木曜日から慌ただしくなる。
先週、新しい生徒が3人来てたし、その前の週も来てた。
明日もひとりの新らしい生徒さんの予約がある。
ほとんが女性だ。
先日、ここで4人の女性が作業してたら26歳の男性が来て作業した。
気分はきつかっただろうな。と思う。
そこへもうひとりの男性が来たけど5人がいれば作業する場がなくてまた来ます。と帰って行った。
NHKでも9人の同時講習だから、僕はとても慌ただしい。
なんだか、歳を取ってもこういう慌ただしさは減らない。
作業量はコントロール出来るけど、講習はコントロールが無理っぽい。
11 6
夜の無人駅は随分と寂しい。
蛍光灯が誰もいない改札を照らし改札を通れば無人のホームを蛍光灯が照らす。
駅という場所には喧騒があってちょうどいいのだけど静寂しかないとはどういうことなのだろう。
誰もいないホームから駅前にひとつだけある商店が見える。
駅前に商店がひとつだけというのはどういうことなのだろう。
僕が思い出すその町の駅前は人で溢れていた。
パチンコ店すらあった。
もう50年も前の風景だし、それ以前はさらに栄えていた筈だ。
人が老いるように町も老いてしまった。
11 3
突然に海を眺めたくなる時がある。
今日は休日だと思い出せばそのまま駅まで歩き電車に乗った。
名鉄電車に乗るのは一年ぶりだ。
海岸にあるその駅に着けばとても寂れた町だといつも思う。
寂れたというのは昔は繁盛してたからだけど、現在ともなれば明かりの灯る商店はなく県道に面したその町にひとつだけあるコンビニには
年配の女性がひとり手持無沙汰にレジ番をしていたけれどお客はいなかった。
誰もいない路地をどこを歩くでもなく歩いていたら海岸に出た。
海からの風がとても強かった。
一年前にもそこにいた。
雨が降ってたのを覚えてる。
その前の年にもいて、さらに前の年にもそこにいた。
いつも沈む夕陽を眺めていた。
夕陽が沈んでしまえば名残り惜しくそこを離れて電車に乗って名古屋まで帰る。
陽が沈めば路地ばかりの町はとても暗く人声はない。
誰もいないホームのベンチに座り停車した電車に乗り込む。
車内はとても静かで名古屋駅に近づくにつれて喧騒がはじまる。
その喧騒の中でいつも夢から覚める。
多分、夢を見てるんだろう。
11 1
今日、暖房をした。
ふたりの生徒は男性で煙草を吸う。僕も吸うので3人が工房で煙草を吸うことになり、だから、玄関のドアは開けっぱなしにした。
暖房を入れてドアを開けてるのもなんだか変な気分がしたものだ。
今日から11月がはじまる。
11月とは、いろんな意味で僕に関係する月だ。
先日、ここにはじめて作業をする生徒さんがトランクを作りたいので教えて欲しいと言う。
相当考え込んだ。
生徒さんの持参した写真は一枚でその一枚からトランクを作ると言うのは至難の技だろう。
その生徒さんと革の話をしたけれど革の知識は殆どない。
クラフトとは革の癖の応用みたいなものだから、革の知識がないとトランク制作は無理だろうな。というのが僕の感想だけど、
ここに来る生徒さんは、たいていはそういうことはどうでもよくて、教えて貰えば出来てしまうと考えるものらしい。
そのトランクは宮内庁ご用達の職人が制作する品物で、それをクラフト初心者が作りたいと言う。
僕も制作したことはない代物だ。
さあ、どうなるんだろうな。
生徒さんの話を続けると、僕はNHKカルチャーと僕の工房の二か所で講習をしている。
NHKの生徒さんには数年継続の生徒さんが多い。
NHKでは限られた時間に集中しての作業を継続することになるので、かなり真剣な作業になるしそれを続けるので結果的に相当な力量を持つ。
どのくらいの力量かと書くと、僕の工房に来てる生徒さんでNHKの生徒さん以上の力量のあるのは数人だろうと言うのが正直な感想だ。
これは意外な事実になるんだろうな。