7 28

26日のイベントはものすごく暑かった。
うっかり陽射しに置いた工具を手にして火傷をしたんじゃないかと感じ、それからは工具を濡れたタオルに包むようにした。
そんな暑さだった。
会場のCBC住宅展示場は我が家の至近にあるけど、これほどの至近となると自分の工房で体験教室をしているようなもので、
忘れ物の心配もなく休み時間は自宅にいれば良かった。
ついでに書けば、受付をイベント会社のバイトの女性がしてくれたのでとても楽なイベントになった。
参加してくれたのは50人の子供たちだったけれど、今週末の土日は恒例の円頓寺で同じようなことをする。

今年のイベントのことを書くと、円頓寺の1週間後には名古屋城でのイベントがある。
暑さを想像すれば、これが一番辛いイベントになる筈だ。
名古屋城の西日のきつさが尋常なものではないのは何度も経験している。

7 25

電話が鳴って生徒の予約が入り彼を待っていたら別の男性が来て、僕の教室のいろいろを聞き、いつか鞄を作りたいなどと言う。
予約はひとりだから席は空いているので、だったら鞄を作ろうかと僕が提案する。
驚いた顔をして「いいんですか?」と彼が聞く。
鞄なんて初心者にも簡単に出来るよ。
そう言えば、予約を入れていた生徒は全くの初心者なのだけど巨大なランドセルを制作している。
その彼が来たので同時にふたりの若い男性に講習をはじめることになった。

僕の教室は、何度も書くけど、そういうところだ。
作りたいものを勝手に作っていればいい。
カリキュラムなんてものはない。
入会金はなく1時間1,000円の授業料を払えばいい。2時間は2,000円で3時間は2,000円だ。
4時間も2,000円だ。つまりは2,000円で打ち切りにしている。
だからたいていの生徒は何時間もここで作業をしている。
構わないよ。

営利を目的にしないと潰れるって教室じゃない。

7 23

迂闊だっったな。という言葉が浮かんだのは珍しい。

実は僕はFBをしているけど友人がかなり少ない。
友人申請をすることもされることもないからだけど、まれにされることがある。
10か月ほど前にそのまれにがあった。
申請してきた人は30代後半の女性で名前に心当たりがなかったけれど了承した。
了承は年にひとりぐらいで、その人には不審という印象はなかったからそうしたのだけど、
時々更新する彼女のサイトを眺めて、誰なんだろうな?と考えることがあった。
今日もそんなことがあり掲載されていた画像を眺めていて、
あれっ?という感想と、あっ!という感想と、それから、迂闊だったな。という呆れるような感想が同時に出た。
それから、もう一度彼女の名前を読んだ。
名前に心当たりがないのではなく正確に書かれた僕の生徒の名前だった。
彼女は忘れようのない生徒さんで、僕は彼女の結婚式に出席して祝辞さえ述べていた。
早速、僕はFBのメール欄にコメントを書き送信した。
返信が来た。

何故、彼女の名前を思い出せなかったかを書けば、女性は結婚すると姓が変わる。
彼女の場合、結婚式にさえ出席しているので変わった姓も知っていたんだけど姓の漢字を勘違いしていたからだ。
はじめに知らない人だと思い込むと、そうなってしまうものらしい。
10か月の間、そうだった。

7 21

先に書いたことは、僕の教室はそういうところということだ。
考えなくてもだけど、みんなはどうやって作ったらいいかが分からなくて僕のところに来る。
だから、それを教えるというか、それを一緒に考えるということになる。
僕の教室は決まった作品を作るというところではなく作りたいものを勝手に作ってしまえばいいというテーマがある教室だ。
無茶に成るってことも仕方ない。

7 16

先日、生徒さんがボックス型のコインケースを制作したいと言う。
いいよ。と答えたけど、希望するのはかなり変形しているボックス型で、こんなのないよ。と僕が言う。
どこを探してもないんです。と生徒さんも同じことを言う。だったら作ろうかと続けて言う。
それで教えて欲しいと言う。

こういうことはよくある。
どこにもないのを作りたいから教えて欲しいと言うけど、どこにもないので当然ながらどこにもデザインはない。
完成形のイメージになるのもない。
だから、教えて欲しいと言われても教えようがない。
しょうがないな。と僕はサンプルを作りそれを元に型紙を作り始める。
こうなるとオーダーの仕事をしているのと変わらないのだけどこれを講習にしなくてはいけない。
重ねて書くけど、こういうことはよくある。

多分、どこの革製品のメーカでも新製品を作るに関しては数カ月が必要になる筈だけど、講習となるとせいぜい1時間でデザインを作成する必要がある。
デザインとは作り方のことだ。
多分、無茶なことをしている筈だけど、たいていの生徒さんには無茶という感想はない。
さらに困ることを書くとデザインの全てを僕がする訳にもいかずどこかで生徒さんに任す必要もある。
僕の制作するものであっては困るからだ。

よくそういうことをしている。
疲れる。


7 11

正午を過ぎた頃、工房の前に車が停まりひとり女性がお久しぶりです。と僕に挨拶をした。
僕にはその女性の記憶がなく誰?と聞くのもまずい気がして、こんにちは。と返事をした。
女性はふたりの女性を同伴してたけど彼女の娘さんらしかった。
これ・・・・・・と彼女はひとつの財布を差し出した。
かなり使い古したカービング入りの財布で、壊れた財布というか消耗しつくした財布というか、よく使ってるなと感心するようなものだった。
これ、使いやすいので修理して欲しいと彼女は言った。
その財布を眺め、カービングを眺め記憶にはないけれど、昔、よくカービングした模様なので、多分、僕が制作したものだ。
財布を眺め作業を考え同時進行で彼女が誰かを思い出そうして僕はかなり混乱した。
誰?と聞くタイミングはとっくに過ぎていたけど会話は進む。
古いですよね?これ、20年ぐらいかな?
そんなに経ちます?
いや、20年では無理だな。カービングを入れた財布はもっと前に作ってた。ひょっとして30年ぐらいじゃないかな。
そのぐらいになるかな。と彼女は言う。
僕は絶句しそうになる。

彼女には30年過ぎても僕への親しみは変わらないものらしいけど、僕には彼女の記憶が出てこない。
困ったなという感じは少なくなって妙な戸惑いが僕の全身を包んでいるのが分かる。

結局、僕は彼女が誰であったかを彼女が帰った後に思い出したけど、これはかなり失礼だったことになる。
もっとも彼女は僕の記憶の中から彼女が出て来なかったことには気がついていないまま帰った筈で、
今度会えば詫びるしかない。

25年前のお客さんが娘さんをじゃなくてお孫さんをふたり連れて来た。
とても親しんだお客さんであの頃一緒に珈琲を飲んだりもしたことを思い出した。
人の持つ時間というものは何なんだろう?

7 10

昨日、新聞で今ハンドメイドが人気という記事を読んでいて、人気なんだな。と言えばNがそういうサイトいっぱいありますよ。と言う。
ふーん。と聞いていて、今日、生徒さんがそういうサイトの名前を教えてくれたのでそのサイトを見た。
ここに来る生徒さんはハンドメイドを趣味にしているので当然ながらそういうことには詳しく、詳しくないのは僕ぐらいかなとも思う。

人気と言うのは本当らしく趣味のハンドメイド作品が溢れるようなサイトだった。
そのサイトで趣味のハンドメイド作品を売ったり買ったりする。
まれにプロの作品もあるらしいけれど、同列に並んでしまえば趣味でもプロでもどうでもいい。
気にいった作品が気にいった価格で手に入れば、それでいい。

記事にはお客の9割が女性と書いてあったので女性のサイトらしく、男性は、まず、寄らないサイトなのかな。とも感じた。
確かに僕の工房にも体験したいといろんな人が来るけど女性が多い。
革のクラフトは男性の趣味と考えていたけど、最近はそうでもないらしい。


7 8

ここは体験といえども型紙制作からはじめるよ。だから、好きな型紙を作ればいいよ。
そう言って型紙の作り方を体験に来たふたりの女性に教え、それから型紙に合わせた革を用意して好きな色に染色していいよ。とも言った。
傍にいたKさんが染色させてくれるところはここぐらいだよ。と追加で言う。
他の工房を知ってる彼がそういうのならそうなんだろう。
初めてのクラフト体験者に染色を教えるのは無謀かも知れないけど、染色があってクラフトがあるのだから仕方がない。
大体、染色は技法だから簡単から複雑までがいろいろあって簡単な技法は文字通り初心者にも簡単に出来る。
好きな色でいいよ。と好きな色を聞きその簡単な染色法を教えた。
こんなふうにしているものだから体験といえど3時間を超える。
ふたりの女性が制作したのはキーケースとペン入れだった。

夜、久しぶりに来たKさんと話し込んでいた。
そこへSが来た。
だから、3人で話し込むことになり、僕は缶コーヒーを3個買いに走った。


7 3

昼、mikiが突然に来た。

あと10日もすれば出産する筈のおなかはすいかを入れたようにまん丸で硬かった。
駅から歩いて来たと言い、それからayumiちゃんのと言ってスマホに入った画像を見せてくれた。
赤ちゃんを抱いたnakanoはすっかり母親になって仏様のような女の子を抱いていた。

極楽というものがあるかは分からないけど、赤ちゃんを眺めているとその極楽からおなかを経由して仏様が訪れてくれたように思う。
赤ちゃんの瞳を眺めていると、よくそう思う。

昨日、いつも自転車で来る生徒は歩いて来た。
なんで?と聞けばビールだと言う。
ビールなので静かに歩いて来たらしい。
何本かの地ビールだったけど、気の使い方も半端ではないな。
夜、早速飲んだ。

7 2

公然と夢をもとう!
彼はそう書いた。
詩編の中に彼は何度もそう挿入した。


そう、誰もが公然と愛が欲しい!と言ってもおかしくはない。
僕はよくそう言う。
昨日もそう言った。


7 1

シャッターを下ろして仕事をしていると玄関に突然人がいると気が付き、それは驚いたものだった。
Tだった。
1年ぶりに会った感じで彼が来たことになんだかほっとする気分になった。
元気なんだな。
僕は彼をこの1年ほどどのような世話も焼いてないけど、彼はお中元とお歳暮を
丁寧に送ってくれていた。
昨日もお中元を持参しての訪問で、作業が再開出来そうですからよろしく。と言う。
いつもビール、ありがとう。なんだか悪いような気がするよ。
いえ、師弟関係は永遠ですから。と彼は言う。
彼には僕は永遠の師であるらしい。
彼に僕が師であれば彼は僕の弟子になり、これも永遠なんだろう。
彼に限らないのだけど、そういう感覚が僕にはある。
僕のところで作業をすれば、それは僕の弟子で、その関係は生涯そうだろうってことが。
まれに破門する弟子がいるのも事実だけど。

夜になると雨になり、雨は降り続け、朝になっても止まず、今日もシャッターは下ろして仕事をする。
今は午前だ。