3 28

姫路から電話があったのでついでと革の注文をした。
みつくろって革を送ってよ。と注文にならないような注文の出し方だった。
どんな革が配達されるか僕も分からないけど間違いがないのは分かる。

3月も終わろうとしている。
考えたら3月には休日というものがなかった。
外出しない日は休日ではないという事態になっているので仕方がない。
明日は月曜日で休日の筈だけど昼からひとつの仕事をしなくてはならない。
よく気分転換をしなくて大丈夫なものだと思う。
多分、気分転換をしなくていいほどにいろんな人が来るからだろう。



3 25

NHKの1クールが終わり4月から新しいクールになる。
時々、NHKの講習のあとで白壁町のコメダに寄り珈琲とサンドを食べる。
喫茶店で珈琲を飲む機会もなくなったけれど、たまにそんなことをする。
そういえば、最近、飲みに行くってこともない。
ほとんど工房に籠り切りの生活な感じがしているのは3月のせいか・・・・・・・・・。

今日、3週間ぶりに歯医者さんに電話をした。
予約が出来るかと聞いたらいつもの時間は駄目だと言う。
もう少し遅い時間だったら大丈夫だと言う。
考え込んでたら電話の向こうの女性がKさんですよね?と聞く。
電話で名乗らなかったけど相手は僕が誰かを声で判断したらしい。
声で判断されるほど出かけているんだな。と妙な感心をした。
実際はそんなに歯医者さんへ出かけているのでなく逆で、治療の最中でさえ随分と間隔を開けてしまう。
3カ月開けた時はさすがにまずいなという気がしたものだった。

3 20

机の上にいろんな作りかけの作品が並んでいるけど、これはみんな生徒の作品だった。
相当な数だ。

日曜日に電話があり、突然ですけど見学に行っていいですか?と聞かれた。
見学ですよね。と僕は念を押した。
体験であれ作業する席はないからだ。
電話の人が来たのは15分後だった。
ここか或いは僕に随分と興味があるらしくここに書いているのをよく読んでいる感じがした。
ひょっとして、彼はこれも読んでいるかも知れない。

ここに僕は意外なことを書くらしい。
例えば、カービングはクラフトの中で最も簡単な技法だとか、デザインとは素材と作り方と完成イメージの3点セットだとか・・・・・・そういうことだ。
これはなかなか理解されないのではなく突然に理解されるものらしいと先日気がついた。

また聞きになるけど、ここではサンプル制作を熱心にするけど他所ではあんまりしないらしい。
サンプルは床革で作るので材料費は無料だし床革といえどヌメ革なので紙で作るよりはるかにイメージの完成には都合がいい。
サンプルが出来れば型紙が出来る。
つまりは、ここでは型紙を作る講習もする。
信じられないかも知れないけれど体験者の作るコインケースですら型紙制作から教えることにしている。

また聞きになるけど、型紙があればなんでも出来ますという人がいるらしい。
不思議だなとそれを聞いて思ったのは、型紙を作るまでがクラフトの作業で手が動くとは残りの完成作業をしているに過ぎないようなものだからだ。
どれだけ残りの完成作業をしたところでクラフトが出来るようになるものでもない。
型紙があればじゃなくてするべきことはちゃんとした方がいい。

3 11

昨日、吹雪いてる街の中をT君が来た。
NHKの準備を始めようかと考えてる時で少し慌てた。
T君は「先生、これ、お土産」と割と大きな缶を差し出した。
うんっ?石垣か?と僕。
いえ。とT君。
うんっ?と僕。
イタリアです。とT君。
うんっ・・・・・・・・・・・?
それからしばらくフィレンチェの話を聞いた。
革見本を眺めふたつの作品を眺めタンナーの話とか工房の話とか革の染色の話とか作品の話とか。
しばらくと書いたけど2時間ぐらいだから短い会話ではない。

イタリアに1週間いてイタリアのタンナーのもとにいたと言うので劇的に変化をした感じがした。
そんな顔つきもしていた。
なんかとんでもない財産を得たというかそんな顔つきだ。
これは僕にはとても嬉しい顔つきだった。


3 8

日曜日だった。
僕の工房には同年齢の男性の生徒がひとりいて作業をしていた。
他には誰もいなくて静かな作業が淡々と過ぎた。
同年齢の男性と話をするのは珍しかった。

昨日の土曜日には家族連れの体験者がいた。
小学生の男の子とそのご両親だ。
他に3人の生徒が作業をしていたので僕はかなり疲れた。
生徒数と疲労度が比例するという当然な事実をこの二日間で感じたものだった。

生徒が帰ると自由な時間が出来た気分になって短い散歩をし駅前の建築中のビルを眺めて帰宅した。


3 1

3月最初の日は日曜日で一日雨が降る。

先日、コンビニにいたらラジオから女性DJの「風のささやき
という歌の話が流れていた。
帰宅してパソコンでその歌を聞いた。
45年前の映画のサントラだ。
スティーブマックイーン主演「華麗なる賭け」というのが題名の映画でフェイダナウェイが共演するとても綺麗な映画だ。

僕は19歳だった。
時間が有り余るほどにある時代で平日の午前にお客のほとんどいない映画館でその映画を観た。
映画はそういう時代さえ思い出させるものらしい。
目の前に未来が膨大にあるのが分かるけれど具体的な未来を感じることがなかった時代の話だ。