11 24

3連休の最後の日。
昼に起きたら誰もいない静かな我が家だった。
ひとりで昼食を食べるのがなんだか面倒臭くなって食べるのを止した。

3連休の最初の日は生徒が多くて講習ばかりして深夜に仕事をした。
日曜日も同じだった。
今日は誰も来る予定がないのでのんびりと過ごし深夜の雨音を聞いている。

まだ12月ではないのだけど一年が終わるような気分で、先日も今年最後の講習をした男性から良いお年を。なんて挨拶もされた。
瞬く間に一年は過ぎる。

昨日、Y君が来た。
1年ぶりぐらいに僕の工房を覗きに来たという感じで、忙しそうなので帰ります。と言って帰った。
生徒が5人ほどいたので彼の居場所もなかった。
彼は元気だった。
彼がここに来てた頃から5年が過ぎている。
この5年という時間は意義深い。


11 20

まれに変な人が来る。

突然、工房のドアを開けひとりの男性が僕に近づき僕の横の椅子に座りテーブルの上にゴミのようなものを置いた。
会ったこともない人だけど遠慮というものがないらしい。
ゴミに見えたのはどうやら小さな鞄のようでそれはあるブランドの生地で制作してあった。
ゴミにしか見えないのは余りに拙い品だったからだ。
それから、その小さな鞄をこのぐらいの大きさにしたいのだけど、どれだけの生地量がいるかと質問をした。
そんなのは鞄の展開図を書けば即座に分かるだろうにと僕が言い実際に描いた。
描いて計算してこれぐらいだよ。と言った。
それを知ると考え込んでいた。
何を考え込んでいたかは分からない。
そうして椅子から立ち上がると帰って行った。
帰り際に僕が聞いた。
作るの?
彼は頷いた。
作る時、また、ここに来て教えてと言うの?
彼はもう一度頷き礼を言うこともなくドアを開けて出て行った。
また、突然に来るつもりなのだろう。

彼がいなくなり僕は考え込んだ。
まれにだけど、こういう人も来る。

いい気分はしない。

11 16

昔からそうだけど、ここに来たばかりの生徒の驚くことは生徒が僕にタメ口で喋ることだそうだ。
確かにそういう生徒はいるし、いろんな人にそれは言われる。
師弟関係とか先生と生徒の関係を前提にして眺めると、これには驚くだろう。

NHKでMが僕のアシスタントをしてるけど、彼女はよく走るし荷物も持ってくれる。
ドアがあれば走って開けてくれたりする。
Mはそんなアシスタントの鏡みたいなことをする女性だけど、体育会系はそういうものらしい。
僕はそうではないので、それが新鮮だ。

ものすごく制作にこだわる生徒さんもいるね。ということを先日言われた。
色とかここんところはこんなふうにとか。
まるでオーダーを頼むようなお客の感じで希望を言うとか。
言うのは自由だけど、制作はそれを言う生徒がするということを忘れているような。

まあ、教えて貰えば出来てしまう。というのは完全な間違いなんだけどその間違いに気付かない生徒もいる。
ここんところやって下さい。なんて平気で言う生徒もいる。
こういう風景を眺めたりすると、なんて教室なんだろうと思う生徒も出てくるかも知れない。

個人的には、生徒のほとんどはクラフトで遊びたいが理由でここに来ているのでそれもありかなと考えているので、
困ったな。とは思うけど腹が立つ訳でもない。
腹が立ったら即刻講習は停止にすることにしている。

11 15

昼に起きたら昨夜の徹夜作業で手縫いばかりしていたせいか手先が痛かった。
かなり大きな鞄だった。
今日もその続きをした。
生徒はひとりだったので土曜日なのに自分の作業が出来た。
そのひとりの生徒はSだった。
カービングがしたいと言ってここに通いはじめた生徒で個人講習のように教えた。
染料の混ぜ具合を教えペースト染料の混ぜ具合を教え電気ペンの使い方を教えモデリングを教えた。
完成したカービングのデコレーションカットを修正し染色した模様の上塗りを教えた。
そうしていたら夕方になり作業を終えたSは帰り入れ違いのようにKの娘さんが来た。
Kというのは高校以来の友人だ。
その娘さんも帰ると僕は大きな鞄の制作を続け夕食前に完成した。
材料の仕入れに手間取り完成予定が大幅に遅れてしまった。
にしても、大きい。
大きいので重たい。
荷物をいっぱい入れたら持てるんだろうかと心配さえするような鞄になった。

11 14

ふたりの生徒が作業をしていると外で男の子の声がした。
それからドアが開いて男の子とその母親が入って来た。
突然、母親になったSはそうやって僕の前に現れた。
驚くべきことだったんだろうけどそれはあまり感じなくて2年ぶりかな。などと考えていた。
昔、よくここに来て作業をしていた女性が子供を連れて突然に来る。
これから京都に帰るのでその途中に寄った。とSは言ったけど、2年前もそうで、あの頃は臨月のおなかだった。
2歳の利口そうな子供を抱いたSはとても幸福そうだった。

Sが帰ったあとに僕は携帯から電話を入れた。
昨日、封書が届き手紙に同封されていた紙細工がとても和やかでそのお礼が言いたくて仕方がなかった。
僕はその紙細工を壁に飾り、これは自慢になるな。などと考えていた。
1週間前に僕はある小学校のPTAで講習をしたけれど、そのお礼の手紙だ。
心遣いが本当に嬉しかった。

僕は、なんだか春の心地の中にいるらしい。

11 9

いつの間にか日曜日が過ぎた。
雨が降っていた日曜日だった。
生徒はふたりだったけれど、随分と疲れる生徒だった。
明日は月曜日だけど休めないだろう。

さっき、レンジで温めた夫婦ぜんざいを食べた。
大阪名物と書いてあるレトルトパックのぜんざいは大阪のお客さんが送ってくれたものだ。
嬉しかったので食べずに眺めてばかりしていたけれど、徹夜が続いてとうとう夜食になった。
僕は送ってくれた人を知らない。
知らない人にフレドリーさをものすごく感じてしまうことがあるけど、夫婦ぜんざいを送るお客さんも僕にそんなことを感じていたんだろう。
そんな関係があるというのが、すごく嬉しい。

11 5

ひとりで講習会に出かけるものは久しぶりで、午前9時に家を出て30分のドライブで小牧市にある小学校に到着した。
4人の女性が駐車場まで迎えにくれて荷物を運んでくれて多目的室に案内してくれた。
それから、26人の女性がクラフト体験をしたのでその講習をした。
26人をひとりで講習するのは大変そうだけど実際はそうでもなく講習というよりはアシストをしてたようなものだった。
ふたりのアシスタントがいるNHKよりも楽に感じたのはそれなりの準備があったからだ。
講習会ではいつもだけど、とてもフレンドリーな雰囲気を感じていた。
26人の女性にフレンドリーさを感じるのも、なんだかすごいなと思う。

昼過ぎに帰宅して少し休んだ。
それから歯科医院に行き治療を受け、麻酔の効いた唇を触りながら1時間を過ごした。

11 4

土曜日に5人の子供と付き添いの女性がひとり来てクラフト体験をしていた。
雨の降る午後のことだ。
日曜日には大人の生徒が3人作業をしてたけどデザインばかりしていたせいか脳が疲れた感じがした。
連休最後の日には、この歳でなんでこんなに仕事をしなきゃいけないかと考える感じで溜まった仕事を眺めて過ごした。

先日、髭を剃っていると玄関のチャイムが鳴ったので困ったなと思ったけど
仕方ないなと窓から顔を出し誰?と聞いたたお客さんだった。
髭そりの最中に応対する訳にもいかず少し待って貰って玄関を開け、オーダーされていた品を渡すとものすごく喜んでくれた。
今日、電話が鳴り受話器を取ると先日発送したお客さんからの電話だった。
昨日、彼からのメールも届いていて何だろうと聞いていたら、メールだけじゃなくて直接お礼が言いたいと言う。
お礼のメールはよく貰うけどメールと電話というのは初めてだった。
彼の弾んだ声を聞いていると嬉しくなり、電話のあとでこれがクラフトなんだよな。などと僕は言う。