10 25

ふたりの生徒からキャンセルの知らせがあったら、ひとりの生徒から今日行っていいかと聞かれた。
キャンセルがあったので空きが出来、いい。と答えたら30分後に生徒が来た。
僕の教室のいいところは空いていれば作業が出来ることだ。
キャンセルも自由だし、空いていれば何時間でも作業が出来る。
すべて生徒の都合に合わせてしまう。

風の強い日だった。
namaが来た。
伊勢まで行ったらしく「赤福」をお土産に持ってきてくれた。
「赤福」を食べるといつも幸福な感じがする。
生徒のzakiyuは関東の人だから「赤福」を食べた事がないと言う。
へぇーとびっくりしたけど工房にいた4人で食べた。
zakiyuも食べた。
彼女は「赤福」初体験になる。
幸福な気分になったんだろうか?

10 24

夕方、ここで作業を始めた生徒さんは初めての作業になって、こんなコインケースが作りたいとスマホで画像を見せた。
いいよ。とサンプル制作を教え型紙作成を教え裁断した革に染色をした。
染色も初めてになるので地染めを教えた。
いつかカービングをしたいと彼女は言うので、カービングは一番簡単なクラフトの技法だよと僕が言った。
これはここによく書くけど、カービングは半年も練習すればそれなりに彫れる。
染色は何十年してみたところで上手くならない。
何が難しいかはやれば分かることだ。

こんな財布を買った。と彼女は僕にカービング財布を見せた。
どうです?と聞くので、へたくそだな。と僕がこたえた。
呆れるほど下手なカービング模様が財布にあって染色はしてない雑な財布だった。
彼女は買った店の名前を言ったけど、その店の名前は本当によく聞く。
僕の生徒でその財布のカービングより下手にカービングをする生徒はまずいない。

一年ぐらい前に、あるお客さんからケースの修正を頼まれたことがある。
ケースと言うのは物を入れるものだけど物が入らないので何とかして欲しいという相談から始めた仕事だったけど、
その制作されたケースがどうにも下手だった。
こんなものをオーダーで受けて販売するのもいるかと嘆いたけれど、いるのだから仕方ない。

時々、困った。とこの業界のことを思う。
書いた財布もケースも僕の設定価格の倍以上の金額で販売されている。
本当に何をしてるんだと嘆くばかりになる。

今日、こんなことを話していた。
ものを作るにはデザインがいる。
完成イメージがあれば完成イメージにするための作り方というものがある。
作り方があればそれに合う素材というものがある。
デザインとは、その3点がセットになったものだ。
そんなことを言い、だから、ものが作れるようになるには時間がかかる。
時間は理解する時間のことで思考錯誤をする時間のことだ。

今日の生徒さんは、ここは怖かった。と言った。
それも本当によく言われることだけど、聞けば僕に怖いというイメージがあるらしい。
一見すれば、僕は怖いと言われる。
本当に怖いかも知れない。

10 22

昨日、ドラッグストアでビタミン剤を買った。
2種類のどちらにしようかを考えていたらストアの白衣を着た男性に悩まれてますね?と言われた。
悩んでいた訳じゃなうくふたつのうちのどちらにしようかと考えていただけだ。
どういう症状です?と聞かれた。
僕がビタミン剤を買う場合は疲れ以外にない。
さらにいろいろと聞くので、面倒臭くなった。
僕は元気なんだよ。元気なんだだから疲れることもある。とそんなことを僕は言った。
それは分かっていますが、ビタミン剤はこれと一緒に飲むといいですよ。と彼はある薬の説明をして勧めた。
本当に面倒臭い初老の感じのする白衣の男性だった。
元気なんだよ。と僕は重ねて言った。
白衣の男性はぶすっとした顔つきをして、さらにその薬を勧めた。
怒っているようにも見えたので逆に僕の方が腹立たしさを覚えた。
店員がお客の前でする顔つきじゃないだろと思えたのだ。
白衣の男性が勧めた薬は半月分で4,500円の薬だった。
僕が購入しようとしてたビタミン剤は3,000円だった。
ビタミン剤はふたつき分の容量がある。
そうなると、そのビタミン剤と一緒に飲むと効果があるという薬はふたつき分で18,000円になる。
つまりは、ビタミン剤とその勧める薬を買えば2万円を超える出費になる。
近所のドラッグストアでビタミン剤を買おうとしてその出費をする客はまずいない。
この白衣の男性は、いつも、そんなことをしてるんだろうかと考えた。
多分、しているのだろう。
それが彼の仕事なんだろう。

こんなふうにドラッグストアでの買い物も面倒臭い場合がある。
だから、買い物が厭になる。

10 19

Mにはジャケットが似合う。
そして、僕も似合うんじゃないかと考えてジャケットが欲しいよと妻に言った。
突然にそんなことを言う。
僕はジャケットを着る機会は殆どないのでほとんど買わない。
大体、服装は妻に任せて鏡で自分を眺めるということをしないので、先日の「区民まつり」に着た服も区民まつりの集合写真を眺めて知ったぐらいだ。
朝、これを着てと妻が言うので着てただけだ。
僕の服装への無頓着は尋常ではないと自分でも気が付いてる。
それでも、ジャケットが欲しいと言い出したので妻は少し驚いた顔をした。
それから、先日買ったよ。来月半ばに届くよ。と今度は僕が驚くことを言った。

昼、宅配業者から電話があった。
代引きで品が届いているので配達に伺っていいかと相手は聞いた。
革の注文はしてないので僕相手の配達ではない。
誰宛と聞いたら妻の名前を言った。
しばらくして配達業者が来て代金を支払った。
その時、妻は不在で帰宅した妻に荷物が届いたと言うと、もう届いたんだ。と妻が驚いた。
荷はジャケットだった。

そんなことが昨日あった。
ジャケットが欲しいと思えば2時間後に僕は新しいジャケットを着ていた。
その姿を鏡で眺めて、似合うなと思った。
さすがに、こんな時には鏡を眺める。

妻はよくそんなことをする。
あんまり着る機会がなく実際に着ないんだけど、そんなことをする。
洋服への無頓着さと買い物に出かけないい僕への妻の対処はそんなことらしい。

10 14

昨日の西区民まつりは秋の静天の下で盛況だった。
日射しは暑いけどテントの中にいるとそうでもない。
昨日の体験の参加者は80人だった。
去年より10人多く、これは予想のとおりだった。
80人となると去年より慌ただしくなるということだけどそうでもなかったのは人出の多さに慣れたせいなんだろう。
このイベントが今年3度目のイベントになり最後になる。
今年の僕の体験イベントは、mozo、円頓寺、この区民まつりで参加者は350人程になる。
何だか凄いことをしているし、これを可能にしてるのは僕の生徒たちだ。

昨日、10時開始のイベントの前にひとりの女の子がお婆さんに付き添われて僕のテントの前にいて僕を見つめていた。
やる?と聞いたら頷いたので、じゃあ、やろうかとその女の子に革の断片を渡した。
女の子は手際良く作業を進めるので、やったことある?と聞いたら、うん。と頷いた。
去年も僕の体験イベントでクラフトをしたとお婆さんは言う。
女の子は楽しそうに真剣に作業をしている。

多分、この子は今年も僕がこのイベントをすると知って今年も絶対にやろうお婆さんと一緒に来たんだろう。
その前夜は何を作ろうかとものすごく考え続けていたかも知れない。
そんな子が何人もいた感じもする。
その子たちが作業をして楽しんで満足そうな笑みを浮かべて、ありがとう。と言う。
なんだか凄いことをしているとはこういうことだと思う。

10 8

昼に電話があり、今度の土曜日にある女性タレントがそちらに行って元気に仕事してるをテーマに取材をしてそれをサイトに掲載しませんか?と聞かれた。
サイトの宣伝になりますよ。と相手は言う。
そういう電話は以前もあった。
この時もあるタレントが1時間ほど伺い対談したりしてそれをグラフ雑誌に掲載するという内容だった。
サイトの運営をしてるとそれを対象にした営業もある。
以前も断ったけれど今回も断った。タレントは無名な人でもない。

電話をする人はそれを仕事にしてるのだからこういう話は有料になるし仕事なのだから有料を悪く言う気もない。
掲載費用は月2万円で半年間というから12万円の出費だ。
これはサイトの作成費ぐらいでしょ?と相手は言った。
そう言われても僕は14年間サイトを運営しているし、他人にサイトの運営を頼んだこともないし、作成は無料のものだと考えているし、
だいたいサイトの運営を宣伝と考えたことがないし・・・・。

半年前に、古い知人が彼の会社のサイトの作成というかSEO対策とかそんな話を詳しくしてたのがいて、
こいつはあほかと思ったことがある。
なんかサイトを会社の宣伝に利用する方法ばかり考えているみたいで、他にすることがあるだろと感じたからだ。
サイトを14年間運営すればそんなことは分かる。

書いてしまえば、僕はSEO対策をしたことがないしそれは無駄なことだと考えている。
検索エンジンも馬鹿じゃない。
大体、宣伝ではなくサイトは案内みたいなもんだと考えていれば、上位にいなきゃいけないなんてことを考えることもないし、
その努力をすることもない。
調べる人は調べるし、その調べた人に僕の工房の案内に僕のサイトがなっていればいいだけだ。
本当にそう思う。

サイトの運営は14年している。14年してない連中にサイトをどうのこうのと言われたくはないという気分はある。
そういう関連で書くと、僕は25歳から革細工をしてるから37年してることになる。
数年革細工をしただけの連中が僕に何かをいうことがあるけど、この場合の気分はさすがに危ない。


10 7

昨夜は妻が外泊したので我が家に僕がひとりだった。

深夜零時に外に出た。
コンビニまで歩いて帰ってから少し身体を動かした。
そうしていてふっと気が付いたんだけど、僕の後ろを人が歩いていた。
足音で人が歩くのは分かるのだけど、この時は全く分からず、そういう時にはドキッとするもんだ。
ドキッとしてじいさんが静かに歩行してるのを見た。
距離は3メートルぐらいだった。
さらに気が付いたんだけど鼻歌を小さな声で歌っていた。

先に書いた続きだけど、僕は時々深夜に身体を動かすために外に出る。
実はその時間を決めている訳じゃない。
12時であったり12時半であったり1時であったりする。
まれに2時ってこともある。
それでも必ず会うので、この偶然は凄いなと思う。
じいさんはその時間に僕の至近を歩行をしてないといけないんだから。

深夜3時にも会うんだろうか?
実は会いそうな気がしている。というか会ったことがある。


10 4

時々、深夜に身体を動かしている。
籠っての仕事は身体が硬くなるので無意識にしてしまうことがある。
時間は30分から1時間ほどだけど、だから、深夜に強くなる。


もうどのくらいになるかとさっき考えていたのだけど、ちょっと思い出せないんだけど、
深夜、身体を動かしていると必ず出会う人がいる。
必ずなので、その人は毎晩そんなことをしてるんじゃないかと思う。
深夜の1時であったり2時であったりするけど、そんな時間だ。
その人は散歩をしている。
その人はかなり高齢なじいさんで杖をついて驚くほどの遅さで散歩をしている。
歩行の訓練か体力維持なのか分からないけど、膝が上がらないので滑るような静かな歩行だ。
いつもマスクをしている。
初めてすれ違った時はぎょっとした。
慣れてしまえば、いつものじいさんだなと安心する。

先日も彼とすれ違って気付いたことがある。
彼は小さな声で鼻歌を歌っていた。
深夜の散歩に鼻歌が似合うか似合わないかは別にして、えっ。という感じにはなった。


今日、T君がいて、彼の前で染色のテストを実際に見せた。
なんでそんなことをしたかと書けば、白のクロームを黒のクロームに変えることが出来るかを教えたかったからだ。
因みに100%クロームなめしの革を純クロと言い、100%タンニンなめしの革をフルタンニンと呼ぶ。
中間の革はコンビレザーと言う。

まず、あるものと水性染料とアルコール染料とペースト染料を机に並べた。
クロームレザーは色付きの革なので染色はいらない。
色にはいろいろあるので染色の必要はなく、好きな色の革を使えばいいだけなので、クロームレザーを使っての制作に染色という作業は入らない。

水性染料のことを書くとそれが染まるのはそれがタンニンと反応するからなので水性染料はフルタンニンの革に染色出来る。
コンビレザーにも染色出来る。けれど純クロには無理だ。
染料が革に反応しないので仕方がないし、その仕方がないという作業をすればどうなるかを見せた。
せいぜい革が汚れたくらいの結果でこれは染色したとは言わない。
それでもしたいという場合にはこうするといよという作業を実際にT君に見せた。
テスト染色は5分で終わり白のクローム革が黒のクローム革に変色したのを見せた。
つまりは出来るのだけど、かなり無理をした。

T君にはよく言うのだけど、なるべく家で作業をしろ。
家ですれば聞こうにも僕はいないので自分で思考するしかない。
思考錯誤を繰り返せば出来るようになるし、思考錯誤がなければ、何も覚えない。


10 3

夕方、酒屋に行き店主にいつものと言った。
店主は冷蔵庫から僕のビールを半ダース取り出し、僕はカウンターの脇に置いてある煙草を選んでいた。
カウンターにはお客さんがいて僕を見た。僕も彼を見た。
すると、お客さんは笑顔で僕に挨拶をした。
奇遇だね。って顔をして笑顔を絶やさない。
僕も挨拶をした。
それから少しの会話をしたけど、僕はこの人が誰だったかを懸命に思い出す作業もしていた。
見知った顔だったけど誰かが分からない。
よく会話をしてるなと感心して彼がじゃあ。と言ってお店を出てからカウンターの店主に、彼は誰?と僕は聞いた。
店主は質問の意味が分からないという顔で僕を見た。
今の人って誰だったっけ?
うんっ?
Oさんですよ。お宅の筋の人。
何を聞いているんだろう?という店主の顔は続いている。

Oさんというのは隣人と書いてもおかしくない。
僕の前の道路は300メートルぐらいあってその道路にお店は僕の工房と彼の理容店しかない。
距離といえば100メートルぐらいだろう。
ついでに書けば先日、Oさんの理容店で散髪もしている。
当然ながら彼が僕の散髪をした。
そんなことがあっても誰とは分からなかったので、余程、僕は人を記憶する能力がないらしい。
ただと書いておくけど、僕は散髪をTという理容店でしていた。
Oさんの理容店に変更して2度散髪しただけなので、懇意の理容店という訳ではなかった。
それにしてもと思う。

今日、昼に電話があった。
生徒が3人作業をしていて電話の相手をする暇はなかった。
電話はいつも勝手に割り込む。
電話に出ると「アリコジャパン」のなんとかの会社で生命保険の調査をしてると相手は言った。
生命保険?と僕は聞いて、入っていませんよ。と僕は続けた。
相手が何かを言った。
生命保険って入ってはいけませんよね。と僕が聞いた。
この質問に相手は答えず5秒後に電話を切った。
5秒という空白の時間は長いなと思う。

昨日、飛び込みのセールスがあった。
夕方だった。若いセールスマンでコピー機をお使いじゃないですか?と聞く。
随分疲れて顔をしていたし実際に疲れていた。
夏にもそんなセールスがあった。
コピー機を使おうが使わなかろうがそれは目の目のセールスマンと何の関係もない。
関係はないけど、彼の疲れが気になって少し休めよ、お茶を出すからと僕は言った。
出したお茶をごくごく彼は飲んだ。
僕は聞いた。
なんで、こんなあほなことしてるんだ? 誰も買わないと分かってるじゃないか。
はあーと彼は言う。
ここ、よくセールスが来る。と僕。
一日に70軒をまわるだろう?
はいと彼は言う。
月に2000軒になるけど、一台も売れないだろ?
はい。と彼は言う。
それから少し会話が続いて、僕、ここの教室に通って財布を作りたいと言って帰って行った。

僕にはこんな日々が淡々と続いている。

10 2

昨日、職人さんが染料を持ってきた。刷毛も持っていた。
職人さんは染色しようとしたけど
止めたのでもう要らないと言う。
ふーんと聞いて頂いたけど、染料を入れた瓶が清涼飲料の瓶だったので染料の種類が分からない。
聞いても分からんというので匂いを嗅いでそれから筆に付けてテスト染色をした。
アルコール系と分かって発色も分かったけれどせいぜい財布のような小物に染色する量しかないので使用に限定される。
アルコール系の染料は水性染料の上塗りに使うといい。
アルコール染料だけで染色すれば仕上げ剤も限定される。
仕上げ剤は作品の印象を決定する。

職人さんはRから貰った革もあるけど要らないかと聞く。
要らないんだけど要らないとは言えないのでので黙っていると、自宅に帰って本当に持って来てくれた。
革というと高価と思う人もいるけど、無料の革もある。
その革を眺めた。
悪い革だったけど、悪いなりに使い道はあるなと思える革ではあった。
370デシあると職人さんは言った。
半裁で370デシ? どういう牛なんだ?

今日、職人さんは2時間いた。
上手いのはいないと彼はよく嘆くけど、嘆くのが正しいくらいに上手いのはいない。
サイトで検索すると革工房というのは一杯出てくる。
サイトの最初の方に出てくる工房は有名なんだろうけど、だからと言って上手い訳じゃない。
教室をしている工房も一杯出てくるけど、上手いなと思う作品を作るのはあんまりいない。
本当にちゃんと教えているかと同業として不安に思うけど、これは余計なお世話なのだろう。
けれど、と書くけど、嘆かなくてもいいんじゃないかとも思う。
多分、世間には上手いのは一杯いる。
下手なのが目立っているだけで検索すれば上手いなと感心するのも一杯いる。

先にここに作業にも違いがあると書いた。
それに関係して、趣味でクラフトをしていた人がプロのなれるんだろうかと考えた。
たいていはプロになる気はないし成れるもんじゃないので考えなくてもいいようなことだけど、
作りたものだけを作って楽しむという作業を、作らなくてはならないものを悩んで作るという作業に変換するのは無理だ。
無理というのは自分の意識の変換なので無理ってことだ。
つまりは趣味が高じて仕事になると言うのは無理ってことだ。
けれどと書くけど、
はじめからプロを目指した場合は違う。
この場合はなんとかなりそうだ。
理由を書けば、僕がそうだったからだ。

Aもそうだった。
他にひとりかふたりはそんなタイプじゃないかと思わせる生徒がいる。
大事にしなくちゃいかんね。