3 28

NHKに着き荷物を持って教室に入るとN野さんが疲れた顔をして椅子に腰掛けていた。
彼女は風邪をひいているので顔の半分はマスクに覆われている。
10分ほどで用事を済ましたN野さんが帰ると、ボツボツと生徒が集まって来る。
ボツボツと集まるので、何となく講習がはじまる。
僕はNHKでも個人講習をしている。
そうしているとAが花ちゃんが来るよと僕に言う。
そんな連絡があったみたいで、これにはさすがに驚いた。
しばらくすると花ちゃんが教室に来て、教室の隅の椅子に座った。
最後までそうしていて、講習が終わってから3人一緒にエレベーターに乗りこんだ。
3人とは僕とAと花ちゃんの3人のことだ。
だから、この日のNHKには僕の生徒が3人いたことになる。

NHKの講習も3クールが終わり4月からは新しいクールが始まる。
4月からのクールが終われば一年が過ぎたことになる。
早いなと思う。

帰宅してからAと一緒に「しゃしゃんぼ」へ歩いた。
いつもと違い随分と混んでいるお店で、Aの誕生日のお祝いをした。
Aは25歳になった。

季節は春になっているのだろう。
Aと一緒に歩いて、とても短い時間だったけれど、夜桜をふたりで見上げた。
早咲きの桜が街路灯の灯りに照らされて、突然に春だと言う。

3 26

今日の午前に夢を見ていた。
時々、同じ夢を見る。
夢から覚めて、また、同じ夢を見たかと呟く。
夢の中には決まって母が出てくる。

僕は一人で実家にいて、すると、母がもう大丈夫だからと言って退院する夢だ。
帰宅した母は布団に入って横になっている。
もう大丈夫だよ。病院にいなくていいんだよ。と何度も母は言い、本当に大丈夫らしく、
普段着に着替え、挨拶に行かなきゃね。などとも言う。
母は痩せ細った身体をしている。

僕は一人でそんな母を眺めている。

けれど、これは夢なんだよなと夢の中で僕は気が付いている。
そうやって目が覚める。

目が覚めたあとの気分をどう書いていいかと悩む。
悪い気分ではないけれど、そんな夢を見ている自分に複雑な気分を抱いている。


3 24

午前は雨が降り、昼には止んで3時を過ぎて晴れになる。

2日前に岩村のMさんが来て、いつものように「かんから餅」を食べた。
Mさんは岩村で開催されている「ひなまつり」について話すので、それを面白く聞いていた。
あるタレントが来て番組を作った話とか、テレビ局の取材の話で、
そいえば、「あいち戦国姫隊」が来たなどとも言う。
彼女たちは「岩村山荘」に宿泊したそうで、ふつかかがりのイベント出演だったらしい。
へーという気分でそれを聞いたものだった。

今日は1日中Rがいて作業をしていた。
Rがいる時、新しい僕の生徒さんが来て作業をはじめた。

土日は生徒で混むのが普通だけど、このところ、そうではなくて平日の方が活気がある感じがしている。
生徒がふたりだと、随分とのんびりと講習が出来る。

講習を終えてコミセンへ行き、町内会の会合に出席する。
僕は町内の副会長と会計をしているので、決算書を持参して会計報告をした。


3 21

Yさんが来た。
Yさんというのは僕のお客さんだけど、もう30年ほどの付き合う時間がある。
彼はこの工房を開いた頃からのお客さんで、時々ここに寄ってくれて遊んでゆく。

僕と同じ年齢のせいか、よく歳の話をして、もう還暦も過ぎたんだね。

彼は何年も来ないでいる場合があり、頻繁に来る場合があり、そうやって30年が過ぎた。
今日も立ち話をしていただけみたいなもので、最初、ここに来た時、うちの坊はまだオムツをしていて今は33歳になったよ。
などという話をしている。
そんな話を聞くと急に昔が懐かしくなる。
この工房を開いた年に産まれた僕の娘は31歳になってる。
確かに時間の過ぎるのは、あっという間のことで、子供の成長でそんなことが分る。

そういえば、僕の生徒は30歳前後の人が多くて、よくよく考えてみれば、この工房が出来た頃に生まれた人たちだな。
だから、どうということではないけれど。

何か、今日は、そんな日だった。

3 19

久しぶりに「一心」に行き、飲んで食べた。
月曜日といえど、何だか混んでいた。
主がカウンター越しにお久しぶりと言う。

確かに久しぶりで、今年初めて来たよ。と目の前のRに言えばそんなことないよ。とRが言う。
そうだよ。と重ねて言えば、今年、わたしと来たよ。とRが言う。
それを聞いて、そうだったんだと思いだした。
すっかり忘れていた。

最近、仕事の慌ただしさが尋常ではなく、昨日も徹夜で10個を同時制作をしていた。
お疲れの顔ですよと生徒に言われ、確かにお疲れなんだよなと思う。

休みが欲しいけど、工房にいればそうはいかない。
どこかへ行きたい。

そのどこかの話をRとしていた。

どこかへ行きたいという気分は滅多に起きないけど、起きてしまえば、夢を語るような気分になる。


最近、竹内まりあの「駅」という歌をよく聴いて過ごしている。

この歌を聴いていると、自分の大事な何かを捨てて、何もかもがもういいんだと気分になってどこかへ行ってしまいたくなる。
そんな歌ではないんだろうけど。

3 17

今日は、生徒が来ない土曜日だった。
それで、僕は昼食を食べ終わったから黙々と仕事をした。
気が付いたら夕食に近い時刻になっていた。
もうこんな時間だと外を見たらひとりのお客さんが来た。
彼は名前を言った。
そういえば、先日、男女のふたり連れのお客さんが来て、オーダーを入れてくれ、それからしばらくここで遊んでいた。
ここで遊ぶとは僕と遊ぶということだ。
その男性だった。

彼は下手ですけどと言ってデザイン画を僕に見せ、こういうのが欲しいいんですというようなことを言う。
それを眺め、いろいろと話す。
この場合の会話には遊びを含んだ意味合いが入る。

ここは居心地のいい人には相当にいいらしく、そんな人がよく来て居ついている。

みんな例外なく若い。

よく思うのだけど、僕は若い男性と遊び、若い女性と遊び、若くない人とは遊ばない。
絶対にそうだということではないけれど、まあ、そんな感じがしている。
そもそも若くない仲のいい知人がそんなにいない。

僕は、同年代と遊ぶということが、まず、ない。
遊ぶとは一緒に飲んだり、おしゃべりしたりすることだけど、まず、ない。

実は、会話が合わないんだ。

3 15

昨日、確定申告を済ませ、本日、納税する。
納税と書いても僅かな額で、去年は不景気だったなと思う。
申告書を書いて提出すると、本当にホッとする。

先日、Nさんと昼食を食べている最中にAから連絡が入った。
Aが僕の携帯を鳴らすのは珍しいし、僕にメールを書くのも珍しい。
Aとはひとつきばかり会っていないし、これからの10日間ほども会う予定はない。
風邪治ったかと考えていたら、10日ぶりにブログが更新されて、
Aは元気なんだなと安心する。

Aがそうなら、Mからのメールが途絶えている。
Mはブログを毎日更新しているので、Mの日常は想像できるのだけれど、元気かな。
僕がメールを書けばいいのだけど、どうも僕は返信以外のメールを書かない癖がある。
みきちゃんもそうで、最近、彼女の顔を見ていない。
いつものとおりであればいいのだけどね。
Y君とかO君も、どうしているかが、よく分らない。

何か、こんなことを書いていると、僕は彼らの保護者かと思わなくていいことを思ってしまう。

花ちゃんって相変わらずかな?

3 13

昼にチャイムが鳴った。
開店前のことで、出るのが億劫で外っておいた。
我が家には僕しかいない。

しばらくしたら電話が鳴った。
電話の向うの人は名前を言うけれど、僕には記憶がない。
どこにいるの?と聞けば我が家の前にいると言う。
仕方ないかとシャッターを上げるとNさんがいた。
これには面食らった。

Nさんは2年間ほどここに通った女性で、3年前から急に来なくなった。
それは仕事のせいらしく、そんな話を隣りの喫茶店で「焼きそば定食」を食べながらおしゃべりした。

いろんな話をしてふたりで我が家に帰った。
するとお客さんが来た。
2点ほどのオーダーを受けるとお客さんは帰り、Nさんと話しているとU君から電話が入る。
彼は今日、ここに来たいらしい。

いつもこんなふうに慌ただしいよ。

Nさんがまた通いますからと言って帰ると、U君が来た。
U君も僕も風邪気味で、ふたりで「ドデカミン」を飲んだ。
効くかどうかは分らないけど、喉がよく乾く。

今日はいいですかと彼は聞いたけど、今日はNHKがある。
そんな話をした。
彼はセカンドバッグを作りたいらしく、実際に作業をはじめる。
ついでに、NHKの用事があれば手伝いますよと言う。
Aは風邪のせいで今日のHNKを休むので、荷物運びにいいかななどと考えて僕はそんなことを言う。
彼は本当に荷物を運んでくれてNHKの教室まで来た。
教室で今日は彼が僕のアシスタントですと生徒に伝えた。

時々、可笑しくなる。

U君がNHKにいる。
そこに、NHKビルに勤めているN野さんが来て、なんでって顔をする。
なんで、U君がいるの?

先週、N野さんはU君の友達のN君と一緒に作業をして、今週はU君と一緒に僕のアシスタントをしている。

講習はいつものように終わり、U君を助手席に乗せた。
彼は名古屋駅で降り、ひとりで自宅に帰った僕は自宅で夕食を食べた。

なんだか長い一日だったという気がしている。
今日の仕事量はゼロということになる。

3 11

午前の日差しは良く、地下鉄浅間町駅まで歩いて地下鉄に乗り上前津駅で降りて南へ歩いた。
浅間町から地下鉄に乗車したのも久しぶりだった。
女子マラソンの影響で道路は閑散として地下鉄は混んでいた。

4年ぶりに従兄弟たちと会った。
読経と会食をして帰宅した。
会食の時間は2時間で、昼ごはんにしてはかなり贅沢な食事でビールを飲んだせいか帰る道を歩くのがきつかった。
帰宅すると午後3時を過ぎていて、その時計を眺めていたらNが来た。
Nは休み?と聞いた。
休みだった。

Nが持ってきたお菓子を食べて、おしゃべりをした。
いつものように遠距離ドライブの帰りに寄ってくれて、お土産をくれた。
これは旨かった。

休日にのんきにふたりでおしゃべりをしたのは珍しい。

おしゃべりを続けていると、僕の生徒になりたいと言っていた女性が来て、いいですか?と聞いた。
休みなのだけど、構わないよと最初の講習をした。

金曜日に僕の教室に入りたい年配の女性が来た。それで体験教室みたいなことをした。
その日の夕方には、別の女性が来て僕の教室に入りたいといろいろ聞いて予約を入れた。

先週から別の女性に講習を始めていたので、なんだか、生徒の顔ぶれが変わりつつあるなと思う。


土曜日の夕方にここに来たタルが作業をしている4人を眺めて、みんなはじめて見る人ばかりだと妙な感嘆をした。
3月はそんな時期なのだろうな。

今日は大震災から一年が過ぎた日になる。
地震発生の午後2時46分に黙祷をしようとしたけれど地下鉄に乗車してそれを忘れてしまっていた。
Nとそんな話をしていた。

歳を取ったせいか、何だか涙腺が緩んだみたいで、
震災時の映像を眺めていると涙が出そうになる。
人がいなかれば本当に泣くかも知れない。
Nも同じことを言っていた。


3 9

そういえば、日曜日にN君と外にいて一緒に煙草を吸っている時に彼が聞いた。
先生って欲しいものありますか?
何にもないよ。と答えて、けど、愛が欲しいと続けた。

僕は、よくそんなことを言う。
真面目にそんなことを言う。
還暦過ぎた男が30歳になろうとしている男にそんなことを言う。

けれどと思う。
愛が欲しいと言う僕は、結構、満たされているのも自覚している。
孤独感をこれほど持たない男性も珍しいのではないかと、内心、考えている。
だから、愛が欲しいと言うほどに愛と無縁な訳ではなく、本当は逆だろう。

そうでも、そんなことを言うのは、多分、僕が愛には余程貪欲な性格なのだろう。
愛だけは欲しい。


3 7

先週の土曜日の生徒さんは、僕のサイトは業者さんが制作していると思っていたらしく、
そんなことを言う。
僕とサイトには違和感があるらしい。

正直に書けば、時々、そんなことを言われる。

僕のサイトは、検索エンジンで調べれば、いつも上位に掲載されているらしく、
どんな方法を使ってそうしているかと、土曜日の生徒さんに聞かれた。

何もしてないよ。

なんかしてるでしょ?と生徒さんは食い下がる。

そんな時間はないし、方法も知らない。

だよね。と生徒さんは頷く。
この生徒さんはパソコン関係の仕事をしているらしい。


今日、アホとしか書きようがない電話があった。
どこかのネット関係の会社らしく、僕の体験教室のサイトは35位だと言い、
だから、我が社が検索エンジンの上位にしますと続ける。
電話の向うの女性は35位、35位とやたらと言う。
35位が下位かどうかは知らないけれど、この女性が僕のサイトを見ていないのは確かで、
見ないで電話をかけて勧誘する。
調べないで、電話をかけまくり、引っかかるサイトがあれば、万歳でもするつもりなのだろう。

電話勧誘は、殆どがいかがわしいもので、ネット関係の電話勧誘も例外ではない。
そもそも調べないで電話をしてくるのだから。

ところで、僕のサイトのトップページから体験教室のサイトには飛ばないようにしてある。
けれど、トップページを見れば、体験教室ばかりしていることも分る。
僕がイベントでしているのは体験教室で、先月の西生涯学習センターで開催したイベントも体験教室だ。

体験教室も僕が主催する教室もサイトに書いてあるとおり、営利を目的にしている訳ではないので、
生徒をお客とは考えていない。
だから、お客を増やす気がなく、そうだから、宣伝する気もない。
本気でクラフトをする連中が集まればいいだけで、それ以外の理由もない。

ということが僕のサイトには書いてあるのだけど、電話の向うの女性は35位ばかり連呼する。
うんざりだな。


因みに書いてしまうと、サイトを上位にする方法はあるように思う。
けれど、これはサイト運営とは関係なく、ネット関係業者とはさらに関係がない。

3 6

毎月5日は父に命日なので実家に寄り、住職が読経する姿を眺めた。
1日中、か細く雨が降り続いていた。
帰宅してメールソフトを起動して、1通のメールを印刷した。
今日も、そのメールを読んだ。

メールには、
・・・・・・・・・、どんなブランド品より、よほど贅沢ですね。と書かれていた。

嬉しかったな。

そうなのだ。
先日、書いていたことはこういうことなのだ。
何故、僕がクラフトするのかということは、そういうことなのだ。

知らない人を贅沢な気分にさせて、その人の日常生活が少しであったとしても気分のいいものになる。

仕事として、クラフトをするとは、それに尽きる。


3 5

雨、明日も雨。

午後1時を過ぎてM君が来る。
N君は難易度の高そうな鞄を制作している。

彼はいつも僕にいろんな質問をする。
質問には、何故、人はクラフトをするのかとか、何故、工芸品が必要であるとかそんな質問もある。
この結論はひどく簡単なものだけど、結論になる訳を話せば長くなるので、彼はいつも長く滞在している。

彼とは本当にいろんな話をする。
とても根源的な話をする場合もある。

何故、僕がレザークラフトをしているかは、無論、それが好きということからではない。
職業として持続させるにはそれが好きということがとても重要だけど、好きは職業にする理由にはならない。
好きなら、それで遊んでいればいい。
職業であるとは、それで遊ばないということだ。

そういう話をしてくださいとN君は言う。

特定な人には話している気がしている。

夕方になるとその特定の人じゃないかなと感じているN野さんが来る。
先に制作した財布を持参して、コインケースのサンプルを見せ、それから、
鞄の制作に入りたいと言って、いくつかのカタログを眺め始める。
こんなのにしたいと言いながらいくつかの質問をして、細部のサンプルを作り、全体のサンプル制作に入ろうとして、
午後7時を過ぎた。

僕の作業のとおりに作業をしようとN野さんはする。
これはいいことだ。
僕の工房に限ってはいいことだ。

3 3

先月の中頃、チョコレートは飾ることにするよと書いたけど、チョコレートの箱が飾ってあって中身はもうない。
この箱も、もうすぐなくなるんだろうな・・・・・・。
バレンタインチョコも、いつかはなくなる。
気が付けば、3月も3日が過ぎて随分と春めいている。


3 1

昨夜はNHKにいた。Aは休んでN野さんがアシスタントを勤めた。
N野さんは名古屋駅から帰るというので一緒に車に乗った。
途中、ガストに寄って軽い食事をしようと考えて着いて駐車しようとしたら駐車場は満車だった。
きっとお店も満員だろうなと想像して寄るのは諦めて、名古屋駅に向った。
帰宅すると空模様は悪く、雨の予感がした。
それから、本当に雨になり、雨は朝には止んだ。
すると、随分と暖かく、今日は暖房を止めてドアを開け放って過ごした。

昼過ぎに10通ほどのメールを書いて3個の商品の仕上げをして、それを発送した。
それから、僕は休息をした。

1週間ほど前に岩村町からMさんが来た。
3月いっぱい岩村町では「ひなまつり」というイベントを開催している。
かなり大掛かりなイベントらしく、Mさんがその実行委員長か何かの役をしているらしく、いろんなビラを持って来た。
そのビラを数枚手にして、僕は自転車でナゴノスペースへ走った。
ナゴノスペースはビラを置かしてくれるところだ。
効果があるかは分らない。
ビラは町内の掲示板にも貼ったけれど、これは効果がないなと考えて貼ってみた。

岩村町は岐阜県恵那市から車で20分ほどにあり、行政では恵那市岩村町になる。
昔、ここに何度か出かけて遊んだものだったけれど、気が付けばそれがこんな関係になっている。
岩村町の案内に、僕は名古屋城でビラさえ配ったこともある。

妙な縁だ。