7 31

7月が終わる。
終わると円頓寺なつまつりのイベントが2日続いて開催される。
今年は雨らしい。

シャッターを降ろす時間にAさんが来る。
仕事の帰りに丸の内から歩いて来たと言う。
よく迷わなかったなと感心する。

それから、ふたりで近所の喫茶店へ行き、飲みものを頼む。
時間を忘れて話し込んでいると8時を過ぎてしまう。
あっという感じで、店を出る。
すると、ひどく雨が降っているのに気がつく。
自宅までは100メートルほどで、じゃあ傘を取ってくるよと僕は自宅へ走る。
シャツはひどく濡れ、傘を手に自宅を出ようとすると、玄関にAさんがいる。
お店の人が傘を貸してくれたと彼女は言う。

あー、物事はそうなふうに出来ている。
何で、僕だけが濡れたんだ・・・・・・・?

Aさんは革が欲しくてここに来た。
革を裁断し、型紙を眺め、制作のアドバイスをする。
彼女はアドバイスだけで鞄の制作が出来る。

器用というよりは、やはり、天性の何かが彼女にはある。


唐突に、人生は贅沢に出来ているなと感じると先日に書いた。
やはり、時には贅沢な時間がある。


7 30

夕方6時近くに伊藤さんが来る。
17日にみんなで飲んだ時に飲んでいたお店からビール券を6枚頂いていたことを思い出し、これあげるよと彼女に言う。
言いながらそれを眺め、これから飯食いに行こうかと突然に彼女を誘う。
工房には刈谷からの生徒さんが作業をしている。
生徒さんは名古屋駅へと帰る。。
で、3人一緒に先に飲んだお店で夕食を食べることになる。

普通には2時間ほど飲んで食べるのだけど、伊藤さんにはあんまり時間がない。
それで、2時間を1時間に短縮して食事をする。
短縮しても食事の量は同じなので、好きに頼む料理がテーブルに乗り切らない感じで運ばれる。
つまりは、実に慌ただしい食事になる。

それにしても、よくこのお店で飲んで食べる。
先週は映画を観てから2時間ばかりをこの店で過ごしていた。

こうなると、お店の人が僕を何者かと考えるらしく、名刺を下さいと言われる。
名刺は持ち合わせがないのだけど、生徒が僕の名刺を渡す。


今日の昼に東京のめぐみさんからダンボール箱が届く。
箱には革製品が100点ばかり入っていた。
これはイベントでの物販用の製品で、めぐみさんの知り合いの職人さんが制作した革製品。
職人さんが制作しただけはあるなと感じさせる作品ばかりで、綺麗な縫製で仕上がっている。
イベントで売るには惜しい感じがして、しばらくそれを眺め、めぐみさんに電話を入れる。


7 29

東京に内藤めぐみさんがいる。
現在、彼女はある革製品の販売会社を経営している。

今日、彼女から電話が入る。だから、久しぶりに彼女の声を聞く。

時々、人生は贅沢に出来ているなと感じるのは、きっとこんなことをいうのだろう。

7年前、めぐみさんとスウェーデン大使館でのパーティで初めて会い、
3年前、名古屋の居酒屋でお酒を飲んで過ごしたことがある。
つまり、7年間で2度だけ会ったことがあり、おしゃべりをしたことがある。

ついでに書けば、頻繁にメールのやりとりをする関係ではない。

そうでも、どっかにすごい親しみを彼女に感じている。
そのどっかが贅沢だなと言う。

そうした人がいる。


7 28

これだけ雨が降ると心配になる。

今週の週末は恒例の円頓寺なつまつりがある。
雨が降ると、イベントは困る。
商店街はアーケードになっているので、雨対策の必要はないけれど、人出がなくなる。
そうなると、暇になる。
週末に暇な時間を過ごすよりは、工房で生徒に教えている時間の方がずっといい。

夕方、嬉しいメールが届く。
返信すると、さらに嬉しいメールが返信されてくる。
これは楽しかった。


7 27

今日、訃報を読んだ。
山田辰夫という俳優で享年は53歳という。

それから、それがずっと気になって過ごした。

最近、よく50代の人が死ぬ。
旬を生きているなと感じていると、突然に死んでしまう。

人の50代は旬だという思いがある。
二十歳の頃から走りはじめ、気が付けば50を超えている。
ふっと自分の生きて来た道程を眺め、生きてきたなと実感をする。
そして、その実感が旬だと気が付く。

煙草の煙を眺めながら、そう思う。

いつも前を向くしかないのが人生かも知れない。
これは、辛い。


7 26

今日、天野さんが来ていた。
作業が終わると午後6時を過ぎていて、それからしばらくおしゃべりをして過ごす。
そうしていると、午後7時を過ぎてしまう。

実は、先週の金曜日に映画を観ていた。
映画の題名を「ノウイング」という。
地球が消滅してしまうという救いようのない内容の映画だったけれど、
これが面白かった。
どう面白かったかを書くのは難しいけれど・・・・・・・・。

で、天野さんとそんな話をしていた。
太陽活動による地球消滅の話なので、これは宇宙の話になる。

だから、彼女と宇宙についてのおしゃべりを1時間ばかりもしてしまう。
宇宙だから、UFOも話も入る。

宇宙についておしゃべりをする僕を彼女は意外と言い、宇宙についての話を1時間も聞く彼女を僕は意外だと思う。

まあ、どちらにも意外な面があると、妙な認識をする。

ものを作る人間は物をつくる作業の勉強ばかりをしていると思っていたらしい。

に、しても、天才というかデザインに優秀な人はいる。
彼女を眺めていると、いつもそう感じてしまう。


7 23

梅雨はあけない。
例年では梅雨が明けて夏休みに入る。
今年は梅雨のまま夏休みに入る。
珍しい感じがする。

新聞を読んでいたら、これは珍しいことではないと気象庁が説明している。
気象庁が説明しようがしまいが、珍しい感じはある。


今日は午前からお客さんが続けて来ていた。
続けて来ていたので、僕の作業が出来ず夜になる。

岩村からのお客さんが、岩村のお酒「女城主」の生酒をお土産に来てくれた。
彼がいると生徒が来て、この生徒さんが酒屋で働いているのに気が付いた。
酒屋の人がいてお酒がある。これは偶然になる。
岩村はカステラと女城主が名物で、他には何もない。

吉田君が遊びに来る。
東京に出かけ、いつものように「東京バナナ」を持参する。
彼は、東京で僕の生徒と会ったと突然に言う。
その生徒をS君と言い、去年の工房の大掃除に来てくれて、それ以後は音信不通になっていたので、
驚いたり、安心したりする。
去年の秋に我が家で宴会をした時に、ふたり一緒に飲んでいた。

人は偶然で生きているかも知れない。

その偶然を書くと、吉田君が来ている時に岐阜からKが来ていた。
Kは最近あまり来ないのだけど、たまたま来て吉田君と一緒になる。
この吉田君とKは、少し前まで、お互いを知らずに同じ会社で働いていた。
何かでそれを知ると親近感が湧くものらしい。
で、ふたりはここで会い、おしゃべりをする。

偶然は縁に繋がり、縁というものは、続くもんです。


7 20

オーが来て作業をしている。
そして気が付いたのだけど、外にふたり連れがいる。
工房を覗いたり、ふたりで話をしたりしている。
何だか、笑顔が漂うふたりで、僕はふたりを少し眺めていた。
それから、外に出て、何か?と聞いた。
入っていいですか?と男性が言う。
男性は女性を連れて工房に入る。

ふたりは博多から名古屋に来ていた。
テレビ番組の「ぐっさんち」を観て、ここに来たかったと言う。
・・・・・・。
それから、ふたりとおしゃべりをする。
男性は革細工が好きで、あのトランクはすごいと言い、いろいろと革細工談義をする。
男性は、ゆくゆくはプロになりたいらしく、あの番組がすごい刺激になったらしい。
僕はさまざまなアドバイスをする。
名刺に携帯の番号を書き、何か分らないことがあれば携帯にかけてくれればいいとその名刺を渡す。

博多の人なのだ。ここには通えない。

クラフトする人に悪い感じの人はいない。
男性と女性を眺め、それをつくづく感じたな。

先週の土曜日の午前に大阪からお客さんが来た。
名古屋に来るついでがあったらしく、午前の早い時間になる。
大阪のお客さんが帰ると岡崎からお客さんが来る。
昼になると、三河から3人の生徒が来て作業をしていると、お客さんが来る。
このお客さんも大阪の人だった。

何だか、遠方からの人の出入りが多い。

7 19

深夜、1時間ばかりを歩いたり走ったりして過ごす。。
昨日の夜はカロリー摂取が余りに多く、そうでもしないと身体に悪い。

昨日の夕方、生徒が帰るというので生徒の車に便乗して栄まで出向く。
栄は久しぶりだし、中日ビルの一階での待ち合わせとなると、数十年ぶりになるかも知れない。
一階のロビーにいるとイナが来る、ヨッシーが来て、イシが来る。
男が4人でいると、Kが来てMが来る。幹事のIは呑気に遅れますと電話の向こうで言う。

ビルの屋上はビアガーデンになっていて、2時間のバイキングをはじめる。
雨は降らず、曇った夕暮れの空が大きく広がる。

ビアガーデンは初めてという人が殆どだけど、個人的にもビアガーデンは38年ぶりになる。
で、飲んで食べてのおしゃべりの2時間は過ぎてしまう。
これは、相当に愉快でした。

中日ビルを出て、栄から名古屋駅まで地下鉄に乗る。
名古屋駅で、オーとTに合流して「一心」に入る。

最近、駅間の「一心」という居酒屋によく入る。
この店でよく飲んで食べている。
この居酒屋はお勧めで、お勧めなので、みんなを連れて行く。
で、2時間ばかりを飲んで食べておしゃべりをして過ごす。

楽しかったな。
好きな人を集めて、お酒を飲んで過ごしていれば、これは別の世界にいるもんだと思う。

ヨッシーが今年1番ウマイ酒でしたとミクシーに書いていたけど、それは本当だ。

でも、よく飲んだな・・・・・・・・。


7 16

午前中に区役所の4階にいた。
これは夏のイベントの打ち合わせで、打ち合わせは必要がないイベントなのですぐ終わる。

暑いイベントの予感がある。

7 15

昨日と同じに暑い。
このくらい暑いとビルの屋上はどれくらい暑いかと想像してしまう。
暑いんだろうな?


夜はだらだらと過ごすことにしている。
だらだらと本を読んで過ごす。
本と書けば、新作を殆ど読まず、通俗的な時代物をよく読む。
何度も読むので筋書きはどうでもよく、雰囲気を楽しむ。
五味康祐の「柳生武芸帳」を読みながら、「柳生稚児帖」を同時に読む。

この「柳生稚児帳」は柳生兵庫を主人公にしている。
作者が五味康祐なので、柳生兵庫を主人公にしていいかはひとまず置くとして、この柳生兵庫は実在の人で、
幕末のある時期に京都にいた。
この京都での仕事についての話を膨らませると、「柳生稚児帳」になる。
膨らませた話は荒唐無稽であるけれど。

江戸期のはじめに柳生宗矩という大名であり、剣術家でもあった人がいた。
この人を題材にした小説を読めば、柳生新陰流が江戸期の政治に与えたかも知れない何事かがあるのでないかになる。
その柳生新陰流はこの宗矩ではなく、尾張の柳生兵庫とその子連也により完成されたと謂われ、
その連也の活躍した時代から200年の後に、「柳生稚児帳」の主人公の柳生兵庫が現れる。
尾張柳生の総帥は代々兵庫を名乗る。

200年という時間が過ぎている。
同時に江戸期も終わろうとしている。

幕末も過ぎてしまうと、文明開化の音がする。
文明開化とは、侍の身分廃止で同時に剣の時代が終わる。


7 14

ものすごく暑い日だった。

その暑い中をKeiが来る。ソウタとマイカが来る。
これで、僕の一日の作業は中止になる。
子供の力はすごい。


7 13

秋田県に横手市という町がある。
横手盆地に位置しているなどと町の案内には書かれている。
この横手出身者が名古屋にどのくらいいるかとなると、数人という感じがしないでもない。
この横手に県立横手高校がある。
名古屋に在住する県立横手高校出身者となると、ひとりという感じさえする。

小説家石坂洋二郎は教員をしていて、その最後の教員生活を過ごした学校がこの横手高校なる。
そのせいで、石坂洋二郎の小説「青い山脈」の舞台とも伝えられている。

唐突に横手盆地からは青い山脈が眺められるかと、ぼんやりと想像していた。

青い山脈は奥羽山脈のことで、この山脈の脇にある横手市が戦後の開放感を象徴することになる。

若さとは若いという理由で躍動していていい。

この感想は、どうも戦後になって初めて存在する躍動感だというのが個人的な感想になる。
若さは死ぬための若さではない。
若者に死を強制しない国がこの日本だという宣言から、日本の戦後は始まる。

そんなことを横手市から眺められる青い山脈を想像しながら、考えていた。

何故、そんなことを考えていたかといえば、その横手高校出身の人が、我が家に時々遊びに来る。
いつも、突然に来て、遊んでいる。

人が遊んでいるというよりは、「青い山脈」が我が家で遊んでいるという感じがしている。

7 12

日曜日も過ぎてしまう。

午前11時に電話が鳴り、来たけどシャッターが降りてると電話の向こうの人が言う。
いつも、日曜日の午前はシャッターが降りている。
出てみると、生徒がいる。
日曜日の午前は僕の唯一の休み時間になっている。

ごめん、知らなかったと言いながら、生徒はコインケースの作り方を聞く。
作りたいコインケースを持ってきて、これをどう作るかと聞く。
実物があれば、それを眺めれば出来るだろうにと僕は思う。
眺めてどう作るかを考えることがクラフトだろうにと僕は思う。

そのコインケースは、クローム革と薄いビニール生地で制作されたファスナーでの開閉のコインケースで、
いろんなところで普通に売られている。
まあ、クラフトとはあんまり関係のないコインケースで、ここでは制作することがない。
それは普通に売られているので、普通に購入できる。
普通に購入できるものを、ここで制作する必要はどこにもない。

どうやって作るの?と生徒は聞く。
しばらく考えて、何故それを作るのと僕は聞く。
生徒は、おばあちゃんが欲しいと言う。

あー、おばあちゃんかと僕は言う。

それ、クロームレザーのミシン縫いのコインケースだと僕は言い、それはここでは制作しない。
それはそれを作るところがあり、そこに行くしかないなあと僕は困る。
それを教えるところがあり、そこで教えて貰うしかないだろうなと僕は困る。

間単に書けば、それは、ラーメン屋に入り、きしめんが欲しいと言うことと同じ理屈になる。

そんな問答があった。
結局は生徒には教えたけれど。

こうした勘違いをお客さんがすることは構わないし、その説明もする。
でも、ここに通う生徒がその勘違いをすると、困る。


7 10

今週も金曜日が過ぎてしまう。
1週間は、本当に早い。

空を眺めながら仕事をしている。
染色した革が、鞄1個分外で乾かしてある。
これが気になって仕方がなかった。
雨が降れば、革の表面に雨粒模様が入る。

今週は、懐かしい人が多かった。
その懐かしい人の中ににりょうがいる。

りょうからの連絡は突然だった。
突然のはずなのに、いつもの感じがしてしまう。
いつものりょうが一年過ぎても・・・・・・・・いる。
相変わらず、不思議で構築された女性なんだな・・・・・・・・。

夕方、喫茶店でコーヒーを飲みながらYとおしゃべりをする。
映画の話だった。
今月はまだ映画を観ていないと言う。

どうも、最近、映画が日常に入り込んでいる。
ニコラス・ケイジの新作にしましょうか?
織田裕二の新作にしましょうか?

因みに、映画ではなく映画館が日常に入りこんでいるのかも知れない。


7 8

七夕の頃は梅雨の真っ最中で、天気は悪い。

夕方来た生徒は、閉店の時間に帰ろうと空を見れば細かい雨が降っている。
工房の閉店時間は午後7時になる。
生徒に送るよと言い、生徒を車に乗せる。
車を走らすと、ひどく空腹だと気が付き、そのまま近所の回転寿司に入る。
駐車場には小雨が降り続いている。

回転寿司は待ち時間がないのがいい。
格別美味しい訳でもなく、まずい訳でもない。
つまりは、空腹感をやり過ごすにはちょうどいい。

帰宅してビールを飲む。
空腹感が消えた後のビールは、あんまり美味しいものではない。
そのビールを眺め、いろいろと考え込む。

7月も1週間が過ぎてしまう。
8月はイベントが多く、そろそろ準備に入らないと苦しくなる。

8月には7日間のイベントがある。
これは、はじめての夏になる。


きっと、暑い。

7 6

懐かしい人がよく来る。
懐かしいなと感じても数分後にはいつも会ってる気分になる。

夕食を終えると、電話が鳴る。
出て、出なきゃ良かったと思う。

どこかのサイト制作の会社からで、こんな時間に勧誘かよと僕は言う。
仕事は終わった時間で、僕はくつろいでいる。
お仕事終わったんですか?と電話の向こうの若い男性が言う。
こいつは馬鹿かと思う。
夜の8時過ぎに知らない家に電話をかけて、そんなことを言えば馬鹿かと思う。
で、何だと僕は用件を聞く。

この種の電話の内容はいつも決まっている。

そちらは教室を開いていますよね?
で?
生徒さん、増えたらいいでしょ?
いっぱいで、もう増えんでいいよ。
・・・・・そう言われてしまうと・・・・・・サイトで集客増やしてみませんか?
いいよ。
客が増えれば販売が増えるじゃないですか?
販売するものはないよ。
・・・・・?

工房は小売店ではない。
完全オーダーのお店なんですね?と電話の向こうが言う。

サイトにはそう書いてある。
サイトの宣伝ならサイトを少しは読めよ。


7 5

靴が欲しかった。
靴を履くという時間があまりないのだけど、靴が欲しくなる時はある。
夕方、生徒がみんな帰ってからそんな気分になり、近所のABCマートまで出かける。

店内にはあんまり欲しい靴がない。
そうでもとにかく靴が欲しいので探す。
買い物をしながら、店員に革の手入れの説明を受ける。
革の手入れの説明を聞く羽目になるとはね・・・・・・・。

その靴を履いて歩いて、結構いい感じだった。
靴屋は滅多に行かないお店だけど、たまに覗くといいかも知れない。


7 3

偶然というものはある。

昨夜、徹夜で制作していたものにペンライトケースがある。
丸型の筒状のケースで、それにベルトとおしが付く。
入るのは、割と大きなペンライトになる。
注文主はごつく作って欲しいと言うので、ごつく制作する。

今日の昼、初めてのお客さんが来て小さなペンライトを差し出す。
このケースが制作出来ないかとお客は言う。
しばらく唖然とする。
ペンライトケースは滅多に制作しない。

昼間の生徒が帰り、夕方6時を過ぎて新しい生徒が来る。
生徒はiPhone 3G革ケースを制作したいと言う。
勝手に作ればいいよと僕は言う。

時々、すごい勘違いをしてここに来る人がいて、ここに来たら作り方を教えてくれると思っている人がいる。
制作したいiPhone 3G革ケースはどこかのサイトに掲載されているらしく、サイトのページを印刷して持参する。
これかこれに類似したものが欲しいというのが彼の希望らしい。
だったら購入すれば良さそうなのだけど、自分で作りたいと言う。
それって、いいかなと今日来た人は昨日の夜に事前にそう聞いて、今日ここに来た。

僕はひとまず聞く。
革の知識があるか? 何かをクラフトしたことがあるか?
ないというのがふたつの質問への返事になる。
たいていはそれが返事だから驚きもしないで、それを聞く。
革の知識がなく、クラフトの経験がなく、それでも教えがあれば作品が出来ると考える人はいる。
30年以上制作を続けると、その感覚には呆れるけれど、そう考える人は実際に大勢いる。

ところで、クラフトとは何がどうのようしたら制作出来るかを思考する作業だと僕はよく言う。
だから、勝手に作りなさいといつも言う。
これに面食らう人がいる。

作業とはデザインが前提になる。
デザインとは形状のイメージであり、形状にするための作業の手順をいう。
だから、自分のイメージは自分でデザインするしかない。

サイトの作品の写真からデザインを起すのは初めての人には難しい。

僕となると、どこかのサイトの作品を作ることは絶対にしない。似た品ですら作るということはしない。
でも、生徒となると違う。それは教材にはちょうどいいから。
だからどう教えたらいいんだろうかと考えて、写真を眺め続ける。

クラフトをする気があり、作業を覚える気があるのなら、その方法を教えることは出来る。
でも、クラフトを覚える気がなく、ただ、どこかのサイトの品が欲しいと言う人には
それを購入しなさいと言うことしか出来ないのが正直な話だけど、それでも生徒が来てしまうと、「何とかしないけないか」になってしまう。

本当はこれは困ることだ。

追記して書くと、
作り方を教えて貰うと何がが出来ると考える人はここに来ないで欲しい。
ここはクラフトが出来る人をつくるところなんだから。

7 2

時々、珍しいプレゼントを頂く場合がある。
今日、はいと言って渡されたのは座布団だった。

坐骨神経痛だよと言ったら、早速東急ハンズに走ったらしい。
で、座布団がある。

少し笑う。


その話

先日、思いついたように病院に出かける。
夕方思いつき、その30分後には病院の待合室にいた。
名前を呼ばれ、爺さんの医師の前に座る。
爺さんは聞き取れないほどの小声で話す。
写真、撮ろうかと言い、年代もののレントゲンで身体を撮る。
爺さんは写真を見て、坐骨神神経痛と言い、骨の写真の何箇所かを小さな棒で指し示し、何事かを言う。
何事かは聞き取れないので、確認の言葉を僕が言う。
まあ、軽いらしいのは分る。

それから、無駄かも知れんけど、牽引しようかと言う。
その牽引は、無駄というよりは悪化した感じがする。
帰る時に受付が薬が出ています。これ痛み止めと胃の薬、1週間分ですと言う。
痛くはない。
痛くはないと爺さんには言ってある。で、痛み止めの薬が出るの?
受付は、聞いて来ますと爺さんの元に走る。
痛み止めの薬は消えて、診察券を貰って帰宅する。
この診察券は、多分、無駄になる。

そんなことがあり、坐骨神経痛かと溜息をつく。
因みに坐骨神経痛は症状で病名ではない。
原因が半分ほど分り、まあ、労わることにする。

座布団は有効かも知れない。