12 31
窓を拭いていたら佐野君が来る。
大掃除の手伝いに来ましたよなどと言う。
マジかよ?
えっ、そう言ってたじゃないですか?
きっと彼は愛すべき男性なのだろう。世間にはそんなにいないはずの人の部類に入る。
佐野君が来ると、みきちゃんが来る。
みきちゃんは名古屋でお正月を迎える。
鎌倉には3日には帰ると言う。
工房には佐知子がいて、みきちゃんがいて僕がいる。
佐野君のお土産とみきちゃんのお土産を並べ、眺めて、それから食べる。
夜7時前に病院に寄り、母親の見舞いをする。
23日から始めた酸素吸入は今日で終わる。容態は少しは安定しているらしい。
文句を言う大晦日ではない。
来年までの時間は1時間を切る。
いよいよ今年が終わるな。
来年がいい年でありますように。
12 30
整頓を始めたら半日が過ぎてしまう。
高島屋2階のイルミネーションを現場で眺めていた。
随分長い時間を使い眺めて過ごす。
夜の時間をビールに使う。
隣の席には気心の知れた生徒がいて、飲んでおしゃべりをする。
3時間ほどして自宅に帰る。
東京から帰省した娘がいる。
娘の乗車した新幹線は対人事故を起こし、30分の遅れが出たと言う。確かにそんなニュースが流れている。
この師走の最中の事故で17万人に影響が出たらしく、その17万人のひとりに娘が入る。
ビールのせいではなく、食べ過ぎのせいだろう。何だか、胃が重い。
メタボだな。
12 29
抜ける感じで空が青い。
空に雲はなく、風もない。
空ばかり見てる。
幸福な感じが少しある。
空の青さ以外の理由はない。
明日、東京で仕事する娘が帰省の予定。その時間に僕は飲み会の予定をしている。
それが終われば、大掃除をする大晦日が来る。
さあ、今年の残りは日数ではなく、時間で表示される感じになる。
12 28
綺麗な娘さんがいて、若い奥さんがいて、好きな仕事をして、すごくいいですね。
と若い男性に言われた。
僕は否定もせずに、それを聞く。
若い男性は、先週と今週の2回、僕のところでシザーケースを制作していた。
それは完成し、迎えの車が来る間にそんなことを言う。
人の中には僕をそう見ている人もいる。
突然に、何だか男性を感じますと若い女性が言う。
僕の作業を見てそう感じると言う。
あー、そう感じる人もいるかと、ひどく嬉しい気分になる。
人生は満足すべきものだと思う。
どうであれ、人生は満足すべきものだと思う。
30日には東京の娘が帰省をする。
お正月は、家族が揃う。
やはり、人生は満足すべきものだと思う。。
12 27
深夜も2時を過ぎている。
信じようが信じまいが、僕は午前0時から午前6時を仕事の時間に当てている。
週のうち殆どはそうして、週に少しだけを死んだように寝て過ごす。
深夜にはメールを書いたり、ネットサーフィンをしたり、「ひとりごと」を書く。
今日は土曜日で生徒が何人か来ていた。
みんなはお菓子を持って来る。
僕は缶コーヒーを用意して、コーヒーを飲んでお菓子を食べる。
そうやって講習をしたりする時がある。
今年はお世話になりました。良いお年をと言いながら、みんなは帰る。
その今年はまだ4日間を残している。
4日間が長いのか短いのかが、僕には分らない。
ぼんやりと長いのかな短いのかなと考えている。
今年は忘年会をしていない。
去年もしなかった気がする。
それ以前は、好きな人を何人も我が家に誘い、忘年会をしたものだった。
そうなのだ、僕はまだ忘年会をしていない。
それを考えていて、今度、飲み会の約束をしていたと気が付いた。
飲み会と書いても参加者はふたりだから、殆どデートの気分になる。
まだ僕にはそんな気分があるのかと、ホッともする。
やはり、今年はまだ4日間があるということだろう。
12 26
明日は土曜日で日曜日へと続く。
来週の今はもう元旦さえ過ぎている。
今日は仕事収めの日らしい。
隣の所長さんが、今年もお世話になりましたと挨拶に来る。
僕の今年の仕事はまだ収まっていない。
今日はとても寒い日だった。
いろいろ考え込んでいた。
今年が終わるまでには結論を出した方がいい問題が僕にはあった。
結論は、もう、出てるけどね。
今年はいろいろあった。
その激動の今年はもうすぐ終わり、本当に来年は来るんだろうかとさえ考えたけど、やはり来年は来る。
おそらく、未知の年度ではないだろう。
夜、病院にいて、医師と少し話す。
想像するよりは悪い事態ではないらしい。
母親は1週間前に入院をし、同時に僕の中の何事かも始まる。
入院は続くにしろ、僕の中のそれは短期で終わる。
僕の空に現れた何かは、今年の内にはいなくなる筈で、来年にはすっきりした空になる。
大丈夫です。
12 25
深夜12時を過ぎて帰るという娘を車で送る。
雨が降り、強風がシャッターを叩いている。
途中、コンビニに寄りたいと言う娘はチョコレートを買って、はいと僕に渡す。
ロッテのラミーチョコレートで、冬には僕はよくこれを食べる。
今も風は相変わらずに強い。
明日も寒い冬の日なのだろう。
12 24
クリスマスイブのはじまる時間に、僕は母の病室にいた。
洗濯物を袋に詰め、酸素吸入をしている母を眺めた。
酸素吸入は昨日からはじまり、点滴の管は腕にさしてある。
母は10月が終わる頃に退院をして、2ヶ月を経ないで同じ病室にいる。
人が生きるとは何なのだろう?
寒気のせいだろう。寒い。
夕食に家族がそろう。
誰も外で遊ぶクリスマスイブの夜ではない。
今年はわずかに1週間を残すのみになる。
カレンダーを眺めれば、そうで、そうでも僕はそれを信じていない。
12 23
クリスマスイブの前日は休日なのに、僕は工房に篭っている。
仕事はきついと感じて、なかなか作業が進まないでいる。
この数日はとても悪い事態が続いている。
まだまだ、続く。
僕には、どうにもならないよ。
12 22
曇った夜空を眺め、やはり、空には何かがいるなと思いはじめている。
もう空には何もいないと分っている。と書いたのはつい2週間ほど前なのに、今はそれを訂正をするしかない。
空には何かが棲み、何かをする。
その何かは何が面白く、そんなことばかりをするんだろう?
僕の手には届かないその何かを、僕はどうすることも出来ないでいる。
今年の9月は最悪な月だった。
今の事態はその9月よりもさらに悪く、さらに暗く、さらに寒い。
そうでも、僕が呑気でいるのは、もう鈍感になったせいかも知れない。
精神は強くなるのではなく、鈍感になるものらしい。
今年は、本当に終わるのだろうか?
12 18
インフルエンザの予防注射をうつ。
極めて短時間で済んだ。
注射といえば、献血で針を刺すぐらいの経験しかないので、針が刺さる時間は長いと思い込んでいた。
あんまり短いので、ほんとに注射をしたかと聞いてしまう。
昼、今日はお休みと言い、Nさんが遊びに来る。
講習ではなく、ほんとに2時間ばかりをNさんと遊びの時間にしてしまう。。
Nさんが帰り、カレンダーを眺め、もう18日かと思う。
クリスマスまで1週間、大晦日まで2週間を残すのみで、波乱としか書くしかない今年も残りが少ない。
呆れるほどに、時間は早く過ぎる。
12 17
天気は悪い。
昨日の天気が嘘みたいに思える。
5日ぶりにメールのチャックをし、数十通のメールを書く。
テレビの仕事の後遺症はこうしたことでも、あると分る。
仕事を溜め込んでいる。
まずい。
夜の時間にIさんが来る。
講習も久しぶりでだったけど、Iさんは同じ作品を作り続けているせいで、教えることがなく、おしゃべりばかりをして過ごす。
そういえば、Iさんとは久しぶりになる。
Iさんは12月の最後の日が誕生日になると言う。
そのせいか、実に慌ただしい人だ。
Iさんが帰り、シャッターを降ろす。
晩酌をしながら夕食を食べる。
何となく、少し前の日常に戻りつつある。
12 16
午前9時40分、ぐっさんが来る。
ドアをトントンと叩いてぐっさんが来る。
天気はいい。冬の空はとても青い。
午前8時を過ぎた頃から、我が家は人でごった返す。
こんなに知らない人が大勢来たことは、まず、ない。
ぐっさんが来たのはテレビ番組の収録で、収録とはテレビ局も含め、とても大勢の人がいる。
収録時間は午後1時まで続いた。その間3時間と20分。
ぐっさんが我が家にいた時間も同じになるけど、とても著名な人の至近の距離に僕はいた。
小さなテーブルで食事さえ一緒にしたのだ。
このぐっさんの番組の収録はこの日に限らない。
実は、僕はぐっさんの鞄を製作していた。
ぐっさんは寅さんのトランクが欲しいと言う。とても大型の古風な革製のトランクが欲しいと言う。
それを僕が作り、その制作風景の収録も同時進行で続けていたので、この2週間はこの仕事に埋没した感さえある。
作るとは大変なことだ。
寅さんトランクを制作しながら、そればかり思い知らされて制作を続けた。
今日で、それも終了したので、ひとつの達成感が僕にはある。
ぐっさん、踊るように僕の作品を抱いて喜んでくれた。
ぐっさんはとてもいい人で、とても素直な人だ。
テレビで時々見てたけど、本当にテレビのとおりの人で、見てて可笑しかった。
彼はとても腰の低い丁寧な人だ。
テレビカメラが回らない時、いろいろと彼と話をしていた。
出演したドラマのことなどを聞いて、へえーと驚くことも言っていた。
僕がテレビに出演したのは久しぶりだった。
書いてしまえば、テレビの取材は年に数回の依頼が僕にはある。
こうした仕事をしていると、やはり、それはある。
この数年は殆どそれを断っていたけど、今回だけは引き受ける気になった。
それは、僕がどのように作品を製作しているかをテレビで放送するとテレビ局が言ったから。
ものを作るという仕事が世間に伝わると、いい。
それにしても、この2週間は、とても疲れた。
僕は他の仕事を進めることが出来ず、それをすごく気にしている。
メールを開くと仕事の依頼があることは分っているので、メールのチェックをすることさえしないでいた。
気分をぐっさんの鞄製作に集中するには、こうするしかなく、
これが僕にメールを書いた人への返信が遅れた理由だけど、やはり、いいことではなく、
ここにお詫びを書くしかない。
今日の収録にはタルと愛美さんが来て手伝ってくれた。
知ってる誰かがいると、気分が助かり、とても楽な収録になりました。
ふたりにも、楽しんでいたみたいで、これも良かった。
暖かい昼にふたりは帰り、それから、僕は少し休んだ。
追記だけど、このぐっさんの番組は1月24日に放送される。
宜しければ。
12 11
深夜、外に出ると月が丸く天に輝いている。
暗い天に丸い穴が開いたように輝いている。
夕方、駅前に行く。
東急ハンズで金具を購入する。
これは仕入れみたいな仕事で、それが終わると店内を少しぶらつく。
店内にはクリスマスの雰囲気が満ちている。
そうなのだ、もうすぐクリスマスが来ると唐突に気が付く。
毎年、クリスマスの意味が僕にはない。
今年もそうだろうけど、駅前のイルミネーションを人混みに混ざり眺めていると、
やはり、クリスマスかと思う。
あれ、きれいだったな。
12 10
暖かい冬の日。
明日は、さらに暖かいらしい。
12月の平日は講習を予定に入れてないので、昼間は静かに過ぎている。
考えごとをしながら作業を進めている。
作業は淡々と進み、時々休んでは途中経過の作品を眺める。
眺める時間が作業の時間よりも長いのは確かだろう。
これはいつもの癖だ。
考え事なのかな?
昼間、隣の喫茶店でコーヒーを飲んで休む。
いつもの席にはママさんが座って週刊誌を読んでいる。
いつもの席だと知っているだろうに、どかない。
仕方ないので、その横に座る。
いつものように、店にはお客は誰もいない。
疲れてる。
僕は、何かがしたいのかな?
不意にそんなことを考える。
仕事を抜いたら、何にもしていない。
本当に何にもしてなくて、時々、空を眺めているだけだ。
もう、空には何もいないのは知っていて、そうでも空を眺めている。
自分を眺めているんだろうか?
何かがしたいのかな?
そうではなく、したいことさえ分らない自分が辛いのかな?
何がしたいんだ?
12 9
最近、収録の話ばかりを書いている。
今日の収録の開始は午後7時半。これは、僕の間違いのせい。
夜の9時に晩酌の場面が欲しいとカメラを回す。
数秒かと予想していたら、9時半になっても終わらない。
これはあるメーカーのビールを飲む必要があって、それをメインで飲んでいた。
テレビを見ながら、ディレクターとおしゃべりをしながら飲んでいた。
それを勝手にディレクターがハンディカメラで写す。
何を写してたかは知らないけど、ビールを飲んで起きる現象が僕にはおきた。
酔ったよ。
だから、酔った僕の場面がテレビで流れるかも知れない。
マジか?
今度は名古屋のスパゲッティを隣の喫茶店で食べる。
ひとりで食べて、来週は芸人さんと一緒に食べる。
30分の番組は収録が長いな。
いつもは、せいぜい半日の収録で数分の出演だった。
ポルテのCMとなると15秒の短さになる。
やはり、長い収録で、いい加減にくたびれる。
今日は雨。
12 8
昼間、収録をする。
おしゃべりをしながら収録をする。
いつも来るディレクターと何度目になったんだろう?
何度目かになれば気安さもある。
ビールの話になった。
今度の番組のスポンサーがビール会社で、そのビールを飲む晩酌風景が欲しいと彼は言う。
それで晩酌風景が欲しいかと、妙に納得する。
明日、その晩酌風景を撮るという。
何秒間のシーンになるんだろう?
現在、鞄をカメラの前で制作をしている。
人に見られての制作は厭なもので、カメラで記録されるかと考えると、気分は良くはない。
見せれない場面はカットするけど、まあ、大体の制作工程はばれるな。
構わんけどね。
12 7
午前11時、クリエーターズマーケットの会場に到着する。
2時間ほど会場にいて、帰宅する。
クリマではいろんな若い人を眺めて過ごす。
いろんな作品にはどのような感想も湧かず、若い人を眺めてはいろんな感想が湧く。
クリマの会場は港にある。
港の空を眺める。青い青い空が大きく広がっている。
僕の日常が下町にあるせいか、広い空は気分を変えてくれる。
あー、空があるな。
クリマの会場でタルに会う。
彼女には頼みたい件があり、頼んでみる。
そういえば、頼みたい件の日時が近づいている。
焦りはないけど、少しばかりの緊張がある。
この緊張が消えるのは分っている。
12 6
今、僕はとても有名な芸人さんがオーダーする鞄を製作している。
昼間、その作業をして過ごす。
ディレクターがハンディカメラでそれを写している。
テレビ局のふたりが帰ると、疲れを感じる。
作業の疲れではないだろう。
入れ違いにKが来る。Kは高校以来の友人で、帰宅途中に我が家に寄る。
色紙を持参で来る。
サインが欲しいと言う。
無論、僕のサインではなく、僕の工房に来る芸人さんのサインで、それを僕が頼むことになる。
どうも、今度来る芸人さんはとても人に好かれる人らしい。
しばらく、Kと雑談をする。
Kとは久しぶりで、今年の僕の仕事などを話題にする。
そういえば、彼には娘がふたりいて、僕にもふたりの娘がいる。
4人の娘は、みんな大きくなり、きれいになっている。
こうしたことで歳月を感じる。
さて、明日はクリマがある。
S君がここに来て、一緒に電車でポートメッセまで出かける。
どうも、寒い日になるらしい。
12 5
昨日、テレビの収録があった。
明日もある。
収録は鞄の製作を終えるまで続くので、来週も何度かある。
だから、いつか僕の鞄制作風景がテレビで流れる。
収録ではライトが当たる。熱い感じがして汗が出る。
明日は土曜日で、僕の生徒がふたり東京へ行く。僕の娘も行く。
今日、東京のMさんからメールが届く。東京の地名が書かれている。
東京か・・・・・・・・。
昔、僕は東京に住んでいた。
随分と若い頃で、名古屋に帰ってからは殆ど出かけることはなくなる。
配偶者は出かけてみればと言う。
そういえば、配偶者はよく東京へと行く。
東京に娘がいるせいだけど、父親は娘に会いに出かけることはなく、
仕事で東京が必要な場所でもないので、やはり出かけない。
東京以前に僕は名古屋駅にすら行かない。
駅でぼっとしてると東京へ行きたくなるんだろうか?
12 2
師走に入っている。
おそらく、僕は走っている。
僕の風邪はいつも頑固だけど、2週間かけてようやくおさまる。
今週にはインフルエンザの予防接種が予定に入っている。
先週の土曜日、夜の時間にMが来る。
Mには仕上げしたい作品があり、その作業をする。それを眺めて僕は遊んで過ごす。
Mが帰り、僕は遅い夕食を食べて横になる。
深夜、Mにメールを書く。
日曜日は忙しかった。
昼に電話が2本入る。ひとつはお客さんらで、ひとつはテレビ局から。
テレビ局の人と打ち合わせをしていると、お客さんが来る。
お客さんとテレビ局の人が帰ると生徒が来て、生徒の作業を見ていると、クリマの用事で別の生徒が来る。
その間、2本の電話が入る。これは仕事の依頼で、「忙しいね、先生」と生徒が言う。
ふたりの生徒が帰ると夕方になる。
暗くなり、明日渡す仕事の作業を始めて、作業を終える。
どうも、休みがない。
これは大晦日まで続く。
そうでも、おそらく、僕は大丈夫だろう。