は じ め に

ヴィデオが今日のように普及する以前。映画は映画館でみる庶民の娯楽でした。TVの連続ドラマをみるように、二本立て三本立ての映画に人々がむらがったのは、そう遠い過去のことではありません。そのころ、ヨーロッパでは芸術的な作風をもつ、革新的な作品が数多く生み出される一方、アメリカ映画に影響をうけた、しかし決してアメリカ的ではないあじわいの娯楽映画が数多くつくりだされました。

たとえば、映画にかつて一大ジャンルをきづきあげた、マカロニこと、イタリアン・ウエスタン。大量生産された上品でいてバイタリティあふるるエロチカの数々。犯罪映画も、アイドル映画も、そしてホラー映画も、悪趣味映画(?)も、1960年代から70年代にかけて数多くうみだされ、全世界に配給されました。

こうした映画は、観客至上主義のサービスにつとめまくったものもあれば、観客より作り手がよろんこんでしまっているもの、低予算で、制作サイドががたがたいわないのをいいことに、まったくのひとりよがり、いわゆるアートといわれる作品よりもアナーキーにつくってしまったものもふくまれていています。安易につくられた娯楽作品ゆえに、アメリカ映画のものまねではおわらせないという気概と、ヨーロッパ志向をかねそなえた特色をゆたかにもっているという矛盾。人々の欲望に忠実につくられたからこそ、一番その時代と文化をうつしだしているといえるのです。(だから、すぐにすたれもするのですが・・・。時代と寝過ぎた映画の宿命でしょうか。)こんななかには一部の人の記憶のなかにしかのこっていない「傑作」もありますし、公開後一顧だにされない本気でクズなものなのに、低予算ででている名優がすばらしいとか、後の名監督が変名で撮ったなんていう「お宝」系まであって、玉石混淆です。しかしいまかろうじてみることのできる作品の、なんとおもしろいことか。これら大衆娯楽の華を無視して、なぜいまヨーロッパ映画をかたることができるでしょうか。

そこで、当サイトでは、極度に個性的な俳優を縦軸にして、ユーロ・トラッシュ・フィルムカルト・フィルムをふくむ、はばひろいヨーロッパ映画の世界を追い求める旅にでることにしました。あらゆるジャンルのヨーロッパ映画におしみなく出演して、俳優としても、その私生活においても多分に個性的すぎた男たち。たとえばトーマス・ミリアンクラウス・キンスキーフランコ・ネロ、一風かわったところでフランコ・チッティピエール・クレマンティなどです。余裕があればウド・キアもふくめましょうか(テレンス・スタンプMoviespotting本家でやっておりますわ。ほほほ)。彼らの生い立ちと、その後の足跡をおいもとめることによって、20世紀ヨーロッパ娯楽映画の発展と衰退、そして再生が陽炎のようにうかびあがるという趣向です。(ほんと?)
たぶんにマニアックでにみちた、求道的なページになりそうですが、彼らをまったく知らない人でも笑えるよう・・・いえいえ、感心するようにコンテンツを作成していきたいと思います。

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なお、コンテンツをつくっている作者は、ややこれら60年から70年代の劇場映画をリアルタイムで享受するには年齢がいたらず、ほとんどが後世TVやヴィデオでみたものだったりします。ですから、当時を知る人に、こんな人、いたなあ。そういえばこの人、その後どうしてる? と興味をもって思い返していただけるとうれしいです。そして、さらに、彼らについてこんなことをしっているよとそっとご教唆いただければ・・・。封切りされたもののそれっきりになっている映画のサマリーなどでもありがたいです。

今日ではこうした作品のヴィデオがだんだん入手不可能になりつつあって見ること自体がだんだん困難になってきました。しかも、フィルムアーカイブがとりあつかってくれるようなたぐいの映画では決してありませんし、これからもそうでしょう。娯楽作品の多くが、かつて大衆的でありすぎたということだけで軽んじられ、みることが不可能になっているなんて、あまりにも口惜しいです。かといって私は、娯楽作品が一部マニアの間だけで高額でとりひきされるようになってほしくないのです。
かくなるうえは、これらの作品が草の根的に再評価され、ヴィデオといわず、DVDでガンガン発売される日がくる、くわえてCS放送でだらだら放映される、そんな日をゆめみて、こつこつ訪ねつづけていきたいとおもいます。

  1999年12月
                            やまもと

                    

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