Tomas Milian トーマス・ミリアン
フィルモグラフィ その3
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波止場(1963年)
監督 レナート・カステラーニ / 脚本 レナート・カステラーニ &レオナルド・ベンベヌーチほか / 撮影 トニ(アントニオ)・セッチ / 音楽 カルロ・ラスティチェリ / 原題 " Mare Matto "   
『波止場』のポスター
左の青年がそう?

レナート・カステラーニは、今日ではみることのできる作品がひどくすくないが、カンヌでグランプリを取ったことがあるほか、60年代ヨーロッパでは評価の高い監督だった。この『波止場』は(『波止場』といってもエリア・カザンの「あれ」とはまったくちがう)、イタリアの漁村を舞台にした、ネオリアリズモ的作品。主演はジャン=ポール・ベルモンドとジーナ・ロロブリジーダ。

残念ながら、実際のフィルムをみたことがないので、ミリアンが演じているエフィシオという青年がどういう役柄なのかの詳細は不明。ただし、右のポスターをみるとわかるように、ミリアンは主役各のキャストとして三番手に掲げられているので、重要な役ではあるのだろう。みたい、みたいです。

ラスティチェリのサントラだけは、幸運にもきくことができたが、メインテーマはスローでメランコリックな曲調。そのジャズ風のアレンジがくりかえされる。


L'Uomo(1964年)
監督 メル・ディネッリ
イタリアのTV作品。みようにもビデオがないし、残念ながらデータもないです・・・。主演?


Gli Indifferenti (1964年)
監督 フランチェスコ・マゼッリ / 脚本 フランチェスコ・マゼッリほか /原作 アルヴェルト・モラーヴィア『無関心な人々』 / 撮影 ジャンニ・デ・ベナンゾ / 音楽 ジョバンニ・フスコ  / 英題"Time of Indifference"  
『無関心な人々』のポスター
なにかいいたげな表情のミケーレ

イタリア文学の巨星アルベルト・モラヴィアが17歳から20歳にかけてかいた衝撃の処女作、『無関心な人々』の映画化。ミリアンはこの作品でマル・デル・プラタ映画祭最優秀男優賞を受賞(このマル・デル・プラタってのは、私なんかはよくしらない映画祭なんだけど、まあ、ミリアンにとって、唯一にちかい受賞歴なのでとても重要)。彼の役柄はこの退廃の闇に沈むイタリア・ブルジョア家庭の息子、ミケーレ役であった。作品的な評価もたかいが、なぜかどこの国でもソフトが販売されていない。日本にいたっては、この映画は未公開である(クラウディア・カルディナーレ演じる初なお嬢さんが、自らすすんで母親の愛人であるあやしいおやじに抱かれていく、そのへんが当時の道徳的コードにひっかかったのかもしれない)。おりにふれ、これが公開されていないことがおしまれてはいるのだけれど、いまだに実現していないのは残念なかぎり。どこかで、放映してくれないでしょうか。別にミリアン云々でなくとも、モラヴィアの原作で、評価がたかいのだから。

ローマのプチ・ブル家庭を舞台にしたこの映画をつくるにあたり、イタリア映画界はワールド・ワイドなセールスをねらって、主要なキャストにアメリカ人を招待した。ブルジョア女性を手玉にとる野心家のレーオにUSの俳優ロッド・スタイガー。その愛人リーザにやはりUS女優シェリー・ウィンタース。その愛人をシェアしているマリーアグラツィアにUS女優ポーレット・ゴダード。このベテラン勢に、売り出し中のクラウディア・カルディナーレとトーマス・ミリアンをぶつけたかたち。母からレーオをうばってしまう若くて大胆な娘カルラにカルディナーレを、女たちとレーオを傍観することしかできない憂鬱な弟にミリアンという配役である。カルラは24歳で、作品の冒頭では処女、という設定なので、前年に『山猫』を撮ったばかりの初々しさと野性的な要素をあわせもったクラウディアは適役でしょう。その、そう年がはなれていないと思われる弟のミケーレには、30代後半くらいまでは童顔だったミリアンがやはり適役(撮影当時20代なかば)。やんちゃな印象の強い彼が、どんな貧乏プチブル知識人青年を演じているのか、興味はつきない。

これも、実際みていないので、コメントはできないが、サントラはききました。ジョバンニ・フスコのクラシカルなスコアは上品で、いかにもブルジョアのサロンでかなでられそうな雰囲気。陰鬱なテーマ曲も流麗で美しい。


▲なお、64年制作のヴィスコンティ映画『山猫』にはミリアンがでているという資料があるが(バンダイからでているミリアン出演マカロニ・ビデオの数十行にわたる略歴と、"Spaghetti Westerns " by Christopher Frayling に1行ほどでているのみ )、確認ができない。すくなくとも、私がみたかぎりでは、セリフのある役にミリアンはいなかった(ジュリアーノ・ジェンマが将校役でカメオ出演してるのは有名ですね)。ちなみに、20thセンチュリー・フォックスのだしている英語版にキャスト全員のクレジットはない。イタリア語の長尺版にならでているのだろうか? 『ボッカチオ'70』の撮影直後でもあり、あの豪華絢爛なパーティシーンなどにあらわれて、つまみぐいをしている可能性はなきにしもあらず・・・だとはおもうけれども。


I Soldi (1965年)
監督 ジャンニ・プッチーニ
残念ながらイタリア映画ということしかわからない。


Io Uccido, Tu Uccidi (1965年)
監督 ジャンニ・プッチーニ
イタリア・スペイン合作映画。IMDBにはキャスト一覧あり。サマリーがわからないので、なんともいえない。上記の"I Sold"と監督がおなじだがそれとの関連は? また、この映画はオムニバスで、ミリアンがでているのは"Il Plenilunio"という話らしい。


華麗なる激情 (1965年)
監督 キャロル・リード / 脚本 アーヴィング・ストーン & フィリップ・ダン /原作 アーヴィング・ストーン / 撮影 レオン・シャムロイ / 音楽 アレックス・ノース  / 原題 "The Agony and the Ecstasy"  
よく天井に
かけましたね


『十戒』からこちら、スペクタクル史劇といえばこの人、という印象がつよかったチャールトン・ヘストンを、自分自身も作品自体も肉体派だった(?)ルネサンスの巨人、ミケランジェロ役に起用した人物伝もの。この作品はアーヴィング・ストーンの原作にもとづいており、ミケランジェロの生涯を編年体でかたるのではなく、彫刻家であったミケランジェロがシスティーナ礼拝堂に天地創造のフレスコ画をかくにいたったプロセスと、それを強要したローマ教皇ユリウス二世との確執と奇妙な友情を描いている。

イギリス映画界の名匠、キャロル・リードにメガホンをとらせているが、やや前半の動乱のイタリア(当時はイタリアという国家認識は皆無であったのだが)を描くスペクタクルシーンがおおあじなのはいなめない。しかし、イタリアでロケしているので、観光映画としてはもうしぶんなく、ハリウッド的人海戦術合戦シーンはずいぶんと豪華である。ドラマとしては、自分は彫刻家なのに、としぶしぶ絵筆をにぎるミケランジェロの心の動きにあてられるが、巨大な壁面の着想をもとめていったんは絵筆をおったり、方々をさすらう場面はあまりにステレオタイプなのでやや退屈。石切場のやまにのぼって、朝日をみながら天地創造を幻視するシーンなどもひどく類型的だ(天啓をうけるモーゼみたいなのだ)。ただし個人的には、この作品は全体として、きらいではないけれど。

後半部分になると、世俗的で権謀術数の申し子のようであったルネサンス時代の教皇を演じてもうしぶんないレックス・ハリソンと、芸術ばかで周囲がみえないミケランジェロとの確執が本格化して、みごたえがある。メセナとアーティストの緊張関係が、いつしか敵対関係から同志愛に発展し、ついには自分たちを越えた「愛」(この場合、神の愛、芸術への愛)へと昇華する「奇妙な友情もの」としてとてもすぐれた映画になっているのだ。

ミリアンは、この映画では「新進気鋭の画家」ラファエロ。美男で伊達男だったというラファエロを、気取って演じている。なかなか完成しない壁画作成に業を煮やした教皇が、ミケランジェロを発奮させる当て馬につかう才能ある若者、といった役どころなので、大きな役ではないけれど、何回かにわたってでてくる。おそらく、英語がはなせるということで、現地で調達された俳優のひとりであったのだろう。

黒髪でやや長めの、うちまきストレートヘアに、ブルマーにタイツ、という姿がなかなかかわいらしい(案外足がほそいので、紫のタイツがちょっとももひき状態になっているのがまた・・・)。アテネの学徒の壁画のまえで絵筆をにぎってる姿は、しどころもなくてあまりアーティストっぽくはないが、映画の後半、プライドのあくまでたかいミケランジェロに対し、「芸術家なんて、所詮芸術を売って媚びをうるのだから、高級娼婦となんらかわらないじゃないですか」と自説を一席ぶつシーンが用意されていてる。このシーンのミリアンの目に、もっとセリフをくれ〜という叫びをみることができるだろう(ほんとかー)。

原題の"The Agony and the Ecstasy"は直訳すれば「苦痛と恍惚」。壁画制作過程で、あおむになって、絵の具を顔にしたたらせながら描いたミケランジェロの苦闘の様子と、そのあともたらされた歓喜のさまをいっているのであろう。宗教的な悦楽だから、法悦といったところか。「華麗なる」というのは、当時はやった「華麗なる賭」からのぱくりかとおもったら、この映画のほうが先だったようで。ふしぎな邦題です。


国境は燃えている (1965年)
監督 ヴァレリオ・ズルリーニ / 脚本 レナルド・ベンベターチ、ピエロ・デ・ベルナルディ/ 撮影 トニーノ・デリ・コリ / 音楽 マリオ・ナシンベーネ / 原題 "Le Soldatesse" 
フランス・イタリア・ユーゴスラヴィア合作映画。監督に名匠ズルリーニをむかえた文芸大作。主演はアンナ・カリーナほか、ミリアンとマリー・ラフォレ。当時純文芸映画として日本でも公開され、一定の評価をかちえている。しかしながら、現在残念なことにビデオがない。アンナ・カリーナ出演作品として、ジェーン・バーキンの「カトマンズの恋人」といっしょにカルト・ロードショーでもしたら、すごくうけるとおもうんだけどなー。だめかしら。


その華麗なるフィルモグラフィ

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以下続予定

いよいよ登場、珠玉のマカロニ作品群
ベルトルッチ「ルナ」
アントニオーニ「ある女の存在証明」も予定



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