Tomas Milian トーマス・ミリアン
フィルモグラフィ その1
Index


ミリアン・フィルモグラフィー 一覧へいく


狂った夜(1959)
監督 マウロ・ボロニーニ /脚本 ピエロ・パオロ・パゾリーニ /音楽 ピエロ・ピッチオーニ /原題 "La Notte Brava"
これが事実上のヨーロッパ映画デビュー第一作である。ボロニーニ監督のイタリア映画で、なんとパゾリーニが脚本。ミリアンは脇役とはいえ、主要人物の一人で、ちゃんとMoretto という役名つき。豪華なデビュー作である。日本では60年に劇場公開された。 ほかにも、共演者にはローラン・テルジェフ、ジャンクロード・ブリアリという豪華なメンツが。おそらくはテルジェフが主役か。市井の若者を描いた作品ながら、この段階ではリアルな下町のあんちゃんたちを使うということはせず、演劇の基礎ができた、無名の俳優を集めてきた観がある。これは60年に公開されたきり、ヴィデオ化されていないというしろもの。パゾリーニの脚本作品であるのみならず、これはパゾリーニの『生命ある若者』からの映画化らしい。パゾリーニいわく、「この映画は事実上、自分が撮った最初の作品といってもよい」ということで、国営放送やCS・BS放送でのクラシック・シアター枠などに、いかがでしょうか。はずれはないとおもいます。


                  
太陽の誘惑(1960)
監督 フランチェスコ・マゼッリ / 脚本 フランチェスコ・マゼッリ、アルベルト・モラヴィアほか / 音楽 ジョバンニ・フスコ / 原題 " I Delfini "
イタリアの、お貴族さまの映画らしい。日本では61年に公開された。クラウディア・カルディナーレ主演。脚本が豪華で、あのアルヴェルト・モラーヴィアの名前があがっている。当初ミリアンはちょい役だと思っていたのだが、ジャンニ・フスコのサントラのジャケットをみると、なんとミリアンがカルディナーレより大きく写っていた。しかし、役柄は不明。みてみたい。


汚れなき抱擁(1960)
監督 マウロ・ボロニーニ / 脚本 ピエロ・パオロ・パゾリーニほか /音楽 ピエロ・ピッチオーニ /原題 "Il Bell' Antonio" 
シチリアを舞台にした、パゾリーニ脚本の異色作。ハンサムな青年アントーニオ(マルチェロ・マストリヤンニ)は、ドン・ファンで有名だったはずなのに、なぜか清純な妻(クラウディア・カルディナーレ)を抱くことができない。心のそこから愛する女には手出しができない体質だったのである。そうこうするうち、アントーニオは不能だといううわさがたって・・・。うーん、場所はシチリア、このどっかできいたようなテーマで、脚本にパゾリーニ! ミリアンがでてなくてもみてみたいじゃないですか。ミリアンはEdoardoという役。アントーニオのおともだちかな? ビデオはあるらしいので、Wanted! さらに、かつてNHK・BSで放映されたとこともあるので、ぜひ再放映を!


Laura Nuda (1961)
監督 ニコロ・フェラーリ
イタリア映画だというデータくらいしかありませんが、役柄としてはブルジョワの役らしい。


L' Imprevisto (1961)
監督 アルベルト・ラトゥアーダ / 音楽 ピエロ・ピッチオーニ
イタリア・フランス合作映画。サン・セバスチャン映画祭で、ラトゥアーダ監督は監督賞を受賞。文芸ものかな? アネーク・エーメやジャンヌ・ヴァレリーといったきれいどころが出演。ミリアンはメイン・キャストなんだけど役柄不明。


Giorno per Giorno Disperatamente (1961)
監督 アルフレッド・ジャンネッティ
イタリア映画ということしかわからない。ただ、イタリアの文芸映画の敏腕プロデューサーだったフランコ・クリスタルディがみずからこの映画をプロデュースしている。彼はビスコンティからジュゼッペ・トルナトーレまでをプロデュースした戦後イタリアきっての名プロデューサーで、当時ミリアンはクリスタルディ・プロダクションと五ヶ年の契約をむすんでいた。


Un Giorno da leoni (1961)
監督 ナンニ・ロイ
イタリア映画ということしかわからない。ちょい役。


ロゴパグ(1962)
監督 ロベルト・ロッセリーニ、ジャン=リュック・ゴダール、ピエル・パオロ・パゾリーニ、ウーゴ・グレゴレッティ / 音楽 カルロ・ラスティチェッリ / 撮影 トニーノ・デリ・コッリ("La Ricotta" のみ) / 原題 "Laviamoci Il Cervello" aka " LoGoPaG"
パゾリーニの傑作、ゴダールの駄作、とはIMDBのコメンテーターの言だが、まさにそんな気がする伊仏合作傑作オムニバス。ゴダールにはもうしわけないが、パゾリーニの"La Ricotta"のできがすばらしすぎるのです。原題の"RoGoPaG"は四人の監督の頭文字をとっただけのもので、なんともおかしい。
ミリアンはパゾリーニの "La Ricotta" に出演。ものの本によれば、彼はエキストラになっているのだが、わかる人にはわかる、とても美しい役柄で堂々と登場。おそらく、彼のキャリアで、こんなに耽美的に麗しいのはこれだけなのでは。さすが、巨匠パゾリーニ(容姿で採用したとしか、おもえないんだけどな・・・)。パツキン、ふともももあらわな彼はめずらしいだけに、パゾリーニ再評価の波でこの映画が劇場公開されたことに繰り返し感謝。(で、どこにでてるかって? ひ・み・つ。さがしてね♪)

さて、映画についてもちょっと。"La Ricotta"にしかふれませんが。
ローマ郊外ののっぱらで、監督(オーソン・ウェルズが演じている)がキリスト磔刑のシーンを撮影しているという、シチュエーションギャグにちかいコメディ。ゴルゴダの丘の荘厳な雰囲気もどこへやら、エキストラはひまな時間にツイストをおどったり、マグダラのマリア役の女(たぶん。あとででてくる活人画のマグダラのマリアとはダブルキャスト)にストリップさせてよろこんでいたり、わいわいがやがやとさわがしいことこのうえない。イタリア映画撮影現場って、こんなんか、というたのしさだが、撮影は順調にいかず、監督の悩みはふかい。てきぱきはたらく助監督の指示のもと(セルジオ・チッティの戯画化?)、丘を十字架がいったりきたりしている。

主人公ストラッチは、イエスのとなりではりつけられる大泥棒役をめいじられていて(『アッカトーネ』でどろぼうバリッラを演じていたマリオ・チプリアーニ。しゃれてます)、待機中。あさから(ずっと以前から?)なにもたべていないので、腹がへってたまらない。もらったロケ弁は、はらをすかせた家族にまっさきにあげてしまった。女装して再度ロケ弁をもらうが、ちょっと岩陰においたすきに犬にたべられてしまう。そんなドタバタがしばらくつづいて、ようやく食事にありつけるのだが、リコッタ・チーズとパスタのくいすぎで、本番中におなかを壊して死んでしまう、というなさけないやらかなしいやら、という物語。十字架上で死んでしまったストラッチに、監督のオーソン・ウェルズが、「生きていればこそ、忘れ去られずにおれたものを」なんていって映画はおわってしまいます。

さあ、はやく位置について。うごくなってば

単純な筋立て、わかりやすい笑いの数々。貧乏人をえがいていても、『アッカトーネ』にみられたような、若者によりそう感情移入がみられないので、たんたんと作品自体をたのしむことができる、これは傑作ぞろいのパゾリーニ作品中でも、かなり上位の作品です。二カ所で挿入される、「キリストの降架」をもとにした活人画が秀逸で、ここのみ、カラーが挿入される鮮やかさ。よくみると、メンバーは、「アッカトーネ」「マンマ・ローマ」「狂った夜」のメンバーだったりしておかしいことこのうえないんですが、ラウラ・ベッティ演じる「女優」マリアをはじめ、まるで絵画のように美しく、それがだんだんくずれてきたり、鼻をかいたり、わらったりカメラ目線になったりするのが、この映画の醍醐味でしょうか。私は、とりわけポントルモ編がすきです。ふふふ。

「ロゴパグ」全編をつらぬくカルロ・ラスティチェッリの音楽がずばらしく、冒頭の「ろ・ご・ぱ・ぐ〜♪」のきのぬけたコーラスにおもわずにやり。音楽に関しても、パゾリーニ編はとりわけ秀逸で、「降下」の場面でかかるスカルラッティの音楽に、ときおりまじるツイストっぽい音楽が俗悪で秀逸。たのしい気分をもりたてます。ところが、この傑作で、パゾリーニは「カトリック教会」を侮辱した、とのかどで、あやうく牢屋にいれられかけた、というのですからおそろしい。よく作品をみれば、貧しい人々の真摯な信仰もえがかれているだけに、表層的なものの見方をする人間はどこにでもいるものだと。このあとで、パゾリーニは笑いを排除した『奇跡の丘』で、キリストのマタイ伝を堂々と映画化。カトリック教会もだまらせてしまう伝説のフィルムをとったのです。





その華麗なるフィルモグラフィ

ミリアン・フィルモグラフィー 一覧へいく


以下続予定

まだまだつづく、初期作品
ヴィスコンティも登場
当然ながら、珠玉のマカロニ作品群
ベルトルッチ「ルナ」
アントニオーニ「ある女の存在証明」も登場



Index
INDEXへもどる


Top Page へもどる




Moviespotting Top Pageへ 


Copyright (C) 1998-2000 Kei Yamamoto, All rights reserved.
記事・画像及び情報を無断転載することを禁じます
bluetonic@geocities.co.jp