愛に関する作品



『ジャクリーン・ヴィセット/抱いて・・・』(1979年)

監督 アルメニア・バルドゥッチ / 音楽 バート・バカラックほか / 原題 "Together?"
弁護士ジョヴァンニ(マクシミリアン・シェル)と染色デザイナーのルイーズ(ジャクリーン・ヴィセット)は、裕福なカップル。よく理由はわからないが、仲がよくとも結婚はしない主義をつらぬいている。ルイの連れ子のぼうやルカをはさんで、それなりに満ち足りた生活をおくっているのだが、夜の生活において男は「量より質」、女は「質より量」という主義なので(なんだ、そりゃ)、女のほうはつねにみたされないでいる・・・らしい(しっかり中年おじさんしてるマクシミリアン・シェルが、セクシー&クールでなかなかはぐらかしかたがうまい)。女は、すでに若くないという自覚があるが、一方でまだまだ美しい自分に自信ももっているので、やりきれいない毎日。ジョヴァンニは仕事がうまくいかないうえ、ルイーズがしきりと求めてきたり、「女の職業とはなんぞや」、なんていいだすので、おもしろくないことこのうえない。気晴らしに若い娘(モニカ・グェリトーレ)に手をだすが、ルイーズとにたタイプの女なので、結局はうまくいかない。
このカップルが、バート・バカラックのお気楽サウンドにのせて、たりら〜んとセックスしたり、浮気したり、男とは、女の時代とはなんぞや、なんてかたらう(しかもなぜかこのキャストで舞台はイタリア。そう、これはイタリア映画)、これは以外にまじめな女性人権主張&壮年男性応援歌映画でした。

で、どうしてこんな映画をみたかっていうと、ひとえにテレンス・スタンプがでていたから。テレンス・スタンプは、このカップルがすむ村にくらす、インテリ男性、ヘンリー。ひたいはだいぶひろいけど、若づくりで、細っこくて、ジーンズがめちゃめちゃよくにあってるダンディなおじさま。ガウンすがたでジャクリーヌ演じるみたされぬルイーズを誘います。(ていうか、単にたってるだけで、女がおちちゃう。このひとが、自分から誘うような役をしないのはゆえなきことではありますまい。)ルイーズは恋人をもったよろこびと、ジョバンニへのあてつけで一瞬ハッピーになるが、みるからに淡泊そうなヘンリーと一緒になるきはさらさらない。女からみて都合のいい男をふわりと演じていて、テレンス、さすがです。

きっと、この映画は倦怠する男女のセックスと愛情が主題なんだろうな。だろうなっていうのは、なんかすべてが中途半端で、人物造詣も役者のうまさだけにたよって一応体裁たもってるだけで、なかみがあまりかんじられないから。しかも、肝心のエロティックなシーンはソフトで、からむまえに画面が暗転するところをみると、きっと女性むけの自己啓発ドラマなんだろうと思わざるをえない。シェル演じる男も、雰囲気だけはけっこういいのに、わざと「女性は所詮男性から自立できない」、なんておもしろくもない論争をしかけてくるばかりで、いってることはただの保守的わがまま男。最後はルイーズに頭をしこたまぶったかかれて、失神するしまつ。おお、こんなことで死んでしまうんか、あんた? と心配してると、最後はどうも、なにごともなく、よりをもどす暗示でおわってしまうこの映画。うーん、これまでのアーギュメントはなんだったんだい。

この映画のよいところといえば、マクシミリアン・シェルがくすぐったがりやさんだってわかったのと、あとサッカーもうまいってことがわかったことかな? 肝心のジャクリーンは、なんとコノテの映画にもかかわらず、胸もみせない。むしろ、贅肉をむにゅっとつままれちゃったり、足をなめられちゃったりするシェルのほうが、健闘。なめかたはうまいです、さすがヴィセットおねえさま。ただ、ふたりが昼間っからその気になってしまう白い浜にたつバンガロー風の小屋にみたてた家屋は、明るくて、壁が白くてあざやかで、よしずばりの窓なんかもなかなか。染織家の、彼女の工房もたいそう美しい。こういうとこ、みょうにイタリア映画スタッフがつくっているかんじがよくでていてすき。魚やさんで、ルイーズとデートするヘンリー役のテレンス・スタンプも、彼がこのころとった映画にしてはぜんぜんエキセントリックなところがなく、自然にイタリアをたのしんでいる風情がとてもすてき。スタッフはイタリア勢だが、US映画として公開されたらしい。言語は、わたしがみたのは英語版。
                  

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