作者別一覧
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バリィ・デイヴィス
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フィリップ・K・ディック
(1)
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寺山修司
(1)
BARRY DAVIES
バリィ・デイヴィス
「SASサバイバル・マニュアル」(原題:The SAS Escape, Evasion & Survival Manual)
形態
単行本
種別
参考書
部門
−
出版
原書房
値段
¥1800
初版
1997-07-10
総合
☆
ストーリィ
−
技術
−
世界最強の特殊部隊として名高いSAS(英国陸軍特殊空挺部隊)に18年在籍、各国の航空機パイロットや特殊部隊のサヴァイヴァル技術教官をつとめたB・デイヴィス氏によるサヴァイヴァル教本。日本語版の翻訳は飯塚孝一氏による。
本書は、特殊部隊に在籍した20年近いキャリアを通じ、著者が実体験を経て習得した「あらゆる状況下において自己の肉体および精神を保護する術」を紹介する興味深い書籍である。
地震大国である日本において、サヴァイヴァル教本はよく売れる方なのではあるまいか。防犯グッズへの関心も高まっているようであるし、本書に類似した内容の書籍も近年そこそこ出回るようになっている。が、ことサヴァイヴァル教本においては、どれも頭でっかちの専門化が知識のみで著したもの――というような印象が拭えないものが多いようである。
実際に幾多の死地を乗り越えてきた人間が、その経験をいかしてまとめ上げたといった本は――まえがきで著者自身が指摘するように――なかなか珍しい。そういう希少性にあって、既に本書はあるていど評価されて良いものだろう。書きあらわされた教訓や心得のひとつひとつに説得力がある。これは決して、著者のもつキャリアと無関係ではない。
さて、肝心の内容についてだが――本書は大きく16章構成になっている。それぞれの章ごとに「捕獲」「脱出・逃亡」「回避」「サバイバル」「応急処置」「水の確保」「退避所」「火」「食事」「野生の食用植物」「食肉の確保」「魚の捕獲」「航法」「探索および救難」「海上でのサバイバル」「護身術」とテーマを設け、あらゆるシチュエーションに対応できるよう設計されている。
ウェイトも様々で、たとえば最終章の「護身術」は人間の急所を大雑把に列挙する程度の極めて浅い内容になっているが、反面、「サバイバル」や「応急処置」といった本書のメインテーマとなり得る章については相応に深く切り込んでいる印象がある。
どの章にも共通しているのは、その状況下において維持しなければならない精神状態と、おさえておくべき最低限の処置法を強調している点である。つまり、基本を重視した大変に正攻法的なアプローチの書籍ということになる。
実際、サヴァイヴァルに必要とされるのは細々とした知識や最新式の機材ではなく、冷静さや状況との正しいむきあい方、そして最低限の知識とそれを活用する発想力なのだろう。本書の根底にはそうした明確な主張が感じられる気もする。
4章「サバイバル」に、防災用品――いわゆるサヴァイヴァル・キットを紹介するコーナーがある。ここでは「カミソリの刃」「コンドーム」といったユニークな品々まで紹介されているが、これらが何の役に立つのか、読者は読者なりに想像しながら読んでいくと面白いだろう。
大切なのは、紹介されている物を個々で調査し、自分なりに知識や理解を深めていくという姿勢に違いない。本書は広く深いサヴァイヴァルの世界を紹介した「索引」に過ぎない、と考えることもできるからだ。興味のある項目をみつけたら、本書をステップに個々がそれを独自に研究していく。生活環境を見回し、「もしも」のケースを想定してみる。緊急時に周囲に転がる物品がどのように転用でき得るかをイメージしてみる。本書は「これを読めば完璧」といったものではなく、そうした「切っ掛けを与えてくれる書」として受け止めるべき1冊なのではないだろうか。
巻頭に「CWニコルの推薦文」、「著者まえがき」と「謝辞」が、巻末には「訳者あとがき」あり。本編約350ページ、モノクロ。ただしキノコのスケッチについては、食用キノコ・毒性キノコを見分けるために着色されている箇所もある。ほとんど全ページに理解度を深めるための効果的な図解が配置されていて親切。
日本では1997年に紹介されているが、英語による原書はその前年1996年に発表されている。著者はすでに同種のサヴァイヴァル教本を1冊刊行しており、本書はその第2段という位置づけ。
2005/02/28
PHILIP K. DICK
フィリップ・K・ディック
「マイノリティ・リポート」(原題:THE MINORITY REPORT)
形態
文庫
種別
ノヴェル
部門
短編集
出版
ハヤカワ文庫
値段
¥640
初版
1999-06-30
総合
☆
ストーリィ
☆☆
技術
☆
SF界の大物、ディックの短編集。ディックと言えば、一般にはハリウッド映画を通して有名だろう。彼の名前や著作を読んだことが無くても、シュワルツェネッガー主演の『トータル・リコール』や、ハリソン・フォードの『ブレードランナー』、トム・クルーズ主演『マイノリティ・リポート』などの映画を観たことがあるという人は多いはず。これらの映画は、全てディックの小説を原作として映画化した作品だ。
まず『ブレードランナー』は、ディックの長編「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」を元にしているし、『トータルリコール』は本書に収録されている「追憶売ります」を、『マイノリティ・リポート』もやはり本書の表題作である同名の短編小説を映画化したものだ。
ディックファンからすればシナリオも世界観も大幅に改変されたものばかりで、まともに映画化された作品など皆無――ということになるのだろうが(実は自分も少なからずそう思っている)、いずれにしてもディックの功績や後世の作品に与えた影響力を示すのに、ハリウッド映画を持ち出すのは一番手っ取り早いし通りも良い。これは多くの人々が認めるところだろう。
さて、本書は長短合わせて膨大な著作を誇る、そのディックの短編作品集である。収録作品は以下の7本。翻訳は「世界をわが手に」が大森望、「追憶売ります」が深町眞理子、あとの5本は全て浅倉久志。
・マイノリティ・リポート(the Minority report)1956.01
・ジェイムズ・P・クロウ(James P. Crow)1954.05
・世界をわが手に(the Trouble with bubbles)1953.09
・水蜘蛛計画(Waterspider)1964.01
・安定社会(Stability)未発表
・火星潜入(the crystal crypt)1954.01
・追憶売ります(We can remember it for you wholesale)1966.04
これは傑作集と言い換えても良いだろう。粒揃いで、恐らくはSF入門者にも読みやすいと思われる。様々なアイディアや奇抜な世界設定も面白いし、ディック特有の退廃的な雰囲気やブラックユーモア、形而上学的なテーマも盛り込まれていてバラエティ豊か。
2003/12/08
SHUJI TERAYAMA
寺山修司
「ポケットに名言を」
形態
文庫
種別
その他
部門
−
出版
角川文庫
値段
¥350
初版
1977-08-20
総合
−
ストーリィ
−
技術
−
寺山修司が独断と偏見で選び集めた名言・格言集。古書店で100円で売っていたので試しに購入してみたが、その価格以上の価値を見出せる本だったかと問われると首を捻りたくなる。
そもそも格言やら名言やらを集めたがる人間は、決まって自己陶酔型のいけ好かない人間なのだ。何故そう言えるかというと、寺山修司が名言を集めた本の中に自分の言葉を入れてしまうような男であり、何より自分自身がそういう人間の代表だから。
――この本によると、フランツ・カフカはこう言ったそうだ。
「なぜ人間は、血のつまったただの袋ではないのだろうか」
人間が血のつまったただの袋だと思いたがらないのは、たぶん人間だけだと思う。
I N D E X