FILE:014 <Death before dishonor>

 場所を変えようと走り出した瞬間、二発の銃声。一発は完全に外れたが、一発が鼻先を掠めていく。体を宙に投げ出し、横っ飛びしながらお返しの一発を撃ちこむが、手応えがまるでない。しかも、コッチはこれで六発全弾撃ち尽くして弾切れだ。
 柔道の前回り受け身の要領で肩から着地すると、僕は地面を転がりながら空薬莢を捨てた。パラパラとデッキの固い床に鉛の抜けたカートリッジが落ちる。この甲高い連続音も向こうに捉えられているはずだ。居場所を宣伝していることになる。どちらにせよ、弾の交換を急がなくては――
「……スモルトは、確かに良い銃さ。」
 背後から聞き慣れた、音楽的な声が聞こえてきた。
「装弾数が、僅か六発だという点を除けばね。――さあ、王手チェックだ。」

 振り向いた瞬間、撃たれる。それは明白だった。
 なるほど、僕の得物がスマイソン(スモルト)だということを計算に入れた上で、最初から弾の入れ替えの瞬間を狙っていたわけか。こっちの装弾数は六発。グロックは一七発。先に弾切れになるのは、考えるまでもなく僕の方だものね。流石だよ、ナギサ・カヲル君。
 でも、僕もそれくらいの計算ができないわけじゃないんだ。
 拳銃ほどではないにせよ、この世には使い方次第で有効な武器となる道具は幾らでもある。脇の下から潜らせていた手を使い、振り返らずに背後の敵に向けてそれを放つ。
「ク……ッ!?」
 彼の口から漏れる苦痛の吐息。そして、弾き飛ばされた彼の拳銃が甲板の床に落下する乾いた音。
 僕はその一瞬に生じた隙を逃さず、身を翻らせると彼との間合いを取った。

「指弾……! 決闘開始の合図に使ったコインを指で弾いたのか」
 敵は些か驚いたらしい。ま、珍しい技だからねえ。僕も使ったのは久しぶりだ。
「そうか。僕の作戦を最初から読んでいたんだな、碇シンジ君。弾丸を再装填する瞬間を狙われることを予め計算に入れ、君はコインが落ちたこの場所に戻り、ワザと背後に隙を作った。そして、指弾での形勢の逆転を狙っていた。」
 そう分析しつつも、渚カヲルは油断無く僕との間合いを計っている。
「流石だよ、シンジ君。僕が世界最強と認めた兵士だけのことはある。」
 そういう君も、頭の回転の早さは相変わらずだよ。カヲル君。
 二人は正面から対峙する。今、渚カヲルの手に武器は無い。彼が取り落とした銃は、三メートルほど離れた床の上に落ちたままだ。
 対して、僕の手にはスマイソンがまだ握られているが、弾は一発も残っていない。彼が床から銃を拾い上げるのが早いか、それとも僕の再装填が早いか。スピード勝負だ。

「何故だ。何故それほどの腕がありながら、君は一線から退いた?」
 彼は銀色の柳眉を顰める。その深紅の瞳は、僕を射抜くように真っ直ぐにこちらに向けられていた。
「傭兵を続けていれば、世界の頂点を目指すことすら夢ではなかった筈。」
「傭兵の頂点を極めるだけが人生じゃないさ。」
「では、君は何の頂点を極めようとしているんだい?」
「さあね。……強いて言うなら、一般庶民の頂点かな。僕は、特別な存在になりたいと思ったことはない。君と違って、グータラに日々を送ることができればそれでいいのさ。世界最強なんて、面倒なだけだ。」
「誰よりも厳しくその生を駆け抜ける――、戦士としての誇りが君には無いのか。」
 渚カヲルは、その深紅の瞳を鋭く細める。
「兵士としての生き方も悪くはない。確かに戦場で生きている時、人は最もその生を実感し充実していられる。でも、他の生き甲斐だって人間にはあるんだよ。君も一度戦場を離れてみるべきだ。今までとは違った世界が見えてくる。」
「……悪いが逃げ口上にしか聞こえないな、シンジ君。」
「それが君の世界の限界なのさ、カヲル君。」
 ぼくのその言葉に、彼は唇の端を吊り上げて見せた。そして哀れむように言う。
「兵士としての自分に底を見た。それこそ君の限界なのではないのかい?」

「言っただろう。ぼくは労働を幸せだと喜ぶスウェーデン人とは違う。根っからの自堕落人間なのさ。そんなに働きたいなら働けば良い。戦いたいなら戦えば良い。その人たちに任せるよ。ぼくの分まで遠慮無くやってくれて結構さ。戦いたい人が戦い、働きたい人が働く。ぼくはグータラがいいからゴロゴロしてる。それでいいじゃないか。」
「フッ。」彼は笑った。「相変わらず分からない男さ、君は。」
「生きる世界と、価値観が違い過ぎるんだよ。僕たちは。」
「だが、追いかけた女は同じだった――。」
「そうだね」
 そう言うしかなかった。他に、どんな言葉があったというんだろう。
 考え方も、性格も、生き方さえも違ったぼくらだというのに、好きになったのはアスカ・ラングレーという共通した女性だった。
 結局、今ぼくらがこうして命を賭して戦うことになったのも、その皮肉な結果があったからに他ならない。一人の女を巡って、命懸けの戦いに挑む。なんとも、ぼくには似合わない話だよ。本当に。
 どうして、こんなことになっちゃったんだろう――。

「碇シンジ!」
 一瞬、思考に没頭していたのが仇をなした。その隙を逃さず、カヲル君が神速で間合いを詰めてくる。得物を失ったため、肉弾戦に持ち込むつもりなのだ。
「僕は、君が憎い!」
「く――っ!」
 反応に遅れをとってしまったから、スマイソンに弾丸を一発装填するだけで限界。撃つモーションまでは持っていけなかった。
 素早く思考を切り替えて、繰り出されてくる鋭い拳の連打を捌くのに専念する。
「君が消えた後、僕とアスカは二人残された。」
 唸りを上げて襲いくる強烈な右のボディ・ブロウ。何とか腕を十字に組み合わせてガードするが、その威力を殺しきれない。衝撃は僕の腕に痺れを招き、結果、スマイソンを取り落とすことになってしまった。
「僕はアスカを自分のものにできると思った。だが、それは違った――!」
 鞭のように撓った左足が、僕の側頭部を目掛けて飛んでくる。カミソリのような切れ味だ。この間合いでは躱しきれない。右腕で何とか防ぐが、鉛のように重たい衝撃が伝わってきた。

「彼女の心の中には、碇シンジ! 常に君の存在があった!」
「チッ!」
 体格は彼の方が若干だが上回っている。技術は互角だが、パワーでは1歩譲るわけだ。
 怒涛の連続攻撃をなんとか防ぎ切るものの、ガードの腕には着実にダメージが蓄積されていった。
「君は全てにケリを着けたつもりでも、僕にとっては何も終わってなどいなかった。そうだ。僕らの決着はまだついてはいない。君か僕か、どちらかが真の意味でアスカの心から消え去らない限り、この戦いは終わらない。エンドレス・デュエルなんだ!」
「無茶を――」連続攻撃を凌ぎ切った瞬間、「言うなッ!」
 僕は渾身の拳を繰り出した。
 酸素を取り入れる関係上、連続攻撃には限界が出てくる。息継ぎをする瞬間、隙が生じるのだ。その一瞬こそが、反撃開始の絶好の機会となる。
「少しはアスカの気持ちを考えたらどうなんだ! 奪うだけが愛じゃないだろう!」
「ならば、君のように逃げ出すことが愛だというのか!?」
 僕の右の拳が、彼の頬を捉える。同時に、カウンターのミドルキックが僕の腹部を抉った。
「グゥッ!」
「カハッ!」
 両者、一瞬仰け反るが、その反動すら利用して再び打ち合う。技量は完全に互角だった。

「アスカを知らぬわけでもあるまいし! 彼女は人一倍寂しがり屋なんだ。そんな彼女が、家族のように共に暮らしてきた人間のことを、その心から消せる筈などないだろう! たとえどちらか片方を選んだとしても、彼女の中にはどちらの男も掛替えの無い絆の一部として残る筈だ」
「僕はそんな絆すら塗りつぶしてしまえる程の幸福を、アスカに与えてみせる!」
「アスカはそれを望んでいない!」
 地を這うような低い弾道の突き。ガードの隙間を潜り抜けて、その渾身の一撃を鍛えられた腹部に叩き込む。だが、相手もタダでは返してくれない。その腕を掴まれて、飛び付き腕ひしぎの体勢に持ち込まれる。寝技に誘い込んでの、関節技だ。
 極められたら終わり。それを二人とも良く理解しているから、グラウンドでの上の取り合いは壮絶なものとなる。寝技の勝負では、相手に跨るようにして上になった方が、絶対的優位に立つのだ。その時点で勝負が決すると言っても良い。
 組み合いながら、僕らは甲板を転がり回った。激しく揉み合う過程で、両者の上下は目まぐるしく入れ替わっていく。ここでも両者の技量は均衡していた。
 結局勝負はつかず、僕らは互いに距離を取ると正面から対峙したまま立ち上がった。

「ハァッ……ハアッ……」
 両者とも、肩を激しく波打たせるほど呼吸を乱している。
 僕はと言えば、もう当に限界を超えていた。撃たれた肩の感覚は既になく、痛みすら感じない。今、碇シンジを支えているのは間違いなく気力だけだ。
 ――結局、この争いの発端はどこにあったのだろう。それはある意味で、僕ら三人の出会いの瞬間から歴然として存在したのかもしれない。だとしたら、このデュエルは最初から宿命づけられていたことになる。
 約二〇年前、僕はアスカと出会い、そして後にふたりは渚カヲルと出会った。やがて互いの実力を認め合うまでになった三人は、数々の死地を潜り抜け様々な経験を共にするうち、その信頼関係を強めていった。その過程で、信頼関係とはまた違う感情が若い僕らの中に芽生えたとして――誰がそれを咎められるだろう。
 結果として、それは至極当然のものであったのかもしれない。もし神のような傍観者が僕ら三人の関係を観察していたのなら、その成り行きを高い確率で予測し得ただろう。碇シンジと渚カヲルは尊敬し合い、認め合いながらも、同時にアスカ・ラングレーへの思慕の念を以って対立するようになった――まるでそうなることが、定めであったかのように。

 アスカの胸中も、きっと複雑だったことだろう。戦場で育まれた愛憎は、きっとありふれた一〇代の少年少女が抱き得るそれとは比較にならないほど歪なものであっただろうから。
 最終的に僕は全てから逃げ出す選択をとった。対立の図式を崩すためには、それを支える三柱のうちの一つが倒れてしまえば良い。そう考えた僕は、自ら倒れる道を選んだ。そして残った二つの柱――アスカ・ラングレーと渚カヲルが残ったものを支え、そしてより大きく育んでいけば良いと。
 だけど心のどこかで分かっていた。そして、もしかすると望んでさえいたのかもしれない。事はそんなに単純なものではなかった。禍根は残り、いま再び僕らは激突している。
 また、アスカ・ラングレーを賭けて。

「何故、こうまでして決着に拘るんだ。カヲル君。」
 慎重に間合いを計りつつ、切れた唇から流れる鮮血を拭う。
 確かに考え方や価値観に相違はあった。だが、分かり合えないほどその溝は深くなかった筈だ。まして、こうして互いの命を奪い合うまでに至ることなく、もっと違う解決の方法を模索できる問題だった筈。
 なのになぜ同じことを繰り返す。どうして僕らは過ちだと知りながらその道を進んでしまうのだろう。誰もこんな結末など、望んではいないのに。
「君も気付いているんだろう、カヲル君。結局、このデュエルは何の解決も齎すことはないって。」
「シンジ君。君には分からないさ。ロジックじゃない。人間、最後は感情で判断するということだよ。」
「でも君は――」
「そうさ、僕は死ぬ。たとえこの決闘で君に勝利したとしても、結局は近いうちに死ぬ。だからと言ってこの決闘に意味がないかと言えばそうでもない。君には無くても、僕には充分過ぎる意義があるんだよ、このデュエルには。」
「カヲル君……」
「フフ。全く、何の因果か。どうしてこんなことになってしまったのだろうね。誰も、何の罪も犯していないというのに。」
 渚カヲルは、背後を親指で指しながら言った。
 彼の後ろには、弾丸が一発だけ込められた僕のスマイソンが――そして僕の後ろには、彼の得物であるグロック17が転がっている。
 距離は、ほとんど変わらない。早く自分の銃を手に取り、そしてアクションに持っていった方が勝ちだ。互いの銃の腕は良く知っている。勝負は、1発で確実につくだろう。

「そろそろ決着をつけよう。」
「……ああ。」
 次の瞬間だった。遠くから女性の駆け音が聞こえてきて、この船首デッキに続く扉が開け放たれる。
「シンジ! カヲル! 駄目――ッ!」
 奇しくも、それが最後の合図となった。
「碇シンジッ!」
「オオッ!」
 僕と彼は同時に自分の拳銃に向かって走り出す。
 そして全く同じタイミングで銃を握り、構えた。
 スマイソンのフロントサイトとリアサイトが、直線上で交差する。照準は寸分違わず渚カヲルの左胸。心臓の直上だ。相手のグロックも、既にこちらを捉えていた。勝負は、次の刹那で決まる。
 トリガーに指をかけ絞ろうとした瞬間、視界一杯にひらめく青いドレスが広がった。
「やめてェ――ッ」
 それは、人はこれほどまでに悲痛な声が出せるものなのかと思わせる、嗚咽交じりの叫びだった。

 アスカ……!

 両手を広げ、透明な涙の雫を纏いながら投げ出される華奢な体躯。金色の髪が風に踊る。
 今、僕らの眼前に三年前と寸分違わず同じ光景が広がっていた。向かい合って構えられた二つの銃口の前に、彼女は自ら身をさらし、その愚かしくも虚しい戦いを止めようとする。
 あの時、アスカは泣きながら何かを懇願するように僕を見つめていた。だけどそんな彼女の願いに応えることはできず、僕は一瞬の躊躇の後、トリガーを引いた。
 放たれた弾丸は、彼女がいつもそこに身につけていた銀製のウイングマークに当たった。僕の狙い通りに。――全て、狙い通りに。
 そして僕は彼女の前から去り、全てが終わったはずだった。
 なのに、また同じ事が目の前で繰り返されようとしている。三年前、彼女と親友のために良かれと思ってやったことが招いた結果が、これだ。


ゴォウ……ン!


 夜の洋上に浮かぶ豪華客船の甲板に、静寂を破ってその銃声は木霊した。
 たなびく硝煙。薄っすらと漂う火薬の匂い。
 躍り出たアスカの体が、ビクリと痙攣するように大きく跳ね上がった。
 それがゆっくりと背中から崩れ落ちていく。トサリという乾いた軽い音が甲板に響いた。
 視界が、ひらかれる。
 銃声の木霊がやんだ時、誰より衝撃を受け、誰より呆然としていたのは、弾丸を放った本人、渚カヲルだった。
 鍛え上げられた戦士の反応が、咄嗟にトリガーを引いてしまったのだ。撃とうと思って撃ったのではないだろう。ただ、身体が勝手に動いてしまったに過ぎない。
 だが時に、過ちだったというだけでは、済まされない出来事もある。

「あ、あぁ……」
 グロックを構えたまま、彼はヨロヨロと数歩後退した。その深紅の瞳が大きく見開かれる。
 口を半開きにした彼は、仰向けに力なく伏したアスカと、じわじわと甲板に広がっていく血溜まりを愕然とした表情のまま見つめていた。
 一瞬後、僕はその渚カヲルに定めた照準をそのままに、スマイソンのトリガーを絞った。
 重たい銃声と共に、.357マグナムがまっすぐに彼の胸部に突き刺さる。
 ――だが彼は、自分が撃たれたことも、それが致命傷となることもお構いなしに、ただアスカだけを見下ろしていた。
 そして最後まで彼女から視線を逸らさないまま、今まさに切り倒されようとしている巨木のように、ゆっくりと背中から地に崩れていった。

 静かだった。青く輝く月の夜に、ただ波の音が聞こえてくる。
 スマイソンを降ろし、目を閉じながら月を仰いだ。蒼白い月光をまぶたに受けて、大きく息を吸い込む。血と硝煙の香りが胸に満たされた。
 ――いつもそうだった。全てが片付いた戦場には、最後にいつもこんな虚しい沈黙が漂っていた。
 いつか世界が終わる瞬間も、こんなに全てが静かなんだろうか。
 出血と疲労で、目が霞み始めた。奇妙に重たく感じられるスマイソンを捨て、一歩ずつ歩を進める。
「こんな……」
 僕が傍らに立つと、渚カヲルは掠れる声で囁いた。
「僕が、アスカ……アスカを、撃ってしま、った。」
 そして彼は自分の胸の銃創に手を当て、付着した鮮血を眺める。
「僕が、この手で」

 ショックだろう。三年前の僕は、アスカが助かる可能性を計算して、胸のウイングマークを狙って恣意的に撃った。だけど彼は違う。本人にその気がないにも関わらず、むしろ意志に反して「撃ってしまった」のだ。この差は大きい。
 誰が許しても――たとえアスカ本人から許されたとしても、彼は自分を永遠に許すことが出来ないだろう。自分で自分が許せない。それは、この世でなにより辛いことだ。
 そんな彼を、僕はただ哀れむことしかできずにいた。
「そうか……」
 しばしの沈黙を挟み、彼は僕を見上げながら囁いた。
「この痛みに、あの時の君が、あんなに平然としていられた、はずが、ない。シンジ君。君は、やはりあの時……」
 そこで言葉を区切ると、皆まで語る必要のないことに気付いたか、彼は静かに微笑む。
「君が去った後も、アスカの心の中には常に君がいた。傍らには僕がいたというのにね……。僕は彼女の胸から君を消そうと努め、たが、それは叶わなかった……。もし選ぶことが許され、た、なら、アスカ・ラングレーは、渚カヲルではなく、碇、シンジを……ひとりの男として、選んだであろう、からだ。」
「カヲル君……」

 彼は目を細め、僕を見詰めた。何故かその表情が、僕には寂しげな微笑のように見えた。
「碇シンジ君。君の、勝ちだ。」
 その言葉に、僕は小さく首を左右した。
 ――たぶん、この闘いに勝ち負けはない。何故なら、裁定者であるひとりの女性がそれを望まないからだ。そのことにもう、彼も気が付いたはず。
「そう、だね……。その、通りだ。結局、彼女のことを、本当、に、理解できていたのは……君という、ことか。」
 言葉の最後は、もうほとんどが喉から空気が抜け出るような掠れた音でしかなかった。
 それを切っ掛けに、僕らは、その時が訪れようとしていることを同時に知る。
「さようなら、僕の友達。君がどう思っていたかは分からないけど、僕は君が大好きだったよ。」
 僕は言った。
「さらばだ、シンジ君。僕の生涯最大の友。唯一無二の理解者。」
 彼は目を閉じる。口元には、穏やかな微笑が浮かんでいた。
「君と闘い、君に敗れたことを誇りに思う」

 ――それが、渚カヲル最期の言葉だった。



to be continued...


■初出

FILE 19「指弾 Death before dishonor」2002年03月30日
FILE 20「決着 I like your smile & sweet voice」2003年03月22日

本作は上記の初出作品を加筆修正の上、著者が編集したものです。

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and Based upon and incorporating the GAINAX animation "EVANGELION".
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