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Partner 〜世界でいちばんたいせつなひと〜  シェイプシフター

 繊細なタッチと淡い色使いのCGが魅力的な恋愛ADV。CG以外の最大の特徴はヒロインと結ばれるまでと、結ばれた後の2部構成になっていることです。似たような構成のゲームとしてはアクティブのくすり指の教科書シリーズがありますが、ゲームの雰囲気は大分違います。

 ゲームの流れは、まず第一部は文化祭を挟んだ10日間で、毎日どの女の子と会話をするかを選択します。あとは通常の恋愛ADVと同じで何回かの会話の選択によりヒロインと結ばれたところで第一部が終了。スタッフロール後に第二部が開始。第二部は恋人同士になった後の後日談で、何回かの選択肢で純愛路線と鬼畜路線に分岐します。全体を通して選択肢の数は少なく、またその内容も難しくないため、ゲーム性および難易度はかなり低いです。シナリオクリアのためには一人の女の子とだけ話していれば良いわけですし、しかもボイスではないため読むのが早ければヒロイン一人につき30分ほどでクリアできます。ヒロインが5人なのでトータル3時間かからないといったところでしょうか。

 ということで問題となるのがシナリオの出来ですが、はっきりいって鬼畜も純愛も薄いです。強いて言うならば鬼畜の方が濃いです。
 まずシナリオは完全に主人公視点で、ほとんどヒロイン達との会話のみで構成されています。そのためヒロインはもちろんのこと、主人公の内面描写などはほとんどなく、登場人物の心の動きの機微を楽しむようなものではありません。会話自体は楽しいし、よくできてるんですけどね。

 で、最大の問題は主人公のやる気のなさです。この主人公、決して嫌な奴というわけではありません。砕けた感じで生徒とも友達感覚で話せる親しみやすい教師ですが、教師としてのけじめというか大人としての良識をもっており、生徒の悩みや問題点に対しても常識的な正論をはきます。教師としてはまずまずな人物ではないでしょうか。こういう人物でルックスもまあまあなので女の子も愛に燃え上がっちゃう訳ですが、それに対する主人公の対応は「来るものは拒まない」。「キスして」と言われればしちゃうし、「抱いて」といわれれば抱いちゃう(^^;

 主人公も女の子のことが嫌いなわけではないのしょうが、それまでの経緯を見ても好意はあっても恋愛感情はないというか、悪く言えば体目当てか? 第2部に入って肉体関係は続いていても主人公の心はどことなくさめています。対するヒロインは主人公を信頼して変わらぬ愛情を持っています。そういう状態なので当然二人の心の間にすれ違いが生じるわけで、このときに主人公が相手の気持ちを尊重するか、否定するかで純愛、鬼畜の分岐が発生するわけです。でも相手の気持ちを尊重してももともと主人公は盛り上がりに欠けているので現状維持といった感じで、1年後にまだつき合っているかどうかは不明。どちらかというと歪んではいるものの肉体関係を軸にした鬼畜な関係の方が将来的には長続きしそうです。

 ということでこのゲームは鬼畜系の方が面白みがありますが、純愛のレベルが低いため鬼畜とのギャップが小さく、結果的に鬼畜度も低くなっています。Hシーンにしてもテキストがあっさりしていますが、HCGについては繊細で綺麗な絵柄とのギャップにより実用度は結構あると思います。
 これでもう少しだけCG枚数が多ければ、綺麗でちょっと鬼畜なCGをお手軽に楽しみたい人にはお勧めできるんですけどね。

 最近は一時期の純愛一直線から一転して、こういう鬼畜・純愛が混在したゲームが増えてきていますが、結論としては純愛部分がちゃんとしていないと鬼畜も盛り上がらないということですね(^^; (99.11.5)

 その後、とくにプレイしてはいないのですが、Partnerを最近のフォークソング、HUSHABY BABYなどの日常会話をメインにしたゲームと同列として考えると、だらだらした日常性に「キレる」という非日常性をプラスしたというのは結構おもしろい試みではないかと思ったりして。ぬるま湯のような恋愛か、鬼畜ではあるが刺激のある恋愛か。
 スタッフはヒロイン達への「萌え」をメインに考えていたようだけど、なんとなくわがままに愛を要求するヒロインたちは「萌え」よりも「キレ」の対象な気が私はします。あと愛の理想と現実というか、純愛モードでも主人公になんとなく妥協というものが求められて、結構リアルな話なのかもしれませんね、これ。

 そんなわけで他人にはあまり薦められないものの、個人的にはちょっとだけ評価が上昇。あの絵であのHってのは捨てがたいものがあるしね。(99.12.11)

評価:72(愛に理想を求めなきゃ大丈夫)

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