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終末の過ごし方 アボガドパワーズ

 はっきりいってこの春一番の期待作。シナリオの大槻氏の代表作「黒の断章」とか「Esの方程式」とかは事情により未プレイなんですが、評判を聞く限りではかなり期待できそう。小池さんの描くグラフィックも女性らしい繊細なタッチでもろに好み。人物設定も少女漫画的かなぁ〜。なによりも全員メガネなのが素晴らしいっす!私は男も女もメガネが大好きなのだっ!!

 で、それはともかくとして一番興味があるのが「人類滅亡まで1週間の日常」っていう設定。自暴自棄になるでもなく、世界を救うでもなく、ただ今まで通りの日常を過ごす主人公達。限られた時間をいかに過ごすか?私、こういう非日常の中の日常っていうのに弱いんですよ〜。ONEもそういう話だったしねぇ〜。
とにかくツボをつきまくりの作品です。4月9日が楽しみ〜〜(99.2.10)

 

ということでついに買いました(^^)

 ト書きと台詞だけで内面描写を極力除いた台本形式のスクリプトノベルという新しい表現法をとり、人類の終末を直前にした人々の日常を描いた異色作。

  死ぬことが判っていて何もしないのは自殺か?

   終末を目前にして日常を過ごすのは自分を変えられないから

    でも死んでから後悔することがないように

     明日死ぬ運命だとしても今を精一杯生きる

 物語は静かに、乾いて、けだるく、そしてとりとめもなく、でも冬の日の日向のように暖かく、だけどもの悲しく、3組の男女(+3人)の最後の1週間を描いている。3組の物語はほとんど独立しており、それぞれの物語が平行して進みます。メインの耕野知裕に関しては途中の選択肢で4人のヒロインの中から一人を選ぶことになりますが、重久と多弘についてはヒロインがそれぞれ固定されています。

 メインスタッフが4人という少数精鋭で望んだ本作。CGも音楽もそれぞれ一人の人間が担当しているため作品全体に統一感があります。しかし少数精鋭が裏目に出たか全体的にボリュームが不足しており、小説というよりも短編集、雰囲気的には装丁や挿し絵が綺麗な詩編といった感じになっています。それはそれでいいのですけど、定価が7800円ってのはこのボリュームからすると高く感じるかな?素直にデジタルノベルと割り切って定価5000円、実売4000円くらいに設定してあれば納得がいくのですが。

 シナリオについては多弘や重久はとても良いと思います。特にヒロインの千絵子と留希先生はお気に入り。ただメインキャラの知裕については違和感を感じるくらいモテモテで、またその行動も無個性な恋愛ゲー主人公的になっており不満が残ります。キャラ設定がいろいろと決められているのに、それが生かされていないのも残念。
 また、多弘や重久のシナリオについては選択肢が1つしか存在せず、対照的に知裕に多くの選択肢が存在するため、知裕の全てのシナリオを読もうとすると何度も同じ多弘や重久のシナリオも読むことになり、いくらいい話しでも苦痛になります。どうせなら登場人物の男女比を同じにして同時進行する6つの物語にでもすれば良かったのではないでしょうか。まぁ、さすがに同時に6個だとつらいので、初めの選択肢でそのうちの3つくらいを進めていくって感じにするとかね。

 それから前述の通りテキストはト書きと台詞で構成されているのですが、内面描写がないぶん台詞が説明的というか理屈っぽくなっています。私としては、理屈を語らないで短い台詞や微妙な行動で登場人物の内面を描いて欲しかったです。スクリプトノベルという手法もあまり成功とはいえなかったみたい。大槻さんの作品って実は他のをプレイしたことがないんだけど、みんなこんな感じなのかな?

最後に。
この作品はいわゆる「泣ける物語」ではありません。心をゆさぶるような感動もありません。だから私も淡々と物語をよみました(あまり読みやすいテキストではなかったけど)。
でも最後のフレーズを見たとき目頭が熱くなるものを感じました。記憶に残る名フレーズです。たぶん、このフレーズを出すための物語だったんでしょう。

結論としては名作、傑作ではないものの良質な佳作といったところですかね。(99.4.10)

評価:70

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