風祭文庫・モラン変身の館






「由香里の変身」
(後編)


作・風祭玲

Vol.092





ジリジリジリ………

灼熱の太陽が照りつけ、

陽炎が揺らめくサバンナ

あれから1年後…

マサイ族となり僕の前から姿を消した

由香里の姿を探してサバンナを走っていた。

「ココかなぁ……?」

彼女が姿を消す前、

唯一の手がかりとして残した絵と現実の風景とを比較しながら、

とあるマサイ村のそばに僕は来た。

「今日はこのマサイ村で終わりにしよう」

僕はそう呟くと車から降りた。


村に入ると、たちまち子供達が寄ってくる。

そして、遠巻きに村の大人達が僕の様子を眺めていたが、

やがて、色々なモノを売り始めた。

僕はそんな彼らを相手を程々にしながら、

由香里の姿を探しはじめた。

しかし、村人のすべてが彼女に見え、

また、違うようにも見えて、

ここでも、探すのに難儀した。

『どうしました』

突然声を掛けられると

と一人の老人が僕のそばに近寄ってきた。

『実は人捜しをね…』

マサイの言葉で答えると、

『この村にはマサイしかいませんよ』

と老人は答えるが、

『あぁ…実はあるマサイを一人を探しているんだ』

と僕は答える。

『ほぅ、珍しいですな、マサイを探しているなんて…

 名前はなんて言うのかね』

老人が尋ねてくると、

『ユカリっていうんだけど…

 いや、違う名前かも知れないかもな』

そう僕が答えると、

『?』

老人は不思議そうな顔をする。

そのとき、僕は誰からかの視線を感じた。

「!」

思わず振り向くと、遠巻きに群がっている村人達から少し離れたところで、

僕の様子をじっと見ている若い男がいるのを見つけた。

「由香里?」

しかし、その男は黒檀色の引き締まった裸体に、

腰に朱染めの布・シュカを小さく巻き、

数本のトンボ球で出来た紐・マシパイを下げただけの簡素な身なりで、

髪をきれいに剃り落とした坊主頭と、

首から顔にかけてダチョウの羽で作った飾りをつけていた。

「……由香里じゃないみたいだな…」

そう彼の顔つきや体つきは、

あの日の夜の彼女の体を彷彿させていた。

僕がじっと彼の様子をみていることに気づいた老人は、

『あぁ、あいつはわしの息子で、

 モランになるために試練を受けている若造ですよ…

 モランになるためにはあぁして髪を剃り落とし、

 そして、ダチョウの羽で作った飾りをつけるんだよ…』

と親切に教えてくれた。

そのあと、老人は彼について何かを言ったのだが、

村人達の声にかき消されて聞こえなかった。



「…そうか、彼はの爺さんの息子さんか」

僕はそうつぶやくと再び由香里を探しはじめた。

しかし、妙に彼の存在も気になっていた。

それから1時間ほど僕はマサイ村に滞在して調べてみたが、

結局、由香里につながるモノは見つからず、

そこを引き上げることにした。

そして村を出てクルマに戻ろうとしたとき。

後ろから

「…さん

 俊彦さん」

と小さく僕の名を呼んだ声が聞こえた。

「えっ」

振り向くと僕の後ろにあの青年が立っていた。

『僕を呼んだのはキミか?』

と青年に訊ねると、

彼は小さく頷き、そして、

「あなた…

 わたしです。由加里です」

と彼は自分の胸に手を置いてそう告げた。

「えっ?、君が…由香里だって…?」

僕は彼の意外な言葉にその場に立ちつくした。

「……」

彼は僕の驚いている姿をみると視線を足下に落とし、

「嬉しい…あたしを追いかけてきてくれたんですね」

と続けた…

僕は、一瞬信じられなかったが思わず、

「本当に由加里…なのか?」

と聞き返した。

すると、彼はコクリと頷くと、

「判って頂けましたか?」

と言ったが、しかし僕はどうして信じることが出来ず、

「そっそんなこと言われても

 だってサバンナに行ったときといまとは全然違うじゃないか

 さらに変身をしたのか?

 どう見ても他のマサイとは見分けがつかないぞ」

と矢継ぎ早に言った。

「……」

それに対して彼は何かを言おうとしたが、

『アボクっ』

と言う叫び声と共にマサイ村より別の男が出て来ると彼に向かって話しかけてきた。

すると彼は僕に走り寄り、

「あなたの宿泊先はどこですか?」

と尋ねてきた。

僕は思わず、

「××××のコテージ」

と告げると、

「部屋は何処ですか?」

と聞いてきた、

僕は彼に部屋の場所を教えると、

「わかりました

 じゃぁ、日が暮れたらそちらへ向かいます。

 そこで待っててください

 詳しい話はそこで…」

と言うと村へと戻っていった。

僕は呆気に取られながら、

走り去っていく彼の後ろ姿を眺めていた。



コテージに戻ってから僕はあのマサイの青年のことをずっと考えていた。

本当に由加里なのか?

確かに日本語を喋ったし、

僕のことを”俊彦”と呼んだ。

でも、そんなに姿って変わるのか?

それに、あの爺さんは”自分の息子”と僕に紹介した。

一体、どうなっているんだ?

まさに疑問だらけだった。



日が完全に落ち、

あたりが闇に包まれてからしばらくして

コツン

部屋の窓を叩く音がした。

「来たか」

僕は飛び起きると窓を開けた、

が、何も見えず周囲を見回すと

闇の中にぼんやりした朱色のモノが浮かんで見えた。

ザッザッザッ

やがてそれは僕の方に近づくと、

闇の中から浮き上がるように人の姿がでてきた、

間違いなく昼間の彼だ。

それにしても大したモノだ、

あのマサイ村からこのコテージまで軽く20km以上はあるのだが、

でも彼は来た。

マサイの青年は僕のところにくると、

「ごめんなさい、あなた…待ちました?」

と彼が聞いてきたので、

「いや、そうでもないよ」

と言うと窓を開け彼を招き入れた。

彼は羽根飾りが引っかからないように、

大きく首を振って部屋の中に入ってきた。

部屋の明かりが彼の身体を照らし出す。

無駄なく鍛えられた体の筋肉が美しい。

「ふぅ…」

一息をついている彼に座るように促すと、

彼は床に座った。

「由香里?」

半分訊ねるように僕が言うと、

彼は、しばらく呆気に取られた後。

クスッ

と小さく笑うと、

「そうね、あたし…

 だいぶ変わっちゃったもんね」

と自分の身体を見つめながら言った。

「やっぱり、由香里なのか」

「えぇ、こんな姿になっちゃったけど、

 あたしです。由香里です」

彼はそう答えた。

「なんで?

 変身はアレで終わりじゃなかったのか?」

僕が訊ねると、

彼(由香里)はここに来てからのことを僕に話し始めた。



夢の中のマサイに連れてこられて

あのマサイ村に住むようになってから

しばらく間は僕のことが忘れられなかったことや、

あのマサイの老人の養子にされたこと、

そして、本当の勇者(モラン)になるために

儀式で髪を剃られ、衣服をマサイの衣装であるシュカに代えさせられたこと、

さらに、マサイの秘術で身体をその老人の息子とほぼ姿にされたことなど、

この1年間に起きたコトを矢次早にしゃべり出した。

僕はひたすら聞き役の回っていた。

やがて、すべて話し終わると、

「そうか、1年の間にも色々あったんだなぁ」

っと彼(由香里)の顔を撫でながら答える。

「俊彦さんは、どうしてココに?」

今度は彼(由香里)が僕に尋ねてきた。

「一度、もぅ一度君に会いたくてここに来た。

 そして、僕の気持ちをキミに伝えたくて…ね」

と言うと彼(由香里)は、

「お願い、僕のことは忘れて………」

「え?」

「あたしは、もぅ、マサイ…なんです。

 こんな身体で帰ったところで

 向こうでは暮らしていけないし…

 それに…」

と言ったところで、僕は彼(由香里)を抱きしめると

「僕はお前が忘れられない」

と呟くと、

「だめっ

 あたし…ここでマサイとして生きて行こうと決心したの」

そう言うと、僕を突き飛ばした。

「さよなら…あなた、嬉しかったわ」

「待て…」

僕は窓を開けようとした彼(由香里)の手を思わず握ると

「たとえキミがどんな姿になっても

 僕はいっこうに構わないっ

 いま僕に必要なのはキミなんだ」

と言うと再び抱きしめた。

カラン…

彼女の首に掛かるトンボ球で出来た紐・マシパイが微かに音を立てる中、

「あなた……」

由香里はそう呟きながらそっと僕の首に手を廻した。

「由香里…」

それに応えるように僕は自分の顔を彼女の唇に近づけると唇を合わせる。

「うれしい…」

そしてそのまま僕と由香里はベッドの上に倒れ込むと、

自分の手を彼女の胸に持っていった。

キュッ

以前の彼女の性感帯だった乳首をつまむ。

「んっ…」

一瞬彼女の表情が変わる、

良かった、まだ感じるようだ、

唇を離すと、改めて由香里の体を眺めた。

ここにきてから鍛えられたのか、

長く伸びた細い手足にはしなやかそうな筋肉が張り、

広い肩幅、

細い腰の男の体に、

ゴツゴツとした筋肉が盛り上がっていた。

そして、それを包み込む体脂肪の薄い黒く輝く肌…

まさしく勇者の風格があった。

「あぁん、そんなに見つめないで…

 恥ずかしいわ…」

完全にマサイとなった自分の体を僕に見られて恥ずかしいのか、

由香里はベッドの上で小さくなった。

「そんなことはないよ、

 由香里…きれいだよ」

僕はそう言うと、

再び彼女の上に乗った。

そして、今度は彼女の首筋にキスをした。

「あん…」

由香里は喘ぎ声をあげる。

僕は彼女の反応を見ながら彼女の胸を移動して、

小さく萎縮してしまった乳首を口に含んだ。

「!!っ

 あなた…だっ、だめ…そこは」

いやがる由香里に

「なんだ、まだ感じるのかココ」

と言いながら僕は筋肉が盛り上がった胸に小さくついている

乳首をしゃぶり続けた。

っく、っく…

彼女の喘ぎ声を聞きながら、

朱染めの腰布に手を回すと、

腰布の下で彼女の逸物が大きく鎌首をもたげていた。

「由香里…、

 あんなに小さかったお前のクリがこんなに大きくなっているぞ」

そう言いながら腰布の上から僕がソレをさすると。

「やめて…あなた…そこはやめて」

由香里は両手で僕の行為を阻止しようとしたが、

僕はお構いなしに彼女の腰布をたくし上げた。

ビン!!

黒光りしたたくましい彼女のペニスが顔を出す。

「!

 っそうか、由香里、お前割礼を受けたのか…」

僕が由香里のペニスにリング状の傷口を見つけると

「モランになるときに受けたの…

 あなたには見られたくなかったわ」

と彼女言う。

「そうか…」

僕はそのままかがみ込むとそのペニスを口に含んだ。

「だっ駄目ですっ、あなたっ、そこは汚い…」

由香里は僕を引き離そうとしたが僕は離さなかった。

ジュブジュブ…

みだらな音が部屋に響く。

「あぁ〜〜っ」

彼女の喘ぎ声があがる。

「だめよ、だめ、出ちゃう…

 早く、離れて…」

腰を痙攣しながら由香里が叫んだ瞬間

「あぁぁぁぁぁぁ!!」

ジュッ

彼女の声を同時にペニスから白い液が吹きあがった。

うわっ

直前で離れた僕にの身体に彼女が吹き上げた精液がかかる…



「はぁはぁはぁ…

 あぁ…遅かった…」

自分が放出した精液が僕にかかったのを見て由香里は呟いた。

「遅かったって?」

僕がかかった精液をふき取りながら彼女に訊ねると、

由香里は急にまじめな顔になって、

「あなた…

 いえ、俊彦さん…

 あたしの精を浴びしまった以上

 もぅスグ、マサイの花嫁になってしまいます」

と告げた。

「え?、花嫁?、ぼくが?」

彼女の意外な言葉に聞き返すと、

コクン

由香里は頷いた。そして

「あたしには、

 あたしの精を受けた者を花嫁に迎える呪いが掛かっているんです。

 だから、離してって言ったのに…」

由香里はそう言うと僕から目をそらした。

「そんな…」

彼女の説明が信じられない僕に、

「あなた…自分の胸を見てください。

 ほらオッパイがふくらみ始めていますよ」

由香里に指摘されて見た僕の胸は

乳首が大きくなり、

そしてムクムクと乳房がふくらみ始めていた。



それから数ヶ月後…

僕は剃髪したマサイの女としてマサイ女の衣装・カンガに身を包み

このマサイ村で暮らしている。

意外にもココには様々な掟があることを後で知ったのだが

でも、再び由香里と一緒に暮らすことができて僕は幸せだ。

そうそう、実は僕のお腹の中にはモランとなった由香里の子を宿している。

ピクッ

「あっ…

 赤ちゃんが…動いた」

僕の子宮の中で動く新しい命を感じながら…



おわり


← 前編へ