自動車用内燃機関は生き残れるか
〜環境問題と内燃機関の未来〜
第8章 総括 〜自動車業界のこれから〜(1) 発展の行き詰まり自動車界は今、熟成期に入ったと言われている。悪く言えば、行き詰まっているということだ。確かに、エンジンやトランスミッション、サスペンションなど技術的な部分でも、インテリアやエクステリアなどのデザイン的な部分でも、 かつての様に新車が出る毎に見られた目新しいことが無くなってきている。 没個性的とでも言おうか。特定のユーザーを狙った個性的なクルマよりも、誰にでも受け入れられるクルマを作るようになってしまったのだ。 この不況の折、ただでさえ売れないのに、個性的なクルマを作っても売れる数は高がしれている。結局はそういうことなのだろう。 だが、そう言うメーカー側の体制が、魅力的なクルマ(個性は別として)までも失わせてしまい、さらにクルマを売れなくしているのではないだろうか。 不況のせいにばかりはできないのだ。 メーカーは、とりあえず無難な線のクルマを作り、売り出した後、ユーザーや評論家、自動車雑誌各社などの声を受けてから、 マイナーチェンジなどでその時期のニーズに合わせたクルマに仕上げていく。こういう売り方が、最近特に目に付く。 某社が数年前からやりだしたエアロRVなどが良い例だ。愚かなことに国内トップのメーカーでさえ、それに追従してしまう始末だ。 確かに販売戦略上は大成功を収めているが、どうもデザイン上の“あら”を隠しているとしか思えない。 また、それとは少し主旨が違うが、メーカーがチューニングを施したいわゆるエボリューションモデルも、最近は売るための手段になっているような感がある。 元々は、レース出場のために決められた台数以上を生産し、市販しなければならないという車両規定を満たすために始められたことなのだが…。 この流れは、当分続くだろう。 |
(2) 約束された変革少なくとも、現在のクルマからでは大改革など起きるはずは無い。 特にエンジンに関しては、基礎は既に固まっており、これからは燃費の向上、排気ガスの浄化などといった “煮詰め”くらいしか残されていない。ハイブリッドシステムにしても、既に技術が確立されていたエンジンとモーターを組み合わせただけのものであり、変革とは程遠い。 しかも、これから訪れるであろう変革は、今までとは違う。 これまでは、ガソリンまたは軽油を燃料としたエンジンをプラットフォームに、改良を重ねてきた。言わば、“進化”である。 だが、次に訪れる変革は、“新生”である。しかも、それはいつか必ずやってくる約束された変革である。 その変革とは、既に承知のとおり、これまで述べてきた次世代エネルギーへの転換のことである。 次世代エネルギー、特に電気に至っては、これまでのエンジンの技術や知識など全く通用しない。 例え、水素やメタノールなどを使用したエンジンでも、ガソリンなどとは性状が違うため、視点を多少なりとも変えざるを得ない。 既存の技術を全て流用できないものに変わってしまう。生まれ変わった。それ即ち、新生である。 この新生は、自動車界に再び活気を取り戻すと考えられる。 これまでの様に、何十年も右肩上がりの発展を続けるのは無理かもしれないが、少なくとも十数年は忙しくなるだろう。 何故なら、今のガソリンや軽油にどっぷりと浸かった世界を、一瞬にして別のエネルギーへと転換することは不可能だからだ。少なくとも、年単位の期間は必要となるはずである。 だが、この新生も、既に何回か述べているとおり、化石燃料が枯渇する前になされなければ、何の意味も無い。 次世代エネルギーを使用する動力の開発が困難なのはわかる。 だがそれは、今まで化石燃料に頼り過ぎ、同時に自然を破壊し、さらにそれらを知りながら見て見ぬ振りをしてきた我々人間たちに与えられた罪と考え、 一刻も早い実用化を望む次第である。 |
資料−8.1 主な次世代エネルギー(石油系を除く)の問題点
エネルギー名 | 実用化への問題点 | 実用化・普及の可能性 |
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電気 | 電池(容量、重量、サイズ、コスト) 航続距離、充電設備 |
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電気&エンジン (ハイブリッド) |
特に無し 強いて言えば、システムのコスト |
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太陽電池 | 発電量(絶対的な発電量が少な過ぎる) |
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燃料電池 | 燃料の貯蔵方法と供給体制 |
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水素 | 貯蔵方法、供給体制、燃焼制御 |
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メタノール エタノール |
腐食対策、精製方法、供給体制 |
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エーテル | 貯蔵方法、供給体制、精製方法 |
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合成燃料 | 精製方法 |
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*「エコカーは未来を救えるか」(三崎浩士・ダイヤモンド社)より