街灯の下

チカチカ光る街灯の下に、真っ黒なローブを着たヒトが座っていた。
その隣に、真っ黒なネコが座ってきた。
「君は誰か待ってるのかい?」 ヒトはネコに話しかける。
「なーご」 ネコはヒトの方を向かず、一回だけ鳴いた。
「僕はね。友達を待ってるんだ」
ネコの言葉がわかったのかわかってないのか、ヒトは話し始める。
「とても大切な友達。もう久しく会えなかったんだけど、やっとまた会えるんだ」
ヒトは嬉しそうに言う。ネコはただ前を向いていた。そして
「みー」 ネコはもう一回だけ鳴いた。ヒトはネコが見てるものを見る。
その先には、大事そうに猫を抱き上げている人がいた。
そして目の前から去って行った。
時間が刻一刻と過ぎていく。ヒトが立ち上がる。
「今日はもう来ないみたいだ。僕はもう行くよ」
悲しそうにそう言って、ヒトは街灯に背を向けて歩いていく。
「ニャー」
しばらく歩くと後ろからネコの鳴き声がした。
「君も帰るのかい?」 「なー」
早足なヒトにネコは頑張って追いつこうとする。
ヒトは足を止まらせ、ふっと笑う。
「しょうがないな」
そう言ってネコを抱き上げた。
「ニャー」
ネコは嬉しそうに鳴いた。



翌日もヒトとネコは街灯の下にいた。
ヒトは来ない友人を待って、ネコは来ない友人を待つ主人を待って。


Her side.........

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