ニカド・ニッケル水素電池のメモリ効果や不活性状態を除去する 筆者: アレックスのおじさん
(a)電池を直列にして放電することは避けています。 直列放電がどうして問題かと言いますと、電池の充・放電状態が異なる電池を直列にして放電すると、一部の電池に極性の逆転現象が起きてしまって、電池寿命に影響を与えるからです。 (b)R1・D1・C3・Q1・R2・R3・R4で構成する基準電圧発生器を除く回路は、グランドラインを挟んで上下同じ回路になっています。 基準電圧を共通としてそれぞれが単独に電池を放電する回路です。 オペアンプが4個入りのNJU7004B(14ピン)を使用してもう2チャンネルを追加すると、4本を同時に放電する放電器に改造できます。 (c)基準電圧発生器とLEDドライバーを除いた回路ブロックが、放電する電池を含めて発振器になっています。 発振周波数は22Hz以下ですが、電池から大電流を取り出して弛張発振を起こさせ、電池からパルス状の電流を放電させます。 (d)直流電源電圧が1.6V〜1.8Vの時に電池の放電を停止させる基準電圧が0.69V〜0.76Vになるようにしてあります。 乾電池1本でも動作しますが、基準電圧が低くなってしまったりLEDが非常に暗くなってしまいます。 (e)ニカドやニッケル水素電池の放電終止電圧は1.0Vですが、1V以下まで放電してしまうと電池寿命を縮めてしまいますので、安全と部品のばらつきを考慮して1.08V〜1.12Vに設定しています。 (f)IC1は1Vまでの単一電源で動作するCMOSの汎用オペアンプです。 (g)C5・R6とC8・R14の容量または抵抗値で基本発信周波数を変えることが出来ますが、電池がR9・D2・R6及びR16・D4・R14を通してグランドに接続されていますので、R6やR14をこれ以上小さくすると、電池を放電器に入れ忘れた場合、100μA以上の電流が流れて好ましくありません。 (h)R11・R12・Q4およびR20・R21・Q7のLEDドライバーは、抵抗内蔵型のトランジスタ(通称デジトラ)と置き換えることが出来ます。 放電中はLEDが点滅しているのですが、電池の残量が多いときにはオフしている期間が10mS以下なので、点滅が見えません。 電池の電圧が約1.15V位からLEDの点滅が見えるようになります。 (i)C7は発信周波数のふらつきを防止しており、サイズの都合上バイポーラ(無極性)電解コンデンサを使用します。 (j)R9とR16は非常に重要な役目をしています。 これらは0.22Ωという非常に低い抵抗値ですが、安定な弛張発振には必ず必要です。 また、指定の電池ホルダー(米国キーストン電子製)を使用することも重要で、ホームセンターなどで入手できる単3電池2本用の電池ホルダー(マイナス電極側にコイルバネが付いたもの)を改造して使用しますと、発振と放電はしますが、電池との接触抵抗が非常に大きいため、十分な放電電流を流せません。 (k)MDレコーダ用のACアダプターは1.8V・500mAの出力ですので、お持ちの場合はこれに合ったソケットを購入して使用します。 最大回路電流は約90mAですので充分です。
どうしても6V〜12VのACアダプター(200mA以上の出力)で動作させたい場合には、回路図左側に示されている抵抗値の変更をすると共に、5Vの定電圧IC(150mAクラス)を追加してください。 パターン図・マウント図にはこれらのスペース(ピンク色の部分)を取ってあります。
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表1 使用部品リスト | |||||
部品種別 | 部品名 | 数量 | 部品番号 | 備考 | メーカー |
オペアンプ | NJU7002D | 1 | IC1 | CMOS(註1) | JRC |
小信号増幅トランジスタ(PNP) | 2SA933 | 3 | Q1, Q3, Q6 | 100mA/50V max.(註2) | ローム |
小信号増幅トランジスタ(NPN) | 2SC1740 | 2 | Q4, Q7 | 100mA/50V max.(註2) | ローム |
大電流SWトランジスタ(NPN) | 2SC2562 | 2 | Q2, Q5 | 5A/60V/25W max.(註3) | 東芝 |
シリコンダイオード | 1N4448 | 3 | D1, D2, D4 | Vf: 0.63, If: 200mA(註4) | ローム |
LED(赤) | TLUR114 | 2 | D3, D5 | 1.75V/20mA、5.8mm(註5) | 東芝 |
電解コンデンサ | 22/6.3 | 2 | C5, C8 | (註6) | |
47/10 | 1 | C1 | (註6) | ||
バイポーラコンデンサ | 0.47/16 | 2 | C6, C9 | (註6) | |
積層セラミックコンデンサ | 0.01/50 | 4 | C3, C4, C7, C10 | ||
0.1/50 | 1 | C2 | |||
酸化金属皮膜抵抗(2W, 5%) | 0.22(赤赤銀金) | 4 | R8, R9, R16, R17 | (註7) | |
カーボン皮膜抵抗(1/4W, 5%) | 22(赤赤黒金) | 4 | R10, R13, R19, R22 | ||
220(赤赤黒金) | 1 | R1 | |||
390(橙白茶金) | 1 | R2 | |||
560(緑青茶金) | 2 | R7, R18 | |||
1K(茶黒赤金) | 3 | R3, R11, R20 | |||
1.5K(茶緑赤金) | 1 | R4 | |||
4.7K(黄紫赤金) | 2 | R12, R21 | |||
56K(緑青橙金) | 2 | R6, R14 | |||
100K(茶黒黄金) | 2 | R5, R15 | |||
穴あき基板 | SW-272など | 1 | (例えばサンハヤト) | ||
電池ホルダー (単3) | NO140 | 1 | (註8) | ||
合計 | 47 |
(註1) NJU7002Dは最大18Vまで使えますので6V〜12Vでも変更する必要ありません。 (註2) 廃品種になっていますが購入できます。 現行品はSPTパッケージで2SA933ASと2SC1740Sです。 他メーカの同等クラクスのものでも可。 (註3) これも廃品種になっていますが購入できます。 現行品は2SC4881か2SC3253(三洋)です。 VCE(sat)=0.4V以下を選んでください。 ダーリントンは使用できません。 2SC4881の場合はコレクターに相当する放熱フィン部分は樹脂モールドです。 (註4) 基準電圧発生用のダイオードが1本含まれていますので、順方向電圧に注意。
[ダイオードの選択と基準電圧について追加](平成14年5月18日加筆) トランジスタ技術誌の記事をお読みになった方やこのHPをお読みいただいた方々から、小信号シリコンダイオードの1S1448が部品販売店などで入手できないので、代換え品を教えて欲しいとのご質問をいただきました。 私は手持ちの日立製のダイオードを選びましたし、トランジスタ技術誌の編集者の方も、どこででも入手可能なダイオードだと考えていましたが、同等品でも入手困難なことを知りました。 ご迷惑をおかけしましたことをここでお詫びします。
この急速放電器に使用しているダイオードは、まさに整流の役目をしていますので、基本的にはご入手可能な整流用のシリコンダイオードでもOKの筈です。
また、3.3Vから5.0Vの範囲の低電圧ダイオード(ツェナーダイオード)であれば、これを順方向(
ツェナー電圧を得るときとは逆の接続)で使用してもOKの筈です。
しかし、測定条件にもよりますが、大電流を流せる整流用シリコンダイオードを選んだ場合は、一般的にスペック上順方向電圧が1.0V以上と大きくなります。
(註5) 電源電圧が1.6V〜1.8Vと低いため、赤色でVfが1.75V以下のものでないと明るく点灯しません。 (註6) 電圧は指定以上であればかまいませんが、直径に注意してください。 (註7) 2.2オームと間違えないように注意。 カラーコードは赤赤銀金です。 千石電商で購入できます。 (註8) アメリカ製のステンレスでできた電池ホルダーで、秋月電子通商でしか入手できません。 電極の接触抵抗が30ミリオーム以下の優れ物です。 必ずこのホルダーを使用してください。 (註9) 12Vの回路に使用する3端子レギュレータは、150mAクラスを使ってください。 電池2個を放電したとき最大約90mA流れますので100mAクラスではギリギリです。
註8・註9は東京・秋葉原の秋月電子通商、註9(本文)は秋葉原の千石電商、その他は千石電商・秋月電子通商などで入手できます。
[追加]6〜12V用の回路図・マウント図・パターン図
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