特集

ニカド・ニッケル水素電池のメモリ効果や不活性状態を除去する
超小型急速放電器の製作

筆者: アレックスのおじさん

加筆・修正・変更の記録
加筆・修正・変更 場所 日付
初版:   平成13年11月20日
引っ越しによる更新 ホームページの引っ越しによる更新  平成17年4月

 


  1. はじめに

特集・第一部のニッケル水素電池と充電器(技術志向版)でご紹介していますが、放電器または放電機能付きの充電器は一般の販売店では見つからないのが現状で、欧米ではマイコン付きの高級機まで販売されているのとは対照的です。 「日本の電池メーカーは二次電池の使い捨てを推奨しているのでは?」と言う人までいます。
特集で解説しましたニカドやニッケル水素電池のメモリー効果や不活性状態を取り除くには、一般的に充放電を2〜3回繰り返す必要があり、出来るだけ速く放電させて正常な充電をするのが、電池を長持ちさせたり急な電池切れに直面したりしないために重要になります。 デジタル機器の説明書や電池の一部には、あたかもメモリー現象が起きないかのような説明がありますが、電池メーカーに聞いてみると「起こります」という返事が返ってきます。 事情があってこの製作記事の公開が大幅に遅れましたが、従来にはなかったアイデアを取り入れた超小型急速放電器の製作を公開します。
ちなみに、一般向けの小型急速放電器の製作記事は、CQ出版社のトランジスタ技術誌の平成14年5月号(4月10日発売)に掲載されていますので、こちらの方もご覧ください。 したがいまして、ここでは電子の回路に詳しい方で手作り製作が好きな方々を対象とさせていただきます。

  1. 急速放電器の特徴

この急速放電器の特徴は次のようなものです。

◆ 入手が容易な部品47点で構成

◆ 公称電圧1.2Vの単3または単4のニカド・ニッケル水素電池を各二本まで同時放電できる

◆ 電池二本の充・放電状態が異なっていても同一の放電状態に出来る

◆ 電池一本当たり最大2アンペアまでの放電が出来、満充電された正常な電池でも55分以内に放電できる

◆ 放電回路に周波数を規制した弛張発振を使用しているので、放電終了に近づくにしたがってLEDが点滅し、放電終了で消灯する

◆ 放電終止電圧は無調整で、1.08V〜1.12V

◆ 直流電源電圧1.6V〜1.8Vで動作するので、電源に遊休の低速充電器や他の機器用のACアダプターが使用できる

  1. 回路ブロックと回路の概略説明

回路図を図1に示しますが、回路ブロックと回路の説明はトランジスタ技術2月号を参照してください。
回路構成の中で重要な点を以下にまとめました。

(a)電池を直列にして放電することは避けています。 直列放電がどうして問題かと言いますと、電池の充・放電状態が異なる電池を直列にして放電すると、一部の電池に極性の逆転現象が起きてしまって、電池寿命に影響を与えるからです。

(b)R1・D1・C3・Q1・R2・R3・R4で構成する基準電圧発生器を除く回路は、グランドラインを挟んで上下同じ回路になっています。 基準電圧を共通としてそれぞれが単独に電池を放電する回路です。 オペアンプが4個入りのNJU7004B(14ピン)を使用してもう2チャンネルを追加すると、4本を同時に放電する放電器に改造できます。

(c)基準電圧発生器とLEDドライバーを除いた回路ブロックが、放電する電池を含めて発振器になっています。 発振周波数は22Hz以下ですが、電池から大電流を取り出して弛張発振を起こさせ、電池からパルス状の電流を放電させます。

(d)直流電源電圧が1.6V〜1.8Vの時に電池の放電を停止させる基準電圧が0.69V〜0.76Vになるようにしてあります。 乾電池1本でも動作しますが、基準電圧が低くなってしまったりLEDが非常に暗くなってしまいます。

(e)ニカドやニッケル水素電池の放電終止電圧は1.0Vですが、1V以下まで放電してしまうと電池寿命を縮めてしまいますので、安全と部品のばらつきを考慮して1.08V〜1.12Vに設定しています。

(f)IC1は1Vまでの単一電源で動作するCMOSの汎用オペアンプです。

(g)C5・R6とC8・R14の容量または抵抗値で基本発信周波数を変えることが出来ますが、電池がR9・D2・R6及びR16・D4・R14を通してグランドに接続されていますので、R6やR14をこれ以上小さくすると、電池を放電器に入れ忘れた場合、100μA以上の電流が流れて好ましくありません。

(h)R11・R12・Q4およびR20・R21・Q7のLEDドライバーは、抵抗内蔵型のトランジスタ(通称デジトラ)と置き換えることが出来ます。 放電中はLEDが点滅しているのですが、電池の残量が多いときにはオフしている期間が10mS以下なので、点滅が見えません。 電池の電圧が約1.15V位からLEDの点滅が見えるようになります。

(i)C7は発信周波数のふらつきを防止しており、サイズの都合上バイポーラ(無極性)電解コンデンサを使用します。

(j)R9とR16は非常に重要な役目をしています。 これらは0.22Ωという非常に低い抵抗値ですが、安定な弛張発振には必ず必要です。 また、指定の電池ホルダー(米国キーストン電子製)を使用することも重要で、ホームセンターなどで入手できる単3電池2本用の電池ホルダー(マイナス電極側にコイルバネが付いたもの)を改造して使用しますと、発振と放電はしますが、電池との接触抵抗が非常に大きいため、十分な放電電流を流せません。

(k)MDレコーダ用のACアダプターは1.8V・500mAの出力ですので、お持ちの場合はこれに合ったソケットを購入して使用します。 最大回路電流は約90mAですので充分です。 どうしても6V〜12VのACアダプター(200mA以上の出力)で動作させたい場合には、回路図左側に示されている抵抗値の変更をすると共に、5Vの定電圧IC(150mAクラス)を追加してください。 パターン図・マウント図にはこれらのスペース(ピンク色の部分)を取ってあります。
6V〜12Vの回路ではICのタイプが異なりますので、これに伴って抵抗2本(2.2K)の追加が必要になります。ページ最下部の回路図を参照してください。


図1 1.6V版の超小型急速放電器の回路図

  1. 急速放電器の特性

総てのデータを一つのグラフにまとめた急速放電器の特性グラフを図2に示します。 実際の電池を使用してこのデータを取るのは現実上不可能に近いので、外部直流電源(0V〜2.0V、2.5A)を使用し、電池端子に220μFのコンデンサを接続して測定したものです。 尖頭電流値は電流計の内部抵抗を避けるために電流プローブ、平均電流はアナログ電流計、周波数はカウンター、放電オフの期間はオシロスコープを使用して測定しました。 実際の電池の値と大きな隔たりはありません。 電池の残量が少なくなっても大きな電流を流せるのが理想ですが、放電停止前には平均放電電流が約1.05Aに落ちてしまいます。 ただし、ピーク電流は約1.7A流れていますから、「休み休み放電する電池に優しい放電方法」と言えるかも知れません。 ちなみに、リチウムイオン二次電池の場合は最大放電電流に制限がありますが、ニカド・ニッケル水素電池には特別な制限がありません。 とは言え、電池が高温になったり部品で火傷をするほどの大電流放電は避けています。


図2 急速放電器の特性

  1. 部品リストと部品選択の注意事項


図3 電池ホルダーのブッシュの加工

部品リストは表1を参照してください。 部品を購入する場合に9項目の注意点がありますので、必ずお読みください。 部品個別の価格は表示していませんが、実買総額は1,220円以下です。
指定した単3用の電池ホルダーには、+極用のプラスチック製ブッシュと極性表示シールが付属しています。 電池の向きを間違えて入れても回路が破損することはありませんが、図3のようにこの一部を切り欠き、裏面に両面テープを貼って取り付けることをお勧めします。
この部品リストには12V〜6V用の部品が含まれていませんので、注意してください。
また、電源電圧が低いので、赤のLEDで順方向電圧が指定値以下のもの(小型の物がほとんど)しか使用できませんので注意してください。
(トランジスタ技術誌247ページの写真2は、編集部で勘違いしたために両面テープを貼る位置が上面になってしまっています。 この図3が正しいので、ご注意ください。)

表1 使用部品リスト
部品種別 部品名 数量 部品番号 備考 メーカー
オペアンプ NJU7002D 1 IC1 CMOS(註1) JRC
小信号増幅トランジスタ(PNP) 2SA933 3 Q1, Q3, Q6 100mA/50V max.(註2) ローム
小信号増幅トランジスタ(NPN) 2SC1740 2 Q4, Q7 100mA/50V max.(註2) ローム
大電流SWトランジスタ(NPN) 2SC2562 2 Q2, Q5 5A/60V/25W max.(註3) 東芝
シリコンダイオード 1N4448 3 D1, D2, D4 Vf: 0.63, If: 200mA(註4) ローム
LED(赤) TLUR114 2 D3, D5 1.75V/20mA、5.8mm(註5) 東芝
電解コンデンサ 22/6.3 2 C5, C8 (註6)  
47/10 1 C1 (註6)  
バイポーラコンデンサ 0.47/16 2 C6, C9 (註6)  
積層セラミックコンデンサ 0.01/50 4 C3, C4, C7, C10    
0.1/50 1 C2    
酸化金属皮膜抵抗(2W, 5%) 0.22(赤赤銀金) 4 R8, R9, R16, R17 (註7)  
カーボン皮膜抵抗(1/4W, 5%) 22(赤赤黒金) 4 R10, R13, R19, R22    
220(赤赤黒金) 1 R1    
390(橙白茶金) 1 R2    
560(緑青茶金) 2 R7, R18    
1K(茶黒赤金) 3 R3, R11, R20    
1.5K(茶緑赤金) 1 R4    
4.7K(黄紫赤金) 2 R12, R21    
56K(緑青橙金) 2 R6, R14    
100K(茶黒黄金) 2 R5, R15    
穴あき基板 SW-272など 1   (例えばサンハヤト)  
電池ホルダー (単3)  NO140 1   (註8)  
合計   47      


[部品選択時の注意]

(註1) NJU7002Dは最大18Vまで使えますので6V〜12Vでも変更する必要ありません。
NJM2904D(最小2V)でも動作しますが、1.6V動作は保証の限りではありません。

(註2) 廃品種になっていますが購入できます。 現行品はSPTパッケージで2SA933ASと2SC1740Sです。 他メーカの同等クラクスのものでも可。

(註3) これも廃品種になっていますが購入できます。 現行品は2SC4881か2SC3253(三洋)です。 VCE(sat)=0.4V以下を選んでください。 ダーリントンは使用できません。 2SC4881の場合はコレクターに相当する放熱フィン部分は樹脂モールドです。

(註4) 基準電圧発生用のダイオードが1本含まれていますので、順方向電圧に注意。

 

[ダイオードの選択と基準電圧について追加](平成14年5月18日加筆)

トランジスタ技術誌の記事をお読みになった方やこのHPをお読みいただいた方々から、小信号シリコンダイオードの1S1448が部品販売店などで入手できないので、代換え品を教えて欲しいとのご質問をいただきました。 私は手持ちの日立製のダイオードを選びましたし、トランジスタ技術誌の編集者の方も、どこででも入手可能なダイオードだと考えていましたが、同等品でも入手困難なことを知りました。 ご迷惑をおかけしましたことをここでお詫びします。

 

この急速放電器に使用しているダイオードは、まさに整流の役目をしていますので、基本的にはご入手可能な整流用のシリコンダイオードでもOKの筈です。 また、3.3Vから5.0Vの範囲の低電圧ダイオード(ツェナーダイオード)であれば、これを順方向( ツェナー電圧を得るときとは逆の接続)で使用してもOKの筈です。 しかし、測定条件にもよりますが、大電流を流せる整流用シリコンダイオードを選んだ場合は、一般的にスペック上順方向電圧が1.0V以上と大きくなります。
もしこれらのダイオードをご使用になった場合には、現在の電圧分割用の抵抗値ではIC1の5番ピンの電圧が0.69V〜0.76Vの範囲を超えてしまう可能性があります。 0.76Vを超えてしまった場合には、目標の放電終止電圧よりも上がってしまいます。 ただし、これは逆に、基準電圧が0.69Vより下がってしまって電池を過放電にしてしまい、電池の寿命を縮めてしまうようなことにはなりませんので、安全な方向に移動したことになります。
これらのことから、入手可能なダイオードを使用してどうしても指定電圧の上限内に納める場合には、R3とR4による電圧の分割比を変えてください。 たとえば、
この1.6Vの小型放電器の場合
R3/R4→1.5K/1.8K,あるいは1.5K/1.5Kの組み合わせがあります。
トランジスタ技術誌に掲載されている5Vの小型放電器の場合
R3/R4→1.8K/1.8K、あるいは1.8K/1.5Kの組み合わせがあります。
R4の値はそのままのにして、R3一本の代わりに2本の抵抗を並列または直列接続して目標値に入れる方法もあります。
さらに抵抗値の選択が面倒な場合で取り付けスペースさえ許せば、2Kオームか2.2Kオームの小型可変抵抗器をR3とR4に置き換えて、可変抵抗器の中間タップの電圧を調整して使用する方法もあります。 ただし、基準電圧の調整は、0.69Vより下がらないように慎重に行ってください

 

(註5) 電源電圧が1.6V〜1.8Vと低いため、赤色でVfが1.75V以下のものでないと明るく点灯しません。

(註6) 電圧は指定以上であればかまいませんが、直径に注意してください。

(註7) 2.2オームと間違えないように注意。 カラーコードは赤赤銀金です。 千石電商で購入できます。

(註8) アメリカ製のステンレスでできた電池ホルダーで、秋月電子通商でしか入手できません。 電極の接触抵抗が30ミリオーム以下の優れ物です。 必ずこのホルダーを使用してください。

(註9) 12Vの回路に使用する3端子レギュレータは、150mAクラスを使ってください。 電池2個を放電したとき最大約90mA流れますので100mAクラスではギリギリです。

[購入先]

註8・註9は東京・秋葉原の秋月電子通商、註9(本文)は秋葉原の千石電商、その他は千石電商・秋月電子通商などで入手できます。

  1. 基板のパターン図と部品マウント図

標準の穴あき基板の一部を使用したパターン図(配線)を図5に、部品マウント図を図6に示します。 見やすさからすると一長一短ですが、パターン図には部品を取り付けながら配線しやすいようにするために、部品も重ねて記入してあります。
部品をハンダ付けするときには、部品のリード線を折り曲げて配線代わりにしないことをお勧めします。 後で取り付けの間違いが見つかったときに取り外しが面倒だったり、ランドをはがしてしまうことになるからです。 マウント時には電解コンデンサ・ダイオード・LEDの極性、ICの向き、PNP(エッミッター表示が赤)とNPNのトランジスタ、パワートランジスタの向きなどには十分注意してください。 マウント図には抵抗値やコンデンサの値の表示の小数点を見落とさないようにするために、1K5(1.5KΩ)、10n(0.01μF)、μ47(0.47μF)、0R22(0.22Ω)のようにしています。
ランドは横(短い方の列)に最低18列、縦(長い方の段)に最低20段必要ですが、基板サイズの大きさを制限しないのであればもっと多くてもかまいません。
ラジアル部品は総て立ててマウントします。 以下にいくつかの注意点を書いておきます。


図4 トランジスタやダイオード
などの極性と向き

[LEDの半田付けについて]

  • 市販のLEDにはリードの形状がストレートの物とプリフォームした物があります。 いずれの場合にもピンセットなどでリードを挟んで、必要な形状に曲げてください。リードは結構脆いので、ストレートの物を購入して曲げ直しは避けてください。
  • リード線を切ってしまうとプラス・マイナスが判りにくくなってしまいますので、切る前にプラス側にマークを付けて置いてください。 リードが同じ長さのLEDの判別方法は、テスターを100オームレンジでLEDのリードに接続してLEDが点灯した場合、テスターのマイナス側(黒)がLEDのアノード(+)側になります。

[トランジスタやダイオードなどの向き]

  • マウント図の絵を注意深く見ていただければ、取り付けの向きを間違えることはありませんが、図4を参考にしてください。

[電池ホルダーについて]

  • 米国キーストン電子製の電池ホルダー裏面には4個のハト目の頭が突き出ています。 何かのケースに取り付けるときには、ハト目の逃げを作るとバネの逃げが少なくなるため、電池の挿入が硬くなってしまいます。
  • 2.6mm近辺のセルフタップネジを使用してケースに取り付けますが、基板を取り付ける前に一度ネジ止めをしてください。このネジが基板側に突き出てパターンやリードに接触する場合は突き出る分を前もって切っておきます。 2.6mmのビスとナットを使用して取り付ける場合にも、同様の注意が必要です。
  • プラス電極側のラグ板は、外見を考慮するのであればラジペンなどで丁寧にホルダーの底面側に回転させます。 このときカシメが緩まないように注意してください。 マイナス側の電極ブリッジにリード線2本を半田付けするときには、最低30Wの半田ごてが必要です。
  • このデータをアップして以来1年以上になりますが、自作を進めておられた読者の方から、トランジスタの番号が違っているとのご指摘を受けました。
    原因は、回路図上で左から右方向に番号が見やすいように並べ替えたのににも関わらず、パターン図・マウント図にこの変更を反映していなかったためです。パターン図・マウント図では、回路信号の流れに沿った番号にしていました。
    ご迷惑をおかけしたことをお詫びすると共に、図面の修正を行いました。(平成15年2月2日)


図5 パターン図(黒の実線が配線パターンです。)


図6 部品マウント図

  1. 電源と電池を入れる前の点検事項・試運転・注意

まずもう一度部品の向き・値・パターンの配線をチェックしてください。 OKであれば1.6V〜1.8Vの電源を極性を間違えないように接続して電源を入れます。 電源電圧を間違えると、LEDが焼き切れてしまいます。 LEDが一瞬光りますが、電池を挿入していない状態では消えています。 このときの回路電流は約7mAです。
次にIC1の5番端子の電圧を測ってください。 0.69V〜0.76Vの間に入っていればOKです。 もし高すぎる場合はD1の選択不適合かR3・R4の抵抗値間違いの可能性があります。 低すぎるときはR3・R4の抵抗値間違いの可能性があります。 基準電圧が低いままで使用すると電池が1.0V以下になってしまい、電池寿命を縮めてしまいます。
そしてどんな状態のニカド電池あるいはニッケル水素電池でもかまいませんので、電池ホルダーに入れてください。 入れた電池に残量があれば、電池を入れた方のLEDが点灯します。 もしメモリー効果を起こしている電池であれば、10分以内にLEDの点滅が始まり、放電が終了すると消えてしまいます。(ニカド電池の場合は注意書き4を参照
電池の容量のほとんどはR8・R9とR16・R17で熱となって消費されますので、これらの抵抗やQ2・Q5が熱くなりますが、火傷をするほどの温度ではないために、放熱板を付けていません。 しかし取り扱いには充分ご注意ください。
「ご注意 その1」
この放電器は公称電圧1.2Vのニカド・ニッケル水素電池専用です。 これらの電池でも直列にしたり、他の種類の電池を放電したりしないでください。
[ご注意 その2]
単3電池を2個並列に接続して放電した場合、放電時間が1本の時の2倍になりますが、並列接続はしないでください。 理由は、たとえば一方の電池が完全放電に近くて、もう一方が満充電に近いような電池を並列に接続した場合、後者の電池から前者の電池に非常に大きな電流が流れてしまって危険だからです。
[ご注意 その3]
一旦放電が終了した電池をホルダーから取り出して放置しておきますと、電池内部の化学反応が進んで電圧が徐々に上昇してきます。 このような電池を再び放電器に入れると、短時間ですがもう一度放電が始まります。 また、放電が終わった電池は放電器から取り出し、その場で充電してください。 放電が終了した電池を放電器に長期間放置すると、100μAの漏れ電流があるのと電池の自己放電もあるため、1.0Vより下がってしまいます。
[ご注意 その4]
ニカド電池内部の化学反応は、電池内部の隅々まで放電反応が完全に終わるまでじわじわと続きます。 このため、この急速放電器でニカド電池を放電させた場合、完全にLEDの点滅が消えるまでに数時間以上かかります。 2秒間に1回くらいの点滅になった時点で放電を停止しても目的は達成されていますのでご注意ください。

  1. 試作品のご紹介

穴明き基板を使用して試作した超小型急速放電器と、これを自作ケースに収めたものをそれぞれ写真1写真2に示します。
写真2のケースは、板厚2mmのアクリル板を加工して自作したもので、遊休の低速充電器とMDレコーダ用のACアダプター(DC1.8V、500mA)との共用にしてあります。 ソニーブランドの低速充電器に取り付けた様子を示しました。 単3と単4の共用配線をしてありますが、双方の電池を同時に放電することはしません。 ただし、低速充電器に取り付けて使用する場合には、充電器の電圧が1.8Vであっても定電流しか流せないため、2個の電池を同時に放電させると、LEDの明るさが暗くなったり、一方の点滅周期が他方の明るさにかぶってしまう欠点があります。


写真1 試作した基板

写真2 ケース入り急速充電器
(単3と単4兼用)
  1. 感光基板を使用してプリント基板を自作する場合

「ニッケルメッキ線や穴あき基板を使用して急速充電器を製作してもきれいでかっこよくできない」とおっしゃる方のために、1枚のみの製作には面倒かも知れませんが、穴あき基板のパターンをそのまま移して修正した感光基板に焼き付ける時のフィルム原稿(74KB)を用意しました。(クリックすると別窓でワードファイルが開きますが、リンク部分を右クリックしてハードディスクなどに一旦保存した方が良いと思います。 マクロウイルス混入の心配はありません。) ワード98または2000をお持ちの方は、このパターンを直接透明フィルムに印刷すれば感光用のフィルムが出来ますので、必要に応じてご利用ください。 サンハヤトのポジ感光基板12Kに4枚焼き付けてエッチングした例を写真4に示しました。
ご利用になる場合には次の点に注意してください。

  • レーザープリンターをご使用の場合は、オーバーヘッドプロジェクタ用の透明フィルムを使用します。

  • インクジェットプリンターをご使用の場合は、サンハヤトのフィルムPF−3などを使用します。 製品の説明書を良くお読みください。

  • これは部品面から見たパターン図です。 画像のサイズ設定は、元のサイズを基準として縦横比を固定し、幅を54.87mmに設定してあります。 この設定状態のまま透明フィルムに印刷して、印刷面が感光面に密着するように重ねて露光します。 従って、露光時に全ての文字が裏向きに見えることを確認してください。

  • この図面は多くのベクトル描画の集合体です。分解すると元に戻らない場合がありますので注意してください。

  • サンハヤトのポジ感光基板10Kなどを使用します。

  • 上記いずれの方法でフォトマスクを印刷しても、感光基板に焼き付ける前には、フィルムを透かしながら印刷のかすれなどを先が細い油性インクペンなどで修正してください。

  • 感光・現像・エッチングが終了したら、感光膜をアルコールで剥がす前に直径1mmの穴を開けてください。 基板四隅の穴径は2.6〜3.2mmです。 基板の外形に合わせて外側か内側かの選択が出来るようになっていますので、大きい方の基板外形を選んだ場合は、外側の穴位置を使用してください。

  • 部品をマウントする前に、半田付け用のフラックスを塗布します。 ジャンパー線・IC・積層セラミックコンデンサなどの背が低い部品からマウントします。 フラックスはドライヤーなどで充分乾燥させないと粘つきます。


写真4 感光基板にパターンを焼き付けてエッチングした試作プリント基板
(基板の左右には紙製のガムテープを貼って、不必要な部分のエッチングをしないようにました。)

ご参考までに、トランジスタ技術誌の平成14年5月号に掲載の急速放電器の基板と完成品の外観を、写真5写真6にそれぞれ示しました。


写真5 標準基板を使用した試作品


写真6 放電器の完成品

  1. おわりに

以前に持っていたデジカメのトラブルから始まった二次電池に対する技術的興味が高じて、放電器の設計・制作まで進んでしまいましたが、結構有用でおもしろい回路が出来たと思っています。 放電電流を減らして発信周波数を下げると、簡易型二次電池の電池チェッカーに使えるほか、放電器以外の応用展開もあると思います。

即答のお約束は出来ませんが、ご質問・ご意見などがありましたらメール(hiro580@mvi.biglobe.ne.jp)にてお願いします。

[追加]6〜12V用の回路図・マウント図・パターン図

CQ出版社のトランジスタ技術誌の平成14年5月号に6〜12V用の急速放電器の製作記事が掲載掲載されていますが、3.の回路図と混同を避け、また同誌のバックナンバーを入手できない方のために、回路図・マウント図・パターン図をここに追加しました。内容は基本的にトランジスタ技術誌の記事と同じですが、一部色表示されています。
(平成15年2月2日)

  • 回路図


電源電圧が6〜12V用の回路図

  • マウント図


電源電圧が6〜12V用のマウント図

  • パターン図


電源電圧が6〜12V用のパターン図


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