DS2711を使用したNi-MH電池用の充電器
トランジスタ技術誌2005年5月号の記事の補足説明や追加情報

製作・著作: (有)テクノアート
 (初版:2005年4月16日)
(改訂:2009年10月3日)


おかげさまでこの製品の販売は完了しました。

[トランジスタ技術誌の記事の補足説明]

『DS2711を使ったNiMH/NiCd急速充電器の製作』記事の冒頭で、「容量の大きい最近のNiMH蓄電池を満充電にできるものが少ない」との記述がありますが、これは筆者の原稿になかった表現が使われていますので、誤解がないように追加説明をします。

この真意は、すぐ下の行に記載されているように、最近の高容量のNiMH電池をその電池用の充電器ではなく、従来の充電器で充電した場合、電池の放電状態によっては満充電されないことがあるという意味です。

 [記事の修正]

1. 218ページの図4 製作した基板のパターン図に結線ミス

これはCQ出版社が筆者の原稿をアートワークし直したときに生じたものですが、左の図の矢印部分の配線に描画忘れがあります。実際に配線をして行くと気付くことが出来ると思いますが、この配線がないと回路は正しく動作しませんのでご注意ください。図5の方は間違っていません。
なお、図4下部にある説明で「網がかかった部分は...」は、記事のブルーの部分です。
念のためにパターン面図部品面図をアップしました。

 

 

 

2. 220ページの表1 製作したNiMH/NiCd 急速充電器の部品表の数値ミス

これは筆者が準備した原稿の中にあったミスプリントです。
金属皮膜抵抗の0.12Ωの備考欄にある270Ωは、270mΩまたは0.27Ωの間違いです。不手際をお詫びします。
R9に0.27Ωを接続すると、ピーク電流を約1.4Aに出来ます。ただし、この状態では、NiCd電池や古いNiMH電池の充電が拒否されてしまいます。

[追加情報]

1. 各充電モードの遷移を実際に記録した積算充電電流カーブ

DS2711は自動的に予備充電>急速充電>仕上げ充電>維持充電と進行しますが、この様子を新しく開発した電池管理システムを使用して、下図のようにグラフに自動プロットしてみました。
これは、あるメーカーのmini. 2000mAh の電池を、その電池メーカーの急速充電器で満充電し、自作の急速放電器で電池電圧が1.05Vになるまで自動放電したあと、DS2711の充電器で満充電した結果です。

このグラフでは放電開始時点が表示されていませんが、測定した電池は放電結果から、2200mAh以上の充電容量があることが分かりました。
なお、急速充電から仕上げ充電に切り替わる容量値が2200mAh超えているのは、マイナスデルタ方式の特徴ですが、仕上げ充電が終了するまでに3000mAh近くの充電電流を流したことになっています。これは、充電に流した電流に対する電池内部の化学変化の効率が100%ではないことと、熱エネルギーとなって失われたことを示しています。したがって、実際の充電容量を知るためには、特別なアルゴリズムを使用して計算する必要があります。

2. DS2711の英文データシートの日本語要約版

ダラスセミコンダクタ社の製品にはユニークな製品が多いのですが、日本語のデータシートが用意されていません。完全日本語版も作っていますが、著作権に触れない範囲で日本語の要約版をご参考までに用意しました。

3. 充電が完了しない場合の対策(2005年5月22日追加)

トランジスタ技術誌に掲載された回路で、充電モードが急速充電 > 仕上げ充電に進んでも、しばらくすると急速充電モードに戻ってしまう場合があることが分かりました。

原因の特定には時間を要しましたが、MAX619のようなチャージポンプ式DC-DCステップアップ コンバータを使用した場合、DS2711のVdd端子に加わる5Vの直流電圧のノイズが大きく、仕上げ充電モード時にDS2711が誤作動して、システム全体がリセットしてしままうことが原因です。オッシロで5Vを拡大してノイズを観測し、ノイズ波形に同期を取って観測した結果わかりました。「チャージポンプ式DC-DCコンバータはノイズが多い」事を知っていたのですが、このノイズが原因で異常動作するデバイスに出くわしたのは初めてです。

従ってこの対策は、回路図にあるC7の0.1μF(基板上でR12の左側にあるセラミックコンデンサ)を、10μF/50Vの低ESR(等価直列抵抗)電解コンデンサに置き換えてください。このコンデンサの左側には電池ホルダーがありますので、コンデンサの底面を基盤面から浮かせて寝かして取り付けますが、チップコンデンサをパターン側に取り付ける方法もあります。
この改造で、ノイズレベルを100mV以下に抑えられますので、どのような充電電流でも正常に動作します。

回路図はこちらです。

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