Scene:4  戦 い




部屋に入ると、シンジは楽な服装に着替えた。

「はあ、今日は色々あって疲れたな。それにしても、盗賊団の事は頭に入れて行動しなくちゃいけないな」

何しろ、女性三人を連れての旅である。いくら、シンジやアスカが武術に長けていても、なるべく危険は避けて通るに越した事は無い。それを考えると、今後の事で頭の痛いシンジだった。

トントン

日が沈み、あたりが暗くなった頃、シンジの部屋の扉を誰かがノックした。

「どうぞ」

「シンジ君、一寸良い?」

入り口に立っていたのはレイだった。既にパジャマに着替えている。

「うん、入りなよ」

レイは部屋に入ると椅子に腰掛けた。シンジはベッドに腰を下ろし、レイと向かい合う。

「どうしたの、レイ?」

「昼間、ヒカリさんが言っていた盗賊団の事だけど‥‥」

「ああ、それは僕も考えていた所だよ。明日、襲われた場所を確認してから今後のルートを決めようと思っているんだ」

「回り道になりそうね」

「仕方が無いよ。少し遠回りになっても、レイ達を危険な目に会わせる訳には行かないからね」

そう言って微笑むシンジ。それを見ているレイの頬はほんのりと紅く染まっていた。

「シンジ君‥‥」

「ん、何?」

ドンドン、ガチャ

「シンジ、いるー――って、なんでレイがいるワケ?」

いきなり入って来たアスカが、びっくりしているシンジと赤くなって固まっているレイをジト目で見る。

「別に。明日の相談をしていただけよ(−−#)」

折角の良い雰囲気を邪魔されて、レイが少しムッとしながら答える。

「ホントに?変な事してなかったでしょうね、シンジ」

「本当にそれだけだよ。何だよ、変な事って」

「それなら、良いんだけど。ところで、明日の相談て何よ?」

「ヒカリさんが言ってた盗賊団だよ。出会わないようにしなけりゃならないって事さ」

「ああ、あれね。大丈夫よ、そんな連中、出会ったらこのアタシが成敗してやるわ」

アスカはそう言って拳を握り締め、ガッツポーズをつくった。それをシンジが苦笑しながら宥める。

「そうも行かないよ。危険は無いに越した事はないし、なるべくアスカ達をそんな目には会わせたくないからね」

「ふ、ふーん。ま、まあ、シンジがそう言うのなら、それでも良いけどね」

シンジの言葉に、思わず赤くなるアスカ。その表情を見るレイの眉間にシワが寄っているように見えるのは気のせいだろうか。

「で、具体的にはどうするワケ?」

「取り敢えず、今までに襲われた場所を確認して、盗賊団の動きの予想を立てようと思ってるんだ」

「何だか、消極策ね」

「仕方が無いわ。他に良い方法も考えつかないし‥‥」

暫く三人が話し込んでいると、今度はアメリアがやって来た。

「あ、みんなここにいたんだ」

「どうしたの、アメリアさん」

「何か、表が騒がしくない?」

アメリアの言葉にシンジが窓を開けて外の様子を見てみると、確かに村の中がざわついている。

「何だろう?」

「シンジ、あれっ!」

アスカの指すほうを見ると、村外れの方が明るくなっていた。火の手が上がっている様に見える。

「シンジ君、もしかしたら盗賊団が襲って来たんじゃないかしら?」

レイの言葉に、他の三人が顔を見合わせる。

「その可能性はあるね」

「シンジ、とにかく行ってみようよ」

四人が階下に降りると、食堂にヒカリがいた。

「ヒカリ、何かあったの?」

「あ、アスカ。それが、昼間言っていた盗賊団が襲って来たのよ。今、村外れで皆が闘ってるって。ルークさんとミリーナさんもさっき向かったわ」

「やっぱり――シンジ、アタシ達も行くわよ!」

そう言って走り出そうとするアスカを、あわててヒカリが止めた。

「ちょっとアスカ、何言ってるの。危ないからそんな事しちゃ駄目よ!」

「だ〜いじょうぶよ、ヒカリ。アタシだって、伊達にネルフ流格闘術をやってるワケじゃないのよ。盗賊の一人や二人」

「それでも、駄目」

二人の遣り取りを、シンジ達はやれやれと言った感じで見ている。と、その時すぐ近くで悲鳴が上がった。

「何だ!?」

シンジ達が外へ出ると、近くの家々を数匹のオーガが襲っていた。オーガ達に指示を出しているらしい魔道士姿の男も見える。

「しまった、村外れの方は陽動か!」

どうやら村外れで騒ぎを起こして戦力を引き付けておき、別動隊が逆方向から襲って来たようだ。盗賊団にしては中々凝った手を使う。

「こうなったら仕方が無いわね。こっちはアタシ達で何とかしましょ。シンジ、レイ、アメリア、行くわよ」

アスカは何だか嬉しそうである。

「やれやれ、結局こうなるのか」

「でも、放ってはおけないわ」

「そうよ、ここは正義の名の元に人々を救わなければ!」

四人はオーガ達の方へ向かって走り出した。
 フリーズ・アロー
「氷の矢!」

こきいいん!

アメリアの放った攻撃魔法が一匹のオーガを凍りつかせた。なんの抵抗もないと思っていたところにいきなり攻撃を受けた為、オーガ達はパニックに陥る。

「ええい、静まらんかオーガども。相手はたかが子供だ、やってしまえ」

指揮官の魔道士も一瞬あわてたが、相手が子供ばかりなのを確認するとオーガを叱咤してシンジ達に向かわせた。すると――

「悪に染まりし者よ、平和な村を怪物を使って蹂躙するなど言語道断。この私が月に代わってお仕置き――じゃなかった、天に代わって成敗してあげますから、覚悟なさい!」

「ア、アメリアさん、いつの間にそんな所に‥‥」

いつの間に登ったのか、脇にあった家の屋根でアメリアが見栄を切っていた。

「とう!」

次の瞬間、気合と共にジャンプしたアメリアは颯爽と着地――

べしょ

――出来ずに顔面から地面に突っ込んだ。

「うっわー、痛そう」

「アメリアさん、大丈夫?」

「ふっ、こんな事では私の正義は揺るぎません!」

良く解からないが、全然平気な様だった。

「‥‥あー、と、とにかくオーガどもよ、殺ってしまえ!」

突然の出来事に呆然としていた相手の魔道士が、なんとか立ち直ってオーガをけしかける。

「みんな、気をつけて!」
                ファイアー・ボール
「まーかせなさいって――火 炎 球!」

ちゅどおおん!
          ファイアー・ボール
アスカの放った火 炎 球がオーガの一匹を黒焦げにした。
                      フレア・アロー
「やるな、小娘。これならどうだ――炎の矢!」
 ディム・ウイン
「魔  風」

ごうっ!

相手の放った攻撃をレイの魔法が弾き飛ばす。

「ネルフ流槍術『烈空斬』!」

ざむっ!

シンジが気合を込めて手に持った槍を一振りすると、その穂先から衝撃波が飛び数匹のオーガをまとめて切り裂いた。

「おのれ、ガキと思って油断したか!」

シンジ達の活躍で、あっと言う間にオーガの数が3分の1程に減ってしまうと、敵の魔道士は何かの呪文を唱え始めた。

「気をつけて。あれは何かの召還魔法みたいよ」

レイが皆に注意を促したとき、呪文が完成した。

ごがああっ!
         サモンサークル
地面に現れた召還円から出現したのは、一匹のブラス・デーモンだった。

「な――ブラス・デーモン?」

シンジが驚くのも無理は無い。下級ではあるが、結構強力な魔族である。それを魔法陣も使わずに呼び出すのだから、案外力のある魔道士なのかもしれない。しかし――
  アストラル・ブレイク
「呪霊四王縛」

しゃげえええ

レイの放った魔法であっさり消滅してしまった。(ミもフタもない(^^;)

「さーて、次はどうするのかしら?」

アスカが指を鳴らしながら魔道士に近づいて行く。既にオーガも全滅していた。

「うう‥‥畜生、覚えてやがれ!」

魔道士は身を翻すと、いきなり逃げ出した。
          メガ・ブランド
「逃がすか――爆裂陣!」

ずごどおおおん!

アスカの術に吹っ飛ばされた魔道士は、道端に転がって痙攣していた。

「フッ、悪は滅びるのよ」

シンジ達は気絶している魔道士を縛り上げると村人に引き渡した。

「こっちはこれで片付いたけど、向こうが心配だね」

シンジの言葉に、他の三人も頷く。

「とにかく、行ってみよう」

四人は村外れの方へ向かって走り出した。




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