ちょっとしたコラム      
               
06.10.7付


1982年 中日ドラゴンズVS西武ライオンズ(後編)

 西武の2勝1敗で迎えた10月27日の第4戦は中日が三沢、西武が松沼兄という下手投げ同士の先発で始まった。2回表に中日は石毛の一塁悪送球の間に二塁走者が還ってシリーズ初の先取点。3回表にも4番・谷沢のタイムリーで2点目と前日勝利の流れからいいペースで試合を進めた。西武も3回裏に山崎のタイムリーですかさず1点を返す。しかし中日は5回に中尾がタイムリーを放って3-1と再び2点をリードした。

 4回まで1失点の中日・三沢だったが勝利投手の権利を目前にした5回に崩れた。先頭打者である投手の森に二塁打され、一死後に1番・石毛にタイムリーに塁打を許し1点差。中日ベンチはここで三沢から堂上にリレーするが堂上は山崎を四球で歩かせ、すぐに左腕・安木と交代。その安木は3番・スティーブはセンターフライに打ち取ったものの、4番・田淵にレフト前タイムリーを打たれ、試合は3-3の同点となった。

 だが、流れはまだ中日にあった。4番手の小松が初戦KOの汚名を晴らす力投で6回から3イニングを無失点。そして迎えた9回表の攻撃、第2戦ではほぼ完璧に抑えられた西武・小林を攻め、4番・谷沢が勝ち越しの1号ソロ。さらに二塁打の宇野を置いて豊田がタイムリーを放ち2点をリードした。こうなれば切り札・牛島の投入である。牛島は9回裏の西武を三振二つを含む三者凡退に抑え、きっちりセーブを稼いだ。敵地での連勝で中日は対戦成績を2勝2敗の5分に戻した。

10月27日・第4戦
中日 0 1 1 0 1 0 0 0 2   5
西武 0 0 1 0 2 0 0 0 0   3

勝ち 小松 1勝1敗   セーブ 牛島 1セーブ   負け 小林 1勝1敗

本塁打 谷沢1号


 28日の第5戦は中日が第3戦にリリーフで好投した鈴木孝、西武が中3日の杉本の先発で始まった。勝った方が王手を掛ける大事な試合の序盤は投手戦の様相で、杉本は被安打4、鈴木孝は被安打3の無失点で4回を終了して0-0。実は3回表の中日には惜しい場面もあった。二死一塁から2番・平野が一塁線に痛烈な当たり。抜けていれば長打コースで、ツーアウトでもあり一塁走者の生還が当然予測されたところだが何と打球は一塁審判に当たって内野に転がった。一塁走者の田尾は三塁を大きく回ってしまい、オーバーランでタッチアウト。不可抗力とは言え、中日サイドには痛い場面だった。

 均衡が破れたのは5回表。中日は先頭の7番・大島が1号ソロを放ち先制点。この回の攻撃で鈴木孝に代打を出したため、その裏から小松が連投のマウンドに上がった。しかしこれが初戦に続く誤算。小松は先頭の代打・蓬莱にいきなり死球を与え、二死後にスティーブに同点二塁打を許した。さらに7回裏には再びスティーブにタイムリー二塁打を喫し、片平にもタイムリーを打たれて2失点。西武が終盤で3-1と2点を勝ち越した

 西武は同点直後の6回表から2番手・東尾をマウンドに送っていた。東尾は8回表に代打・藤波にヒットを許しただけの完璧な投球。その8回も後続を併殺で断ち、結局4イニングを打者12人で抑える見事な投球を見せた。東尾と小松というそれぞれの大黒柱の好不調の差が出て、西武が3勝2敗とシリーズ制覇に王手を掛けた。

10月28日・第5戦
中日 0 0 0 0 1 0 0 0 0   1
西武 0 0 0 0 1 0 2 0   3

勝ち 東尾 2勝1敗   負け 小松 1勝2敗

本塁打 大島1号


 30日の第6戦は中日が西武が中3日の高橋、中日が中2日の三沢の先発で始まった。73球を投げて中2日と万全でない状況の三沢は、2回に迎えた一死満塁のピンチは乗り切ったが、続く3回に掴まった。一死二塁からスティーブのタイムリーツーベースでまず1点。さらにテリーを敬遠して勝負した大田に3ランを喫して4失点。後のない中日には厳しい4失点だったが、この4点を背負った高橋もその裏急に乱れた。三塁打の田尾が平野の内野ゴロで還りまず1点。さらに二死から連続ヒットが出て高橋は降板。しかし、2番手・森も四球を挟んで宇野と上川にタイムリーを打たれてたちまち4-4の同点となった。

 中盤は中日が都から鈴木孝、西武が工藤から小林と繋いで試合は膠着状態となった。そして7回表、簡単に二死を取った鈴木孝だったが途中から4番に入っていた片平、そして5番・テリーに連続ホームランを許した。2点をリードした西武は勢いに乗り、牛島・安木・小松と懸命のリレーを見せた中日から8回は山崎のタイムリー、9回は大石のスクイズと岡村のタイムリーで着々と追加点を奪った。

 9-4と5点のリード。8回から満を持してエース・東尾がマウンドに上がっていた。プロ入り14年目にして初の日本シリーズを経験している東尾は一球一球を楽しむように投げ続けた。そして9回裏の中日の攻撃もツーアウト。最後の打者・大島を三振に仕留めて東尾は満面の笑みを浮かべて捕手・大石に駆け寄った。新球団1年目の79年は開幕12連敗して大差の最下位に沈んだチームがわずか3年後につかんだ栄光だった。

 最優秀選手は4試合、13回2/3を投げて2勝1セーブ防御率0.00の東尾修(西武)が選ばれた。優秀選手には24打数10安打で打率.417の大田卓司(西武)、25打数8安打で打率.360のスティーブ(西武)、24打数9安打で打率.375の中尾孝義(中日)が、そして敢闘賞には第3戦で逆転3ランの上川誠二(中日)が選ばれた。

10月30日・第6戦
西武 0 0 4 0 0 0 2 1 2   9
中日 0 0 4 0 0 0 0 0 0   4

勝ち 小林 2勝1敗   セーブ 東尾 2勝1敗1セーブ   負け 鈴木孝 1敗

本塁打 大田2号、片平1号、テリー1号

(この項完)

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