打率
通算記録ではレロン・リー(ロッテ)の.320がトップ。以下、僅差で若松勉(ヤクルト)と張本勲(ロッテ)が並ぶ。これは通算4000打数以上の場合で、5000打数・6000打数以上では若松が1位であり、7000打数以上なら張本が1位となる。つまり、基準のラインをどこに置くかで違ってくるのがこの記録の難しいところである。打数の違うもの同士を並べてどちらが上だとは単純に言い切れないのであるが、ここは一般的に使われている4000打数を基準にしてみたい。
リーは1977年の入団1年目にいきなり打率.317をマーク。入団1年目の記録としては1968年アルトマン(東京)の.320に次ぐ当時歴代2位の記録だった。この年から86年まで規定打席不足のシーズンも含め、10年連続の3割打者。87年に.272と初めて3割を切って、この年限りでロッテを退団した。
リーの記録を追ったのが若松で、プロ入りから1984年までの14年間で3割12回(うち規定打席不足1回)。この84年終了時では通算打率.323を誇っていた。しかしその後、引退までの5年間でじりじり数字を下げ、張本の記録は際どく抜いたものの歴代2位に終わった。その後ブーマー(ダイエー)が80年代後半から90年代にかけて活躍。首位打者も2度獲得し、91年までは通算.323だったが現役最終年の92年に.271に終わり通算打率も.317と後退し4位に終わった。もっともブーマーの場合、この年に通算4000打数に到達しているので1年早く現役を退いても4000打数以上の1位にはなれなかったのであるが。
現役1位の鈴木尚典(横浜)は97・98年と首位打者を獲得するなど90年代後半は全盛期。99年終了時では通算打率.317で、日本記録更新への有力なチャレンジャーと思われた。しかし00年からは2割8分台〜3割1分台を行ったり来たり。昨年からはレギュラーの座も失い、通算.309まで落ちてしまった。歴代ランキングでもベストテン入りしているだけに、このままでは終わらないことを願う。
現役2位の前田智徳(広島)は今季も3割をマークすれば史上7人目となる10回目のシーズン3割となる。過去の6人はいずれも2度以上首位打者を獲得しており、前田にも初タイトルへの挑戦が期待される。入団1年目から94年まで毎年打率を上げており、95年のアキレス腱断裂がなければ、タイトル獲得はもちろん通算打率の面でももっと上を行っていただろう。すでに通算5600打数を超え、今後は通算打率を1厘上げるのも大変だが、まずは歴代ベストテン入りを期待したい。
下の表には載っていないが、今季に通算4000打数をクリアした通算3割打者に谷佳知(オリックス)がいる。昨年まで4年連続3割で通算.308と歴代ベストテン入りも間近な位置にいた。しかし今季は開幕直前に脇腹を痛め、それが元ですっかり打撃を狂わせてしまった。シーズン打率が.237と、およそ谷らしからぬ低打率。通算でも.301と後退してしまった。
4000打数未満の現役選手では何といっても小笠原道大(日本ハム)が光る。昨年まで.327、今季は不振がたたって現時点で.321とダウンしたが、それでもリーの数字を上回っている。02・03年と連続首位打者。04年は2位に終わったが、打率.345とタイトルを取っても不思議でない数字は残していた。
今季は入団2年目の青木宣親(ヤクルト)が.350を超える高打率。昨年が15打数に過ぎず、トータルでも522打数181安打の.347と高い数字で一軍キャリアをスタートし今後が楽しみな選手である。00年にやはり入団2年目で首位打者となった金城龍彦(横浜)もその時点で.342と高い通算打率だったが、その2年後にはシーズン.170という惨状であっさり通算3割を割った。金城もその後立ち直ったものの、青木にはその轍は踏んでほしくない。今季このままタイトルを獲っても、来季が正念場である。
日本人メジャー選手ではイチロー(マリナーズ)が94年から7年連続首位打者で驚異的な通算打率.353をマーク。4000打数まであと381だったがそこでストップ。今でも3000打数以上で見れば断トツ1位である。松井稼頭央(メッツ)も7年連続3割で歴代8位にランクイン。メジャーでは苦戦しているが、力はあるだけに低迷したままで終わる選手ではないはずだ。
参考 打数別通算打率ランキング
歴代 | 選手名(最終所属) | 記録 | 現役 | 選手名(所属) | 記録 | 04年実績 | |
1 | L・リー(ロッテ) | .320 | 1 | 鈴木尚典(横浜) | .309 | .267 | |
2 | 若松勉(ヤクルト) | .31918 | 2 | 前田智徳(広島) | .303 | .312 | |
3 | 張本勲(ロッテ) | .31915 | 3 | 古田敦也(ヤクルト) | .296 | .306 | |
4 | ブーマー・W(ダイエー) | .317 | 4 | 金本知憲(阪神) | .290 | .317 | |
5 | 川上哲治(巨人) | .313 | 5 | T・ローズ(巨人) | .2883 | .287 | |
6 | 与那嶺要(中日) | .3110 | 6 | 立浪和義(中日) | .2878 | .308 | |
7 | 落合博満(日本ハム) | .3108 | 7 | 石井琢朗(横浜) | .287 | .295 | |
8 | 松井稼頭央(西武) | .3089 | 8 | 野村謙二郎(広島) | .285 | .270 | |
9 | 鈴木尚典(横浜) | .3088 | 9 | 緒方孝市(広島) | .284 | .292 | |
10 | レオン・リー(ヤクルト) | .308 | 10 | 鈴木健(ヤクルト) | .281 | .289 |
年間記録は張本勲(東映)の.3834を1986年にバース(阪神)が.389で更新。イチロー(オリックス)が1994年に.385、00年に.387とあと一歩まで迫ったが、それぞれパ・リーグ記録を更新するに留まった。特に00年のイチローは歴代3位となる74試合目まで4割台を維持。最終的にもあと1打数1安打が上積みできればバースの.3885を上回る.3888で新記録という際どいところまで行っていただけに、終盤戦を故障で棒に振ったのは惜しかった。
現役ベストテンを見ると、唯一2度顔を出している小笠原が通算打率同様に注目株だ。初の首位打者となった02年には開幕から40試合目まで4割台を維持。03年には現役トップとなる.360をマークしたが、それでも歴代ランキングでは23位止まりだった。今季は3割台が難しくなっているが、実績ではトップクラスだけに来季以降の巻き返しに期待したい。
松中信彦(ソフトバンク)、谷、金城、福浦和也(ロッテ)、和田一浩(西武)らは3割打者の常連。しかしこれら名のある強打者にしても、年間.350以上の経験者はわずか3人しかいない。.380以上という打率がいかに困難なものであるかの証明でもあり、それを2度も達成したイチローの突出した能力には改めて驚くばかりである。今季、青木が現役4人目の.350打者となる可能性が高まっているが、入団1年目にファームで首位打者&オールスターMVP獲得という、イチローのルーキー時と同じ道を歩んでおり、今後が大変注目される打者である。
参考 年度別リーダーズ(打率)
歴代 | 選手名(当時の所属) | 記録 | 年度 | 現役 | 選手名(当時の所属) | 記録 | 年度 | |
1 | R・バース(阪神) | .389 | 1986年 | 1 | 小笠原道大(日本ハム) | .360 | 2003 | |
2 | イチロー(オリックス) | .387 | 2000年 | 2 | 松中信彦(ダイエー) | .358 | 2004 | |
3 | イチロー(オリックス) | .385 | 1994年 | 3 | 谷佳知(オリックス) | .350 | 2003 | |
4 | 張本勲(東映) | .3834 | 1970年 | 4 | 金城龍彦(横浜) | .3460 | 2000 | |
5 | 大下弘(東急) | .3831 | 1951年 | 5 | 福浦和也(ロッテ) | .3458 | 2001 | |
6 | W・クロマティ(巨人) | .378 | 1989年 | 6 | 和田一浩(西武) | .346 | 2003 | |
7 | 川上哲治(巨人) | .377 | 1951年 | 7 | 小笠原道大(日本ハム) | .345 | 2004 | |
8 | 中根之(名古屋) | .376 | 1936年秋 | 8 | 福留孝介(中日) | .343 | 2002 | |
9 | J・ブルーム(近鉄) | .374 | 1962年 | 9 | 今岡誠(阪神) | .3402 | 2003 | |
10 | 谷沢健一(中日) | .369 | 1980年 | 10 | 古田敦也(ヤクルト) | .3398 | 1991 |
※ランキングの記録は2004年まで。今季の記録は9月16日まで